湊はスマホで電話をかけた。

『君が俺に連絡してくるなんて珍しいね』

電話の相手は、琉晴だった。

「あなたに聞きたいことがあります。巫女の道具についてです」

『巫女の道具?あぁ術具のことね。あれは正しくは道具ではなく、術具と言うんだよ』

「え?そうだったんですか?」

湊が今まで見てきた記録には『道具』と書かれていた。

『もしかして、伝わってることが違うのかな?俺の家にある本もところどころおかしいところがあるんだよ。他の家にも聞いているけど、帝に仕えていた家系が関係しているようだ。今度きた時に詳しく話すよ』

湊はまだ聞きたいことがあった。

「もう一つ聞きたいことがあります。術者や退魔師の中で真白ちゃんたちに危害を加えるような人はいませんよね?」

『さぁどうだろうね。でもあまり屋敷を一人だけで歩くのはおすすめしない。それにさえ気をつけていれば心配はないよ』

「わかりました、連れて行く時によく言っておきます」

『今度来た時に、あの子たちから話が聞けることを楽しみにしているよ』

そして電話が切られた。


真白は、屋敷の外に出て瑞樹がいた祠を見ていた。

(ここに瑞樹が封印されてたんだよね)

以前、真白がこの祠の封印を解いた。

「何をしているんだい?」

蘇芳が縁側に座っていた。

「蘇芳。ねぇ蘇芳は彩葉と会う前は何をしてたの?」

「そうだなぁ。いろんなところを旅していたよ」

日本だけではなく外国にもいたことがあるらしい。

「たまに神たちの住んでいるところにも行ったよ」

「それって、天国ってこと?」

「そうだね。人間はそう言っているよね。七福神とかそういうのは知ってる?」

「うん。お正月に船に乗ってる絵とかをみたことがある」

「そういう幸せをもたらす神が住んでいるのが真白の言う天国だ。反対に悪さをする神もいてね、そういう神たちは地獄にいるんだ。黄泉の国とも言う」

真白はてっきり地獄には鬼しかいないのかと思っていた。

「それは人間と同じところに行くってこと?神や妖って死ぬことはあるの?」

「死ぬと言うより消滅する。邪気に蝕まれたら人に害を与えて、最悪の場合、跡形も消えてなくなる。神堕ちしたら同じく人に害を与える。朱里がそうだったでしょ?」

真白は朱里と会った時のことを思い出した。

邪気が霧のようになり、今とは違う姿をしていた。

「邪気ってあやかしや人間が取り憑かれると性格や姿を変えてしまうの?」

「そういうこともある。でもちゃんと邪気を祓うことができれば元に戻ったでしょ?それができるのが術師や退魔師、巫女なんだよ」

「彩葉の記憶を見た時、瑞樹以外はみんな怪我をしてた。それってもしかして、邪気が取り憑いて、人間に祓われたから?」

「他はわからないけど、私はそうだったな。帝の側近と戦いの途中で逃げてきたからね。そこで彩葉に出会った」