「俺らがここにいて良かったよなラゼル」
「もちろん」
エリックがそう言いい放ち、腰に欠けている鞍から剣を抜く。
こんな状況になれば高ランク冒険者であってもどうなるかは分からないだろう。
だが私達はS級冒険者だ。どうすることも出来ない場合もあるかも知れないが、生存の可能性は確かに上がると思う。
その時だった……三匹の竜が旋回するように飛び大地へと激しい音と同時に降り立った。
この竜はおそらくSS級ほどの力がある。
今まで戦った魔物とは訳が違い厄介極まりないだろう……。
ただこの竜を逃す訳には行かない、もしこの竜がリザースを離れれば王都の多くの人々は死んでしまうだろう……。なんとしてもここで食い止めなければ。
私は黒い渦を展開し戦闘準備を整える。
リズ達も集中して剣を握る。すると近衛騎士団の隊長2人が私達に近付いてくる。
「我々近衛騎士団は竜を一体を討伐します、主戦力はリスタ様と一緒に行きましたので……」
「分かりました、では竜2体は冒険者が討伐します。」
私がそう言うと近衛騎士団の隊長が頷く。
これで冒険者は竜の殲滅に当たることができるわけだ……。
あとは竜をいかに効率よく倒すのかだ。
正直私達4人のパーティーだと竜1体に対しギリギリだろう……。
だからこの場にいるA級冒険者やB級冒険者に協力してもらうしかない。
だか周りにいる冒険者を見ても竜に挑もうとする勇気ある者はこの場には見えない。
SS級の竜の恐ろしさはここにいる人が一番分かっているだろう。
挑む勇気があるのは数十人いればいい方だ。
「私はS級冒険者ラゼルだ! 竜を討伐するため協力してもらいたい!」
私が叫ぶと殆どの人が恐怖のためか顔を背ける……。
「か、勝てるわけねぇよ......」
「竜なんかに俺らが勝てる訳がねぇ!」
この王都にいる冒険者は烏合の衆だ、恐れるのは当然だがそれではこの街の人々を助けることは出来ない……。
少し荒療治ではあるが皆に目を覚まさせるためにはこの手しかないな……。
ラゼルは一度深呼吸をすると、声を張り上げて皆に対し言葉を投げかけたのだった――。
「恐れているのはわかる、だがここで竜との戦いに勝利出来なければ、竜はきっと王都に侵入し人々を襲うだろう! そうなれば王都の多くの人々が死んでしまう!!」
周りの人々が静かになった。誰もが竜の恐ろしさを知っているのだろう……。
だからこそ分かるのだ、私達が言っていることも正しい。
すると私の言葉を聞き少しずつ目に色が灯ってくる。
「今この時間も先ほど向かった近衛騎士団は魔物の大群と戦っている! 我々は王国の人々を守らなければならない! 頼む! 我々と協力してくれ!!」
私が最後にそう言い終えた直後、覚悟を決めたのか皆顔を見合わせ同じ方向を向く。
そう先ほどまでの恐怖は無く皆が決死の覚悟で竜に挑むつもりがあるのだろう。
これならばいける。
「お、俺らは冒険者だ! 魔物を狩るのが仕事なんだ!」
「ああ! ラゼルさんの言葉で目が覚めた! やってやろうぜ!」
勇気を出してくれた冒険者達に感謝しながら竜と相対する。
竜の方も私達を見るや否や咆哮を上げ戦いの合図が鳴るのだった。
SS級の強さの竜だがこちらには陛下がいるのだ……負ける訳にはいかない。
国王も危険だが目の前にいる竜はもっと危険な存在だ。
もしもここで陛下に何かあれば国が危うくなる。
S級冒険者として、そしてこの国に仕えるものとして竜に負ける訳にはいかない。
「レズリタは魔法で援護を! リズとエリックは突撃を頼む!」
そう私は指示を出すと、三人は揃って返事をし竜に斬りかかるのだった。
2人は竜と対峙し激しく刃を交えている。
あれだけ激しい攻撃をしているが竜は俊敏な動きを見せ器用に回避を行っていた。
エリックが隙を狙って剣を振るうものの爪で防がれてしまうような攻防である。
「くそ! 硬てぇ!」
「流石竜ね!」
2人の刃は全く竜の皮膚を貫くことは無い……。
かなり魔力のこもった剣で切りつけているように見えるのだが傷一つつけることすら叶わない……。
流石SS級の竜といったところだろう。全くと言っていいほど傷がついていないのである。
すると竜は口を開き、私達に向け黒炎のようなものを勢いよく吐き出した。
「くっ!」
リズとエリックは急いでその炎を回避するが少々服にかかってしまう。
あの炎を浴びたら良くても大火傷で皮膚はドロドロに溶け落ちて醜い姿になるのだろう……。
そう思うとぞっとしてしまう。
「スパークッッッ!」
するとレズリタが電撃を竜に放ち命中する……。
今だと思い私も魔法を竜に放つ!
