翌日の放課後、軽音楽部一年生は初めて練習場所へ向かう
2・3年生は校内の練習室を使えるが1年生は校外の倉庫で練習することになる
部長の鶴美の案内の下、川沿いに建つ建物に向かった
鶴美は鍵を開け、引き戸を両手で滑らせる
しばらく使われていなかったからか砂塵が飛び交い鉄錆の匂いが広がる
鶴美がスイッチを押し照明を点けると、等間隔に並んだ防音室が現れる
一年生は思わず声を出す
「おぉ」
鶴美は部屋の左奥に進む
「こっちだ」
鶴美はスチール製の棚を指差す
「ここに工具とエフェクターがある」
収納ボックスにラベルが貼ってあり、丁寧に何があるか分かるようになっている
八子は「ピッチシフト系」の箱が気になる
鶴美は反対側を指差す
「右の壁沿いにあるのは機材類」
機材類が黒い布で覆われている
近くにはフォークリフトと軽トラックが置いてある
鶴美は机の上に鍵を置く
「練習室と防音室の鍵は顧問からもらって
終わったら必ず返す事」
鶴美は一年生の顔を見る
「質問はあるか」
一年生は「大丈夫です」と言う
「そうか
私は練習に戻る」
「ありがとうございました」
鶴美は校舎へ戻る
※
一年生達はそれぞれ防音室の鍵を受け取り、入っていった
防音室の前には移動式クーラーが付いており、中に管を通し冷気を送る様にしている
冬は暖房がない為凍えそうである
室内はやや手狭で4人までが限界の大きさだ
防音室が8部屋用意されているのも、人数が多いバンドの為だろう
室内にはドラムセットとアンプやマイクが置いてあり、バンド演奏に欠かせないものは一通り揃っているようだ
もちろん、換気用の設備もある
響は興味深々とした顔でドラムセットを見る
「ドラムキットはヤマハの10万円以下のくらいのクラスで
シンバルはジルジャンに変えているんだ
あ、でも、ハイハットはセイビアンか」
「結構こだわっている感じ?」
「まぁ初心者がドラム買って少しずつカスタマイズしましたみたいな感じ
同じプレイヤーが長く使っているわけじゃないから
買える時に買っているみたいな雰囲気はあるよね」
「曲によっては合わない」
「曲というか自分自身の好みの問題かな
そもそも私吹奏楽部の時はパールのドラム使っていたから」
さっそく響はドラムのチューニングに入る
八子と火花は荷物を置き、さきほど見た戸棚へと向かう
八子はピッチシフト系と書かれた箱を漁り、すぐに赤色のエフェクターを手にする
「なにをするの」
「私はコンプレッサーとマルチエフェクターを繋いんでいるんだけど
その間にこいつを繋げるの」
「するとどうなるの」
「音が低くなる」
「なるほど」
「ベース・レスの編成だと多弦ギターを使って低音を出すことが多いんだ
私の場合はチューニングとエフェクターを使って音を低くしようと思うんだ」
「私も同じようにした方がいい」
「ううん
二人共低音だと縦ノリがしづらいでしょ
普段エフェクターは使っている?」
「使ってない」
八子は「オーバードライブ系」と書かれた箱から黒いエフェクターを取り出す
「ならこのクリーンブースターだね
音のツブ立ちをよくする」
「なるほど」
「あとは空間系とかもいいかも」
「いろいろ試してみるね」
ふと八子はファイルに目が止まり手に取る
ファイルの中にはエフェクターボードの写真が収められている
「これ先輩達のエフェクターボードだよ」
「凄い」
写真を捲ると、エフェクターの名称や音作りについて、またどのような曲に使えるか、事細かに記載されている
八子は気になるページをスマホで撮影をする
「そろそろ戻ろうか」
火花は頷き、二人は防音室に戻る
扉が開くと、響の叩くドラムの音が聴こえる
今にも糸が切れそうな演奏だ
すぐにスティックを転がしうなだれる
「結構この曲難しいな」
「1曲目?」
「そう
音速で挫折した」
「早いって」
響はタオルで顔を拭く
「久し振りのドラムだから大変だよ」
「家にドラムないの?」
「あるわけない
ずっと借り物
去年の秋に部活引退してから月2でスタジオで叩いているけど」
「つまり今は初心者同然と」
「言ってくれるな」
響はエフェクターをセッティングする
ついでに火花の分もセッティングする
「ありがとう」
「私は今日猛練習するから五月蠅かったらごめん」
「気にしない
私達の方が五月蠅いんじゃない」
響と火花はチューニングをする
「ねぇそのチューニングってなにに合わせるの?」
「ドロップCチューニング
一弦から順にD,A,F,C,G,C」
「チューニングって一つしかないと思っていた」
「いつものはレギュラーね
幾通りもパターンがあるから調べてみて」
「覚えること沢山だ」
響はスマホのタイマーをセットする
「じゃあ2時間後成果発表としますか」
