その後の授業は、朝のことが気がかりで何も集中
できなかった。
キンコーンカンコーン
「えーじゃあ今日のホームルーム終わり。号令。」
「気をつけ。礼。」「ありがとうございましたー。」
今日もやっと一日が終わったーと思っていたらいじめをしてるヤツらが近づいてくる。
「おーい。涼太。ちょ家まで荷物持ちしてくんね?」
バカバカしい提案に俺は無視し、走って逃げる。
すぐにヤツらが追いかけてくる。くそー。
このままだと捕まってしまう。
すると急に1人のどこかでみたことのある女子高生が
話しかけてきた。
「あっ!朝の男の子だ!屋上いくぞー!」
「ごめん。今そんな場合じゃなくて、、」
俺はもう追いついてきているヤツらを確認して
あきらめがついた。どんどんスピードを落としていく。
もう無理だ。
「涼太。お前逃げるとかいい度胸してんな。」
足で蹴られ、倒れる。
どうしよう。
また傷だらけで帰ったら母が心配する。
そんな時だった。ドスン。大きな音がした。
何が起こった。
振り向くと朝あった謎の女子高生が立っていた。
理解するまで時間がかかったが、どうやら華奢な彼女がヤツらを投げ飛ばしたらしい。
「暴力はいけないでしょ!」
奴らは数秒固まって、すぐに謝りながら去っていった。
まるでドラマのようなことがおき、困惑だらけだ。
「じゃあ、片付いたことだし、行こうじゃないか勇者」
呑気に先陣をとる彼女に言いたかった。
勇者は君だろ。
「あー屋上は空気がいいねー!!」
いやいやさっきのことに触れてくれ。
このままだと話が流れてしまう気がして口を開いた。
「あのー、さっきのは、、」
しどろもどろに聞いしまい彼女も説明しにくそうだ。
「あー、私、昔から柔道やってて実はこう見えて黒帯なんだー!」
俺は素直にすごいなと思った。
「さっきは本当にありがとう。」
「全然いいよー。てかなんであんなに追いかけられていたの?」
今日、出会った彼女に言うか言わないか迷ったがなぜか彼女には聞いて欲しさがあった。
今までの出来事がスルスル口から抜けていく。
関わりがないからこそ話せたのかもしれない。
彼女は一間おいて話しだした。
「最低じゃんあいつら。だから死にたいなんて言ってたの?」 「うん。それもある。」
「じゃあ、あいつらに後悔させるぐらい、いい思い出作らないとね!」
彼女の目を見て強く頷く。
こんなに彼女に話しておいて重要なことを聞きそびれていたことに気づいた。
「ねー。そうゆえば名前は?」
「あー言ってなかったね笑 色々と順番ズレてるよね私。よく言われるんだ笑」否定はできない。
「私の名前は、清水 風鈴。高2だから同い年だね。最近転校してきたんだー。ふうりんと書いてふうりって読むんだ!ふうりって呼んで。で、君の名前は?」
1度で大量の情報が流れてきて少し戸惑ったが、自己紹介をする。
「俺の名前は、涼風 涼太。普通にりょうたで。」
「普通にりょうたってウケる笑 親がつけた名前を普通にとか言わないの!」
ツボへんじゃないかと心の中で思ったが口には出さないようにした。一応彼女は恩人だからだ。
「で、自己紹介もすんだことだし、思い出作ろうか。」
思い出作りと言っても抽象的すぎる提案のため彼女、
風鈴に聞いてみることにした。
「思い出作りと言っても何をするんだ?」
得意げな顔をしてこっちを振り向く。
「ふっふーん。よくぞ聞いてくれた!りょうた!それは、私が決めるからお楽しみだね!」続々と恐怖心がせまってくる。
「何をさせる気なんだ、、」「はー!人聞きが悪いな、。
変なことはさせないよー!!」
安心した。彼女のことだから柔道でもさせられるのかと思った。
「改めてよろしくね!りょうた!」
華奢な手を風鈴が差し出す。握り返し、
「よろしく。」と伝えた。
「じゃあさっそく明日、山江駅に集合ねー!」またすばしっこい足で帰っていく。
「これからどうなるんだ。」
ため息をついたが少し日常がこの屋上から見える夕焼けの空のように彩っていける。そんな気がした。
「ねー、涼太くん。じゃーんシロツメクサの冠だよー!」「ふうちゃん可愛いね。見てーこれ!シロツメクサの指輪!大きくなったら、僕と結婚してね。」
ピピピ ピピピ ピピピ 朝から目覚まし音が鳴り響く。
どうやらさっきのは夢だったらしい。
さっきの女の子は、たぶん俺の幼なじみふうちゃんだ。
確か本名も、風と書いてふうだった気がする。懐かしい夢を見て昔の自分を思い出す。俺の初恋相手。
俺がいじめられてた時、手をさしのべてくれた彼女。同等になりたくて頑張ったが叶わなかった。
彼女は、今何をしているだろう。
でもなんで今この夢が、?
