母が
「さあ、お家にいきましょ。国王に建ててもらったのよ。」と言いみんなで建物の外に出た。
今までいた建物は全体的に白、太くて高い円柱の柱が何本も建っていた。それは、昔本で見た神殿のようだった。
「ここは何処?」
「ここはー神殿?かな?」
「知らんのかい!」とケイが父に言う。
7人は2台の馬車に乗り家を目指した。
子供達は馬車に乗るのが初めてだった。
あまり乗り心地はよくない。凄くよくない。
1台目の馬車には、
母、ミア、ユウ、ミミが乗った。
「揺れるね。」
「マンマー。お馬しゃんー。」
「窓の外の景色はすごく綺麗だけど…。」
「遊園地のアトラクションだと思っていればなんとかなるわー。」母は子供たちにそう言った。
2台目の馬車には
父、ジン、ケイが乗った。
「ずいぶん揺れるもんなんだね。」
「マジでお尻痛いよ。」
「そうなんだよねー。見た目ほど乗り心地は良くないんだよね。これも改良しないとな。遊園地のアトラクションだと思って。もう少しだから我慢してね。」
と父は2人に言った。
着いた所は元の世界で住んでいた家よりもずっと大きい家だったが異世界にしては普通の文化住宅だった。
庭は大きく作られていて花や木が植えてあった。
「わぁ〜。」
「これ?マジ?」
「どう?素敵でしょう?」
「すごいね。」
「さあ、入りましょう。」
玄関を入るとそこは広い空間が広がり奥に立派な階段があった。
「みんなのお部屋は2階よー。ドアに名前をつけてあるわよ。」
子供達は階段を登りそれぞれの部屋を探す。
「俺の部屋はここだな。」ドアを開けるとそこは元の世界の部屋より大きく作られていて、必要な家具は揃えられていた。お風呂とトイレも付いていた。日当たりも良く居心地は良さそうだ。
子供たちは自分の部屋に満足した。
「そろそろご飯にしましょうね。用意するわね。ミア、お手伝いしてね。」
そういうとキッチンの方へ連れて行く。
「どう?お母さんが使いやすく作ってもらったの。すごいでしょ?」
「へぇー冷蔵庫やレンジがあるんだね。それに大きなオーブンもある。ガスじゃなくてこれは?」
「魔法で使えるIHみたいなものよ。」
「ほぇー。」
それからご飯の支度を2人でした。
「お父さん、あの離れの家は?」
「あーあれはお父さんの研究室だよ。」
「ふーん。」
「さっき馬車に乗ったろ?馬車は乗り心地があまりよろしくないだろう?それに馬が可哀想だと思ってさ。国王の馬車の改良したり、車とかトラクターとかの試作品をあそこで作っていたんだ。もう完成するよ。次は別のものを作ろうと思うんだ。」
「ほぇー。」
次は何を作ろうかと男の子3人と父は楽しそうに話をした。
その間末の子はお昼寝をしていた。
ここでこの家族の紹介をしよう。
櫻井翔太郎
この櫻井家の家長である。
普通の家庭の次男として生まれた。
背が高く顔立ちも整っていてる。
彼は大学時代は工学部で学び、大学院に進学をする。その時にいくつかの特許を取得した。
卒業後は大手の会社でエンジニアとして自動車、トラクターなどの農機具の研究開発のリーダーを務めていた。
妻の華恵とは大学時代に訪れたカフェで出会った。
性格は真面目で優しい。妻を溺愛し、子供たちを大切にしている。
櫻井華恵
櫻井家の家長の妻
普通の家庭の長女として生まれた。
小学生の時に母が亡くなり父を助けて家事や弟妹の世話をするようになった。
学校では優秀な優等生、綺麗な顔立ちと立ち姿だった。そのためモデルのスカウトをされることもあった。
大学生になりカフェでバイトをはじめた。
そこで夫となる翔太郎と出会う。
結婚してから得意な料理をネットにアップしたところ思いがけずバズってしまう。
その後は美人すぎる料理研究家と呼ばれる。
性格はおっとりしていて優しい。
夫と子供たちを大切にしている。
櫻井仁
櫻井家長男
現在大学ニ年生。
幼い頃から成績優秀で今は大学で建築やインフラなどを学んでいる。将来は建築士?
