「す、すごいよラゼル! 魔物が次々と溶けていってる!」
リズが驚きながらそう話しているとうちに魔物達はどんどん消滅していく。
それを見たローゼは少し焦り始める。
「ちょ、なにそれ! そんなのありなの!?」
「焦るなローゼ! 僕が姉さんを切る!」
するとクルスが大声で叫ぶ。
《影龍剣ッッ!!》
クルスは影で作り上げた剣に龍力を流し込み、その剣を私に向けてくる。
リズ達はローゼとの対処で手いっぱいだ……。
これはまずいと思い私はすぐに防御の体制に入ろうとするが間に合いそうになかった。
「あ......」
終わったと思い私は目を瞑る。
だが、いつまで待っても攻撃はやってこない。
恐る恐る目を開けるとそこには騎士の姿があった。
攻撃が私に当たる前に防がれている。その者はクルスの剣を止めていた。
「遅れてすまない、ラゼル」
「リ、リスタ!」
私を助けてくれたのはリスタだった。
おそらく大群の魔物を討伐してここリザースまで来たのだろう。
「だ、誰だよお前! 僕は姉さんを切り刻むんだよ!」
「僕は近衛騎士団団長リスタ・ローズベルトだ。クルス、君の悪行は目に余るものがある。それに自分の姉を切ろうとするなど愚者の所業だ」
そうクルスに言う。
するとクルスは顔を真っ赤させリスタを睨んでいた。
そしてクルスは剣に龍力を込める。
《影龍剣ッッ!!》
クルスの放った一撃はリスタの剣とぶつかり合い激しい衝撃波が辺りに広がる。
激しい戦闘に私はつい見とれてしまう。
リスタの剣とクルスの一撃がぶつかった瞬間、衝撃波が広がり建物を崩壊させていく。
するとクルスは怒り狂ったように叫ぶ。
「なんで僕の邪魔をするんだ! お前なんかに僕の何が分かるんだよ!」
「私は君の事を何も知らない、だが一つ分かることは君はローゼの龍力によって洗脳されているということだ」
クルスは怒りを爆発させ、リスタに剣を振る。
だがその攻撃はいとも簡単に防がれ、リスタの反撃がクルスを襲う。
リスタの剣から放たれた一撃はクルスの剣を砕きそのままクルスを吹き飛ばした。
そしてクルスは気を失いその場に倒れる。
「どういうことリスタ? 洗脳されてるって」
「剣を交えて分かったことなんだが、クルスの剣には龍力と闇が混じっていた。恐らくローズに洗脳されたのだろう」
クルスはローゼの龍力で思考能力も操られているのか。
確かにクルスの行動には無駄な部分が多々あった。
するとローゼが拍手をして私たちにの所に来る。
「あははは! クルスやられちゃったかー! でもあんま強くなかったし当然か!」
それを聞いたリスタは剣をローゼに向ける。
リスタの目からは殺意が溢れている……その目には迷いはないといった意志が感じられた。
リズ達もボロボロになりながらも武器をローゼに向ける。
流石に戦闘が続いたせいかリズ達の体は限界を迎えている。
これ以上は戦わせられない......。今この場で戦えるのはリスタと私だけだ。
私はクルスを安全な場所に移動させたあと、立ち上がり戦う準備をする。
リスタ達も戦闘態勢を維持したまま待機している。するとローゼが口を開く。
「王国最強の2人を相手するなんてきついなあああ!」
するとローゼは影を操り、四方八方に散らせる。影は私たちに襲いかかってくる。
「一閃」
リスタの一撃が影を切り裂いていく。
凄まじいほどの魔力を剣に流し込み、影が切り裂かれる。
だが、影の数が多すぎて全てを防ぎきることが出来ない。
するとローゼが笑いながらスキルを発動する。
《暗魔龍爪!》
すると影が龍のような形状になり私たちに襲いかかる。
するとリスタが私に向けて叫ぶ。
「ラゼル! 私がこの影を防ぐから攻撃に回ってくれ!」
私はリスタの指示に従い、攻撃に回ることにする。
《毒糸ッッ!》
私はローゼに向けてスキルを発動する。
先ほど魔物を倒すために使った技だ。
糸と毒を組み合わせて強化し、放つというもの。
毒を付着させているので食らった相手を溶かすことも出来る。
そして私は魔物に使用した技と同じように数発の毒糸を発射する。
その毒糸を見たローゼは焦った顔になる。
ローゼは手から影の龍力を放出し、糸を消滅させようとするが、糸に触れた途端影は溶けてしまう。
この糸なら影だろうと切り裂くことが出来るみたいだ。
