僕は叔父の家の庭にある、地下室に入っていった。
「ここは……!」
そこはほの明るい美しい部屋だった。大きな魔導ランプが天井についている。魔導ランプは永久的に消えない、魔法の照明器具だ。古代からある代物だ。こ、ここが、ルイーズさんの言う、「秘密の部屋」なのか?
部屋は美しい地下庭園となっていた。
「うわぁ」
僕は思わず声を上げた。花壇がたくさんあり、花が咲いていた。ところどころに小さい噴水があり、水が流れている。
部屋の中央には、大きな円形の池。いや、プールか? 何なんだ、ここは?
するとその時……。
『再度、レイジ・ターゼットを認識しました。レイジ・ターゼットにスキルを与えます』
再び、さっきのような抑揚のない声がした。女性でもない、男性でもない、奇妙な声だ。
『レイジ・ターゼットに、スキルを装備させています……五分程度かかります』
僕の名前を言っている?
「誰だ!」
僕はこの奇妙な地下庭園の周囲に向かって、叫んでいた。
(さっき、謎の声が、「スキル」といってたけど、「スキル」って何だ? 聞いたこともない言葉だ)
『スキルとは、あなたへ与える、強力な能力のことです』
「こ、心を読み取った?」
僕は驚いて庭園を見回した。しかし、僕以外誰もいない。
「君は一体、誰なんだ? 姿を現してくれ」
『私は、この部屋の管理人です。名はありません』
「管理人? じゃあ、君に主人はいるの?」
『はい、部屋の主はおります。ただし、部屋の主の名前をお教えできません。部屋の主からは、主の名をお教えすることを禁止されています』
「わ、わかった。とにかく、君、ここに出ててきてくれよ」
『残念ながら、私には体がありません』
僕はゾッとした。
「じゃ、じゃあお化け、幽霊とかと話しているようなものなのか」
『そのようなお考えでよろしいかと』
「で、今、僕の体に何かしたのか? 僕にスキル、とかなんとか言ってたけど」
『はい、スキルをあなたに装備させています。あなたのスキルは……水面を見てください』
僕は、目の前にある池の水面を見た。この池がなんだっていうんだ? すると、池の水面に、金色の文字が浮かんできた!
そこにはこう書かれている。
『レイジ・ターゼットに、以下のスキルを装備させました。
【スキル】大魔導士の知恵 常人の七倍の判断力
【スキル】龍王の攻撃力 常人の七倍の攻撃力
【スキル】獣王の筋力 常人の七倍の筋力
【スキル】神速 常人の七倍の瞬発力
以上です』
「大魔導士、龍王、常人の七倍……これってどういうことなの?」
『簡単に言えば、あなたの能力が、普通の人間の七倍程度に変化したのです。パンチ力、ジャンプ力、キック力など』
「意味が分からないんだけど」
「では、外に出てみてください。意味がすぐ分かります」
「外?」
僕は地下庭園を出て、階段を上がった。僕が叔父さんの家の庭に出ると、そこには……。ドーソン叔父さんが立っていた!
「おい、お前、何やってんだ?」
や、やばいことが起こりそうだ……!
「お前……、その階段の下の扉を開けたんだな? フフフ、その扉はずっと開けることができなかったから、気になっていたんだ。鍵屋に頼んでも開きやしねえ。お前、中を見たのか? どけ、俺に見せてみろ」
叔父さんは、僕をにらみつけた。
「い、いや、あそこには何もないよ」
「ウソをつくんじゃない。ほう、お前、何か隠してるな? お宝でも見つけたか。どけ!」
「叔父さんには、この地下は関係ない。入ってもなにも無いよ!」
僕は何故かあの地下庭園を守らなければならない、という使命感に突き動かされて、声を上げた。
すると、庭に声が響いた。
『ドーソン・ルーゼントを認識しました。異分子は排除してください。レイジ、異分子は排除してください』
「はあ? 何だ?」
ドーソン叔父さんは、つるつるの頭をなで、空や庭を見回した。声は、地下だけではなく、地上の庭にも届くのか……。どういう仕組みなんだ?
