外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~


 
 もう既に辺りは暗くなり始めていてこれ以上暗い中で動くのも危険だと思ったからだ。
 
 「アァァァ......」
 
 すると森の奥からなにか唸る声が聞こえてくる。私たちはただ事ではないと思い馬車へ向かおうとしていた足を止め森に一歩足を踏み入れる。足を踏み入れていくと木々の間から得体の知れない生物が現れたのだ。

 体長3メートルを超える大きな漆黒のヤギがいる。頭には大きな太い角、そして鋭い牙に赤い目玉……見るからにただ者ではないという空気が漂っている……。
 
 これはかなりヤバい......。と思っているとリズが私に声を掛ける。
 
 「大丈夫、今の私たちはパワーアップしているからきっと勝てるよ」
 
 リズがそう言うとエリックとレズリタも無言で頷いている。

 いや私はパワーアップしてないんだけどとツッコミたいところだったが口には出せなかった……。そしてヤギンは4人の姿を見るなりこちらにゆっくり近づいてくる。

 私たちは一応戦闘態勢に入るが、いざこうして近くで見てみるととてつもない恐怖心が襲う……。赤い目はこちらを見ており口からはよだれが垂れている……。
 
 そしてヤギンは雄叫びの様な声を出すと4人に飛び掛かり、鋭利な爪で引き裂こうとしてきた。

 すぐにレズリタは魔法を発動、私たちに向かってくる鋭い爪が燃え、ヤギンの左手を焦がす。するとヤギンは即座に私たちから距離を置いた。

 流石に知能があるようで、簡単には接近戦に持ち込めないと判断したのだろう。
 レズリタの魔法に苛立ちを感じているのかヤギンは牙をむき出しにして臨戦態勢に入っている様子。

 するとヤギンが近くの木を引っこ抜き私たちの方へ向けて投げてくる。

 あの巨体で素早く木を投擲してきたことに恐怖を感じたが、すぐにリズとエリックが木を剣で斬り裂き無効化する。

 木が粉砕した煙が立ち込めている中、ヤギンが思いっきり地面を蹴り超スピードでリズとエリックに向けて急接近する。
 
 「俺たちの剣で斬り裂く!」
 
 そう言いリズとエリックは剣をヤギンに向ける。
 
 そして2人は剣で攻撃を行おうとするのだがヤギンはすぐに身体を回転させながら剣撃を避ける。
 
 「速い奴ね!」
 
 リズが攻撃を避けられた事に怒ったのか声を上げている。そんな中ヤギンは足を止めることなく私たちの方に攻撃を仕掛けてくる。

 どうやら魔法使いは最優先に処理するべきだと思っているらしい。
 
 ならばと言うばかりに私はヤギンの方に向かってスキルを発動する。
 
 《ブリザード》
 
 手から放たれた極低温の空気の渦はヤギンと私の間に発生、瞬間的に景色を白くし大きな音をたてる。私も魔法に驚いたのかヤギンは少し下がってしまう……。

 するとその雪雲の中からリズ達が物凄い勢いで飛び出してきたのだ。まるで瞬間移動をしているような速さで。そのまま2人はスキルを発動する。
 
 「ブレイクッッッ!」
 
 「サンダークラッシュッッッ!」
 
 2人の攻撃はヤギンの体に深々と突き刺さる。レズリタはこの機会を見逃すことなく魔法を発動する
 
 《煌めく雷(ブライトボルト)》
 
 2人の剣で動きを封じられていたヤギンに向かって放たれた雷はヤギンの体を撃ち抜き大きくのけ反らせる。そしてエリックとリズはもう一撃お見舞いしてやろうとするがその攻撃を読んでいたようにヤギンは大きく横に飛んだ。

