さて、休憩を挟んで、次は子猫達と飼育の妖精さんの出番です。
 パン食い競争ならぬ、カリカリ食い競争です。コースの途中にモグ達の好きなカリカリを置いて、食べながらゴールに向かうって競技です。
 上手くゴールまで誘導が出来るか、飼育の妖精さんも腕の見せ所なんです。

 私がモグ、ペチ、ミィの順でスタートラインに立たせます。そして、コースの途中で飼育の妖精さんが、カリカリを持って待ち構えています。ミャって君達、ちゃんと理解してる?
 
「君達。カリカリ、食べたいよね?」
「ミャ~!」
「じゃあ、あっちにあるゴールまで走るんだよ!」
「ミャ~ァ~!」

 うんうん、良い子だね。モグ達はしっぽを立てて、ピョコピョコ左右に振ってます。おぉ~、やる気満々だね。
 私がモグ達を離したら、スタートです。って離した瞬間に走りだしました。猫まっしぐらです。

 飼育の妖精さんも手慣れています。
 モグ達は、上手くコース中でカリカリをゲットしながら、約十メートルを走り抜けました。
 一位はモグ、二位はペチ、三位はミィです。まぁ、日頃のお散歩時間の差が出たんでしょうね。子猫達は満足気に喉を鳴らして、飼育の妖精さんはやり遂げた笑顔を見せてくれました。

「猫のレースも良いわね」

 ようやく、裕子ちゃんが興味を示しました。仕方ないですけどね。今までの競技は裕子ちゃんからすれば、サッカーボールがただ転がってる位にしか見えてないでしょうから。
 
「したっけ裕子は、よく食べるね。それによく飲むね」
「あんた達も、食べないと無くなるわよ」
「ぼくはもう、お腹いっぱいだよ」
「そうだよ。みんなは裕子ちゃんみたいに、胃が異次元に繋がって無いんだよ」
「はぁ? あんた馬鹿なの? 私の胃は異次元に繋がってないわよ!」
「その食べたのは、どこに行くのよ」
「あんたと違って、胸にいくのよ」

 ぐぬぬ、裕子ちゃんめ。言ってはいけない事を!
 
「ハハハ、言われちゃったね」

 笑顔でフォローしてるつもりなんでしょうけど、美夏ちゃんって私よりお胸が大きいんです。裕子ちゃんがボヨンだとしたら、美夏ちゃんがポヨン、そして私は言いたくありません、グスン。

 気を取り直して、運動会に戻りましょう。
 実はここまでで参加をしてない、妖精さんが居ます。はい、氷の妖精さんです。
 クーラーボックスの中で絶賛待機中です。開けると、クルクル踊っています。

 なんで競技に参加しないかって? 仕方ないですよ。予想以上に火の妖精さんが、熱くなってるんです。
 おかげで気温が少し上昇してます。水の妖精さんがジュってしても、『燃えるハートは止まらない』って感じです。

 氷の妖精さんをクーラーボックスから出すと、たぶん溶けます。なので、たまにクーラーボックスを開いて、顔を見せてあげるんです。それでも一緒に来れたのが嬉しいのか、笑顔で踊ってました。
 
 さて、次の競技はチームに分かれて大縄跳びです。
 火の妖精さん率いる赤チームは、お掃除にお勉強の妖精さん、後は土、予防医療、飼育、お花、危険予想、DIY、洋裁の妖精さんです。土と危険予想の妖精さんが、縄を回します。

 対して、水の妖精さん率いる白チームは、お料理、お仕事、風、音楽、サバイバル、運動の妖精さんです。こっちは、風と運動の妖精さんが、縄を回す係のようです。

「い~ち、に~い、さ~ん、しぃ~い」

 掛け声に合わせて、縄を回してぴょんぴょんと飛びます。あぁ、何だか可愛いとか癒されるとかの次元を超えましたね。これを映像に残せたら、どんなに幸せでしょう。
 
 それと、練習の成果が出ましたね。
 結構な回数を飛んでます。百回を超え、二百回を超え、三百回を超えたところで、赤チームが引っ掛かりました。もうすぐ四百回ってところで、白チームが引っ掛かりました。

 もう何て言うか、凄いですね。語彙力が無くなりますね。拍手喝采! と言っても拍手してるのは、私と美夏ちゃんですけど。
 赤白の両チームが、がっちりと握手しています。輝く青春の光景です。
 
 まだまだ、熱い競技は残ってますよ。
 後半の部は、チーム対抗の競技が目白押しですから。次は綱引きです。
  
 縄跳び用よりもすこし太めに作った縄っぽい物を、両チームで引っ張り合います。強度が充分な様に、DIYと洋裁の妖精さんにアドバイスを貰って、私が作った逸品です。
 綱引きは、土の妖精さんが活躍しました。思った以上に、力持ちだったみたいです。綱引きは、赤チームの勝利です!