「おい」
ドーソン叔父さんは僕の肩をドン、と押した。
「今の声、何だ? お前の仲間か何かか?」
「ない、仲間なんていないよ」
「隠し事しやがると、ぶん殴るぞ! お宝は俺のものだ。さあ、地下に案内しろ!」
ドーソン叔父さんは丸太のような右腕で、僕の胸ぐらをつかんできた。僕はとっさに、叔父さんの右手首をつかむ。
「ん? う、いてて」
叔父さんの右手首──右腕は、ギリギリと音をたてる。
え?
何だ、これ。僕の力? 僕をつかみ上げている叔父さんの右腕が、僕の力によって、逆にひねられている。
ど、どうしたっていうんだ?
バッ
叔父さんはあわてて、僕から右腕を離す。
「こ、このバカ野郎が……そんなに殺されてぇようだな」
叔父さんは物凄い勢いで、大振りの右ストレートパンチを繰り出した。スッ……と僕は体を沈ませた。頭の上を叔父さんのパンチがかすめる。
「お、おう?」
叔父さんは驚いたような顔をしたが、ブンブンとパンチを繰り出した。見える! 僕は叔父さんの二発のパンチをすべて、手で払い落した。
「お、お前ええっ! 生意気な。いつからそんな反抗的な態度ができるようになった!」
叔父さんは、渾身の力を込めて、左フックを繰り出した。こんな丸太のような腕のパンチ、当たったら、大変なことになる!
僕は必死の思いで、そのまま右腕を突き出した。
ガツン
物凄い音がした。
僕は、叔父さんのアゴに、自分の右パンチを叩き込んでいた。僕のパンチの方が、速かったのだ。完全に叔父さんのアゴに入った。
僕のカ、カウンター攻撃?
アゴは急所だ!
「ご、げ」
叔父さんはよろめき、庭の花壇につまづいて、地面に倒れ込んだ。そのまま動かない。ま、まさかそんな! あの屈強な叔父さんを、僕が殴り倒したっていうのか?
人生で、初めて人を殴り倒した……!
『ドーソン・ルーゼント、失神中。ドーソンの命に別状はなし。レイジの勝利確認』
また声が周囲に響いた。
叔父さんは、仰向けで、ピクピクと体を震わせている。確かに失神中らしい。
ここから逃げなければ!
僕は叔父さんの家から、逃げ出した。
「ここは……!」
そこはほの明るい美しい部屋だった。大きな魔導ランプが天井についている。魔導ランプは永久的に消えない、魔法の照明器具だ。古代からある代物だ。こ、ここが、ルイーズさんの言う、「秘密の部屋」なのか?
部屋は美しい地下庭園となっていた。
「うわぁ」
僕は思わず声を上げた。花壇がたくさんあり、花が咲いていた。ところどころに小さい噴水があり、水が流れている。
部屋の中央には、大きな円形の池。いや、プールか? 何なんだ、ここは?
するとその時……。
『再度、レイジ・ターゼットを認識しました。レイジ・ターゼットにスキルを与えます』
再び、さっきのような抑揚のない声がした。女性でもない、男性でもない、奇妙な声だ。
『レイジ・ターゼットに、スキルを装備させています……五分程度かかります』
僕の名前を言っている?
「誰だ!」
僕はこの奇妙な地下庭園の周囲に向かって、叫んでいた。
(さっき、謎の声が、「スキル」といってたけど、「スキル」って何だ? 聞いたこともない言葉だ)
『スキルとは、あなたへ与える、強力な能力のことです』
「こ、心を読み取った?」
僕は驚いて庭園を見回した。しかし、僕以外誰もいない。
「君は一体、誰なんだ? 姿を現してくれ」
『私は、この部屋の管理人です。名はありません』
「管理人? じゃあ、君に主人はいるの?」
『はい、部屋の主はおります。ただし、部屋の主の名前をお教えできません。部屋の主からは、主の名をお教えすることを禁止されています』
「わ、わかった。とにかく、君、ここに出ててきてくれよ」
『残念ながら、私には体がありません』
僕はゾッとした。
「じゃ、じゃあお化け、幽霊とかと話しているようなものなのか」
『そのようなお考えでよろしいかと』
「で、今、僕の体に何かしたのか? 僕にスキル、とかなんとか言ってたけど」
『はい、スキルをあなたに装備させています。あなたのスキルは……水面を見てください』
僕は、目の前にある池の水面を見た。この池がなんだっていうんだ? すると、池の水面に、金色の文字が浮かんできた!
