外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~


 伯爵の勧めに頷くと私たちはその本を受け取り最初のページを開いてみた。
 
 そこに書いてあった文は短く、読むのにもさほど時間は要しなかった。
 
 この世界を創造した龍神王、そしてそれに仕えた五龍神……。
 
 東、西、南、北、中央、に龍が降り立ち、世界を支配していた。
 
 ある日、五龍神は人間に龍力という力を与え、人間は瞬く間に進化・発展を遂げていく。
 
 やがて炎を生み出す者、水を作り出す者……多種多様なものが生まれ五龍神と同等の存在を手に入れる事が出来た。
 
 しかし、力を得れば野望が生まれ龍の力を使おうとする者が現れる。
 
 そうやって龍力を奪い合って出来たのが龍神教だ。
 
 その時、龍神王はこれを重く受け止めることなく、放置していたそうだ。
 
 龍神教には仲間意識はなく、目的も不明、だがそれぞれが五龍神の意志を忠実に守っている。
 
 その結果が今のこの世界らしい。
 
 これを知る龍神教徒たちはこの大陸の各地方でゆっくりと確実に信者を増やしていって今に至るようだ。
 
 「今回私たちが遭遇した白龍というのは?」
 
 疑問に思った私は伯爵に聞いてみた。
 
 すると彼は眉間にしわを寄せながら口を開く。
 
 「白龍は西を担当している龍神だ。今回遭遇したヨルフ・シルキーは白龍の龍力を持っていたんだろう」
 
 そんなヘスター伯爵の言葉に私はある考えが浮かんだ。
 
 龍神教のヨルフ・シルキーが五龍神の白龍を担当していていたと、じゃあ本物の白龍は今どこにいるのだろうか。
 
 そんなことを考えているとヘスター伯爵は目を閉じ大きく深呼吸をした。
 
 そんなことを考えているとへスター伯爵が再度口を開ける。
 
 「世間的にヨルフ・シルキーは白龍の権利者として知られている。だが他の権利者について情報はない」
 
 他の情報がない......つまりそいつらを見た者は生きて戻ってきていないって事か……。
 
 私はヘスター伯爵の告げたその事実に息を呑まざるを得なくなった。
 
 そんな重苦しい雰囲気を打ち破ってくれたのは今まで口を閉じていたリズだった。
 
 「そのヨルフとかいう奴を私たちは追い詰めることができました……次は逃がしません!」
 
 その言葉に私たちは頷いた。
 
 するとヘスター伯爵は笑顔になり口を開いた。
 
 「また何かあった時はよろしく頼むよ」
 
 そう言って伯爵は頭を下げた。
 
 そんなヘスター伯爵の言葉に背中を押された私たちは気合が入るのであった。
 
 伯爵への報告が終わり私たちは屋敷の外へと連れ出される。
 
 するとそこには豪勢な馬車が1台止まっていた。
 
 「お待たせしておりました、皆様をお送りいたしますのでどうぞお乗りください」
 
 使用人の方から言われ私たちは言われるがままに馬車へと乗った。
 
 中は向かい合うように4人が座れる程の広さはあった。
 
 私たちの全員が乗ったのを確認すると出発の号令がかかる。
 
 号令が掛かると馬車のスピードがみるみる上がっていく。
 
 このスピードだと予定よりも早めに王都に着くだろう。
 
 そして伯爵邸から遠ざかるに連れて気持ちが落ち着き眠気が襲ってくる。
 
 リズとレズリタが窓に張り付いて興奮しているのをよそに、私とエリックは疲れて寝ている。
 
 そんな状態のまましばらくの間進んでいると、突然視界が開ける。
 
 ゆっくりと馬車が減速し停まった。
 
 「お客様到着しました」
 
 外の景色を見た瞬間私の眠気は完全に覚めた。

 「はははは! 姉さんがいなくなってから最高だぜ! 外れスキルなんかが家にいたら汚れてしまうからな!」

 クルスは外れスキルを持った姉さんが家から追放されたのを喜んでいる。
 
 なにせ外れスキルだぞ?