父に似て背が高く顔立ちも整っている。
長男らしくいつも冷静でしっかりした真面目な性格。頼りになる。
櫻井圭
櫻井家次男
現在高校ニ年生
勉強はあまり出来ないがスポーツは万能。
母と父を足して半分の容姿で背も高い。
見た目がチャラチャラしていて言葉使いは悪いが性格は優しく気がきく。ムードメーカー。
櫻井美亜
櫻井家長女
中学ニ年生
勉強やスポーツは平均より少し上。
芸術面で才能がある。
顔や姿が母に似て美人。
性格はおとなしく優しいが言うことはちゃんと言うしっかりした女の子。
櫻井悠
櫻井家三男
小学三年生
勉強はすこぶる優秀だがスポーツはあまり得意ではない。ゲームに関しては天才。特にオンラインゲームでは有名な覆面ゲーマー。勝つためにはなんでもする「悪魔」、「魔王」とも呼ばれている。
母に似ていて女の子と間違われやすい。
性格は大人しく臆病で怖がり。そして泣き虫。なぜかゲームでは性格が変わる二面性を持つ。
櫻井美海
櫻井家次女
3歳
最近1人で歩き回り話ができるようになった。
母に似ていて可愛い普通の幼児
末っ子のためみんなに可愛がられている。
悪人と善人の見分けが何となく出来る。
気に入った人には優しいが嫌いな人にはとことん冷たい。今のところ家族はみんな好き。
以上7人が櫻井家の家族だ。
家族それぞれが何かしらの才能を持っている。
両親が子供たちに好きな事を好きなだけやらせた結果それぞれの才能が開花された。
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「はーい。みんなーご飯だよー。」お母さんの声がする。
「はーい」
「久しぶりにお母さんのご飯がたべられるぅー。」
「ヤッター!」
キッチンの隣にある食堂に集まった。
食堂には家族7人か余裕で座れるテーブルと椅子がありそれを置いてもまだ余裕があった。
唐揚げ、コロッケ、グラタン、豚汁、ポテトサラダとグリーンサラダなどなど。
「みんなたくさん食べるのよー。」
「いただきまーす!!」
一年ぶりのお母さんの料理はとてもおいしかった。
「今日は特別に食後のデザートよー。」
「お母さんのプリンだー!!」
「おいちーね。パパ。」
「そうだねー。」
この光景は一年前と同じだ。父は少し涙が滲んでいた。母も同じだった。
それを見てジンはお母さんたちも寂しかったんだろうなと思った。
「はーい。みんなちゅーもーく。これから大事なお話をしまーす。」
「この度お父さんとお母さんが勝手にみんなを召喚したことを心からおわびします。もう、元の世界にはもどれません。これからは、こちらの世界でやっていこうと思います。これからもよろしくお願いします。」と両親が頭を下げた。
そこへ
「質問しまーす。」
「はい。ジンくん。」
「僕たちの学校はどうするんですか?」
「それに関してですが、国王と相談してこちらの学校に行ってもらいます。」
「小学校もあるんですか?」
「はい。ユウくん良い質問ですね。こちらでは小学校から大学までの一貫校となってます。ですから、学校はみな一緒の所へ行ってもらいます。」
「学部とかあるんですか?」
「ありますよー。だから大丈夫です。魔法学科なんてのもありますよー。」
「魔法学科?ここは魔法が使えるところなんですか?」
「あっ言ってなかった。使えまーす。皆さんも使えまーす。」
「使えるのー?」
「そうですよー明日庭でやってみましょう」
「やったー!」
「マジで?」
「はーいあと質問ありますかー?無ければ質問は終わりでーす。」
「はいっ。」
「はい。ミアさん。」
「あの、文字が読めないのに学校へ行って授業は大丈夫ですか?」
「その辺は大丈夫でーす。日本語と同じ発音で文字はローマ字です。ユウくんローマ字は大丈夫ですねー?」
「はい。僕はローマ字書けるし読めまーす。」
「ケイくんは大丈夫ですかー?」
「おそらく…。」
「頑張ってくださいねー。」
「他にはありますかー?無ければこれで終わりにしまーす。」
「…」
「それでは終わりにしまーす。」
この家族の話し合いは先生と生徒のような形で進められる。もちろん先生は父か母になる。
学校でいえばホームルームみたいな感じ。
「はーい。みんな疲れたでしょう。お風呂に入って寝ましょうね。お部屋にもお風呂はあるけど一階に大きなお風呂もあるわよー。」
「お父さん一緒に入ろうよー。」
「そうだね。久しぶりにみんなで入ろうか?」
「私は1人でいい。」
「じゃあミアはお母さんと入ろっか?」
「そうする。」
みんなお風呂に入りそれぞれの部屋で休んだ。
父と母は家族が揃ったことが嬉しかった。
ここでの生活は元の世界とは少し違うけれど
子供たちはきっと大丈夫だと思っている。
次の日の朝、食堂で。
家族全員が食堂で父の方を見て話を聞く。
「はーい。みなさん、おはようございます。」
「おはようございます。」
「おっはょぅ。」
みんなが一斉に挨拶をする。
「では、昨日話をした通り魔法の練習をしたいと思います。ただ、その前に皆さんそれぞれに魔法の属性を知ってもらおうと思います。そこで、昨日あの神殿?にいた神官?の方に来ていただいています。どうぞこちらへ。」
いつの間にかみんなの後ろにいたあの神官が前にやって来た。
「はーい。昨日はどうもー。私は一応、神官やってますセガールと申しまーす。ヨロシクー。」
みな、芸人が登場したのかと思った
「はぁ。」
「アイツじゃん。」
「うわぁ。」
あまりいい反応はなかった。
特に上の3人は。
それを無視してセガールは
「まず最初にひとりづつこの水晶に手をかざしてもらいます。個人の属性がわかります。最初はどなたから行いますか?」
「じゃあ、私が子供達のお手本として、やります。」と父が手を挙げた。
「はい。わかりました。」
神官はテーブルの上に水晶を置いた。
そこに、父は手をかざす。
すると、水晶から青い光が放たれた。
「おぉっ!」
「マジっ!すげぇ!」
「ひゃーっ!」
「はーい。いいですねー。青い光はー?