まぁそれはいい。とりあえず支度をしよう。珍しく今日は予定がある。そう今日は風鈴との思い出作りの日だ。
ベットから起き上がり顔を洗い寝癖を整える。置き手紙と朝食が冷蔵庫にある。母はもう仕事に行っているようだ。
「涼太へ おはよう!朝ごはん食べてね! 母より」
仕事ばかりなのにこんなに俺に尽してくれる母には感謝しかない。
ご飯をよそぎ味噌汁とだし巻き玉子を温め、サッと朝食を済ませる。あとは適当に服を選ぶだけだ。
クローゼットから楽なジャージを取り出し着る。靴はスニーカーでいっか。鍵をして山江駅に自転車で向かう。5分前に着いたがもう彼女の姿はあった。
「ごめん、遅れて、」
機嫌を伺いながら話し出す。
「おはよーう!!まだ5分前だよ!早かったね!」
一安心したすきに彼女が話し出す。
「てかその前に何その服!!ジャージはないでしょう。」
えっ?と思い、自分の服を見返す。
確かに彼女はとてもセンスのいいおしゃれな服を
着ている。
「どうせ俺のこと誰も見てないって、」そうどうせ俺が何を着ていようが大丈夫なんだ。誰も見ていないから。
「はーいダメそのネガ思考!今日の予定変更!題して涼太イメチェン企画!」「おい、誰も許可してないし、しても意味が無いって」
ほんとに彼女は自由人だと改めて思い返される。
「意味あるよ。だって隣に並ぶんだから、イケメンに並んでもらったら私も嬉しいじゃん!涼太、元いいんだからもったいないよー!」
俺はまた、ため息をついた。
俺の手を引っ張り、駅のホームに向かいながら彼女は
言った。「レッツゴー!!」
ショッピングモールに着いたが、休日のこともあって
大盛況だ。普段、学校とバイトでしか外に出ない僕に
とっては、とても苦痛だ。
「着いたねー!!じゃあ服買いに行こうか!!」俺が返事をする間もなく彼女はスタスタと早歩きで歩き始める。
「早いって、、」
俺は、普段運動しないなりに、頑張ってついて行く。
「この店とか似合うんじゃない?」
そこにあった店はいかにも俺とはかけはなれたオシャレな人が着るような服が、ズラリと並べてあった。
「いやーここはちょっと俺には、、」
「そんなこと言ってないで早く行くよ」
どうやら俺には、拒否権がないようだ。
彼女がスタスタ歩く後ろにひよこのようについて行く。
「ねーこの服とか良いじゃん!似合いそう!」
「そうかな、、?」
拒否権をなくした俺はそう返すしか無かった。
「そうだよ!!すみません。これとこれとこれ試着お願いします!」 「はい。かしこまりました。こちらにどうぞ。」
まさかの試着までするとは思わず緊張が走る。普段試着もせず、適当に服を買ってきてもらっているため、おどおどしてしまう。
試着室に入り服を着たが、鏡の自分を見ておどろいた。
「えっ、、」
そう反応したら外から大きい声で
「ねー!!着替えた?開けてよー」と彼女の声が聞こえる。シャー カーテンを開けるど彼女が得意げな顔で立っていた。
「やっぱりー!私のセンス抜群でしょ!」
とても悔しいが彼女の言っていることは覆せないほど、センスがあるなと感じた。俺の、コンプレックスでもあるO脚もこのダボッとしたズボンで改善されている。
そう感じていた矢先だ。
「よーし次は美容室ね!」「えっ聞いてないぞ!?」「だって言ってないもん!さっき予約したから行くよ」
彼女の自由ぶりにはこりごりだ。
美容室に入ると、そこは普段行かないような
オシャレぶりだ。
無駄に、枯れた花が置いてあったりしており、何故それを置くのか彼女に聞きたかったが、笑われそうで引っ込んでおいた。
「こんにちは!」
そこには、オシャレな女性が立っていた。