 やはり3人ともパワーアップしているようだ。新しい技を習得しており動きがとんでもないことになっている……。
 
 ヤギンは攻撃を受けた為立ち尽くしている。だがリズ達はそんな事気にした様子も無く次の攻撃を繰り出そうしていた。

 エリックとリズは左右に跳ぶと同時に魔法を同時に発動する。
 
 《スラッシュ》
 
 《放電》
 
 エリックが縦に斬り裂き、そしてそれと同時にリズが剣から電気を発生させてヤギンに鋭い一撃を決める……。

 ヤギンは体が斬られた衝撃でその場に倒れ込む。武器を変えるとこんなに強くなるのか……。そう思っているとヤギンは立ち上がろうとしている。

 だが足を切られているからか立ち上がれないみたいだ。
 
 「これでとどめよ!」
 
 リズがヤギンにとどめを刺そうとした瞬間――――――
 
 「おやおやおや? 何をしているんですう?」
 
 リズの後ろから声が聞こえる……。
 反射的にリズは後ろに身体を向けると異様な男がこちらに笑みを浮かべ立っていた……。
 
 その異様な男を見てまずレズリタが構える。
 
 それもその筈、そこにいる男が発する雰囲気は人間じゃないとすら思わせる程不気味だったからである……。それにその男は少し汚れた白衣に変な化粧をしている男だ……。
 
 「だ、誰!?」
 
 「あ――――、わたくしですか? 私は龍神教の信者をしているオスカルといいます」
 
 龍神教とは会いたくなかった宗教の1つである。龍神を信仰しており、各国で犯罪行為をしているとか……。一度私たちはヨルフとかいう宗教の幹部に襲われた事がある

 。こんな不気味な男を見てしまえば身構えない筈がない……。
 
 そしてその怪しげな男は口をニヤニヤとさせて口を開く。
 
 「それそうとですねぇ? そこにいる魔物、わたくしに譲ってくれませんかあ?」
 
 意味が分からない。目の前の魔物をなぜ譲れと言われているのか……。ただこいつの言うことをすんなり聞く気は毛頭無い。
 
 すると怪しげな男は笑みを浮かべてこう言い出した。
 
 「ならあ? ここで死にますかねえ?」
 
 その言葉を聞いた瞬間、リズは剣を男に突きつける。だがその瞬間、無数の刃物がリズに襲い掛かる。
 
 「な!?」
 
 リズは男からバックステップをして距離を取る。気づくのが遅れていたらただでは済まなかっただろう……。
 
 刃物が来た先は暗闇であった。暗闇の先には多くの信者たちが武器を振り回して現れる。
 不気味で虚ろな目をこちらに敵意を向けてくる。
 
 リズとエリックは互いに顔を合わせると頷き、戦闘態勢に入る。
 まず動いたのはリズだ。放たれる矢を全て回避し、信者が振りかざす武器を全て防ぎ剣で斬っていく。

 エリックも同じタイミングで動き出し、信者の刃物を巧みに自身の剣でいなしながら確実に倒す。
 レズリタも魔法を唱え信者たちの行く手を阻んでいる。
 
 流石Sランク冒険者になっただけあって魔法の扱いや剣の腕もかなり卓越している……。
 
 私はそう思いながら怪しげな男に視点を移す……。怪しげな男は手を出す素振りを見せないまま只々ニヤニヤしている……。

 一体何がしたいのか疑問で仕方ない。

 すると信者達が魔法を詠唱しこちらに向かって放つ。
 
 「嘘!? 魔法も使えるの!?」
 
 リズ達が驚きの声をあげて避ける。
 
 3人とも動きも凄いスピードなのだが手数の多さが対処しきれていない……。
 私はその様子を見て《ブリザード》を発動し、信者たちとリズ達との間を埋め尽くす。

 するとオスカルが笑いながらこちらに話しかけてくる。
 
 「おやおやおや? あなたは魔族の能力を使うことが出来るのですかあ?」
 
 「そうよ……。世間では外れスキルと言われてるけどね」
 
 それを聞いた男は口を歪ませながら腕を大きく上げる。それを見ていたレズリタは私の元に来ようとする。
 
 だが無数の魔法に邪魔されてこちらに近づくことが出来ない様だ。リズたちも近接攻撃を持った信者達と戦っている為接近出来ずにいる……。

 だがエリックとリズの表情は明るくない。敵の数が多すぎるのか次々と迫ってくる教徒の対処だけで手一杯だった。
 
 「そうですか! そうですか! 私も世間では外れスキルと言われていたんですよ!」
 
 するとオスカルは能力を発動する。
 
 手からは無数の糸が出てき地面にも張り巡らされてゆく。

 なんだ……、何を始めようっていうんだこの男は……?