「はいよ」
「うん」
2・3年生は校内の練習室を使えるが1年生は校外の倉庫で練習することになる
部長の鶴美の案内の下、川沿いに建つ建物に向かった
鶴美は鍵を開け、引き戸を両手で滑らせる
しばらく使われていなかったからか砂塵が飛び交い鉄錆の匂いが広がる
鶴美がスイッチを押し照明を点けると、等間隔に並んだ防音室が現れる
一年生は思わず声を出す
「おぉ」
鶴美は部屋の左奥に進む
「こっちだ」
鶴美はスチール製の棚を指差す
「ここに工具とエフェクターがある」
収納ボックスにラベルが貼ってあり、丁寧に何があるか分かるようになっている
八子は「ピッチシフト系」の箱が気になる
鶴美は反対側を指差す
「右の壁沿いにあるのは機材類」
機材類が黒い布で覆われている
近くにはフォークリフトと軽トラックが置いてある
鶴美は机の上に鍵を置く
「練習室と防音室の鍵は顧問からもらって
終わったら必ず返す事」
鶴美は一年生の顔を見る
「質問はあるか」
一年生は「大丈夫です」と言う
「そうか
私は練習に戻る」
「ありがとうございました」
鶴美は校舎へ戻る
※
一年生達はそれぞれ防音室の鍵を受け取り、入っていった
防音室の前には移動式クーラーが付いており、中に管を通し冷気を送る様にしている
冬は暖房がない為凍えそうである
室内はやや手狭で4人までが限界の大きさだ
防音室が8部屋用意されているのも、人数が多いバンドの為だろう
室内にはドラムセットとアンプやマイクが置いてあり、バンド演奏に欠かせないものは一通り揃っているようだ
もちろん、換気用の設備もある
響は興味深々とした顔でドラムセットを見る
「ドラムキットはヤマハの10万円以下のくらいのクラスで
シンバルはジルジャンに変えているんだ
あ、でも、ハイハットはセイビアンか」
「結構こだわっている感じ?」
「まぁ初心者がドラム買って少しずつカスタマイズしましたみたいな感じ
同じプレイヤーが長く使っているわけじゃないから
買える時に買っているみたいな雰囲気はあるよね」
「曲によっては合わない」
「曲というか自分自身の好みの問題かな
そもそも私吹奏楽部の時はパールのドラム使っていたから」
さっそく響はドラムのチューニングに入る
八子と火花は荷物を置き、さきほど見た戸棚へと向かう
八子はピッチシフト系と書かれた箱を漁り、すぐに赤色のエフェクターを手にする
「なにをするの」
「私はコンプレッサーとマルチエフェクターを繋いんでいるんだけど
その間にこいつを繋げるの」
「するとどうなるの」
「音が低くなる」
「なるほど」
「ベース・レスの編成だと多弦ギターを使って低音を出すことが多いんだ
私の場合はチューニングとエフェクターを使って音を低くしようと思うんだ」
「私も同じようにした方がいい」
「ううん
二人共低音だと縦ノリがしづらいでしょ
普段エフェクターは使っている?」
「使ってない」
八子は「オーバードライブ系」と書かれた箱から黒いエフェクターを取り出す
「ならこのクリーンブースターだね
音のツブ立ちをよくする」
「なるほど」
「あとは空間系とかもいいかも」
「いろいろ試してみるね」
ふと八子はファイルに目が止まり手に取る
ファイルの中にはエフェクターボードの写真が収められている
「これ先輩達のエフェクターボードだよ」
「凄い」
写真を捲ると、エフェクターの名称や音作りについて、またどのような曲に使えるか、事細かに記載されている
八子は気になるページをスマホで撮影をする
「そろそろ戻ろうか」
火花は頷き、二人は防音室に戻る
扉が開くと、響の叩くドラムの音が聴こえる
今にも糸が切れそうな演奏だ
すぐにスティックを転がしうなだれる
「結構この曲難しいな」
「1曲目?」
「そう
音速で挫折した」
「早いって」
響はタオルで顔を拭く
「久し振りのドラムだから大変だよ」
「家にドラムないの?」
「あるわけない
ずっと借り物
去年の秋に部活引退してから月2でスタジオで叩いているけど」
「つまり今は初心者同然と」
「言ってくれるな」
響はエフェクターをセッティングする
ついでに火花の分もセッティングする
「ありがとう」
「私は今日猛練習するから五月蠅かったらごめん」
「気にしない
私達の方が五月蠅いんじゃない」
響と火花はチューニングをする
「ねぇそのチューニングってなにに合わせるの?」
「ドロップCチューニング
一弦から順にD,A,F,C,G,C」
「チューニングって一つしかないと思っていた」
「いつものはレギュラーね
幾通りもパターンがあるから調べてみて」
「覚えること沢山だ」
響はスマホのタイマーをセットする
「じゃあ2時間後成果発表としますか」
「はいよ」
「うん」