「こんにちは!こちら由香さん。私の髪をいつも担当してくれてるの!今日は、由香さんにおまかせで涼太かっこよくしてください!」「はい!任せて!」
勝手に、進んでおり追いつけない。もう俺の髪は、ほぼ風鈴の物になっている。
俺は、もう抗いもせず彼女と彼女の美容師さんを信じることにした。
「じゃあごゆっくり!私、カフェでケーキ食べてくるー」「えっ、ちょ、おい」
止めるまもなく彼女は出ていった。
改めて感じる本当に自由だ。
彼女が出ていき、人見知りで戸惑ったがさすがの
サービス業の美容師さんが話を進めてくれた。
「涼太くんは、風鈴ちゃんの彼氏だったり、?」
「違いますよ笑笑 なんか訳あってこんな感じですね」
「えーそうなんだ。風鈴ちゃん自由で面白い子よ ね。」「あれは、面白いで片付けられませんね笑笑」
「あー風鈴ちゃんに言っちゃうぞー笑笑」
それから、話もだいぶ盛り上がり、シャンプー、散髪、セットと次々進んでいく。
彼女のことを、服選びからセンスだけは尊敬していたが美容室選びも凄いらしい。
俺でも、割とマシに見えるようになった。セットしやすく、男女受けがいいと、センター分けという髪型になった。最後にセットの仕方の話を聞いた。
その時、ふいに由香さんが話してきた。
「ねー彼女のことは聞いてる感じ、?」
「うん、?なんですかそれ」
少し戸惑い顔を見せ、
「あーうんうん。違うの!気にしないで!」
由香さんはそう言った。何だったんだろう。
結構、心に残る。そう思っていた時。
「たっだいまー!おー!涼太イケイケじゃん!やっぱ元がいいんだね!」「もー、バカにすんな!」
その後、風鈴がお腹すいたと騒ぎ出したので、近くのレストランに入ることにした。
「はぁー今日は疲れたー。誰かさんのおかげで」
「感謝したまえ笑」「おい!」
でも。なんだか、こんなに充実した休日は、久々だ。
騒がしかったが、とても楽しい。
何より、服を選んでくれて、そして美容室を紹介してくれて。本当に感謝しかない。彼女のセンスは凄い。
誰がなんと言おうと。
「うわー何にしようかな!オムライス、ハンバーグもいいなー」
「俺は絶対に、サバの味噌煮定食。」
「えっ笑笑しぶいな笑」
「これが一番美味しいんだよ。分かってないな!」
「私だってわかるもん!私もこれにする!」
えっいいのか?と聞く前に、定員さんに話かけていた。まったく。風鈴は、後先考えず行動する。それが良いことでもあり、悪いことでもある。
「ねー、涼太って兄弟とかいんの?」「いないよ。」「まぁぽいわ笑」
一人っ子ぽいは、俺的にあまり嬉しくは感じない。
「そうゆう風鈴はどうなんだよ?」
「えっ私も一人っ子だよ。」
そりゃそうだろうな。これで長女だとしたら、逆に凄すぎる。でも、今日はこのことは、内緒にしておこう。怒られるからな。
冷静な判断をしていたら、鯖の味噌煮定食が届いた。
「せーのいただきまーす」「いただきます。」彼女が、1口食べる。
「うーん、美味しいけどさ、やっぱり渋いな。」
でも俺は揺るがない。絶対に、鯖の味噌煮定食がいちばん美味しいんだ。
お会計を済ませ、僕たちは店を後にした。帰り道。
疲れ果てて会話もせずに帰っている時に彼女が突然口を開いた。
「ねー涼太は好きな子いるの?」「いっいないよ。」「えっ、いる反応じゃん、!?教えてよー」「、、」
「ほら黙ってないで。この恋愛マスターふうりちゃんにおまかせあれ。」
「あのひとつ聞くけど、恋愛経験は?」
「うん?ないよー」
はぁ失礼ながらだと思った。
まぁ相談というか面倒くさそうだから話すだけ話してみることにした。
「昔さ、幼なじみだった子がいて。俺がいじめられてたときにその子だけ手を差し伸べてくれて、。でも、その子とは、急に会えなくなってさ。俺も小さかったからあんまり理由とか分かんなくて。だから、また会えたらなって感じかな。」