《ブリザードッッッッ!》
私の魔法から放たれる冷気が一瞬にして竜を包み込んでいき竜の体は見る見るうちに氷漬けになっていく。
今が好機だろう。一気に勝負を決めることが出来そうだ。
「リズ! エリック! 今よ!」
「うん!」
「任せろ!」
私の言葉と共にリズ達が竜に飛び掛かる。
まずはリズが竜に鋭い一撃を見舞う。
肩から刃が突き刺さり、抉るように斬り裂いていき刃は肉を切り裂く。
血しぶきが上がりやがてリズの剣も赤く真っ赤に染まる。
そしてエリックの大剣が竜の横腹を抉り血を吹き出した。
リズ達の攻撃によってダメージを負った竜はよろめき隙を見せる。
「私の魔法を得と味わえッ!!」
既に魔法を展開させていたレズリタが詠唱を唱える。
すると竜に向かって炎の渦が包み込んでいき徐々に炎を上昇させる。
どんどん火力は上がりやがて炎の渦は竜を包み込むように真っ赤な火球へと変化していく。
「グァァァァァァァ」
竜はもがくようにその火球から抜け出そうとする。
《星糸》
私の手から禍々しいオーラと共に糸が生成される。
その糸を竜に放つと、一気に全身を縛り付け身動き一つ取ることが出来なくなった。
火球の中で段々と体を焦がしていった竜は力尽きるかのように静かに倒れ地鳴りを起こすのであった。
「よし!」
作戦は成功だ。それぞれの役割を活かすことで見事SS級ドラゴンを討伐成功。
ただまだ2匹の竜が街を襲撃している……。
私は竜と戦ってる近衛騎士団と冒険者達の方に視線を移す。
やはり竜2体に苦戦しているようであった。
「私たちも援護をしに行こう!」
「ああ! ここで騎士や冒険者達が死んじゃあまずい!」
「私もまだまだ魔力が残ってるよ~」
3人とも援護をしにすぐに移動を開始しようとする。
だが私はここから動くことはせずこの場に留まる。
「ど、どうしたのラゼル? 行かないの?」
「ごめん、今魔力がないから戦えそうにない……」
「分かった、無理はしなくていいからね」
リズはそう言うと、この場から離れ竜との戦いに参加するのだった。
3人の後ろ姿を見送った後、私は前を向き静かに呟く。
「そろそろ出てきなよ、ローゼ」
「あはははは! ばれてた!」
すると近くの影からローゼが姿を表す。
私は初めから彼女が来ていることには気が付いていたのだ。
影の龍力をコピーしてからか影に関しての探知能力が格段に上昇しているのだろう。
するとローズはくすくすと笑いながら喋る。
「そういえばなんで私の名前を知ってるのぉ? 名乗ってないよねぇ!」
「白龍の権利者から教えてもらったんだよ、影の龍力をもらった事も含めてね」
「そうだったのね! 権利者と会ってよく生きていられたね」
まあ生きてこれたのは奇跡だろう。
ヨルフの能力は凄かったが使いこなせていなかったので相性の問題だったのだろう。
するとローズが私の方に歩いて来る。
「さあ! 勝負しようラゼル!」
そう言ってローゼは手に影を纏い始める。
《暗影鋭爪》
彼女の持つ影の力によって黒く禍々しい鋭利な爪が生み出される。
放たれた爪は私に向かってくる。
なんとか防ごうとするが衝撃に耐えられずに後ろに吹き飛ばされてしまった。
これは思ったよりもきついかも知れない……。
そう思っていると近くにいた低ランクの冒険者達が私の元によってくる。
「ラ、ラゼルさん! 大丈夫ですか!?」
「来るな! 危ない!」
私はそう叫ぶが冒険者達は足を止めない。
するとローゼがその冒険者に鋭い爪で斬り裂こうと攻撃を行う。