 僕の姉さんが外れスキルだなんて周りに知られたら恥ずかしいなんてものじゃない。
 
 そんな事を考えながら、追放された姉さんが一人になって行く姿を想像する。
 
 そんなこんなで姉さんがいなくなってから数日後、僕に剣聖のスキルが発動した。

 本当に嬉しかった、やはり俺は凄い人間だと実感してしまうほどに。
 
 「記念に飯でも食うとするか! おい召使い! 僕に何か料理を作れ!」
 
 召使いにそう言うが、全く動いてくれない。
 
 おかしいな?以前は偉そうにしていたから言うことを聞いていたのに……。
 
 それどころか召使いの女は僕を軽蔑するような目になっていく。
 
 「おい! 僕を誰だと思っている! レスト伯爵家であるクルス・レストだぞ!」
 
 少し脅しつけるように強い言葉を放つが、女は聞こえていないのか動こうともしない。
 
 おかしい……これじゃあまるで僕が居ないかのような反応だぞ?

 そう思った僕はあたりを見渡すと召使いが離れていく。
 
 「はぁ? 僕にそんな反抗的な態度をとっていいのか? 僕のスキルは《剣聖》だぞ!」
 
 僕が大声をあげて脅すも全く動じない召使いにイラつく。
 
 「な、何だよ。言っとくがな! お前らなんか簡単にクビにできるんだからな!」
 
 すると女の召使いが口を開く。
 
 「ラゼル様が出ていった事にクルス様は何も感じていないんですか?」
 
 「は、はぁ?何を言ってんだ?」
 
 何を言っているのかと聞き返すが、答えてくるのはまた違う女の召使い。
 
 「ラゼル様は外れスキルでしたが私たち召使いにも優しく接し、人に気遣いができる素晴らしいお方です」
 
 「あ? もう何を言ってんだよ!」
 
 そうして周りの召使いたちの目は冷たい目線を向けてきている。
 
 すると再び女の召使いが話しだす。
 
 「ラゼル様を追放したこの家はもう終わりですね」
 
 「ああ? 何だと? もう1回言ってみろよ!」
 
 この召使いは僕を見下していると思い、ふざけるなと思い僕は掴みかかる。

 だが召使いは顔色を一切変えない。
 
 「お前! 僕に歯向かうとはなんだ、おい!」
 
 「そうやって感情的に走り、暴力を振り出す、それで当主が務まるとでも? それではレスト家は滅ぶだけですね」
 
 「務まるに決まっているだろうが! 僕は最高のスキルを当てた才能ある人間なんだ!」
 
 僕の持っている《剣聖》は最強のスキル、だからレスト家に外れスキルを持った人間なんていらないんだよ。
 
 「……またそれですか? 私たち召使いはあなたが次期当主になれるとは思いません」
 
 女の召使いはそう言い放ちクルスの手を振り払う。
 
 「ああ? ふざけるなよ!」
 
 「では仕事に戻ります」
 
 何なんだ!ここの召使いどもは、本当に何なんだよ!僕は次期当主だぞ!

