外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~


 「はぁはぁ......なんとか倒せたね」
 
 「ああ、洞窟だと狭いから戦いづらいぜ」
 
 緊張の糸が切れたのか2人はかなり疲弊していたようだった。だが、私とレズリタは異変を感じ始めていた。

 それは異様すぎる空間に突然魔物が現れたからだ。まだ警戒を解くことはできないと気を引き締めた方がいいだろうと思い私はみんなに注意を呼びかけることにする。
 
 「レズリタ、もしかしたらこの洞窟魔力で狂ってるんじゃない?」
 
 私はあのドレアな鉱石を思い出しつつレズリタに話しかける。
 
 それを聞いたレズリタはすぐに異様さを感じ取るため魔力を探る事に集中する。そしてその数分後目を見開きながら私たちに口を開くのだった。
 
 「鉱石の魔力でこの洞窟おかしくなってるね~」
 
 どうやら私の予想は当たっているらしく、この洞窟自体がドレアの影響を受けてループしているということだったのだ。

 なのでこの洞窟を探索するのには慎重にならなければならなかった。私は重たい気持ちになりながらも洞窟の奥へと足を進めることにする。

 しばらく進むと不気味な広い空間が広がっている。そこには赤い鉱石がいくつもはめられており異様な雰囲気を醸し出しているのだった。
 
 「不気味すぎてやばいんだけど……」
 
 リズが赤い鉱石の方を見ながら呟く。まあ、これだけ不気味なのだから仕方ないだろう。一刻も早くここから立ち去りたい気分だがパニックになるわけにはいかないので深呼吸をする。するとレズリタが立ち止まって口を開く。
 
 「この赤い鉱石発掘してみない?」
 
 レズリタがこの赤い鉱石を採掘しようとしている。なぜなんだろうと疑問に思っていると彼女は説明を始めてのだ。
 
 「少しずつ鉱石を取っていけば洞窟をおかしくしている魔力を減らす事が出来るし、普通と同じになるはずだよ。そうすればドレアも出てくるかもしれないから」
 
 どうやらこの異様な洞窟を正常に戻すのには少しずつ採掘をしなくてはいけないらしい。そしてレズリタが鉱山を発掘する為に魔法を詠唱する。

 鉱石を発掘している間、私たちは周りの魔物を警戒する。
 
 どうやらこの洞窟では魔力を使い鉱山を発掘していかなくてはいけないらしい。てことは魔法が使えない人がこの洞窟に足を踏み入れるとかなり大変なのではないだろうか?

  洞窟の鉱石が取れ続けている間も魔物が現れたりするかもしれないから結構やばい所なのかもしれないな。そう思っていると奥から足音が聞こえる。
 
 先ほどと同じ種類の魔物の鳴き声だろうか? 低い唸り声とともに何かがこっちに近づいてきているようだった。私はスキル発動の準備をして構えをとる。

 そしてその唸り声が聞こえる方向を見つめる。すると洞窟の奥から大きな影が現れる──
 その魔物は大きな犀のような姿をし背中に鉱石を身に着けながら威嚇してくる。
 
 「ゴーレムじゃねえか!?」
 
 「嘘!?」
 
 エリックとリズが驚きの声を上げる。
 厄介な敵に出くわしたな……。ゴーレムはSランクモンスターとして指定されている魔物の一種で普通の冒険者が相手するような敵ではないのだ。レズリタは今後ろで赤い鉱石を発掘している最中だ。ここは私たちで何とかするしかないな。
 
 リズ達は剣を構え戦闘態勢を整える、その瞬間ゴーレムが動きを見せたのだ── 動き出したゴーレムはリズの目の前まで詰め寄り大きな拳で攻撃を仕掛けてくる。

 その攻撃はリズの体に当たり、横に吹っ飛ばされてしまう。
 
 その隙にエリックがゴーレムの足に向かって大剣を突き刺そうとすると甲高い金属音とともに弾き返されてしまう。
 
 足の鉱石はとても硬く耐久値もかなり高いことが見て取れるほどだった。動きも素早いし防御力もある……かなり強敵なのは間違いないだろう。
 
 「なんちゅう強さだよ!? これがゴーレムか!?」
 
 リズはゴーレムの攻撃で壁まで叩きつけられてしまっている。エリックはゴーレムの攻撃を防いではいるが攻撃は通せていない。
 
 レズリタは少しずつ洞窟内の魔力を取り除こうと作業をしているようだが思った以上に早く終わることはできず時間が掛かっている様子だ。
 
 ただここで私が《ブリザード》などの広範囲に効果があるような魔法を発動してしまうと洞窟が崩壊してしまい、最悪生き埋めになってしまうかもしれないからだ。だとすると今使えるのはポイズンか影の龍力だろう。
 