私は瞬時にスキルを発動する。
《ブリザード!》
放たれた冷気はローゼの爪を氷漬けにする。だが完全ではない。
私のスキルで凍らせられるのも数秒程度だろう……。
ローゼの力は本当に恐ろしい。
彼女から産み出される影の能力は強敵であると言わざる終えないものだ。
「お前たちは陛下をお守りしろ! 私が何とか食い止める!」
私は大声で冒険者達にそう声を投げかけると彼らは速やかに王の元に戻るのだった。
まずいな、今のローズの攻撃力ならばこのリザースを全て破壊出来るだろう。
ローズの能力を毎回コピーは出来ない。
それにローズの能力は応用が効く。
ヨルフとは違いローズはきちんと能力の使い方を分かっている様子だ……。
どのような能力の出方をするのか全く分からないのだ。
するとローゼが私に向かって飛び掛かってくる。私は咄嗟に氷の剣を作り出す。
《アイスソード!》
私の剣とローゼの爪がぶつかり合うと、激しい衝撃波と共に周りにあった瓦礫や冒険者達が吹き飛ばされるのだった。
まずいな、このままでは本当にリザースは崩壊してしまうぞ……。
それにリズ達も心配だ。
《ダークネス》
私は影の魔法を繰り出す。
ローゼの視界を覆う黒い煙は移動しそのまま彼女に襲いかかっていく。
「あれれ? 私の能力が使えるの? おもしろいね!」
狂気じみた笑みを浮かべながらローゼも同様に《ダークネス》を発動し、私のダークネスをかき消すかのように黒い影が灯る。
すると、その影は私の放ったダークネスをかき消しただけでなくそのまま私に攻撃しかけ始めたのだ。
「ちっ! 厄介な影だな!」
私は咄嗟に氷を作り出し、ローゼの攻撃を防ぐ。
なんとかして打開策を見つけなければ……。
するとローズは私に追撃をしようと飛び掛かってくる。
《暗魔龍爪》
再び強力な魔力を感じると、無数の影の刃が生成され私を切り刻もうとする……。
本当に恐ろしいほどの力だ。
刃はどれも鋭く直撃したらただでは済まないだろう……。
それに触れなくてもこれだけのオーラが出ているのだ、触れてしまったら大怪我どころじゃすまない。
《星糸ッッッ!》
私は星糸で影の刃から身を守る。
だが、それにも限界がある……このままではいずれ私の魔力は底を尽きるだろう。
圧倒的な力の差を感じ一瞬心が折れそうになるが今はこの王都の街を救う為に戦っている。
弱音を吐く暇はない。
《闇糸!》
私は先ほど放った星糸に影の龍力を混ぜて発動させる。
すると星糸が黒く変色し、影の刃を防ぎながら徐々にローズに迫っていく。
そしてそのままローズの影に纏わりつくように闇糸が絡みつく。
「わわ! なにこれ!」
「喰らいなさい! 私の全力を!!」
私は闇糸で絡みついた影を一気に握りつぶす。
するとローゼの体は黒い霧のようなものに包まれ姿が消える。
この隙を逃すわけにはいかない! 私はすぐに魔法を展開する。
《全力のブリザード!!》
私を中心として街を凍り付けにしていく……。
一瞬にして周りは凍っていく。
この魔法を使えば確実にローゼを仕留めることが出来るだろう……そう思っていたその時だった。
目の前には影が広がっていた。
「くそ! 影には移動が自在なのか!」
「あはははは! 残念でした~!」
すぐ目の前にローゼが立っていた。
ここまで能力を発動しても仕留められないのか……。
まずいな……このままじゃ負けるぞ。
そう思い最後の賭けに出ることにした。
なんとかしてローゼの能力をコピーしなくちゃいけない!