 「何が気にくわないんだよ!くそが! 」

 もう何もかもめんどくさくなった僕は、ただ怒鳴り散らしながら部屋に戻る。
 懐かしい風景がそこにはあった。

 辺り一面見渡す限り草原が広がり、空は青く雲ひとつない青空。
 
 そして目の前には王都へと続く門がある。
 
 私は馬車から急いで降り立つと懐かしいその場所を見渡たす。
 
 「久しぶりだな……」
 
 わずかながらの寂しさを感じて私はつぶやいていた。
 
 そして馬車が進み王都の門に着く。
 
 「開門!」
 
 門番が声高々と宣言すると、門が音を立てて上に上がっていく。
 
 門が完全に開くと馬車は進み始める。
 
 中に入っていくと家が並んで建っていて、石畳の道が続いている。
 
 そんな見慣れた光景を馬車が進んでいく中で私たちは話している。
 
 「やっと着いた~」
 
 「まさかこんなに早く到着するとは……」
 
 そう会話しているのはレズリタとエリックである。
 
 エリックが言う通り移動時間はかなりの短縮となり予定よりも早く王都に着くことが出来ている。
 
 「到着です」
 
 馬車の掛け声と共に私たちは降りる準備をする。

 そうして準備が終わると使用人は馬車の扉を開ける。
 
 開かれた扉からエリック、レズリタ、リズ、私の順で馬車を降りる。
 
 そんな私達に向かって丁寧に頭を下げてくれる。
 
 「今回はありがとうございました」
 
 「こちらこそありがとうございます!」
 
 私たちは馬車の運転をしてくれた方に感謝の言葉を述べると馬車はまた走り出す。
 
 そして完全に馬車が見えなくなると私たちは自然と顔を見合わせた。
 
 「それじゃあギルドに報告に行こ~!」
 
 レズリタが元気よく言うと私たちも大きく頷く。
 
 私たちは久しぶりの王都を歩く。

 街は多くの人で溢れており、繁華街に近づくと色々な店から商人たちの声が聞こえてくる。
 
 そんな人達を横目で見ながら歩いていると、やがて大きな建物が現れる。
 
 「やっと着いたな!」
 
 「これでランクがSに! わくわくするよ!」
 
 「報酬金も楽しみだよ~!」
 
 3人が盛り上る中私は扉を押して中へ入っていく。

 中に入ると人で溢れかえっており、建物の壁にはたくさんの依頼書が所狭しと貼り付けてある。
 
 「あ! ラゼルさんお疲れ様です!」
 
 「大変でしたよー」
 
 私と会話をしているのはここ王都のギルドで働く受付嬢だ。
 
 「依頼討伐お疲れ様です! へスター伯爵から依頼完了のお話を承っております!」
 
 受付嬢がそう言うと、早速書類の準備をしてくれた。
 
 書類が机の上に出されるとさっきまで盛り上がっていた3人も会話を止めて様子を見ている。
 
 「まず冒険者パーティーのランク昇格についてです」
 
 受付嬢の話を私たちは前のめりになって聞いている。
 
 「冒険者パーティーのランクがSランク昇格です!」
 
 その言葉を待っていたと言わんと言わんばかりに私たちは笑顔になる。
 
 「やった!」
 
 私が喜ぶと続くようにリズ達も立ち上がる。
 
 「それと、ヘスター伯爵からの報酬も用意されていましたのでお受け取り下さい」
 
 とんでもない量の報酬金を渡されると私たちの笑顔はより深まった。
 
 「こんなにもらえるんですか!?」
 
 カウンターの上に置かれた報酬金を見てリズは驚愕している。
 
 それもそうだろう、冒険者は給料が安定するものではなかったので、今回ほどの報酬額は正直見たことがない。
 
 そんな私たちを見た受付嬢は笑顔だった。
 
 「その金額はみなさんの4人での功績が称えられた結果ですよ、前回よりもずっと魔物を討伐していますので当然ですね」
 
 私たちの功績か……まさかこんなに称えられるとは思ってなかったな。
 
 そう思っていると受付嬢は次に移る。
 
 「そういえば一つ言わなくてはいけない事があるんですが......」
 
 受付嬢が急に改まった態度を取るものなので、私たちは何事かと思った。

 受付嬢の顔が険しくなっているのがよく分かる。
 
 「ここから先は少し他の冒険者の方へ聞こえないようにお願いします」
 
 どうやらいい話ではないらしい。
 
 私たちは頷いてから話を聞こうと耳を傾けた。
 
 「国王様があなた方にお会いしたいとおっしゃっているそうなんです」
 私はそれを聞いて頭が混乱する。
 
 「ほぇ?」
 
 リズたちも驚きのあまり声が変な声を出す。
 
 受付嬢は苦笑いを浮かべる。
 
 「やっぱりこんな反応になりますよね……当然といえば当然です」
 
 申し訳ない顔をする受付嬢だが、急にそんな内容を伝えられて理解できるかと言われると、不可能な話なので仕方がなかった。
 
 なぜ国王は私たちに?へスター伯爵が何か言ったのだろうか?