 どうするかなと考えていると、ゴーレムにが私に向かって走り出す。いや違う、その目はレズリタの発掘する赤い鉱石を見ているようだった。

 私はそれを察し、すぐさま影の龍力を発動する。
 
 《ダークネス》
 
 私がスキルを発動した瞬間、影が動き出しゴーレムの足を縛り付ける。ゴーレムはその影から逃れようと必死に足を動かしてその場から脱しようとするが拘束を解くことが出来ないようだ。

 その隙にエリックはゴーレムに飛び掛かり斬撃を加える。しかし大きなダメージを与える事が出来ない様子だ。

 今は何とか封じ込めているが魔力に限界があるので長くは拘束できないだろう。どうすればいいのかなと私が考えていると後ろで掘削をしているレズリタが口を開く。

 なんとかここ周辺の鉱石は発掘することが出来たようだ。レズリタはこちらを見るとすぐに魔法をゴーレムに向けて詠唱する。
 
 「エリック! 少し離れて!」
 
 レズリタがそう言い放ち離れるように指示するとエリックは即座にその場からゴーレムから離れる。
 
 《フレイム》
 
 レズリタが魔法を詠唱すると炎がゴーレムを襲う。今度はダメージを受けてる様子を見せており、かなり効果的のようだ。
 
 そこへリズも参戦し、動きが鈍ったゴーレムをさらに斬り付ける。動きを鈍らされたゴーレムは二人の攻撃によって少しではあるが傷が目立ち始めたのだ。

 そしてエリックが空中に飛び大剣をゴーレムに振り落とす。
 
 その攻撃によって岩石で構成された巨体は地面へと崩れ落ち、二度と起き上がることはなくなったのだった。
 
 「な、なんとかやった......」
 
 私は魔力が空になってしまいかなり疲弊しながらもゴーレムを倒したことに安堵した。

 レズリタも私を見て『お疲れ様』と微笑みつつ、アイテム袋に赤い鉱石が沢山入っている。どうやらかなり採掘していたみたいだ。

 私はそれを手に取り赤い鉱石を眺めた。魔力に反応する鉱石の特性から察するに恐らくこれが原因だろうと確信が持てた。

 そしているとレズリタがリズの回復をするために《治癒の祈り》を発動している。普通回復魔法を習得するには多大なる努力が必要とされている。

 何故なら魔法には属性や使える適正が必要不可欠であり、それを見出だしてから魔法書に書かれた様々な魔法を習得して行く流れになるのだが……レズリタは適正関係なく努力して様々な魔法を習得することに成功したらしい。

 本当にレズリタは努力家だ。
 
 そして数分後、リズの回復がある程度完了すると私たちはさらに先へと進んでいくのだった。
 
 先ほどの魔物との戦いでは限界を超えた力を引き出してしまった影響からか疲労による倦怠感が体を襲う。
 
 「もう魔物は出で来ないよな?」
 
 エリックは恐る恐る口を開く。エリックの問いに私とレズリタはそんなことはないと告げつつ進むのであった。
 
 しばらく進んでいると光が刺すように明るくなっていき、広い空間に出る。その中心には鉱石が見える。
 
 これは恐らく……ドレアだ。レズリタはこの光景を見て目を輝かせていたのだった。
 
 「やっと見つけた~!」
 
 「え! 本当!?」
 
 リズとレズリタが嬉しそうに会話をしているのでやっと見つかったのかとドレアに目線を向ける。
 
 私たちの目の前には黄色く美しい鉱石が存在している。レズリタはドレアの近くに行き採取するため近づく。そして魔法を詠唱し、鉱石に向けて魔法を発動する。私たちはまた魔物が出ないか周囲を警戒した。