そう思い私はローゼの能力をコピーしようと近づこうとする……すると次の瞬間だった。
ある人物が間に入り込んできたのだった。
だ、誰と思い私は間に入り込んできた人物の顔を見る……。
そこには私の弟、クルスの姿があったのだ……。
「な、なんで」
「姉さん、久しぶりだなあ!」
久しぶりの再会ではあったのだが私は感動はする余裕などなかった。
なぜならクルスの顔は狂人じみた恐ろしい笑みに包まれていたからだ。
突如、街の中心で人々の歓声がこだまする。
その声は色々な場所でも起こっているようだ。
その歓声からきっと戦いが終わってあの2匹の竜を倒したのだと思い安心感に包まれる……だがそんな気の抜けた時が訪れる事は無かった。
なぜならクルスは私に向かって剣を振りかざしていたのだった。
私は咄嗟に氷の剣を生成しクルスの攻撃を弾くと彼はすぐに距離を取り、再び私に剣を向ける。
するとローゼが笑いながら喋り出す……。
「もしかしてこの子のお姉さんだったのぉ? ごめんねぇ私この子に龍力をあげちゃった!」
「う、噓でしょ? クルスに何をしたの?」
私は状況が飲み込めずに混乱していた。
弟のクルスに一体何があったというのだ。
それにいきなり攻撃を仕掛けてきたことも驚いている原因のひとつだが、それ以前に私の弟は《剣聖》を持っているから力なんて欲していないはずだ。
するとローゼは笑いながら私に話す。
「この子は力が無くてね、だから私の龍力をあげたの! そうしたら喜んで私に服従したよ!」
クルスがローゼに龍力を貰った? そんなことありえない……。
だが、今目の前で起きていることが現実なのだ。するとクルスが口を開く。
「僕は剣聖のスキルを持っているのに上手く使いこなせなかった! それから父上からは見放され僕は落ちこぼれになった! 屋敷では僕の味方なんて誰もいない! 皆して僕を出来損ないと言ってきた! そんな時に外れスキルの姉さんは数々の実績を挙げ始めたんだ」
クルスの顔を見ると悔し涙で瞳を潤ませている……。
そしてクルスは私に剣を向けながら叫ぶように話を続ける。
「だから僕は力が欲しくなったんだ、そして僕は運良くローズに出会って龍力を貰ったんだよ!」
そういうことだったのかと私は納得する。
だが、いくらローズから龍力を貰ったからといってあんな危ない力を使うなんて……。
確かに《剣聖》のスキルの所有者は努力が出来れば精霊をも操れるはずだ。
だが努力出来る素質がなければ何も身につかないのだ。
たとえ、当たりスキルがあったとしても努力をしなければ宝の持ち腐れだ。
クルスはきっと努力をしてこなかったのだろう……だから今のような状況になっているのだ。
それにこうなった根本の原因は父上にあるだろう。
クルスは小さいころ優しい子だった。
なのに父上がスキルで差別をするから……。
するとローゼは笑いながらクルスの方に歩み寄る。
「さあクルス君! あなたの力をお姉さんに見せつけてあげなよ!」
するとクルスは剣に龍力を流し込み、私に攻撃を仕掛けてくる。
クルスの鋭い斬撃が私を襲うがその攻撃をなんとか防ぎきる……だが、その威力はすさまじかった。
私の氷の剣が簡単に折れてしまうほどの威力だった。
《剣聖》のスキルに龍力が合わさったらこんなにも強くなるのか。
私はクルスから距離を取り魔法を展開しようとしたその時、再び剣を突き刺そうと迫ってくる。
《ブリザード》
私は氷の壁を発動させ防ぐとクルスは剣を何度も私に向け攻撃してくるのだった。
その攻撃を防ぎきるが、クルスの攻撃のスピードは徐々に上がっていく……。
まずいな……このままだといずれ私の魔力が尽きてしまう、どうしようかと悩んでいると横からローゼの攻撃が繰り出される。
《ナイトメア》
ローゼが展開した影から巨大な手の型をした影が2つ現れる。
その影の手は私を捕まえようと襲い掛かってくる。
「ちっ! これは避けられない!」
絶望の淵に立たされたその時、横から炎の魔法が飛んでくる。
その魔法は影の手を貫き、そのままローゼに直撃したのだった。
すると私の目の前に3人の人物が現れる。
その人物は私がよく知る人物であった……。
「もう! 無理しないでって言ったのにラゼル!」
「今の危ないところだったよね~、ねえエリック~」
「ああ、少し遅れてたらやばかったな」
現れたのはリズ、エリック、レズリタの3人であった。
先ほどいた竜の方に視点を戻すと既に討伐しているようだ。
だが近衛騎士団や冒険者の姿が見えない所を見ると被害が大きかったのだろう。
「ごめん、助かったよ3人とも」
「後は私たちに任せなさい!」