 聞き間違いではないのだろうか?
 
 そんな考えをしながら私は口を開けた。
 
 「それって......へスター伯爵が国王様に情報を?」
 
 すると受付嬢は大きく頷く。まさかのまさかだ、どうやらへスター伯爵が国王に私たちのことを伝えてくれていたみたいだ。
 
 それでもなんで?っていう疑問は残る。もしや龍神教のことについてだろうか? そんな考えをしていると受付嬢が口を開く。
 
 「宮廷に行ってみてはいかがですか?」
 
 リズ達はだんまりを決め込んでいる。

 そりゃそうだ、もし変なことでも言えば首が飛びかねないのだから。
 
 考えれば考えるほど嫌な想像が頭に浮かび私は現実逃避したくなってくる。
 
 そんな私たちを受付嬢は見ていると優しく口を開いた。
 
 「あなた方はもう冒険者ランクSなんですよ? 自信を持たなくては行けませんよ」
 
 そう言われると返す言葉もない。

 冒険者ランクSはギルドの代表に近い存在である。

 そんな人が動揺していては他の冒険者に示しがつかないだろう。

 それを理解した瞬間リズの顔は穏やかなものになる。
 
 「分かりました! 国王様のところに行きます!」
 
 「ありがとうございます! もう少しで貴族様の移動に使われる馬車がもうすぐ着ますので少しお待ちください!」
 
 リーダーが行くというんだ、私たちも行くしかないだろう。
 
 「ぎょえ~」
 
 「お、俺らが国王様に会うのか!?」
 
 エリックとレズリタは緊張で変な声を発し、固まっている。
 
 すると時間が経つにつれて人が集まり馬車を覗くように見に来た。
 
 そんな時間が続き、私も内心はかなり動揺しているが出発の時間となった。
 
 「こ、怖えよ――――!」
 
 馬車の中でエリックは情けない顔で叫びを上げる。
 
 そんなエリックを見たレズリタは肩を落とし呆れたようにため息をしている。
 
 「はあ……めっちゃ緊張する……」
 
 「元気出してラゼル! それに国王様に会わないと失礼になっちゃうよ!」
 
 ぐうの音も出ないな。それにリズに説教されてしまった。

 馬車の外では御者が馬を操作している音が聞こえてくる。
 
 そして数分後、到着した場所を見て私は感嘆の息を漏らすのだった。
 
 目の前に広がっていたのは美しい建物が並んでいる。

 国王様なだけあり凄い良い場所に住んでいるものだ。
 
 そう思っていると大きな門の前にたどり着く。

 そこには数人の兵士が立っていて厳重な警戒態勢となっている。
 
 どうやらすぐには通らせてもらえそうにないな、と思っていると馬車から使用人が出てくる。
 
 馬車から出た使用人は門の兵と話し始める。
 
 「冒険者をお連れしました、へスター伯爵からのご紹介です。」
 
 使用人がそう伝えると兵士が門を少し開け中に入っていくよう指示を出した。
 
 大きな門が音を立てて開いていき私たちは宮廷の敷地内に入っていく。
 
 「凄いな……」
 
 そんな感想しかでないくらいに宮廷の敷地は広かった。

 リズとレズリタも宮殿に見惚れている。

 一方エリックはというと……周りなど見ておらず開いた口が塞がらないようでフリーズしている状態だった。

 そんな私も含めて全員が驚いていたのである。
 
 豪華な建物や訓練所などがあり見ていて飽きないものだ。

 装飾や美術品はどれも一流でその壮大さに私は見入ってしまった。
 
 「ここからは私が案内しよう」
 
 なんかこの声をどこかで聞いた覚えが……。

 そう思い顔を見るとそこには黄色い髪色をした騎士が立っていた。
 
 「エルミア王国騎士団長、リスタだ」
 王国騎士団長というワードを聞きリズ達は目を白黒させている。
 