 まあ、魔力の影響を受けているものはこの洞窟にはなかったはずなのでおそらく大丈夫だとは思うけど……やっぱり念の為ね。
 
 《採掘LV4→5》
 
 レズリタがスキルを発動するとレベルが上がっているようだ。 そして数十分後、ドレアを入手することができたため撤退することになったのだ。

 私たちは来た道を戻ることになったのだがループしないか心配で気が気ではなかった。そしていざ地上へ戻ると時間はそんなには経過していないようなので安心した。

 私たちは肩を撫で下ろしエリックが口を開く。
 
 「命がいくつあっても足りないな……」
 
 エリックがしみじみそう呟いたと同時に私たちも深く頷くのだった。そして疲れきった顔で皆が同じ意見を揃えたことを言う 、あの不気味な洞窟に入るのは絶対やめようと……。
 
 その後は馬車に数時間ほど揺られ王都へと到着する。しかし、武器屋に行く元気は残っておらずとりあえず宿へと直行することとなった。

 そして朝起き、疲れがまだ残っているが何とか体を無理やり動かし武器屋へと向かうのであった。
 
 道をまっすぐ進んでいくと一本の剣が描かれた看板を掲げる大きな建物を発見したので早速中に入ることにする。

 建物の中はとても綺麗で立派な剣の絵などが壁に描かれていたりなど芸術作品のように感じてしまう程だった。
 
 「いらっしゃ......あ、リズさん!」
 
 出迎えてくれたのは20代くらいの女性だ。
 
 「もしかしてドレア見つかったの!?」
 
 「なんとか......採掘しましたよ」
 リズの顔はげっそりとしているが、エレーナさんはドレアを採掘出来たことにとても嬉しそうな表情をしている。よっぽど欲しかったのだろう。

 リズはエレーナさんとあれこれ会話をしたのち店内へと足を進めたのであった。
 
 「本当にありがとう! これでまた新しい剣を作ることができるよ!」
 
 エレーナさんはどうやらテンションがかなり上がってしまっているようでルンルンとした足取りだ。そしてエレーナさんはドレアを受け取ると私たちをある場所に案内してくれる。
 
 「約束通り、この銀の剣を譲渡するよ。 エリックさんにも銀の大剣をあげるからね」

 そう言うとエレーナさんはリズとエリックに銀色の剣を手渡す。

 エリックはその剣をぎゅっと握りしめるとリズと共に口を開く 。
 
 「やっぱりこれは凄いぜ! これだったらあのゴーレムも簡単に切れそうだ!」
 
 「本当に切れ味が凄いみたい!」
 
 二人が感想を言い合うなかレズリタは不満そうな顔を浮かべている。私が『魔法書も見に行くよ』とレズリタに伝えると目を輝かせ微笑む。一番頑張ってくれたのはレズリタだからしっかり見させてあげないとね。
 
 その意を汲んだかのようにレズリタは私の手を握る。ちょっと恥ずかしいが可愛いしまあいいかと思いレズリタの手を握り返しておく。

 そしてエレーナさんの店を出た後私たちはすぐに魔法書などが売っている魔法書専門店に向かうのだった。
 
 「にしても魔法書って習得するのにどれくらい時間が掛かるの?」
 
 「人によって違うけど早い人は一ヵ月、長い人は一年ぐらい掛かるよ~」
 
 私たちは歩きながら会話を楽しんでいた。やはり魔法書習得には時間が掛かるみたいだな……。
 
 「ラゼルは魔法は習得しないの? いつも使ってるのは魔物の能力っぽいけど......」
 
 「私も魔法を覚えようと努力したんだけど、うまくいかないんだよね」
 
 家族に追放される前は家の魔法書を漁っては練習したりもしていた。まあ、結局魔法を使うことが出来なかったんだけどね。
 
 そうしてしばらく雑談しているとあっという間に店に到着する事が出来たので中に突入するのだった。もちろん手をしっかり繋いで……レズリタが子供っぽくなってる!

  そんな訳で店内に到着したのだけどまず気になったのは私の視線に入って来た光景だった。
 周りを見渡すと物凄い量の本が陳列されているのだ。こんな量の魔法書があるなんて……驚きだ。
 
 「うわー! こんなに魔法書があるんだ」
 
 「すげえな」
 
 リズとエリックが周りを見ながら嬉しそうに魔法書を吟味し始める。なんだかんだ魔法にもあの2人は興味を持っていたみたいだ。
 
 するとレズリタが私の手を引っ張って2人とは違う所へ誘導する。
 
 「ど、どうしたの?」
 
 「ちょっと来て~」
 
 少し頬を赤くさせたレズリタに腕を引かれ魔法書の奥のコーナー連れてくると手を放してくれる。そこには多くの魔法書が綺麗に棚の上に並べられていた。

 するとレズリタがある場所に指をさしている。指をさした場所に目を向けると魔法書があり《雷属性の魔法書》と書かれている。
 
 「ラゼル、取って~」
 
 レズリタが子供らしく足をジタバタさせる。可愛すぎるのも問題なのかもしれないと思った私は早速その魔法書を取りレズリタに渡すと大事そうに抱きしめるのだった。するとレズリタが口を開く。
 