 一見ただの糸にしか見えないが当たるとどうなるのか少し不安だ……。
 
 するとオスカルは私の顔を見ながら告げる 。
 
 「私は糸を操るのですぅ。お手柔らかにお願いしますねえ?」
 
 《星糸》
 
 そして次の瞬間、私の目の前から糸が飛んでくる……。
 
 私は素早く回避行動をしたお陰で糸を躱すことが出来た。何とか躱せたが放たれた糸は木を真っ二つ斬り落としていた。

 私は背後に構えていた木々が一撃で真っ二つ斬られているのを見て鳥肌が全身を覆う……。

 あんなもの喰らったらひとたまりも無いぞ……。リズ達は教徒の人数が多すぎるのもあって苦戦を強いられている……。もし私がやられたら次の標的はリズ達になだれ込むだろう……。

 どうにかして私がこいつを倒すしかない。そう思い私はスキルを発動する。
 
《ダークネス》 するとあたりは暗闇に染まり、オスカルの操る糸は見えなくなる。
 
 だがオスカルはまだニヤニヤと笑っている……。
 
 「あなたの能力は素晴らしいいいい! もっと見せてくださいよおおおお!」
 するとオスカルがまた糸を四方八方に飛ばす。

 放たれた糸が一目散に私の元に飛んでくる。私は糸に向けて手を挙げ能力を発動する。
 
 《ポイズン》
 
 私の手からは毒液が形成され、オスカルの糸が跡形もなく無くなってしまう。その様子を見たオスカルは嬉しそうに拍手をしてくる。
 
 だがまだまだ糸は飛んでくる、私は次から次へと毒液を投げ飛ばし糸を撃ち落としていく。その様子を見てオスカルはブツブツと何か話しているように見えた。

 なんだあの余裕な表情は……。リズたちの攻撃を邪魔することなくずっとこっちを見つめている。気持ち悪い男だ……。

 するとオスカルが私に向けて口を開く。
 
 「あなたあ、龍神教に入らないですかあ? そのスキル、素晴らしい! あなたでしたら即幹部! いや幹部越えも夢ではないです!」
 
 何を急に言っているのかと思えば宗教勧誘だとは……。冗談では無い。私が龍神教などに入るわけが無い。
 
 「入るわけないでしょ」
 
 きっぱりと断る。するとオスカルは表情を変えずに首を横に振る。
 
 「それは残念ですよ? もったいないですねえ……」
 
 心底残念そうな表情を見せると、オスカルは私に向けて無数の糸を飛ばして来る。私はそれに対し《ポイズン》を発動する。だがその隙をついてオスカルはこちらに走り込んで来ている。

 気づいた時には私の目の前まで来ておりオスカルが思いっきり拳を握りしめて私の腹部を突く。突然腹部に訪れたとてつもない衝撃による痛みに耐えながら私は《ブリザード》を発動する。

 放たれた冷気は一瞬で周囲の木々を凍てつかせる。オスカルも一部身体が凍ってしまったので動けないようだった……。そして少し距離を置くためにバックステップする。

 距離を置いた後、周りを見渡すと龍神教信者からの連続攻撃に耐えていたエリックとリズ、レズリタが見える。だが教徒の圧倒的な人数により押し切られそうになっていた。

 どうにかしないとまずい……。すると凍っていたはずのオスカルの氷がみるみる溶けてゆく……。やはり人間じゃ無いということなのだろうかと冷や汗を垂らしながらそう思うしかなかった……。
 
 確かに私の《ブリザード》はちゃんと命中したはず……。だが奴の身体はみるみる回復していっているように見える…………。
 
 なんとか必勝法を見つけ出さねば……、そう思い地面を見ていると糸が張り巡らされていた……。

 この糸は《コピー》出来るのだろうか?私は手を突き出し糸に触れて《コピー》を発動する。
 
 ――――――――――――――――――――――
 あなたが使用できるスキル一覧
 ・《コピー》
 ・《ポイズン》
 ・《ブリザード》
 ・《影の龍力》
 ・《星糸》NEW!
 ――――――――――――――――――――――
 
 私は無事にコピーが出来たことを確認する。
 《星糸》
 
 そして私はスキルを発動―――――― 手から禍々しいオーラが現れ糸が放たれる。
 私の手から放たれた糸はオカルトの元にへと飛んで行く。
 オスカルは瞬時に反応し、私の糸を避ける。
 