 驚くのも無理はないだろう、なぜなら私の前に王国最強の騎士がいるのだから。
 
 「ええええええ?」
 
 リズ達はいまだに状況を呑み込めていないようだ。
 
 「王都周辺に魔物が大量発生したときは助かったよ」
 
 その言葉を聞きリズたちはハッとする。

 どうやらやっと状況が吞み込めたようだ。
 
 「ま、まさか……! あの時精霊使いですか!?」
 
 リズがそう言うとリスタは大きく頷き満面の笑みで口を開く。
 
 「君たちはこれから国王に会ってもらうことになるのだが、その重圧を感じているようだね」
 
 エルミア王国の国王に会うのだ、緊張するのは仕方がない。

 発言を間違えればそこで人生終了になってしまう。
 
 リスタは続けて口を開く。
 
 「気を張り詰めすぎてしまうのも良くないよ」
 
 リスタの助言通り私は気を張りすぎたかなと思い深呼吸する。
 
 その姿を見たリズたちも私の真似をして深呼吸をし始めた。
 
 そんな私たちを見てリスタは顔を緩め口を開く。
 
 「それでは行こうか」
 
 私達はリスタについていく形で中に入っていく。

 道中では豪勢な家具などがあり、どれも雰囲気と合っていて荘厳だ。
 
 歩き続けること数分、目の前には大きな扉が待ち構えていた。
 
 どうやらこの場所が目的の場所らしい。ここまでは緊張をあまり感じずに歩いてこれた。
 
 だが今は何故か緊張に体が覆われるようだ、この先には王国の頂点がいると思うと嫌な汗が溢れてくる。
 
 その思いを表情に出さないように全員で身だしなみの確認をしリスタの方へと向く。
 
 「準備はいいか?」
 
 リスタの言葉に私達は一斉に頷く。

 それを確認できたのか、リスタは笑顔を見せ口を開く。
 
 「では行くぞ」
 
 そう言って私達を前開きゆっくりと大きな扉は開いていく。

 扉の先には赤い絨毯が引かれており、左右には兵士が二人並んでいる。
 
 そしてその先には大きな椅子があり堂々と腰掛けている人物がいた。

 座っている男の表情は険しいものであり緊張でどうにかなりそうだ。
 
 そのまま真っすぐ歩いていくと私達は膝をついて頭を下げる。

 すると重たい重圧が体にのしかかってくるようで息苦しく感じる。
 
 そんな状況に私は下唇をかみしめて耐える。

 隣ではリズ達も同じことをしているみたいだ。
 
 そんな中私の耳に声が聞こえてきた。
 
 「楽にしてよい」
 
 声をした方向を見るとそこには国王が座っている。

 今まで見てきた誰よりも堂々としていて風格漂う偉大さが感じられ、先程の息苦しさなど忘れてしまうほどだった。
 
 「我が名はバレン・エルミア、エルミア王国の第5代国王だ」
 
 私たちは胸に手を置いて軽く頭を下げる。
 
 「へスターからは話を聞いている。それゆえお前たちに聞きたいことがある」
 とてつもない緊張感で手に汗をかくのを感じる。
 
 「お前たちは龍神教と接触したと聞いたが本当か?」
 
 ここで私は顔を起こし陛下を見る。

 その問いにどう答えるか一瞬戸惑ったがゆっくりと口を開く。
 
 「はい、龍神教と接触しました」
 
 龍神教は各国で犯罪行為を起こしている危険な集団だ。

 そんなのと接触したなどと聞けば一瞬で軍隊が動き出すであろう。
 
 龍神教の人間を見かけたら必ず殺せとまで言われている。

 それほど警戒されている存在である。
 
 「戦ってどう感じた?」
 
 陛下はとんでもないことを聞いてくる。

 そりゃ普通に怖かったに決まっているしあんな禍々しい人間見たことないんだから。
 
 ただ禍々しいだけじゃなく能力もかなり強かったし。
 
 リズ達は緊張のためか口を開く事ができない。

 なんとか私が伝えなければ、と思い口を開く。
 