 因みに氷の妖精さんは、クーラーボックスを少し開けて、応援してました。キラキラ輝いてました。お願いだから溶けないでね。

 続々といきますよ、着いて来て下さいね。さぁ、目玉種目の一つ、棒倒しです。

「棒倒しは、赤チームが有利じゃないかな?」
 
 美夏ちゃんの言う通り、赤チームはディフェンスに土の妖精さん、オフェンスに火の妖精さんが居ます。でも白チームには、風と運動の妖精さんが居るんです。
 
「火の妖精を水の妖精がどう止めるかが、勝負の分かれ目かな」

 解説の美夏ちゃんの言葉通りに、勝負は火と水の妖精さん、チームリーダー対決となりました。ボウって燃えて、ジュって消す。そんなやり取りが、中央で繰り広げられます。

 その脇を、風と運動の妖精さんがすり抜けて攻めます。この子達の反射神経は、際立ってますね。他の妖精さん達は動きに着いていけずに、ワタワタしてます。
 結局、棒倒しは火の妖精さんを押さえた事で、白チームの勝利になりました。

 今のところ、二種目を制した白チームが優勢です。氷の妖精さんは、少し溶けかけながら応援してました。もう、蓋を閉めなさい!

 さて、残り二種目です。
 騎馬戦は、急遽リーダーが不参加になりました。ちょっと火の妖精さんが燃えすぎて、水の妖精さんがクールダウンしてます。
 気温が急上昇中です。私達のテント周辺だけ酷暑です。

 汗の噴き出る競技場で、熱い戦いが繰り広げられます。
 赤チームは、お勉強と危険予測の妖精さんが軍師みたいに、指示をだして陣形を組んでいます。対して、白チームは各個撃破の様子です。風と運動の妖精さんを活かす作戦なんでしょうか?

「集団と個の力、どっちが勝るか見ものだね」
 
 美夏ちゃんは、拳を握りしめてます。かなり興奮している様です。そして裕子ちゃんは、酔っぱらって寝てます。うん、寝かしときましょう。

 赤チームは、風と運動の妖精さんが乗る騎馬を、巧みに分断しました。
 少しずつ、崩れていく白チーム。大将自ら攻撃する白チームに対し、赤チームは大将をがっちりと守ります。頭脳の勝利なのか、白チームは攻めてを欠いて、赤チームに倒されていきました。

 騎馬戦の勝利は赤チーム。これで、チーム戦は五分五分になりました。私は得点ボードをペロっと捲ります。最後のリレーで勝敗が決まります。

 さて、リレー選手の発表です。
 赤チームは、DIY、お勉強、土、火の妖精さんの順番で走ります。
 白チームは、風、運動、サバイバル、水の妖精さんの順番です。
 
「これは、勝負あったかな。白はかなり有利だね」

 冷静に美夏ちゃんが語ってます。裕子ちゃんは、まだ寝てます。

「先行逃げ切りの白チームに対して、序盤にどれだけ粘れるか。勝負はそこだね!」

 美夏ちゃんは、完全に解説者モードです。スタートの合図は、ペチの鳴き声です。DIYと風の妖精さんは、クラウチングスタートの構えで合図を待ってます。
 
 ニャァ~の鳴き声で、一斉にスタート! 風の妖精さんが飛ばします。しかし、意外DIYの妖精さんが粘ってます。最初のランナーでは、余り差はつきません。

 白チームは運動の妖精さんにバトンを繋ぎます。運動の妖精さんは流石でした。どんどんと差を広げていきます。バトンを受け取ったお勉強の妖精さんも、かなり頑張りましたが差は開く一方です。
 
 しかし、事件が起こります。練習の差がここで現れます。サバイバルの妖精さんとのバトンの受け渡しを失敗し、バトンが転がっていきます。
 追い上げるお勉強の妖精さん、そして土の妖精さんにバトンを受け渡しました。運動の妖精さんがバトンを拾って、サバイバルの妖精さんに渡したのは、ほぼ同時です。
 土とサバイバルの妖精さんは、スピードは余り変わりません。両者譲らずデッドヒートを繰り広げます。突然のアクシデントになりましたが、白チームの応援は白熱してます。赤チームの応援も負けてません。

 両者同時に、アンカーへとバトンを渡します。そこから再びリーダー対決です。激しい蒸気を上げながら、コースを走る火と水の妖精さん。
 とても蒸し暑いです。走りも熱いです。そんな両者を、音楽の妖精さんがギターとバイオリンで速弾きして盛り上げます。
 
 そして決着は……。

 はい、たぶん同着でした。
 まぁ、写真判定とか予想してなかったし仕方ないよね。火と水の妖精さんは、ゴールの後でバタっと倒れて、ゼエゼエいってました。両者ともに互いの顔を見て、やるなお前みたいな表情を浮かべてました。

 ゴールと共に、赤白のメンバー達はわぁ~っと盛り上がります。引き分けと聞いて、がっちりと握手をしてました。
 なんだか、かなり体育会系のノリ? 青春ですね。そして、触発された脳筋が一人。

「ぼく、その辺を走って来るね」

 美夏ちゃんは、暗くなるまで帰って来ませんでした。
 
 熱い勝負が終わり、表彰式の後にお片付けです。お片付けはみんなでやります。モグ達は、おねむみたいです。裕子ちゃんは汗一つかかずに爆睡してます。やっぱりこの子は魔王だと思います。
 
 あのね、一応キャンプだからね。一泊して帰るんだからね。
 
 なんにしても盛り上がったし、企画して良かったかな。妖精さん達の興奮は、しばらく収まりそうにありませんけど。