 「ずっと前からこの本欲しかったの~、ちょっと高いから買えてなかったんだけどね」
 
 「今ならお金も足りるし、買えるね」
 
 私がそう言うとレズリタが更に棚をキョロキョロとし《炎属性の魔法書》を発見し手に取る。他にも色々な魔法書に夢中になっている様子で手に取っては棚に戻すを繰り返している。レズリタはかなり興奮しているのだろうか口からヨダレが出ている……。
 
 そんな感じで各々好きな魔法書2冊を購入し店を出ることにしたのであった。
 
 「やった~! 魔法書買えた!」
 
 レズリタは魔法書に大喜びでリズとエリックは剣に夢中。

 するとレズリタがあの赤い鉱石を私たちに見せて口を開く。
 
 「この鉱石には魔力がいっぱい入ってるから魔法を覚えるのが早くなるの!」
 
 確かに普通魔法を覚える際は魔力を使うので積み重ねになる。ただこの鉱石を利用して魔力を補充していけばすぐに魔法が覚えれるということらしい。

 でもいずれにせよ努力は必須だからレズリタは努力家なのだろう。レズリタは例の鉱石を自分のアイテム袋に入れ幸せそうに持っている。

 そのあとは昼食を取ることにし、昨日私とリスタが食べていた和食店に向かうことにした。
 
 数分歩き、店に到着して中へと入り席に座る。今回はリズとエリックが隣同士に座り私とレズリタが隣同士に座る。
 
 丁度昼時なのもあって混雑をしている中、メニューを見ることにした。魔法書のおかげでテンションが上がっているレズリタはどんどんページをめくっており鼻息も荒くなっている。