私は毒糸の量を増やし、広範囲に展開していく。
そして動けないローゼに向かって発射していく……。
ローゼは何かをしているように見えるが防ぐことが出来ないようだ。
そのまま私の毒糸はローゼの体を捉える。
そして毒糸はローゼの体を拘束する。
ローゼの体に防御魔法が掛かっているが溶けはしない。
だが体が麻痺しているのかローゼは身動きが取れなくなる。
「今よリスタ!」
「ラゼル、よくやった」
その瞬間リスタは剣を空天に向けて掲げ、スキルを発動する。
《剣聖》のスキルによってさらに剣は赤く光り輝き、周りが明るくなるほどになっていた。
リスタの剣には凄まじいほどの風が集まり始める。
おそらくスキルによる一撃なのだろう。
空間に歪を作りながら一気に魔力が広がっていく。
「ま、待ってえええ! 私はヨルフに龍力を貰っただけなんだよ! だから許してよおおお!」
ローゼは命乞いをしてくるがリスタは剣を構え、ローゼにこう叫ぶ。
「悪行をした者にはそれ相応の裁きがある。そしてそれは死だ」
「まっ......」
《紅炎の剣》
剣を振り下ろすと同時に凄まじいほどの風の斬撃が放たれる。
赤く輝き始めた紅炎が空高く昇ると一瞬でローゼに襲い掛かり、凄まじい爆風を生み出しながらローゼの体を呑み込んでいくのだった。
ローゼを包み込んだ紅炎は容赦なく燃え続け、ローゼの体を灰に変えていく。
そして跡形もなく消え去った。
「終わったな......」
リスタは剣をしまい、私の元に歩いてくる。
「大丈夫かいラゼル?」
「うん、リスタこそ大丈夫? その……左肩怪我してたけど」
するとリズ達も私の元に駆け寄ってきた。
私はリスタの左肩を見ると服が血で染まっていた。
恐らくローゼの影をずっと相手してくれていのだろう。
リスタは私の左肩を見て納得する。
「これかい? これぐらい大したことはない。そんなことよりもラゼルの方が酷い怪我だよ」
するとリズ達は私の体を見て『すごい傷……』と言葉を漏らしている。
確かにこの怪我はひどい。
「ラ、ラゼル! 大丈夫なの?」
「あはは……ちょっと無理しちゃったみたい」
するとレズリタが私の前に来て魔法を発動してくれる。
そのおかげで徐々に傷などが消えていき私の体は回復する。
「ふう......まだ無理しちゃ駄目だよラゼル」
レズリタがそう言うとリズが涙目になりながら抱きついてきた。
そして小声でこう言うのだった。
「良かった……死んじゃうのかと思った……」
その目は少し赤く腫れているように見える。
どうやらすごく心配させてしまったらしいな。
確かに戦いの途中から感覚が無くなっていた。
恐らくアドレナリンによって和らげられていたのだろう。
そしてリズの温もりを感じていると横からエリックが話しかけてくる。
「ラゼル……もう無理はやめろよ。一人で抱え込むのは無しだ」
「エリック……うん、分かったよ。これからはちゃんと相談する」
「おう! 俺らはパーティーだ! 仲間を頼れよ!」
エリックはそう言うと、私の肩を軽く叩く。
そしてリズも私から離れて涙を拭う。
するとリスタが私に話しかけてくる。
「ラゼル、先ほど気絶したクルスは一体どこに?」
「クルスならあそこで寝てるよ」
私がクルスの倒れている場所を指さす。
まだ寝ているようで起きる様子はない。
「とりあえずクルスは正気に戻っているか分からない以上、拘束させてもらう」
「そうだね、じゃあ私が糸を出すよ」
私はスキルを発動しようとするとリスタとリズ達が止める。
流石にもうボロボロの状態だから動いちゃ駄目だそうだ。
そしてクルスの拘束をリスタが行い、私たちは陛下達がいる避難場所に向かうのだった。
目的の場所に到着するとそこには多くの人々が待機していた。
どうやら皆避難出来ていたようだ。
すると近衛騎士団の兵士が私たちの方へ近づいてくる。
「団長! ご無事でしたか!」
「ああ、ラゼルのおかげでね」
リスタと兵士が話していると多くの冒険者が私たちの元にやってくる。
「ラゼルさん! この度はありがとうございます!」
「ラゼル様! お怪我はありませんか!?」
冒険者達が私の元に集まり感謝の言葉を言ってくる。
だが私は少し気まずくて下を向いてしまう……。