 「今回対峙した敵は龍神教の中では下の方であろうと考えます」
 
 私は感じたことを正直に伝える。

 たしかに能力は強かったが使いこなせていない感じがしたからだ。

 それに精神が幼いということもあって上手く制御できていなかったのも察することが出来た。
 
 その言葉を聞き、陛下は険しい表情から一転してフッと笑う。
 
 「下の方か......実に面白い回答をしてくるな」
 
 どこか楽しんでいるような、そんな顔だった。
 
 「ではこの4人の中で一番強い者は誰か?」
 
 その質問に私達は静まり返る。

 正直私ではないだろう、私はリズやエリックのような剣技は使えないし、レズリタのように様々な魔法も使えない、はっきり言ってこの4人の中では私が一番弱いであろう。

 それに経験値も圧倒的に3人の方が積んでいるのだから。
 
 そう思っていた時、横にいたリズが口を開く。
 
 「ラゼルです」
 
 え?今なんて? 思わず口に出してしまうところだった。

 リズは顔色を一切変えずに陛下の方を見ている。

 本気で言っているのだろうか......。

 私は外れスキルを持ち家から追放をされるような、落ちこぼれなのに......。
 
 
 だがエリックとレズリタも大きく頷いている。

 混乱して呆然としていると陛下が私の顔を見て口を開く。
 
 「そうか」
 
 少し嬉しいような、なんとも言えない気持ちになり私の中の時間が止まったように感じられた。
 
 すると陛下が口角を上げ言葉をさらにかける。
 
 「お前の実力がどんなものか見せてみよ」
 
 今ここでか?正直に言ってスキルを発動すると疲れるから使いたくないんだが……そんなことができる状況ではないのだと思い私は仕方なく口を開く。
 
 「分かりました」
 
 そう言うと陛下は扉の近くにいた2人の兵に呼びかけをする。
 
 陛下の言葉を聞いた兵は慌てながら私と対峙するような位置へ移動する。
 
 リズ達とリスタは少し離れ、私を見守っていた。
 
 「では試合を始めよ」
 
 兵士は腰にさしている剣を抜き私に向けて構える。

 陛下の掛け声と共に試合は始まり兵が私に襲い掛かってくる。
 
 兵の動きはとても早く、並みの人間じゃ目が追いつけないスピードで迫っていた。

 流石陛下を守っているだけある。
 
 私は兵が近づく直前に手を挙げスキルを発動する。
 
 《ダークネス》
 
 スキルを発動すると兵2人の動きを影が覆う。
 
 その光景に陛下やエリック、リズ……そしてリスタまで驚いた表情をする。
 
 こんな得体の知れない影を突然出したんだから当然の反応だな。
 
 そのまま私は影で2人の動きを封じる。
 
 「なんだこれ!?」
 
 兵士はその場で動けずに騒ぎ出していた。まあ当然の反応だろう。

 突然影に包まれ身動きができなくなったのだ、これで落ち着いていられる訳がない。
 
 すると笑い声が聞こえてくる。陛下が笑っているのだ。
 
 「さすがへスターからの報告通りの実力だな」
 
 陛下は満足げな顔で私を見た。そんな中、私は思う。
 
 いつへスターから報告がされていたんだと。
 
 そんな疑問を感じていると、レズリタが手を挙げる。
 
 「あのう……影で覆われた兵士さんの方は大丈夫ですか?」
 
 その言葉を聞き私はハッとする。

 影で包んでしまっているから今すぐ解除してあげないと。
 
 私は急いでスキルを解除して二人を元に戻す。

 体が自由になった二人はその場で呆けている様子だ。

 まあ突然影に体が覆われたのだから無理もないだろう。
 
 そんな私を見ながら陛下は口を開く。
 
 「お前たち4人には期待をしている、今後も龍神教が現れるかもしれん。その時は協力を願いたい」
 
