それから復興作業が始まった。

 リスタが指揮を執り、兵士や冒険者と協力して作業が進められていく。
 
 魔物達の侵攻によって建物はやられており、その再建は容易ではない。

 私も体力が回復次第手伝いをしたいと思っている。

 そして一ヵ月の期間を要して魔法などを使いながら作業は進んでいき破壊された街は元の状態に戻ろうとするのだった。

 私たちも復興作業に協力していると街の人々が次々と集まり感謝の言葉を私たちに送ってくる。
 
 この一ヶ月間協力して頑張っていたことが民達の信頼を得ることに繋がったみたいだ……。

 街は綺麗になったと言っても修復作業はまだ終わってはいないが民の顔に希望が生まれたように感じる。
 

■■■
 

 それから数日が経過した頃、私たちの元に陛下から使いが来るのだった。

 おそらく功績を称える為に使いをよこしたんだろう。
 
 「陛下からの使いが来たよ!」
 
 リズは嬉しそうにそう報告してくる。
 
 そして私たちは馬車に乗り、王城へ向かう。

 普通の馬車とは違いとても豪華な馬車だ。
 
 そしてしばらく馬車で移動すると王城に到着する。

 私たちは馬車を降り案内されるまま王城に入る。
 
 「やっぱここは王城は綺麗だな!」
 
 「そうだねエリック~、あの時以来だね~」
 
 エリックとレズリタは周りをキョロキョロしながら歩いている。
 
 私たちの前にいるリズはパーティーのリーダーなので堂々と歩いているが私は少し緊張してしまう。

 するとリスタが私の肩を軽く叩く。
 
 「ラゼル、そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
 
 「う、うん……でもやっぱり慣れないなぁ……」
 
 そんなやり取りをしていると私たちはある場所に到着する。

 目の前には扉がある。ここから先は王の間だ。
 
 緊張しながらも扉をあけ中に入ると、中は広く沢山の人がおり私達のことを待っていたみたいだ。
 
 貴族だけじゃなく王妃様や近衛騎士団の隊長もいる。
 
 そして私たちは陛下が座られている玉座に向かって進んでいく。
 
 周りには大臣や貴族、さらには王妃の姿もあった。

 前回と違いこのような光景は初めてだ、リスタ達は何も恐れることなく平常心で跪いているようだったので私は心を落ち着かせ跪き頭を垂れる。
 
 「陛下、ラゼル達をお連れしました」
 
 そう陛下に報告するとリスタは近衛騎士団のいる場所に戻る。

 リスタが場所につくと同時に陛下が話し始める。
 
 「お主たち4人は王国南部の都・リザースを魔物から救ってくれた。そして今回の襲撃を企てた首謀者であるローズを討伐。此度の件はお主たちのおかげで多大な被害を最小限に抑えることが出来た。誠に感謝する」
 
 陛下は私たちに向かって感謝の言葉を述べると、周りの貴族や大臣も私たちに賞賛の言葉を送る。
 
 私は少し照れくさい気持ちになりながらも感謝の言葉を受け止める。

 そして陛下は続けて口を再び開く。
 
 「今回の祭りは魔物の大群発生により途中で中止となったが、お主たちの功績は計り知れない。故に我が国はお前たち4人に国家直属の冒険者としての地位を与え、土地と資金を提供しよう」
 
 私たちはその言葉を聞くと再び跪き頭を下げる。
 
 私は興奮と驚きで頭がいっぱいになる。
 
 まさかこのような形で国家直属の冒険者になれるなんて……これは異例の出来事なんだとか。

 貴族や各大臣は冒険者と縁がない者が殆どらしく、今回の話も喜んでいるようだ。

 リズ達も喜びを隠せないのか顔から笑みが溢れていた。
 
 「陛下、必ずや国の為に尽力いたします!」
 
 リズがそう答えると陛下は頷き口を開く。
 
 「うむ、それとラゼルに聞きたい事がある。お主はレスト家の伯爵令嬢と聞いているがそれは本当なのか?」
 
 「それは......本当です」
 
 「やはりな、全くレスト伯爵は何をしているのか......後で叱っておかねばな」
 
 父上ざまぁみろ……と心の中で私は思っていると辺りはざわざわとする。
 
 そりゃあレスト家の伯爵令嬢が冒険者になったって聞いただけでも信じられないのにさらに国家直属の冒険者になったんだから驚かない方が無理って話なんだよなぁ。

 でもリズ達は一切気にしている様子はない、みんな堂々として誇らしげだ。

 そして私たちの任命式は終わりを迎え、私たちは王城を後にする。
 
 「き、緊張した――――!」
 
 「ラゼルめっちゃ固まってたもんな」
 
 私は未だに心臓がバクバクしており、エリックに心配されてしまうほどだった。
 
「確かに! でもやっと国家直属の冒険者になれたね!」
 
「本当に今までの冒険は命がいくつあっても足りないよ~」
 
 私が冒険者になった理由……それは最初はお金を稼ぐ為だった。

 でも今はそれだけじゃない、この冒険が楽しいと感じている。
 
 私は今までにない高揚感に胸を躍らせるのだった。
 
 「ねえ皆、少し寄り道しない?」
 
 私が提案するとみんな笑顔で了承してくれた。

 なので街の外れにある『花畑』まで足を運ぶことにした。

 あそこはリスタとのデートの時に教えてもらった場所で、たくさんの色鮮やかな花で埋め尽くされた綺麗な場所だ。

 そしてしばらく歩き、私たちは花畑に到着するのだった。

 一面に広がる色とりどりの花々にレズリタやリズは喜んでいる様子だ。

 エリックもこの花畑に感動しているようだった。
 
 「き、綺麗すぎる……こんな場所があったんだな!」
 
 「ラゼル良い場所知ってるんだね~」
 
 「最高!」
 
 リズ達は花畑に見惚れている。

 私は花畑に横たわり、花の香りに包まれながら空を見上げる。
 
 そして私はリスタと初めて出会った時のことを思い出す。

 あの時もこんな綺麗な青空だったなぁ……。

 そんなことを考えていると誰かから声をかけられる。

 私は驚き、横になった体を起こすと、そこにはリスタがいた。
 
 「ラゼル達も来ていたようだね」
 
 少し顔を赤く染めながらこちらに歩んでくる。照れているのか?
 
 その光景を見て私は思わず笑みが溢れてしまった。

 するとリスタも私と同じように微笑むのだった。
 
 「ラゼル、君は冒険者になってからとても良い顔をしているよ」
 
 リスタにそう言われ、私は笑顔になる。
 
 すると花畑の中で座っているレズリタとリズが私たちを見てニヤニヤしている。
 
 「私は冒険者になってから、毎日が楽しいんだ。エリック、レズリタ、リズ……皆と冒険する日々が」
 
 私は4人に向けて自分の思いを告げると、4人は笑顔で頷いてくれるのだった。
 
 「私は皆と会えて本当に良かった」
 
 そう言うとリズ達は涙目になりながら私の所まで駆け寄り、抱き着いてくる。

 横でリスタも微笑みを浮かべ私たちの姿を眺めている。

 これから様々な冒険が私たちを待ち構えているだろう。

 まだまだこの世界は謎に包まれている。
 
 龍神教や五龍神、そして龍神王の存在。

 そんな存在と戦う日がくるかも知れない。

 でも大丈夫だ。私は一人じゃない。
 
 私はたくさんのものを手に入れた。

 それはお金や地位ではなく仲間という存在だ。
 
 「私たちの冒険はまだまだ続くよ!」
 
 そして私たちは笑いながら見つめ合い、共に再び立ち上がるのだった。