リズ達も少し緊張しているようだった。
そうして注目を浴びていると近衛騎士団や市民も私たちの元にやってくる。
「ラ、ラゼルさん! 街を救ってくださりありがとうございます!」
「リズさん達もありがとうございます!」
すると今度は市民から『ありがとうございます!』という声が多く聞こえるようになる。
やっぱり恥ずかしい……こんなに注目されるのには慣れないなぁ。
そんなやり取りをしていると陛下が私たちに近づいてくる。
「よくやったぞラゼルよ」
「ありがとうございます陛下……ご無事なようで安心しました」
「うむ、そなたも無事でよかった」
私にそう言うと次は冒険者や近衛騎士団に視線を送る。
「そなたらもよくやってくれた。 報酬は後ほどギルドに手配しておく」
すると兵士や冒険者は頭を下げ『ありがとうございます!』と再び感謝の言葉を発する。
「リスタもご苦労であった」
「ありがとうございます陛下。冒険者や近衛騎士団の者、ここにいる者は皆リザースを守る為に力を尽くしてくれました。ここにいる彼等には顔が上がりません」
「ふふ……そうだな」
そう返事を返したあとすぐにリスタは部下達に指示を出し始める。
恐らく負傷者の手当をさせて欲しいのだろう。
陛下はこの場を立ち去る準備を始める……すると私に声をかけてくる。
「ラゼルよ、今から我らは王城に戻る。そしてしばらく事が落ち着いたらお前たちの功績を称えたい、事が落ち着き次第、使いを送る故楽しみにしていなさい」
「ありがとうございます陛下!」
私は陛下にそう返事をすると、陛下達は王城に向かって戻るのだった。
それから復興作業が始まった。
リスタが指揮を執り、兵士や冒険者と協力して作業が進められていく。
魔物達の侵攻によって建物はやられており、その再建は容易ではない。
私も体力が回復次第手伝いをしたいと思っている。
そして一ヵ月の期間を要して魔法などを使いながら作業は進んでいき破壊された街は元の状態に戻ろうとするのだった。
私たちも復興作業に協力していると街の人々が次々と集まり感謝の言葉を私たちに送ってくる。
この一ヶ月間協力して頑張っていたことが民達の信頼を得ることに繋がったみたいだ……。
街は綺麗になったと言っても修復作業はまだ終わってはいないが民の顔に希望が生まれたように感じる。
■■■
それから数日が経過した頃、私たちの元に陛下から使いが来るのだった。
おそらく功績を称える為に使いをよこしたんだろう。
「陛下からの使いが来たよ!」
リズは嬉しそうにそう報告してくる。
そして私たちは馬車に乗り、王城へ向かう。
普通の馬車とは違いとても豪華な馬車だ。
そしてしばらく馬車で移動すると王城に到着する。
私たちは馬車を降り案内されるまま王城に入る。
「やっぱここは王城は綺麗だな!」
「そうだねエリック~、あの時以来だね~」
エリックとレズリタは周りをキョロキョロしながら歩いている。
私たちの前にいるリズはパーティーのリーダーなので堂々と歩いているが私は少し緊張してしまう。
するとリスタが私の肩を軽く叩く。
「ラゼル、そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
「う、うん……でもやっぱり慣れないなぁ……」
そんなやり取りをしていると私たちはある場所に到着する。
目の前には扉がある。ここから先は王の間だ。
緊張しながらも扉をあけ中に入ると、中は広く沢山の人がおり私達のことを待っていたみたいだ。
貴族だけじゃなく王妃様や近衛騎士団の隊長もいる。
そして私たちは陛下が座られている玉座に向かって進んでいく。
周りには大臣や貴族、さらには王妃の姿もあった。
前回と違いこのような光景は初めてだ、リスタ達は何も恐れることなく平常心で跪いているようだったので私は心を落ち着かせ跪き頭を垂れる。
「陛下、ラゼル達をお連れしました」
そう陛下に報告するとリスタは近衛騎士団のいる場所に戻る。
リスタが場所につくと同時に陛下が話し始める。
「お主たち4人は王国南部の都・リザースを魔物から救ってくれた。そして今回の襲撃を企てた首謀者であるローズを討伐。此度の件はお主たちのおかげで多大な被害を最小限に抑えることが出来た。誠に感謝する」