リズがそう声を張って返事をすると他の2人も臨戦態勢に入り、戦闘を始める。
3人の戦闘は熾烈を極めるものだった。
剣と影の龍力がぶつかり合い、その衝撃は周りをも破壊していく。
そしてレズリタの魔法がクルスに襲い掛かりそれを防ぎきるといった形になっていた。
「おいローゼ! この状況じゃあ僕たちは負けてしまうぞ!」
「あはははは! 確かにやばいねぇ~! じゃあ応援を呼んじゃおっか!」
するとローゼは両手を合わせて呟く。
《来い》 すると黒い渦から様々な種族の魔物が出現する。
やはり目的は街の破壊だったみたいだ……。
「くそ! 魔物を召喚しやがったぞあいつ!」
魔物達は一斉に私たちに襲い掛かる。
さらに《ナイトメア》によって作られた影の手も襲いかかってくるので厄介だ。
するとクルスが勝ち誇った顔をしながら私にこう呟いてくる。
「姉さん、これで僕らの勝ちだ」
このままじゃクルスやローゼにやられてしまう。
そう思った私は今ある魔力を駆使してスキルを組み合わせて発動する。
《毒糸ッッッ!》
私の持っている《ポイズン》と《星糸》を組み合わせて発動する。
こうすることで毒を纏った糸はあの魔物達にも届くはずだ。
放たれた毒糸は魔物を拘束するように巻き付きその毒で魔物達は溶けていく。
リズ達に当たらないように調整しながら私はスキルを発動していく。
「す、すごいよラゼル! 魔物が次々と溶けていってる!」
リズが驚きながらそう話しているとうちに魔物達はどんどん消滅していく。
それを見たローゼは少し焦り始める。
「ちょ、なにそれ! そんなのありなの!?」
「焦るなローゼ! 僕が姉さんを切る!」
するとクルスが大声で叫ぶ。
《影龍剣ッッ!!》
クルスは影で作り上げた剣に龍力を流し込み、その剣を私に向けてくる。
リズ達はローゼとの対処で手いっぱいだ……。
これはまずいと思い私はすぐに防御の体制に入ろうとするが間に合いそうになかった。
「あ......」
終わったと思い私は目を瞑る。
だが、いつまで待っても攻撃はやってこない。
恐る恐る目を開けるとそこには騎士の姿があった。
攻撃が私に当たる前に防がれている。その者はクルスの剣を止めていた。
「遅れてすまない、ラゼル」
「リ、リスタ!」
私を助けてくれたのはリスタだった。
おそらく大群の魔物を討伐してここリザースまで来たのだろう。
「だ、誰だよお前! 僕は姉さんを切り刻むんだよ!」
「僕は近衛騎士団団長リスタ・ローズベルトだ。クルス、君の悪行は目に余るものがある。それに自分の姉を切ろうとするなど愚者の所業だ」
そうクルスに言う。
するとクルスは顔を真っ赤させリスタを睨んでいた。
そしてクルスは剣に龍力を込める。
《影龍剣ッッ!!》
クルスの放った一撃はリスタの剣とぶつかり合い激しい衝撃波が辺りに広がる。
激しい戦闘に私はつい見とれてしまう。
リスタの剣とクルスの一撃がぶつかった瞬間、衝撃波が広がり建物を崩壊させていく。
するとクルスは怒り狂ったように叫ぶ。
「なんで僕の邪魔をするんだ! お前なんかに僕の何が分かるんだよ!」
「私は君の事を何も知らない、だが一つ分かることは君はローゼの龍力によって洗脳されているということだ」
クルスは怒りを爆発させ、リスタに剣を振る。
だがその攻撃はいとも簡単に防がれ、リスタの反撃がクルスを襲う。
リスタの剣から放たれた一撃はクルスの剣を砕きそのままクルスを吹き飛ばした。
そしてクルスは気を失いその場に倒れる。
「どういうことリスタ? 洗脳されてるって」
「剣を交えて分かったことなんだが、クルスの剣には龍力と闇が混じっていた。恐らくローズに洗脳されたのだろう」
クルスはローゼの龍力で思考能力も操られているのか。
確かにクルスの行動には無駄な部分が多々あった。
するとローゼが拍手をして私たちにの所に来る。
「あははは! クルスやられちゃったかー! でもあんま強くなかったし当然か!」
それを聞いたリスタは剣をローゼに向ける。
リスタの目からは殺意が溢れている……その目には迷いはないといった意志が感じられた。
リズ達もボロボロになりながらも武器をローゼに向ける。
流石に戦闘が続いたせいかリズ達の体は限界を迎えている。
これ以上は戦わせられない......。今この場で戦えるのはリスタと私だけだ。
私はクルスを安全な場所に移動させたあと、立ち上がり戦う準備をする。
リスタ達も戦闘態勢を維持したまま待機している。するとローゼが口を開く。
「王国最強の2人を相手するなんてきついなあああ!」
するとローゼは影を操り、四方八方に散らせる。影は私たちに襲いかかってくる。
