**無職37日目(10月7日)**

無職無職と言っていたが、実は10月6日までは有休消化だった。それはまるで楽園だったが、いよいよ正式に無職という現実に直面することとなった。仕事を辞めたら自由になるかと思いきや、待っていたのは「手続き」という終わりなき迷路。特に憂鬱なのは、健康保険の切り替えだ。勝手に誰かがやってくれたらどれほど楽か…。

「無職になったら、自動的に国民健康保険に切り替わるんだろ?」と漠然とした期待を抱いていた彼だったが、甘かった。何事も自分でやらなければ進まない。それどころか、選択肢まであるという。国民健康保険か、任意継続か…。保険に悩む人生、予想外だ。

まずは国民健康保険を検討する。

・対象は、自営業者やフリーランス、退職者など。心太朗もこれからフリーランスを目指すかもしれないから、この選択肢は無視できない。
・保険料は収入によって変動し、扶養家族がいれば、その分保険料も増える。「扶養増えたら安くなるとか…ないよな」と皮肉が浮かぶ。
・良い点は、収入が少なければ保険料が安くなることだ。
・しかし、デメリットは顕著だ。収入が増えれば保険料もドーンと上がるし、市区町村ごとに保険料も違う。「引っ越しするだけで、こんなスリルがあるとはな…」と頭を抱える。

「国保はギャンブルだな…俺の収入、安定してなさそうだしな…」と心太朗は苦笑する。

次に、任意継続。

・退職前に会社の健康保険に2ヶ月以上加入していれば、退職後20日以内に申請できる。「20日って、なぜそんな絶妙な期限なんだ?」
・ただし、保険料は会社負担分も含めて全額自己負担。「全額!?」と心太朗は驚愕するが、これが現実だ。
・それでも、良い点は、退職前と同じ保険をそのまま使えること。澄麗が妊娠中で通院が必要だから、この安心感は大きい。しかも扶養家族が増えても保険料は変わらない。「つまり、双子でも問題ないってことか?」と一瞬前向きになる。
・しかし、2年間しか継続できないという制限がある。「2年…その間にフリーランスでちゃんと稼げるのか?」心太朗の表情は曇る。

彼はさらに調べを進めた。どうやら、年収が300万円未満の場合は国保の方が安くなるが、300万円を超えると任意継続の方が得だということがわかった。しかも、扶養家族がいるなら、収入が低いと国保が有利だが、収入が増えれば任意継続が安定してお得になるという。

来年の保険料は今年の収入から計算される。まずは冷静に計算しよう。

心太朗はインターネットで見つけたシミュレーターを試してみることにした。結果は驚きの任意継続優勢。保険料が倍以上違う。「これ知らなかったら、今頃絶望してたかもな…」彼は胸を撫で下ろす。

フォロワーにも意見を聞いてみると、やはり同じ境遇の人たちはほとんどが任意継続を選んでいるようだ。「おお、俺だけじゃないんだな…」と心太朗は妙に安心した。

「任意継続にするしかないな」

退職後20日以内に申請しなければならないため、のんびりしている暇はない。特に澄麗が妊娠中だということもあり、彼は焦りを感じていた。手続きに必要なものは以下だ。



1. 国民健康保険
退職証明書または離職票:退職を証明する書類。

健康保険証:退職前の健康保険証(任意継続をしない場合)。

本人確認書類:運転免許証、パスポートなど。

マイナンバーカード(あれば)

収入を証明する書類(前年の確定申告書や給与明細など)

国民健康保険の加入手続きは、住民票のある市区町村の役所で行う。

2. 任意継続(健康保険)
退職証明書または離職票:退職したことを証明する書類。

健康保険証:退職前に所属していた会社の健康保険証。

本人確認書類:運転免許証、パスポートなど。

口座番号:健康保険料の引き落とし口座情報。

申請書類:任意継続の手続き書類(会社からもらえることが多い)。




心太朗は、ホームページから「任意継続被保険者資格取得申出書」をダウンロードし、書類を持って役所へ向かった。郵送も可能だが、ミスが怖い。慎重派の心太朗は、直接出向くことにした。「ミスしたら面倒だし、妊娠中の澄麗を待たせるわけにはいかない」などと考えていた。

役所での手続きは、マイナンバーカードのおかげで意外とスムーズに進んだ。「えっ、こんなに簡単でいいの?」と疑いながらも順調に進行。だが、澄麗の離職票が必要だと言われた。「あぁ、やっぱり出たか…」心太朗はややがっかりする。さらに、銀行での手続きも必要ということで、その日のうちに全てを終えることはできず、翌日へ持ち越すことに。

その夜。

家に帰り、心太朗は疲れた声で「手続きって本当面倒くさいな…」とこぼした。すると澄麗は笑いながら、「でもこういうことがないと、世の中のこと1センチも知らないままだったんじゃない?」と前向きな返事をした。

「1センチって…少なすぎない?」心太朗は内心でツッコミを入れながらも、澄麗の前向きさにほっとした。

「やっぱり澄麗のこういうとこ、好きなんだよな…」と心の中で密かに思いながら、心太朗は明日の手続きに向けて早めに眠りについた。