「えっ、。」
「なんだよー笑もっとからかえよそっちのが
恥ずかしいし」
そんなことを話していたら駅に着いた。
「じゃあ今日はここで解散で!」「了解。じゃあまた明日学校でな。」「うん。」
何故か変な間があったし、あまり元気がなさそうなのは気のせいだよな。今日は変に敏感なだけだ。その後は、家に帰りお風呂に入り、すぐに布団に入った。
次の日になり、学校の身支度をする。髪のセットが増えたこともあり少し早めに起きることになった。
「あー眠い。」睡魔と戦いながら俺は昨日ゆかさんに教わった通り、ヘアセットをする。まぁ、自分でも言うのもなんだが覚えこみは早い方だ。
朝食を軽く食べ、準備をする。「行ってきます。」
今日は何故かいつもより鮮やかな青の空に感じた。
ガラガラ 教室のドアを開けたと同時に一斉に全員の目が集まった。俺はそそくさと、机に着く。すると何人かの女子と男子が一斉に集まってきた。怖い。まさか髪型が似合ってないとか。そう思っていたら、。
「ねー!髪型変えた?似合ってんじゃん!」
「えっそれな!涼太、俺と同じセンター分けじゃん!」
まさかの言葉に驚きばかりだ。
「涼太、LINE交換しようぜ!」
俺は嬉しくて、すぐに交換した。
いじめていたやつはどうも気に食わない顔をしている。昼休みに彼女に感謝を伝えるべく教室に向かった。
教室を覗いてみるとそこには彼女の姿はなかった。
仕方ない。何か用事でもあるのだろうかと考えていたら彼女の担任が俺に近づいてきた。
「誰を探しているの?涼太くん。」
「えっーと、風鈴さんっていますかね?」
「あー風鈴さんなら、今日はお休みね、、」
「あーそうですか。」
なぜなんだと思いながらまぁ、誰にでも休みはあるだろうと思い諦めようとしたその時。
「あーじゃあ風鈴ちゃんにこれ持ってってくれない?明日提出のプリントなのよ。住所教えるから、お願い!」
「えっでも、、」
先生が断るなよという強い眼差しを向けてくる。
「はい。わかりました。」
俺はつい承諾してしまった。
まぁ彼女には恩があるしと思うことにした。
「ありがとう。じゃあこれ放課後お願いね!」
「はい分かりました。」
俺は、プリントと住所の紙を持ち、教室に戻った。
放課後になり、スマホで住所を調べてみると以外と遠いところだった。彼女を恨んでも仕方が無いので先生を恨むことにした。でもなぜこんなとこまで通って学校に来ているのか疑問に思った。
電車で1時間半かけやっと最寄り駅に着いた。田舎でもなく都会でもない、平凡な街だった。歩いて家の前まで行く。するとそこには1人の母親らしき女性が立っていた。
「こんにちは。風鈴さんのお母さんでしょうか?」
「はい。先生が言っていた涼太くんね。どうぞ入って。ありがとうね。」
「いえいえ玄関先で大丈夫ですよ。」
「せめてジュースでも飲んで行って。悪いから、」
俺は、じゃあと言ってお家に上がらせてもらった。
先生が電話してくれていたおかげで話がスムーズに
進みやすかった。
玄関に入るとお母さんが風鈴の部屋に案内してくれた。
「風鈴!涼太くんよ!」「えっちょなんでやめてよ」
何故か怒り気味の彼女を無視して、お母さんは入れてくれた。そこには想像では賄えない光景が広がっていた。
「えっっと、、」
酸素マスクをしている彼女。
とても普通の風邪とは思えない。
「じゃあ私はこれで。」
お母さんが出ていかれた後、彼女は話し出した。
「びっくりしたでしょ?この光景。」
彼女は口に酸素マスクを付けている。昨日とは全く違う光景だ。俺はなんと話したらいいか分からなくなり無言でいた。
「私、心筋症なの。余命半年の。」「えっ、、」
衝撃すぎる言葉に驚きが隠せない。