「一閃」
リスタの一撃が影を切り裂いていく。
凄まじいほどの魔力を剣に流し込み、影が切り裂かれる。
だが、影の数が多すぎて全てを防ぎきることが出来ない。
するとローゼが笑いながらスキルを発動する。
《暗魔龍爪!》
すると影が龍のような形状になり私たちに襲いかかる。
するとリスタが私に向けて叫ぶ。
「ラゼル! 私がこの影を防ぐから攻撃に回ってくれ!」
私はリスタの指示に従い、攻撃に回ることにする。
《毒糸ッッ!》
私はローゼに向けてスキルを発動する。
先ほど魔物を倒すために使った技だ。
糸と毒を組み合わせて強化し、放つというもの。
毒を付着させているので食らった相手を溶かすことも出来る。
そして私は魔物に使用した技と同じように数発の毒糸を発射する。
その毒糸を見たローゼは焦った顔になる。
ローゼは手から影の龍力を放出し、糸を消滅させようとするが、糸に触れた途端影は溶けてしまう。
この糸なら影だろうと切り裂くことが出来るみたいだ。
私は毒糸の量を増やし、広範囲に展開していく。
そして動けないローゼに向かって発射していく……。
ローゼは何かをしているように見えるが防ぐことが出来ないようだ。
そのまま私の毒糸はローゼの体を捉える。
そして毒糸はローゼの体を拘束する。
ローゼの体に防御魔法が掛かっているが溶けはしない。
だが体が麻痺しているのかローゼは身動きが取れなくなる。
「今よリスタ!」
「ラゼル、よくやった」
その瞬間リスタは剣を空天に向けて掲げ、スキルを発動する。
《剣聖》のスキルによってさらに剣は赤く光り輝き、周りが明るくなるほどになっていた。
リスタの剣には凄まじいほどの風が集まり始める。
おそらくスキルによる一撃なのだろう。
空間に歪を作りながら一気に魔力が広がっていく。
「ま、待ってえええ! 私はヨルフに龍力を貰っただけなんだよ! だから許してよおおお!」
ローゼは命乞いをしてくるがリスタは剣を構え、ローゼにこう叫ぶ。
「悪行をした者にはそれ相応の裁きがある。そしてそれは死だ」
「まっ......」
《紅炎の剣》
剣を振り下ろすと同時に凄まじいほどの風の斬撃が放たれる。
赤く輝き始めた紅炎が空高く昇ると一瞬でローゼに襲い掛かり、凄まじい爆風を生み出しながらローゼの体を呑み込んでいくのだった。
ローゼを包み込んだ紅炎は容赦なく燃え続け、ローゼの体を灰に変えていく。
そして跡形もなく消え去った。
「終わったな......」
リスタは剣をしまい、私の元に歩いてくる。
「大丈夫かいラゼル?」
「うん、リスタこそ大丈夫? その……左肩怪我してたけど」
するとリズ達も私の元に駆け寄ってきた。
私はリスタの左肩を見ると服が血で染まっていた。
恐らくローゼの影をずっと相手してくれていのだろう。
リスタは私の左肩を見て納得する。
「これかい? これぐらい大したことはない。そんなことよりもラゼルの方が酷い怪我だよ」
するとリズ達は私の体を見て『すごい傷……』と言葉を漏らしている。
確かにこの怪我はひどい。
「ラ、ラゼル! 大丈夫なの?」
「あはは……ちょっと無理しちゃったみたい」
するとレズリタが私の前に来て魔法を発動してくれる。
そのおかげで徐々に傷などが消えていき私の体は回復する。
「ふう......まだ無理しちゃ駄目だよラゼル」
レズリタがそう言うとリズが涙目になりながら抱きついてきた。
そして小声でこう言うのだった。
「良かった……死んじゃうのかと思った……」
その目は少し赤く腫れているように見える。
どうやらすごく心配させてしまったらしいな。
確かに戦いの途中から感覚が無くなっていた。
恐らくアドレナリンによって和らげられていたのだろう。
そしてリズの温もりを感じていると横からエリックが話しかけてくる。
「ラゼル……もう無理はやめろよ。一人で抱え込むのは無しだ」
「エリック……うん、分かったよ。これからはちゃんと相談する」
「おう! 俺らはパーティーだ! 仲間を頼れよ!」
エリックはそう言うと、私の肩を軽く叩く。
そしてリズも私から離れて涙を拭う。
するとリスタが私に話しかけてくる。
「ラゼル、先ほど気絶したクルスは一体どこに?」
「クルスならあそこで寝てるよ」
私がクルスの倒れている場所を指さす。
まだ寝ているようで起きる様子はない。
「とりあえずクルスは正気に戻っているか分からない以上、拘束させてもらう」
「そうだね、じゃあ私が糸を出すよ」
私はスキルを発動しようとするとリスタとリズ達が止める。
流石にもうボロボロの状態だから動いちゃ駄目だそうだ。