あれ?なんだっけ?」
みんながジト目で神官の方を見た。
「ゴホンッ。はい。青はですねー水の属性ですねー。次はどなたにしますか?」
ド忘れしたのに何でもなかったような態度。
この人本当に神官?なのだろうか?
「はいっ!僕がやります。」とジンが言った。
「それではどうぞー。」
すると、緑の光が放たれた。
「はい。緑ですねー。こちらは青色と黄色が混じっていますので、水の属性と雷の属性のふたつになりますねー。」
「次はオレがやってやる。」ケイが手をかざす。
すると今度は橙色の光が放たれる。
「はい。橙色は赤色と黄色だからー?火の属性と雷の属性になりますねー。」
ミアの光はピンクだった。
白色と赤色で白の属性と火の属性。
光の属性は珍しい物だと言う。
ユウの光は紫色だった。
今までのパターンだとおそらく青色と赤色かとみんながうんうんと思った。
「おっ!これは珍しいですね。黒と青と赤が混じっていますね。水の属性と火の属性あとは闇属性ですね。」
みんなが思っていたのと違ったので、ちょっとガクッとした。
そんな中で「マジっ?ユウ、かっこいいじゃん!」とケイが羨ましいそうに言った。
次はミミ。
ミミの光はミアと同じくピンクだった。
これも、光の属性と火の属性。
ついでに母もピンクの光。
光の属性と火の属性の持ち主だった。
これで家族の属性がわかった。
まず、水の属性は水や氷の力、
火の属性は火の力を、雷の属性は雷の力、光の属性は光の力、闇の属性は影の力で魔法を使う。魔力の源といえる。
「はーい皆さんの属性がわかりましたね。これから魔法の使い方の基本を庭でやってみましょう。」
みんながゾロゾロと庭に出る。
神官がみんなに聞く。
「まず、魔法と言えば皆さんはまず何をしますか?」
「ホウキに乗って飛びます。」
「瞬間移動をします。」
「空に大きな絵を描きます。」
「雷を落として敵をやっつけます。」
「お花をさかちぇます。」
「個性が出てますねー。よろしいですね。全部できますよ。ただし訓練は必要ですがね。」
神官はホウキを出した。
「まずは、浮くことから始めて下さい。人数分のホウキを用意してきました。どうぞー。」
みんなの前にホウキが置かれる。
長い柄のホウキが3本と短い柄のホウキが2本。
「体が小さい子は短い手ボウキで始めましょう。あとの方は長い柄のホウキでお願いします。」
それを聞いてユウが「僕、これヤダッ!もっとカッコいいのがいいよー!うわぁーん!」とゴネた。
「んー浮くだけの訓練なんですけどねー。あっ奥様、ご自宅に代わりになる物ありますぅ?」
「代わりですか?えっと…モップとかデッキブラシとかでいいですか?」
「大丈夫でーす。その内のどれか持ってきてもらえますかー?」
「お母さん、僕デッキブラシがいい。魔女の◎◎と同じヤツ。」ユウはアニメも好きだった。
「うーん。そうねぇーとりあえず持って来るわね。」
母は自宅からデッキブラシを持って来てユウに渡した。
「そうそう、これこれ。」ユウの機嫌がなおった。
「それではこれでやってみましょうねー。まずは見本を見せますねー。」
そう言って神官は自分の箒に跨りすうっーと地面から浮き上がった。
「おおっ!!」
「わぁ!」
「マジッ!すげぇ。」
みんなが歓声をあげた。
「はい。皆さんもホウキに跨って下さい。準備はいいですかー?」
「はーい。」
みんなが揃って返事をする。
「それではー「浮く」と念じて下さい。イメージが大切ですよー」
「浮く!浮く!」
「登る!登る!」
「上がる!上がる!」
「浮き上がる!浮き上がる!」
「うく。うく。うく?」
ケイだけ高く登って行く。
「あっあぁ〜っ」
他のみんなは浮き上がることに成功した。
「降りてきて下さーい。ゆっくりでいいですよー。」
「は、は〜い。」ケイはゆっくり降りようとしたが、上手く出来ずにドスンッ!!とお尻から落ちた。
「いってぇ〜。マジかよ〜。」
そこに末っ子のミミが
「けいにぃちゃ、お尻痛い痛いなの?だいじょーぶ?」と心配そうにやって来た。
そして、お尻の方に手を出して
「痛いの痛いのポイっ。」と言った。
すると、ミミの手から光が出てケイのお尻が光った。ピッカッ!!