 少し待っていると料理がテーブルに運ばれ大きな丼にご飯をもりつけ、その上に色んなものが乗っている食べ物で食欲がそそられる。
 
 「いただきます!」
 
 私が元気よく食事を食べ出すとレズリタも真似るように食事を食べ始める。
 王都でこんなにも美味しい料理があるなんて思いもしなかった。

 すると横でレズリタが目を輝かせており、料理を口に掻き込んでいる。リズとエリックもレズリタが美味しそうに料理を味わっているので口に食事を運ぶ。

 すると二人の目がキラキラと輝き始める。余程美味しかったのだろうと思う。
 
 そのあと私たちは食事を終え、会計を済ませる。
 
 「おいしかったね~」
 
 「こんなに美味しい店があったなんて知らなかった!」
 
 「ラゼルの食べっぷりも凄かったぞ……」
 
 私たちは歩きながら会話をし、宿に向かう。到着して部屋に入るとレズリタは魔法書に夢中になってベッドに入り込んで読んでいる。

 「剣を貰えたし最高!」
 
 リズはベッドに寝そべりながらニヤついた顔でそう言っていた。ちなみにエリックは風呂場にいるみたい。
 
 そして私たちは雑談しながら部屋で時間を過ごすことにする。
 
 「そういえばそろそろギルドの依頼でも受けに行かない?」
 
 「良いね~、私たちもパワーアップしたからね」
 
 リズとレズリタはやる気に満ち溢れているようでガッツポーズを取っている。どうせここにエリックもいたら同じ感じで言うだろう。
 
 そんな訳で私たちは次の日の朝ギルドへと向かうことに決め、明日に備え寝たのであった。

 「おっはよ~」
 
 次の日の朝、レズリタがそう元気な声を出しながら私の背中を叩く。
 
 まだ眠い私は寝ぼけながら起き上がり着替えを済ませる一階に降りて歯を磨く。ようやく起きたところでお腹はペコペコだった為、宿の食堂でご飯を食べることにする。

 するとリズ達も起きてきたので一緒に朝食を食べ私たちは宿を後にすることにした。
 
 宿から出てギルドへ行くと結構人が多いことに気がついた。依頼が張り出されているボードの前には多くの冒険者たちがいて盛り上がっている様子だ。

 私たちもその中を進んでいき受付嬢の場所へ到着する。相変わらず美人な受付嬢だ。
 
 「あ! ラゼルさん!」
 
 いつもは疲れている顔持ちの受付嬢が嬉しそうに挨拶をしてきたので私も思わず挨拶を返してしまう。リズ達はまだ眠そうな目をこすっていた。すると受付嬢が口を開く 。
 
 「依頼が沢山来ていますよ!」
 
 ……とのことだ。私はまだゆったりとしていたいが、リズ達はパワーアップした力を早く試してみたくて仕方がないといった様子だ。

 「なんかSランクレベルの依頼とかってありますか?」
 
 私が聞いてみると受付嬢は紙をペラペラとめくり始め、一ヵ所で止めて私に向けてその依頼書を見せる。
 
 その紙にはヤギンを討伐してほしいという依頼だった。ヤギンは全長3メートルぐらいの黒い体毛に二足歩行で立ち鋭い2本の牙をもっている魔物であり、ヤギのような形をしているようだ。

 知能も人並にあるので攻撃する際はまず距離を取ることに専念するといわれているみたい……。キツイかもしれないななどと考えてるとリズ達がそわそわし始めるので仕方なしに依頼を受付嬢に出し受理されるのを見届ける。
 
 「今回の依頼はとても危険ですので気を付けてくださいね」
 
 受付嬢がそう言ってくるので私たちは頷く。
 
 そして確認も取れたので早速私たちは馬車に乗り、ヤギンが出没する目的地へと向かうのであった。
 
 「そういえば今回ヤギンが出るのは王都から離れた村らしいよ」
 
 私が皆にそう伝えるとリズ達は今回受けた依頼の情報を確認しているようだ。
 
 「あんまり情報がないんだね~」
 
 「ああ、しかも村についても情報がないな」
 
 レズリタとエリックが少し困惑気味にそう言う。まあ、誰も受けたがらない依頼だから余ってたんだろうなと私は思った。そして私たちは話しながら馬車の中で過ごしていると目的地に着く。
 
 村の周りは木々だらけでおどろおどろしい雰囲気に包まれていた。まるであの時ウルフに襲われたあの夜を思い出すような感じだ……。そのまま私たちは馬車を降りて歩き、村の中に入り込む。

 今の所誰かがいることなど確認は出来ないため村人はまだ避難などしていないのだろう。私たちはそのまま村にある家へと行きノックをする。だが誰もいない様子。
 
 私は少し考えると村長の家に向かってみようと皆に提案してみる事にする。そう話すと皆が頷く。
 
 そして村長の家に到着をしノックするが、結果は同じであった……。
 
 「おいおい、どうなってんだこりゃ」
 
 エリックはこの異様な光景を見て思わず口を開く。他の皆も同じように言葉を失っていた。そう村には誰もいないのだ……。
 
 出発する前までの話では村には人がそれなりに住んでいると紙に書いてあったがどういうことだろうか。

 そして村人たちはどこへ行ったのか全く見当がつかない状況だ……。
 
 その後、私たちはそのまま村の探索を始めたがどの家も空っぽになっている……。

 それから数時間を探索に費やしたが全く手掛かりが見つからない。
 
 「どうして誰もいないの~」
 
 「ちょっと不気味よねこの村」
 
 リズとレズリタも村の不気味な雰囲気に驚いてきたのか少し震えながら声に出す。
 確かに廃墟のような雰囲気、不気味な静けさは異常としか言うほかない。
 
 ここまで来たらギルドに一旦連絡をしといた方ががいいのかと思い始めたのだった……。
 それから私たちはとりあえず馬車に戻ることにした。

 
 もう既に辺りは暗くなり始めていてこれ以上暗い中で動くのも危険だと思ったからだ。
 
 「アァァァ......」
 
 すると森の奥からなにか唸る声が聞こえてくる。私たちはただ事ではないと思い馬車へ向かおうとしていた足を止め森に一歩足を踏み入れる。足を踏み入れていくと木々の間から得体の知れない生物が現れたのだ。