そしてクルスの拘束をリスタが行い、私たちは陛下達がいる避難場所に向かうのだった。
目的の場所に到着するとそこには多くの人々が待機していた。
どうやら皆避難出来ていたようだ。
すると近衛騎士団の兵士が私たちの方へ近づいてくる。
「団長! ご無事でしたか!」
「ああ、ラゼルのおかげでね」
リスタと兵士が話していると多くの冒険者が私たちの元にやってくる。
「ラゼルさん! この度はありがとうございます!」
「ラゼル様! お怪我はありませんか!?」
冒険者達が私の元に集まり感謝の言葉を言ってくる。
だが私は少し気まずくて下を向いてしまう……。
リズ達も少し緊張しているようだった。
そうして注目を浴びていると近衛騎士団や市民も私たちの元にやってくる。
「ラ、ラゼルさん! 街を救ってくださりありがとうございます!」
「リズさん達もありがとうございます!」
すると今度は市民から『ありがとうございます!』という声が多く聞こえるようになる。
やっぱり恥ずかしい……こんなに注目されるのには慣れないなぁ。
そんなやり取りをしていると陛下が私たちに近づいてくる。
「よくやったぞラゼルよ」
「ありがとうございます陛下……ご無事なようで安心しました」
「うむ、そなたも無事でよかった」
私にそう言うと次は冒険者や近衛騎士団に視線を送る。
「そなたらもよくやってくれた。 報酬は後ほどギルドに手配しておく」
すると兵士や冒険者は頭を下げ『ありがとうございます!』と再び感謝の言葉を発する。
「リスタもご苦労であった」
「ありがとうございます陛下。冒険者や近衛騎士団の者、ここにいる者は皆リザースを守る為に力を尽くしてくれました。ここにいる彼等には顔が上がりません」
「ふふ……そうだな」
そう返事を返したあとすぐにリスタは部下達に指示を出し始める。
恐らく負傷者の手当をさせて欲しいのだろう。
陛下はこの場を立ち去る準備を始める……すると私に声をかけてくる。
「ラゼルよ、今から我らは王城に戻る。そしてしばらく事が落ち着いたらお前たちの功績を称えたい、事が落ち着き次第、使いを送る故楽しみにしていなさい」
「ありがとうございます陛下!」
私は陛下にそう返事をすると、陛下達は王城に向かって戻るのだった。
それから復興作業が始まった。
リスタが指揮を執り、兵士や冒険者と協力して作業が進められていく。
魔物達の侵攻によって建物はやられており、その再建は容易ではない。
私も体力が回復次第手伝いをしたいと思っている。
そして一ヵ月の期間を要して魔法などを使いながら作業は進んでいき破壊された街は元の状態に戻ろうとするのだった。
私たちも復興作業に協力していると街の人々が次々と集まり感謝の言葉を私たちに送ってくる。
この一ヶ月間協力して頑張っていたことが民達の信頼を得ることに繋がったみたいだ……。
街は綺麗になったと言っても修復作業はまだ終わってはいないが民の顔に希望が生まれたように感じる。
■■■
それから数日が経過した頃、私たちの元に陛下から使いが来るのだった。
おそらく功績を称える為に使いをよこしたんだろう。
「陛下からの使いが来たよ!」
リズは嬉しそうにそう報告してくる。
そして私たちは馬車に乗り、王城へ向かう。
普通の馬車とは違いとても豪華な馬車だ。
そしてしばらく馬車で移動すると王城に到着する。
私たちは馬車を降り案内されるまま王城に入る。
「やっぱここは王城は綺麗だな!」
「そうだねエリック~、あの時以来だね~」
エリックとレズリタは周りをキョロキョロしながら歩いている。
私たちの前にいるリズはパーティーのリーダーなので堂々と歩いているが私は少し緊張してしまう。
するとリスタが私の肩を軽く叩く。
「ラゼル、そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
「う、うん……でもやっぱり慣れないなぁ……」
そんなやり取りをしていると私たちはある場所に到着する。
目の前には扉がある。ここから先は王の間だ。
緊張しながらも扉をあけ中に入ると、中は広く沢山の人がおり私達のことを待っていたみたいだ。
貴族だけじゃなく王妃様や近衛騎士団の隊長もいる。
そして私たちは陛下が座られている玉座に向かって進んでいく。
周りには大臣や貴族、さらには王妃の姿もあった。
前回と違いこのような光景は初めてだ、リスタ達は何も恐れることなく平常心で跪いているようだったので私は心を落ち着かせ跪き頭を垂れる。
「陛下、ラゼル達をお連れしました」
そう陛下に報告するとリスタは近衛騎士団のいる場所に戻る。