陛下は私たちに向かって感謝の言葉を述べると、周りの貴族や大臣も私たちに賞賛の言葉を送る。
私は少し照れくさい気持ちになりながらも感謝の言葉を受け止める。
そして陛下は続けて口を再び開く。
「今回の祭りは魔物の大群発生により途中で中止となったが、お主たちの功績は計り知れない。故に我が国はお前たち4人に国家直属の冒険者としての地位を与え、土地と資金を提供しよう」
私たちはその言葉を聞くと再び跪き頭を下げる。
私は興奮と驚きで頭がいっぱいになる。
まさかこのような形で国家直属の冒険者になれるなんて……これは異例の出来事なんだとか。
貴族や各大臣は冒険者と縁がない者が殆どらしく、今回の話も喜んでいるようだ。
リズ達も喜びを隠せないのか顔から笑みが溢れていた。
「陛下、必ずや国の為に尽力いたします!」
リズがそう答えると陛下は頷き口を開く。
「うむ、それとラゼルに聞きたい事がある。お主はレスト家の伯爵令嬢と聞いているがそれは本当なのか?」
「それは......本当です」
「やはりな、全くレスト伯爵は何をしているのか......後で叱っておかねばな」
父上ざまぁみろ……と心の中で私は思っていると辺りはざわざわとする。
そりゃあレスト家の伯爵令嬢が冒険者になったって聞いただけでも信じられないのにさらに国家直属の冒険者になったんだから驚かない方が無理って話なんだよなぁ。
でもリズ達は一切気にしている様子はない、みんな堂々として誇らしげだ。
そして私たちの任命式は終わりを迎え、私たちは王城を後にする。
「き、緊張した――――!」
「ラゼルめっちゃ固まってたもんな」
私は未だに心臓がバクバクしており、エリックに心配されてしまうほどだった。
「確かに! でもやっと国家直属の冒険者になれたね!」
「本当に今までの冒険は命がいくつあっても足りないよ~」
私が冒険者になった理由……それは最初はお金を稼ぐ為だった。
でも今はそれだけじゃない、この冒険が楽しいと感じている。
私は今までにない高揚感に胸を躍らせるのだった。
「ねえ皆、少し寄り道しない?」
私が提案するとみんな笑顔で了承してくれた。
なので街の外れにある『花畑』まで足を運ぶことにした。
あそこはリスタとのデートの時に教えてもらった場所で、たくさんの色鮮やかな花で埋め尽くされた綺麗な場所だ。
そしてしばらく歩き、私たちは花畑に到着するのだった。
一面に広がる色とりどりの花々にレズリタやリズは喜んでいる様子だ。
エリックもこの花畑に感動しているようだった。
「き、綺麗すぎる……こんな場所があったんだな!」
「ラゼル良い場所知ってるんだね~」
「最高!」
リズ達は花畑に見惚れている。
私は花畑に横たわり、花の香りに包まれながら空を見上げる。
そして私はリスタと初めて出会った時のことを思い出す。
あの時もこんな綺麗な青空だったなぁ……。
そんなことを考えていると誰かから声をかけられる。
私は驚き、横になった体を起こすと、そこにはリスタがいた。
「ラゼル達も来ていたようだね」
少し顔を赤く染めながらこちらに歩んでくる。照れているのか?
その光景を見て私は思わず笑みが溢れてしまった。
するとリスタも私と同じように微笑むのだった。
「ラゼル、君は冒険者になってからとても良い顔をしているよ」
リスタにそう言われ、私は笑顔になる。
すると花畑の中で座っているレズリタとリズが私たちを見てニヤニヤしている。
「私は冒険者になってから、毎日が楽しいんだ。エリック、レズリタ、リズ……皆と冒険する日々が」
私は4人に向けて自分の思いを告げると、4人は笑顔で頷いてくれるのだった。
「私は皆と会えて本当に良かった」
そう言うとリズ達は涙目になりながら私の所まで駆け寄り、抱き着いてくる。
横でリスタも微笑みを浮かべ私たちの姿を眺めている。
これから様々な冒険が私たちを待ち構えているだろう。
まだまだこの世界は謎に包まれている。
龍神教や五龍神、そして龍神王の存在。
そんな存在と戦う日がくるかも知れない。
でも大丈夫だ。私は一人じゃない。
私はたくさんのものを手に入れた。
それはお金や地位ではなく仲間という存在だ。
「私たちの冒険はまだまだ続くよ!」
そして私たちは笑いながら見つめ合い、共に再び立ち上がるのだった。