すると、痛かったお尻が、お尻が痛くない!!
「あっれぇ?痛くない。」
それを見たセガールは
「あっ、それ。回復魔法ですねー光魔法のひとつですねー。お見事!」と手をたたいた。
みんながほぅ〜とした顔でミミを見た。
父は「ミミ、凄いじゃないかー。偉いぞ。」
と言い抱き上げた。
「さっき光の属性を持っている人いましたよねー。その方は漏れなくコレを使えまーす。」
「お母さん、私たちも使えるって!」
「あら、そうだったかしら?今度使ってみましょ。」
「それでは続けますよ。適度な高さに浮き上がることが出来れば、今度は動かしてみましょう。」
「右、左」
「上、下」
「ぐるっと、ぐるっと。」
「まっすぐ、まっすぐ」
「まっすぐ、まわる?」
それぞれホウキを動かす。
ケイが上下を繰り返しているうちにまた落ちた。今度は膝を打ちつけた。
「膝が、膝がぁ、いってぇ〜」
「今度はは私が。」
ミアが「痛いの痛いのポイっ。」と手を振った。
するとケイの膝が光り痛みがなくなった。
「えっ、痛くない?」
「私も出来たー!」ミアが両手を挙げて喜んだ。
「はーい。よく出来ましたねー」とセガールが手をたたいた。
「ミア、凄いなぁ。」とケイが言った。
「また、怪我したら言って。」
「それでは、今日はここまでにしましょう。
後は自主練でお願いしまーす。」とセガールが言った。
「えぇーもう終わりですか?」
「はい。何となーく魔法の使い方がわかったと思います。後は、この魔法の基本の教科書に書いてありますので、参考にして下さいねー。」と
本を人数分出した。
教科書なんぞあったんかい!と皆が思った。
そして、セガールはそそくさと帰って行った。
数時間後、子供たちはホウキを乗りこなしていた。父はそれを見守っていた。
「そろそろ、お昼にしましょう。」
母がみんなを呼ぶ。
みんなは、食堂に行きご飯を食べる。
お昼はオムライスだ。
「お母さんのオムライスだぁー!」
「やった!」
みんなお母さんのオムライスが大好きなのだ。
「ご飯を食べたら、国王に挨拶に行くからね。」
と父が言った。
「国王?」
「マジッ?」
「ここって、王様とかお姫様がいるの?」
「王族なんて、怖いよ。」
「おうさまかっこいい?おひめさまかわいい?」
「怖くはないわねぇ。かっこいいかどうかはちょっと私からは言えないわねぇ。」
「まぁ、行ってみればわかるよ。」
お昼ご飯を食べ、出かける準備をする。
王族に会うにはそれなりの格好をしなくてはいけない。
母は、子供たちに洋服を用意していた。
しかし、思った以上に子供たちが成長していたため用意していた服はサイズが合わない。
それはもうツンツルテンだ。
母は悩んだ。
「魔法でも使わない限り、これは無理だわ。」とミアが言った。
「あっ!それ!魔法!」
「お母さん、魔法で何とか出来ない?」
「そうねぇ。やれるかしら?」
そう言いながら母が手をかざしてみる。
洋服が光るーーーとサイズが丁度になった!!
