「下原さん、もう八時だよ。」
何分問題を解いていたのか、すっかり時間の流れを忘れていた私に
星宮君が声をかける。
「あぁ、ありがとう。」
そう返事をし、今日も延長申請とか出してくるのかな、
と次の言葉を待つ。
何かを言い出そうとする星宮君もいなく、
ただ私に注がれ続ける視線を感じて顔を上げる。
「下原さん、もう八時だよ。」
「うん、わかった。」
「今日、月曜日だよ。」
「うん、そうだね。」
「今日、なんの日か…」
朝のテレビアナウンサーにでもなったかのように、
現在の情報を伝え続ける星宮君。
その星宮君に曖昧な返事ばかりをしていた自分を、
数秒先の未来の私が後悔する。
「…っ!なつ、課外の日っ!」
今日、なんの日、という質問を頭に繰り返し、
やっとのことで自分が「遅刻組」の一員になりかけていることに気づいた。
朝からバタバタと机の上に広がっている
筆記用具とノート、そして赤本を鞄に詰める。
そんな私を星宮君が、
「珍しいね、下原さんが忘れてるなんて…」
「忘れてないよ!」
「いや、でもさっきまで覚えてなかったでしょ。」
「…っ、それは、他のことを考えてたから。」
言い訳にもならない言い訳を言って後悔する。
「『他のこと』?」
きょとんとした目に見つめられ、
自分が何考えていたか忘れてしまう。
「…っ、とにかく、思い出したから!」
「うん、どういたしまして。」
(普通、ありがとうを言われる前に先に返事する?)
ちょっと皮肉ってみたけど、星宮君のおかげだなと思い返し、
ありがとう、と鞄を肩にかけながらお礼を言う。
「うん。いいよ。課外、いってらっしゃい。」
バタバタと人生でほぼ初めて、
教室の中をかけていく私に星宮君が声をかける。
「いってきます!」
走っているせいか、
どこか高くなった声を出して返事をした。
(いってらっしゃい、といってきますって…)
自分の口から出てきた言葉に、
そして私を見送り、手をヒラヒラ振る星宮君に、
突然照れくささを感じる。
(いや、そんなことない。
普通の私だよ、真面目、勉強…)
自分の中に湧き上がる感情を掻き消すように、
階段を急いで駆け上がった。
何分問題を解いていたのか、すっかり時間の流れを忘れていた私に
星宮君が声をかける。
「あぁ、ありがとう。」
そう返事をし、今日も延長申請とか出してくるのかな、
と次の言葉を待つ。
何かを言い出そうとする星宮君もいなく、
ただ私に注がれ続ける視線を感じて顔を上げる。
「下原さん、もう八時だよ。」
「うん、わかった。」
「今日、月曜日だよ。」
「うん、そうだね。」
「今日、なんの日か…」
朝のテレビアナウンサーにでもなったかのように、
現在の情報を伝え続ける星宮君。
その星宮君に曖昧な返事ばかりをしていた自分を、
数秒先の未来の私が後悔する。
「…っ!なつ、課外の日っ!」
今日、なんの日、という質問を頭に繰り返し、
やっとのことで自分が「遅刻組」の一員になりかけていることに気づいた。
朝からバタバタと机の上に広がっている
筆記用具とノート、そして赤本を鞄に詰める。
そんな私を星宮君が、
「珍しいね、下原さんが忘れてるなんて…」
「忘れてないよ!」
「いや、でもさっきまで覚えてなかったでしょ。」
「…っ、それは、他のことを考えてたから。」
言い訳にもならない言い訳を言って後悔する。
「『他のこと』?」
きょとんとした目に見つめられ、
自分が何考えていたか忘れてしまう。
「…っ、とにかく、思い出したから!」
「うん、どういたしまして。」
(普通、ありがとうを言われる前に先に返事する?)
ちょっと皮肉ってみたけど、星宮君のおかげだなと思い返し、
ありがとう、と鞄を肩にかけながらお礼を言う。
「うん。いいよ。課外、いってらっしゃい。」
バタバタと人生でほぼ初めて、
教室の中をかけていく私に星宮君が声をかける。
「いってきます!」
走っているせいか、
どこか高くなった声を出して返事をした。
(いってらっしゃい、といってきますって…)
自分の口から出てきた言葉に、
そして私を見送り、手をヒラヒラ振る星宮君に、
突然照れくささを感じる。
(いや、そんなことない。
普通の私だよ、真面目、勉強…)
自分の中に湧き上がる感情を掻き消すように、
階段を急いで駆け上がった。