 体長3メートルを超える大きな漆黒のヤギがいる。頭には大きな太い角、そして鋭い牙に赤い目玉……見るからにただ者ではないという空気が漂っている……。
 
 これはかなりヤバい......。と思っているとリズが私に声を掛ける。
 
 「大丈夫、今の私たちはパワーアップしているからきっと勝てるよ」
 
 リズがそう言うとエリックとレズリタも無言で頷いている。

 いや私はパワーアップしてないんだけどとツッコミたいところだったが口には出せなかった……。そしてヤギンは4人の姿を見るなりこちらにゆっくり近づいてくる。

 私たちは一応戦闘態勢に入るが、いざこうして近くで見てみるととてつもない恐怖心が襲う……。赤い目はこちらを見ており口からはよだれが垂れている……。
 
 そしてヤギンは雄叫びの様な声を出すと4人に飛び掛かり、鋭利な爪で引き裂こうとしてきた。

 すぐにレズリタは魔法を発動、私たちに向かってくる鋭い爪が燃え、ヤギンの左手を焦がす。するとヤギンは即座に私たちから距離を置いた。

 流石に知能があるようで、簡単には接近戦に持ち込めないと判断したのだろう。
 レズリタの魔法に苛立ちを感じているのかヤギンは牙をむき出しにして臨戦態勢に入っている様子。

 するとヤギンが近くの木を引っこ抜き私たちの方へ向けて投げてくる。

 あの巨体で素早く木を投擲してきたことに恐怖を感じたが、すぐにリズとエリックが木を剣で斬り裂き無効化する。

 木が粉砕した煙が立ち込めている中、ヤギンが思いっきり地面を蹴り超スピードでリズとエリックに向けて急接近する。
 
 「俺たちの剣で斬り裂く!」
 
 そう言いリズとエリックは剣をヤギンに向ける。
 
 そして2人は剣で攻撃を行おうとするのだがヤギンはすぐに身体を回転させながら剣撃を避ける。
 
 「速い奴ね!」
 
 リズが攻撃を避けられた事に怒ったのか声を上げている。そんな中ヤギンは足を止めることなく私たちの方に攻撃を仕掛けてくる。

 どうやら魔法使いは最優先に処理するべきだと思っているらしい。
 
 ならばと言うばかりに私はヤギンの方に向かってスキルを発動する。
 
 《ブリザード》
 
 手から放たれた極低温の空気の渦はヤギンと私の間に発生、瞬間的に景色を白くし大きな音をたてる。私も魔法に驚いたのかヤギンは少し下がってしまう……。

 するとその雪雲の中からリズ達が物凄い勢いで飛び出してきたのだ。まるで瞬間移動をしているような速さで。そのまま2人はスキルを発動する。
 
 「ブレイクッッッ!」
 
 「サンダークラッシュッッッ!」
 
 2人の攻撃はヤギンの体に深々と突き刺さる。レズリタはこの機会を見逃すことなく魔法を発動する
 
 《煌めく雷(ブライトボルト)》
 
 2人の剣で動きを封じられていたヤギンに向かって放たれた雷はヤギンの体を撃ち抜き大きくのけ反らせる。そしてエリックとリズはもう一撃お見舞いしてやろうとするがその攻撃を読んでいたようにヤギンは大きく横に飛んだ。