 先ほどからずっと不気味に笑っていたのが突然、眉間にしわを寄せこちらを見る。
 
 何が起こっているのか理解できないいのかオスカルは急に大声を出す。
 
 「なんと! 私の能力をコピーしたんですか!? やはりあなたは素晴らしいぃ!」
 
 何もかも理解できないのかずっと驚いている様子だ。だがそんなことはどうでもよい……。私はもう一度スキルを発動する。
 
 《星糸ッッッ!》
 
 もう一度オスカルに向けて糸を放つ。だがオスカルも同様に私が発動したスキルを行使する。やはりまずい……このままでは決着がつかなくなりそうだ……。

 どうにかして考えないと、この状況を突破できる方法を考えるしかない。私は思考を巡らせる。
 
 すると1つ案が閃いた……。私の持っているスキルを組み合わせることは出来ないのだろうか? もし出来たならこの状況を打開することが出来るかもしれない。怖気付く気持ちを抑えて私はやってみることにした。
 
 今はこれしか方法は無いと信じて……。
 
 《闇糸》
 
 すると先ほど私が出した糸が漆黒に染まりはじめる。不気味な色になった糸だが威力は桁違いに上がっているのを感じる。
 
 おそらく破壊力も速さも、先ほど私が出した《星糸》よりも遥かに上だろう……。放たれた闇糸はオスカルの腹部まで届く。

 私の見立てが正しければ奴はこれで終わりだ。私はそう思いオスカルの方を見る。
 
 その場にうずくまる男の姿が見え、腹部からはダラダラと赤黒い血が吹き出している。
 
 「なんて凄いんですか!? そのスキル!」
 
 オスカルは苦しみながらも楽しそうな声でこちらを見てくる。
 もう戦う力も残っていないのか立ち上がるようなそぶりも見せずに腹部を抑えながら笑い声をあげる。

 これ以上は立ち上がらないと思い、私はリズ達の様子を見る。すると丁度最後の教徒をリズ達が片付け終わったところだった……。
 
 「ラゼル、なんとかこっちは倒せたわ」
 
 そう言うとリズは剣をしまい、エリックも大きなため息をついている。どうやらさっきの戦いが結構厳しかったらしい。辺り一面ボロボロだし……。

 レズリタもどうやら立っているだけでかなり体力を使ったようで座り込んだ……。するとエリックがオスカルに向けて口を開く。
 
 「お前らのアジトはどこだ?」
 
 エリックがオスカルにそう言い放つ。

 そうするとオスカルは軽く微笑んだ後に空を見上げ、薄ら笑いを浮かべながら喋り出す。
 「私は知りませんねえ、権利者に聞いてみては?」
 
 この期に及んでシラを切ろうとしている。するとエリックがオスカルの目の前に行き胸倉を掴む。
 
 だがオスカルは一切口を割ろうとはしなかった。どうやら教える気はないみたいだ……。
 
 これ以上やってももう無理だろうと思い、私はスキルを発動する。
 
 《闇糸》 を発動すると体が切断され、オスカルはその場に倒れる。
 
 「本当になんだったの!」
 
 そう言いながらリズは座り込む。エリックも不思議そうにオスカルを見つめるが考えるのを止めたのかため息を吐く。

 少し落ち着くと私はある事を思い出す。
 
 「そういえばヤギンは?」
 
 「ヤギンなら俺がとどめを刺しておいたぞ」
 
 どうやらエリックがしっかりやっていてくれたらしい。その後私たちは教徒が生きていないか、警戒しながら周囲を歩く。
 
 何も問題なかったので気を張るのを止めて私たちはもう一度村に戻っていく。私たちは村人がいないかを確認するために歩き続ける。