リスタが場所につくと同時に陛下が話し始める。
「お主たち4人は王国南部の都・リザースを魔物から救ってくれた。そして今回の襲撃を企てた首謀者であるローズを討伐。此度の件はお主たちのおかげで多大な被害を最小限に抑えることが出来た。誠に感謝する」
陛下は私たちに向かって感謝の言葉を述べると、周りの貴族や大臣も私たちに賞賛の言葉を送る。
私は少し照れくさい気持ちになりながらも感謝の言葉を受け止める。
そして陛下は続けて口を再び開く。
「今回の祭りは魔物の大群発生により途中で中止となったが、お主たちの功績は計り知れない。故に我が国はお前たち4人に国家直属の冒険者としての地位を与え、土地と資金を提供しよう」
私たちはその言葉を聞くと再び跪き頭を下げる。
私は興奮と驚きで頭がいっぱいになる。
まさかこのような形で国家直属の冒険者になれるなんて……これは異例の出来事なんだとか。
貴族や各大臣は冒険者と縁がない者が殆どらしく、今回の話も喜んでいるようだ。
リズ達も喜びを隠せないのか顔から笑みが溢れていた。
「陛下、必ずや国の為に尽力いたします!」
リズがそう答えると陛下は頷き口を開く。
「うむ、それとラゼルに聞きたい事がある。お主はレスト家の伯爵令嬢と聞いているがそれは本当なのか?」
「それは......本当です」
「やはりな、全くレスト伯爵は何をしているのか......後で叱っておかねばな」
父上ざまぁみろ……と心の中で私は思っていると辺りはざわざわとする。
そりゃあレスト家の伯爵令嬢が冒険者になったって聞いただけでも信じられないのにさらに国家直属の冒険者になったんだから驚かない方が無理って話なんだよなぁ。
でもリズ達は一切気にしている様子はない、みんな堂々として誇らしげだ。
そして私たちの任命式は終わりを迎え、私たちは王城を後にする。
「き、緊張した――――!」
「ラゼルめっちゃ固まってたもんな」
私は未だに心臓がバクバクしており、エリックに心配されてしまうほどだった。
「確かに! でもやっと国家直属の冒険者になれたね!」
「本当に今までの冒険は命がいくつあっても足りないよ~」
私が冒険者になった理由……それは最初はお金を稼ぐ為だった。
でも今はそれだけじゃない、この冒険が楽しいと感じている。
私は今までにない高揚感に胸を躍らせるのだった。
「ねえ皆、少し寄り道しない?」
私が提案するとみんな笑顔で了承してくれた。
なので街の外れにある『花畑』まで足を運ぶことにした。
あそこはリスタとのデートの時に教えてもらった場所で、たくさんの色鮮やかな花で埋め尽くされた綺麗な場所だ。
そしてしばらく歩き、私たちは花畑に到着するのだった。
一面に広がる色とりどりの花々にレズリタやリズは喜んでいる様子だ。
エリックもこの花畑に感動しているようだった。
「き、綺麗すぎる……こんな場所があったんだな!」
「ラゼル良い場所知ってるんだね~」
「最高!」
リズ達は花畑に見惚れている。
私は花畑に横たわり、花の香りに包まれながら空を見上げる。
そして私はリスタと初めて出会った時のことを思い出す。
あの時もこんな綺麗な青空だったなぁ……。
そんなことを考えていると誰かから声をかけられる。
私は驚き、横になった体を起こすと、そこにはリスタがいた。
「ラゼル達も来ていたようだね」
少し顔を赤く染めながらこちらに歩んでくる。照れているのか?
その光景を見て私は思わず笑みが溢れてしまった。
するとリスタも私と同じように微笑むのだった。
「ラゼル、君は冒険者になってからとても良い顔をしているよ」
リスタにそう言われ、私は笑顔になる。
すると花畑の中で座っているレズリタとリズが私たちを見てニヤニヤしている。
「私は冒険者になってから、毎日が楽しいんだ。エリック、レズリタ、リズ……皆と冒険する日々が」
私は4人に向けて自分の思いを告げると、4人は笑顔で頷いてくれるのだった。
「私は皆と会えて本当に良かった」
そう言うとリズ達は涙目になりながら私の所まで駆け寄り、抱き着いてくる。
横でリスタも微笑みを浮かべ私たちの姿を眺めている。
これから様々な冒険が私たちを待ち構えているだろう。
まだまだこの世界は謎に包まれている。
龍神教や五龍神、そして龍神王の存在。
そんな存在と戦う日がくるかも知れない。
でも大丈夫だ。私は一人じゃない。
私はたくさんのものを手に入れた。
それはお金や地位ではなく仲間という存在だ。
「私たちの冒険はまだまだ続くよ!」
そして私たちは笑いながら見つめ合い、共に再び立ち上がるのだった。