「魔法って万能だねー。」
家族は母の魔法のおかげで、それなりの格好で出かけることができた。
馬車2台に揺られ家族は王宮に向かった。
1台目の馬車では
「揺れすぎでしょこれ?」
「お母さん、お尻が痛いよー。」
「きゃっ、きゃっ」
「もう少ししたら着くからね。着いたら「痛いのポイッ」しようね。」
2台目の馬車では
「揺れすぎだねー?馬車のせいだけじゃなくて道路もガタガタなんでしょ?」
「お尻、痛てーし。これじゃ座ってらんないわー。」とケイは立ち上がった。
「そうだな、ここは舗装の技術はないんだよなー。ふーむ。」と考える父。
そうこうしているうちに馬車は王宮の入り口にやって来た。
ここからさらに先に進むようだ。
そしてだんだんと見えてきたのはは絵本にあるようなお城だった。
馬車が止まりドアが開く。
みんなのお尻に「痛いの痛いのポイッ!」と母がやった。痛かったお尻は痛くなくなった。
お城の入り口で大きな扉の両脇には剣を持った騎士が立っていた。
「おぉ。」
「かっけぇー!」
「わぁ。」
「なんか怖い。」
「きゃは。」
兄弟は見慣れない騎士に対して思うことはそれぞれだった。
でも、みんなが緊張していた。
建物に入ると長い廊下を歩き大きな扉の前までやっていた。
「ここは王様のいるところだからね。お行儀良くしてね。」と母が言った。
扉の両側にいた騎士が扉を開けてれた。
そこはなんてことでしょうー
大理石の床、金色銀色の壁、大きなシャンデリア、眩しいー
奥の方の壇の上に金の大きな椅子に王冠を頭に乗せた国王?と王妃?が座っていた。
国王たちは、家族の乗った馬車が王宮の入り口に来た時から椅子に座ってスタンバイをしていた。
とても見た目は立派ではあるけれど硬い椅子は座り心地はとても悪い。
国王は最近調子が良かったため、油断をして朝食に辛いソーセージを3本と辛味のあるスープを飲んじゃった。
おかげで、国王のお尻は再発していた。
クッション置いて欲しかった。
国王は金髪で碧眼、髭をたくわえた……おじいちゃん?ちょっと顰めっ面をしている。
王妃はシルバーブロンドを結いあげパープルの瞳少しふっくらした感じの…優しそうなおばあちゃん?だった。
国王は「よくきて来れた。もっと近くへ。」と手招きをした。(痛い、痛い、少しでも動くと痛い。)
王妃は「まあ、お父様とお母様に似てるわ。美男美女揃いねぇ。」とにこやかだった。
「ありがとうございます。おかげで家族が揃いました。」と父は礼をした。
「ありがとうございます。」と母が言う。
兄弟たちはそれぞれに思うことはあったが父と母が喜んでいるので特に発言はしなかった。
ただ、王妃は優しそうだけど国王は顰めっ面でなんだか怖そうだなと思った。
国王は
「親子を離れ離れにして可哀想だと息子や娘に怒られちゃってね。反省はしてるんだよ。」と困った顔をした。(いやぁ、今日は痛いんだわ)
王妃は
「こちらに全員呼んでしまって不自由はない?」と聞いた。
父は
「今のところは。大丈夫です。」と答えた。
上の3人は
おい!不自由だわ!大丈夫じゃないし!と思ったが諦めて黙っていた。
突然、ミミが「おじいちゃん痛いの?」と国王に聞いた。
少しびっくりした国王は「んん…まあ…」とつい言ってしまった。
「あなた、何処か悪いんですか?」と王妃は国王に心配そうに聞いた。
「大したことはない。大丈夫だ。」と言いながら目を逸らした。
みんなは国王が「ぢ」だとは知らない。
だがミミは何かを感じたようだ。
ミミは国王のところまでトコトコと歩いて行き
「おじいちゃん、立っちして。」と言って国王を立たせた。小さい子供が相手なので嫌だとは言えず国王はゆっくりと立ち上がった。
(ここは、我慢だ。イタタッ。)
「ミミ、だめだよ。」父は慌てて追いかけた。
ミミはそんな事お構いなしに国王のお尻に触り「痛いの痛いのーポイッ。」と言った。すると国王のお尻がピカッと光った。
そして、「おじいちゃん痛いのなくなった?」とニコニコして聞いた。
国王は「おぉ、これは…すごい。痛くなくなった。」と椅子に座ったり立ったりしゃがんだりをして確かめた。(うわーい!痛くなーい!)
「ありがとう。ありがとう。」とミミの手を取って涙を流した。
それほどー?そんなにー?泣くほどー?
痛かったの?
誰も言葉にはできなかったが
国王って…だったんだ…ね。と思った。
国王はそれから非常に機嫌が良くなった。
顔もにこやかになった。
兄弟たちはアレが痛くて怖い顔してただけだったんだと思った。