そこにはこう書かれている。
『レイジ・ターゼットに、以下のスキルを装備させました。
【スキル】大魔導士の知恵 常人の七倍の判断力
【スキル】龍王の攻撃力 常人の七倍の攻撃力
【スキル】獣王の筋力 常人の七倍の筋力
【スキル】神速 常人の七倍の瞬発力
以上です』
「大魔導士、龍王、常人の七倍……これってどういうことなの?」
『簡単に言えば、あなたの能力が、普通の人間の七倍程度に変化したのです。パンチ力、ジャンプ力、キック力など』
「意味が分からないんだけど」
「では、外に出てみてください。意味がすぐ分かります」
「外?」
僕は地下庭園を出て、階段を上がった。僕が叔父さんの家の庭に出ると、そこには……。ドーソン叔父さんが立っていた!
「おい、お前、何やってんだ?」
や、やばいことが起こりそうだ……!
「お前……、その階段の下の扉を開けたんだな? フフフ、その扉はずっと開けることができなかったから、気になっていたんだ。鍵屋に頼んでも開きやしねえ。お前、中を見たのか? どけ、俺に見せてみろ」
叔父さんは、僕をにらみつけた。
「い、いや、あそこには何もないよ」
「ウソをつくんじゃない。ほう、お前、何か隠してるな? お宝でも見つけたか。どけ!」
「叔父さんには、この地下は関係ない。入ってもなにも無いよ!」
僕は何故かあの地下庭園を守らなければならない、という使命感に突き動かされて、声を上げた。
すると、庭に声が響いた。
『ドーソン・ルーゼントを認識しました。異分子は排除してください。レイジ、異分子は排除してください』
「はあ? 何だ?」
ドーソン叔父さんは、つるつるの頭をなで、空や庭を見回した。声は、地下だけではなく、地上の庭にも届くのか……。どういう仕組みなんだ?
「おい」
ドーソン叔父さんは僕の肩をドン、と押した。
「今の声、何だ? お前の仲間か何かか?」
「ない、仲間なんていないよ」
「隠し事しやがると、ぶん殴るぞ! お宝は俺のものだ。さあ、地下に案内しろ!」
ドーソン叔父さんは丸太のような右腕で、僕の胸ぐらをつかんできた。僕はとっさに、叔父さんの右手首をつかむ。
「ん? う、いてて」
叔父さんの右手首──右腕は、ギリギリと音をたてる。
え?
何だ、これ。僕の力? 僕をつかみ上げている叔父さんの右腕が、僕の力によって、逆にひねられている。
ど、どうしたっていうんだ?
バッ
叔父さんはあわてて、僕から右腕を離す。
「こ、このバカ野郎が……そんなに殺されてぇようだな」
叔父さんは物凄い勢いで、大振りの右ストレートパンチを繰り出した。スッ……と僕は体を沈ませた。頭の上を叔父さんのパンチがかすめる。
「お、おう?」
叔父さんは驚いたような顔をしたが、ブンブンとパンチを繰り出した。見える! 僕は叔父さんの二発のパンチをすべて、手で払い落した。
「お、お前ええっ! 生意気な。いつからそんな反抗的な態度ができるようになった!」
叔父さんは、渾身の力を込めて、左フックを繰り出した。こんな丸太のような腕のパンチ、当たったら、大変なことになる!
僕は必死の思いで、そのまま右腕を突き出した。
ガツン
物凄い音がした。
僕は、叔父さんのアゴに、自分の右パンチを叩き込んでいた。僕のパンチの方が、速かったのだ。完全に叔父さんのアゴに入った。
僕のカ、カウンター攻撃?
アゴは急所だ!
「ご、げ」
叔父さんはよろめき、庭の花壇につまづいて、地面に倒れ込んだ。そのまま動かない。ま、まさかそんな! あの屈強な叔父さんを、僕が殴り倒したっていうのか?
人生で、初めて人を殴り倒した……!
『ドーソン・ルーゼント、失神中。ドーソンの命に別状はなし。レイジの勝利確認』
また声が周囲に響いた。
叔父さんは、仰向けで、ピクピクと体を震わせている。確かに失神中らしい。
ここから逃げなければ!
僕は叔父さんの家から、逃げ出した。