 「はっ!」
 
 国王陛下直々の言葉に私たちは礼節の姿勢になる。
 
 すると国王は目を緩め優しく言葉を告げる。
 
 「では下がって良いぞ」
 その言葉を受けて私達はその場を後にする。

 すると扉の付近で待っていたリスタが歩いてくる。
 
 「ラゼルの能力は実に興味深いな……」
 
 興味ありげな顔で言ってくるリスタ。

 私の能力を発動する時は大体驚かれる事が多く慣れないものだ。
 
 そして私たちは陛下に敬礼をしリスタと共に扉をくぐるのであった。
 
 そして王城内から出たリズ達は胸を撫でおろすような感じで息を吐く。
 
 「凄い緊張したよ~」
 
 「初めてだし、心臓が口から飛び出そうだった!」
 
 それぞれが思い思いのことを口にして安堵の表情をみせている。

 そんな中エリックは息を大きく吐きながら口を開いた。
 
 「陛下の雰囲気が怖かった、近付いただけで首が飛びそうだ!」
 
 それは私も感じていた。

 正直なところいつ心臓が破裂してしまうのかと思っていたところだ。

 するとリスタが口を開いて話しだす。
 
 「そういえば君たちはもう冒険者ランクSなんだろう?」
 
 「はい! そうです!」
 
 「ということは大会にも出るのかな?」
 
 リスタの問いに私たちは首を縦に振る。
 
 大会というのはモンスターを狩る祭りみたいなものであり、とても大事な行事なのだ。

 その祭りに参加出来るのはSランク冒険者のみである。

 祭りの内容としては冒険者が狩ったモンスターのレア度などを競うといったものだ。

 その大会に参加するのか聞いてきたのだろう。
 
 「もちろん参加するよ~」
 
 「絶対優勝するぞ!」
 
 レズリタとエリックはそれに答えるように答えた。
 
 2人とも負けるなどと思っていないようで自信ありげな表情である。

 国王と対峙する時に感じていた緊張を一切感じさせないほどこの短時間でいつも通りに戻っていた。

 なにせその祭りで優勝した場合は国家直属の冒険者として雇われるからだ。

 この機会は絶対に逃したくないのだろう。
 
 「楽しみにしているよ」
 
 リスタも楽しみな様子で4人のことを見ている。

 その顔は興味深々なもので面白いものが見られそうだという期待感を感じさせる。
 
 そんな会話などしているうちに宮廷から出ることが出来た。

 空は赤く染まり日も暮れ始めている。
 
 「疲れたし、体を休めたいな~」
 
 「いいなそれ! 俺も武器屋行きたかったんだ!」
 
 「温泉にも行きたいね!」
 
 3人が話しに華を咲かせている。

 祭りが始まるのは3ヶ月後ぐらいだし、少しくらいは休んでも罰は当たらないだろう。

 ここの所ずっと戦闘ばっかで疲労もかなり溜まっている頃だ。

 するとリスタが口を開く。
 
 「ラゼル、良かったら明日僕と食事に行かないかい?」
 
 「......え?」
 
 私は驚嘆の声をあげた。

 今なんて言った? 食事?このイケメンが私なんかを誘っているのか?

  流石に立場が違いすぎてどう対応したらいいのか分からず困惑する私である。

 私を誘っているのはエルミア王国騎士団団長リスタ・ベルリオーズだ。

 王国最強の騎士が私みたいな外れスキル持ちを食事に誘うなんて考える方が難しかった。
 
 そんな固まっている私を見てリスタが口を開く。
 
 「突然誘ってしまったから驚かせてしまったようだ、申し訳ない。」
 
 困ったような顔をしたリスタを見てリズ達は焦ってしまう。

 騎士団長に謝られるのはイメージも崩れるし、王国最強の騎士に頭を下げさせてしまうのは正直気が引けてしまうため余計に焦っている様子だ。

 仕方なく私は言葉を発する。
 
 「いいですよ」