 やはり3人ともパワーアップしているようだ。新しい技を習得しており動きがとんでもないことになっている……。
 
 ヤギンは攻撃を受けた為立ち尽くしている。だがリズ達はそんな事気にした様子も無く次の攻撃を繰り出そうしていた。

 エリックとリズは左右に跳ぶと同時に魔法を同時に発動する。
 
 《スラッシュ》
 
 《放電》
 
 エリックが縦に斬り裂き、そしてそれと同時にリズが剣から電気を発生させてヤギンに鋭い一撃を決める……。

 ヤギンは体が斬られた衝撃でその場に倒れ込む。武器を変えるとこんなに強くなるのか……。そう思っているとヤギンは立ち上がろうとしている。

 だが足を切られているからか立ち上がれないみたいだ。
 
 「これでとどめよ!」
 
 リズがヤギンにとどめを刺そうとした瞬間――――――
 
 「おやおやおや? 何をしているんですう?」
 
 リズの後ろから声が聞こえる……。
 反射的にリズは後ろに身体を向けると異様な男がこちらに笑みを浮かべ立っていた……。
 
 その異様な男を見てまずレズリタが構える。
 
 それもその筈、そこにいる男が発する雰囲気は人間じゃないとすら思わせる程不気味だったからである……。それにその男は少し汚れた白衣に変な化粧をしている男だ……。
 
 「だ、誰!?」
 
 「あ――――、わたくしですか? 私は龍神教の信者をしているオスカルといいます」
 
 龍神教とは会いたくなかった宗教の1つである。龍神を信仰しており、各国で犯罪行為をしているとか……。一度私たちはヨルフとかいう宗教の幹部に襲われた事がある

 。こんな不気味な男を見てしまえば身構えない筈がない……。
 
 そしてその怪しげな男は口をニヤニヤとさせて口を開く。
 
 「それそうとですねぇ? そこにいる魔物、わたくしに譲ってくれませんかあ?」
 
 意味が分からない。目の前の魔物をなぜ譲れと言われているのか……。ただこいつの言うことをすんなり聞く気は毛頭無い。
 
 すると怪しげな男は笑みを浮かべてこう言い出した。
 
 「ならあ? ここで死にますかねえ?」
 
 その言葉を聞いた瞬間、リズは剣を男に突きつける。だがその瞬間、無数の刃物がリズに襲い掛かる。
 
 「な!?」
 
 リズは男からバックステップをして距離を取る。気づくのが遅れていたらただでは済まなかっただろう……。
 
 刃物が来た先は暗闇であった。暗闇の先には多くの信者たちが武器を振り回して現れる。
 不気味で虚ろな目をこちらに敵意を向けてくる。
 
 リズとエリックは互いに顔を合わせると頷き、戦闘態勢に入る。
 まず動いたのはリズだ。放たれる矢を全て回避し、信者が振りかざす武器を全て防ぎ剣で斬っていく。

 エリックも同じタイミングで動き出し、信者の刃物を巧みに自身の剣でいなしながら確実に倒す。
 レズリタも魔法を唱え信者たちの行く手を阻んでいる。
 
 流石Sランク冒険者になっただけあって魔法の扱いや剣の腕もかなり卓越している……。
 
 私はそう思いながら怪しげな男に視点を移す……。怪しげな男は手を出す素振りを見せないまま只々ニヤニヤしている……。

 一体何がしたいのか疑問で仕方ない。

 すると信者達が魔法を詠唱しこちらに向かって放つ。
 
 「嘘!? 魔法も使えるの!?」
 
 リズ達が驚きの声をあげて避ける。
 
 3人とも動きも凄いスピードなのだが手数の多さが対処しきれていない……。
 私はその様子を見て《ブリザード》を発動し、信者たちとリズ達との間を埋め尽くす。

 するとオスカルが笑いながらこちらに話しかけてくる。
 
 「おやおやおや? あなたは魔族の能力を使うことが出来るのですかあ?」
 
 「そうよ……。世間では外れスキルと言われてるけどね」
 
 それを聞いた男は口を歪ませながら腕を大きく上げる。それを見ていたレズリタは私の元に来ようとする。
 
 だが無数の魔法に邪魔されてこちらに近づくことが出来ない様だ。リズたちも近接攻撃を持った信者達と戦っている為接近出来ずにいる……。

 だがエリックとリズの表情は明るくない。敵の数が多すぎるのか次々と迫ってくる教徒の対処だけで手一杯だった。
 
 「そうですか! そうですか! 私も世間では外れスキルと言われていたんですよ!」
 
 するとオスカルは能力を発動する。
 
 手からは無数の糸が出てき地面にも張り巡らされてゆく。

 なんだ……、何を始めようっていうんだこの男は……?

 一見ただの糸にしか見えないが当たるとどうなるのか少し不安だ……。
 
 するとオスカルは私の顔を見ながら告げる 。
 
 「私は糸を操るのですぅ。お手柔らかにお願いしますねえ?」
 
 《星糸》
 
 そして次の瞬間、私の目の前から糸が飛んでくる……。
 
 私は素早く回避行動をしたお陰で糸を躱すことが出来た。何とか躱せたが放たれた糸は木を真っ二つ斬り落としていた。

 私は背後に構えていた木々が一撃で真っ二つ斬られているのを見て鳥肌が全身を覆う……。

 あんなもの喰らったらひとたまりも無いぞ……。リズ達は教徒の人数が多すぎるのもあって苦戦を強いられている……。もし私がやられたら次の標的はリズ達になだれ込むだろう……。

 どうにかして私がこいつを倒すしかない。そう思い私はスキルを発動する。
 
《ダークネス》 するとあたりは暗闇に染まり、オスカルの操る糸は見えなくなる。
 
 だがオスカルはまだニヤニヤと笑っている……。
 
 「あなたの能力は素晴らしいいいい! もっと見せてくださいよおおおお!」