 「少し家の中を確認してみよ」
 
 リズがそう言うと私たちは村の家々を調べに入る。だがどの家を覗いてみてもやはり人はいなかった。それどころか血肉1つ落ちておらず、不気味な雰囲気を醸し出していた。
 
 ただ一つだけ奇妙な部分がある……この村の民家には剣や服の残骸?みたいなものがたくさん散らばっているのだ……。

 そう思いながら家を捜索していると違和感に気づく。この村中を見渡しても死体が1つもないのだ……。
 
 そうしていると机の上にあるものが置かれていることに気づく。近づいて確認してみるとそれは写真で、10人以上の人間の顔が映し出されていた。

 そしてその村人たちの写真を一人ずつ見ていくとある人物が目につく。写真が汚れていて解りにくいが写真の人物には1つだけ特徴があった……。

 私はその特徴を見てこの違和感の正体に気づく。それはとても奇妙に見えた――――だが理由は少し考えれば分かるようなものであった…………。

 考えたくもないことが頭に浮かぶ―――― 。

 なぜならその子の手からは糸が出ていたから。

 その後私は家を出て、リズ達と合流を果たす。

 私はこの村の惨状についてリズ達に話した後に馬車へと向かう。
 
 どんな戦闘が起こるか分からなかったのでさっさとこの村を抜けた方がいいと判断した私たちは駆け足で行く。
 
 馬車に到着した私たちは重い空気の中、馬車を走らせる。
 
 あまりにも奇妙で不可解な事件の現場を目撃してしまった為にそれをどうにかしないと落ち着かない。頭の思考を止めることも出来ずに一人考え続ける。

 もう少し早く見つけることできれば事態を収束させることが出来るのでは……?私はぼんやりとした想像をする……。するとリズが口を開く。
 
 「ラゼル、落ち着いて」
 
 その言葉を聞いて我に返りリズ達の方を見る。私に向けて口を開く姿はいつもの可愛らしい少女とはまったく違い姿で凄く頼もしく見えた。

 本当に同い年なのだろうか……と何度が思った事があるのは今言うことでは無いな、と思い返す。
 
 「大丈夫だよ~ラゼル~」
 
 レズリタの言葉に救われる……。私は表情に出ていたようでとても心配そうな表情でこちらを見る。その後気を取り直してレズリタに大丈夫であることを告げると元気よくうなずき返してくれる。

 エリックも心配げにこちらを見つめていた。
 
 今私は仲間に支えられているから少し救われた様な感覚を感じる。本当私は良い仲間に出会えた……。

 しばらく馬車で揺られていると外がとても明るくなってきていることに気がつく。もう朝になっているのか……。
 
 深い森を抜けだし、ようやくエルミア王国の姿が見えてくると私は酷く心が軽くなるのを感じた。
 
 空はまるで私の心を映し出しているのではないかと思わせるほどにすっきりと晴れ渡った色をしている。
 
 「やっと王国に着くな!」
 
 エリックが馬車から顔を出して嬉しそうにそう言う……。
 
 私も自然と笑顔に溢れ、王国を見つめる。やっぱりいい所だな、エルミア王国は……。
 そして馬車は無事エルミア王国に到着する。

 美しい街並みが幾つも並び立つ光景に見とれてしまいそうになる。
 
 「それじゃあ依頼達成をギルドに言いに行こう!」
 
 リズがそう言い、私たちはギルドに直行するのであった。
 冒険者ギルドに辿り着くとまず私たちは報告をするためにカウンターに足を運ぶ。
 冒険者たちがひしめく中、受付嬢の所に向かい依頼を達成したことを伝える。
 
 「依頼完了しました!」
 
 リズがそう伝えると受付嬢は笑顔で言葉を返してくれる。
 
 「討伐お疲れ様です! こちらが報酬金です!」
 
 そう言いながら私達に硬貨を渡してくれる。受付嬢から硬貨を受け取って中身を見てみるとそこにはとんでもない量の金が入っていた。

 色々あったけど報酬金は貰えてるし良いか……と考えているとリズ達が報酬金を見てくる。すると3人ともテンションが上がってくるのを全身で感じる。

 そんな嬉しそうにしていると受付嬢が私たちに話しかけて来る。
 
 「そういえば大会にはエントリーしましたか?」
 
 その言葉を聞くと私たちは一瞬固まった。なぜならまだエントリーしていなかったからだ。大会というのはモンスターを狩る祭りのことだろう……。

 Sランク冒険者のみが参加できるらしくその大会に参加できるのは願っても無いことだ。なぜなら大会で優勝したあかつきには晴れて国家直属の冒険者になれるからだ。

 リズは一呼吸置いてから口を開く。
 
 「エントリーお願いします!」
 
 そう伝えると受付嬢は『少しお待ちください』と言って裏の部屋に消えていった。
 少し経つと受付嬢が手続きをするための紙を持って出て来る。
 
 受付嬢は手際よく大会の概要を私たちに伝えてくれる。そして4人ともエントリーすることを伝えてギルドの外に出る。
 
 「あと数日後か......国王様が開く祭りだ、皆気合い入れていこうな!」
 
 エリックがみんなにそう伝えると他の3人は満面の笑みを浮かべる。
 
 「もちろんだよ~、私たちなら負けない~!」
 
 レズリタがそう言葉を放つ。私もその通りでこの4人の力があれば優勝するのも決して難しいものではないだろうと思えてくる。

 それにこんな機会に自分の腕を試したくなってくる。私は出たこともない大会に夢を膨らませるのであった……。
 
 「それじゃあもう宿に行きましょ!」
 
 リズがそう提案するとみんな頷き賛同する。

 その後私たちは宿の手配をするのであった――――――。

 こうして宿を確保した私達はのんびりしているとあっという間に時が過ぎていく。ようやく落ち着けるようになったのでいつもより早めだが私たちは就寝した……。

 すると起きたら朝になっており、外に出ると茜色の日差しが差す中、人々は仕事に勤しんでいたりしている姿があった……。


 その光景を見るたびにこの国は良い国だということを実感させられる。
 
 「明日だね~! 大会!」
 
 「ええ! 絶対勝つわよ!」
 
 レズリタとリズが柄にもなくそわそわしながら声を高らかに上げる。普段からこんなに感情をあらわにした姿を見ないからな……。

 少し不安だがやるからには優勝を狙っている。全力でいけば大丈夫なはずだ――――。魔力も回復しているから明日の大会に向けては問題なさそうである。
 
 「ちょっと緊張するな......」
 
 「大丈夫だ! 4人の力を合わせれば怖いものは何もない!」
 
 私の不安に対してエリックが胸を張って応えてくれる。確かにこの4人ならいける気がする……。だが私達はSランクと言っても駆け出しなので、油断は禁物である。
 
 そして私たちは談笑をして一日を過ごのだった。
 
 朝、目が覚めるとベットから起き上がるとなにやら外が騒々しいことに気付く。窓をのぞくと明らかにいつもの風景とは違う雰囲気を漂わせている。

 今日は祭りだからかと思いながら外に出るとそこには目玉が飛び出るほどの光景が広がっていた。
 
 人々でにぎわっている屋台の数々、明るい表情をしている顔ぶれなどしているからだ。するとエリックも目を覚まし、私の隣にやってくる。

 窓越しに眺めているエリックに聞いてみるとどうやらこの騒ぎは国王様が今回する祭りに関して公表したからみたいだ。こんなに盛り上がるなんて思っていなかったので驚いてしまう。

 だがこんなに国民を熱狂させる祭りとなれば多くのSランク冒険者が参加してくるだろう……。つまり戦わなくてはならない相手が増えると言うことになる……。

 だがここまで来たら最後まで大会を楽しむのが懸命だろうと思い、少し跳ね気味な気持ちを抑えて朝食を取ることにした。そして私たちは昨日以上の人通りを掻き分けて城壁に向かった。

 もう朝早くでもこれくらいの賑わいを見せるのだ、大会になれば大騒ぎだろう……。私達は問題なく城前までやってくることが出来た。

 するとそこには多くの民が待ち構えており、祭りの盛り上がりを感じ取れる。どうやら開会式があるから皆こぞって見に来たのだろう……。

 すると皆が通る大きな入口とは別に裏手のほうに小さめの入口が存在していることに気が付く。
 
 「俺たちはあそこに行くぞ」
 
 どうやらエリックの話によると私たち冒険者は小さめの入口を使って中に入るらしい。こっちの方が落ち着くし私としては構わないが……。

 すると突然大きな音が鳴り響き、その方向に振り向くとなんと上空に花火が上がるのが見えるではないか……。

 恐らく王国騎士団が行う花火の魔法だろう……綺麗な光だ……。
 
 するとここで一人の騎士が壇上に上がってくると声を張り上げ話し始めた。
 どうやら今から開会式が行われ、その後そのまますぐに試合形式の説明があるらしい。