「小さい頃からね病気で。昨日の美容室の時も実は呼吸がきつくなってたの」
由香さんの言葉と風鈴との最後の会話が頭によぎる。
「私、もう短いけどいいんだ。あとは自由に
生きれれば。」
声もかけられない。そんな自分が悔しくなる。
そこから何を話したかはわからない。
ただボッーと家に帰った。
夜もあまり寝付けず。そのまま。
何が起こったのか理解するのには、時間が必要だった。
次の日、楽しみにしていた夏休みの始まりの終業式で、友達に話しかけられてもボッーとしているのを自分でも感じた。夏休みが始まるがどうも昨日のことが、
引っかかっる。すると急にLINEの通知がなった。
「今日会えたりする?」
彼女が読んだ場所は、学校近くの公園だ。
少し暗い時間のこともあり誰もいない。
歩いているとベンチに座っている彼女がいた。
「よっ!」俺は明るく話かける。「何よっ!て笑笑」
その後、ベンチに座り、彼女が話し出した。
「昨日は驚かせてごめん。色々びっくりしたよね。」
なんと反応したら良いのかもう分からなくなっている。
「1歳の頃から、心筋症で。散々病院の入退院を繰り返してね。普通の子とは、違った環境で育ったの。それで今の歳になって、病気がどんどん進行して、。心臓移植をしないと生きられない状態。でも、心臓が届くには時間がかかる。だから、もう私は良いんだ。自由に生きたい。」
俺は、なんと返したら良いかわからない。
そのまま黙って話を聞いた。
「私ね、今世生きれたならスタイリストになりたかったなー。それでみんなを笑顔にするの。やっぱ私ってセンスの塊だからさ。」
頑張って笑っているが気持ちは正直だ。
彼女の目から雫が落ちる。
「あー、、死にたくないな。」
「死にたくないなら生きれば、、」
「生きるなら、相当大変な治療が必要。年月も。その間に死んだら、後悔する。思い出作って楽しめばよかったって。」
何も言うことが出来ない。彼女と同じ物を味わってない俺は意見を言えない。そんな気がするぐらいの覚悟だろうと思ったからだ。
俺はゆっくり彼女を抱きしめた。最近会ったばかりの彼女に何をしているのかと普通だったら不思議に思うだろう。でもその時は、勝手に体が動いたのだ。
「頑張ったね。君は凄いよ。」
彼女は俺を強く抱き締めて子供のように激しく泣いた。今まで1人で抱えてきたものが出たのだろう。
俺が彼女に相談した時のように、彼女の心も軽くなって欲しい。そう思った。
そして俺は提案をした。
「最高の思い出作ろう。半年。」
彼女は涙目をこすりながらこちらを見た。
そしてじわじわと笑いだした。
「それ私が言った言葉じゃん笑笑」
それから夏の約束を立てた。彼女の自由さでもう予定表はぎちぎちだ。でも、心で踊っている自分がいた。
その夜は満月がきらめく綺麗な夜だった。
「いくよー!! 」
するするする 勢いよく流れてくる。
気がつくと自分の手元に。
「それっ!」手元を見るとたったの2本。
「えっ、、」「あははは笑笑」「笑うなよー!」
今日は、風鈴と風鈴のおじいちゃんの川沿いの別荘に遊びに来ている。山の中にありとても自然溢れている。それで今流しそうめんをしている所だ。
「じゃあ次俺流すから。」「いやいいよ!私はいっぱい食べたいからそのまんまで!」
はー。心の中でため息をつく。さすが風鈴。
その後、そうめん流しをせず、そのまんまのそうめんを食べスイカ割りや川遊びをし夏らしく楽しんだ。
今日はここに泊まらせてもらうため時間を忘れることができた。
「よーし花火しようか。」「しよーぜ。」
火をつけ花火を始める。俺が今の花火は凄いなと言ったらおじいちゃんすぎと笑われたりなんなりしたがとても楽しい時間だった。
「最後は、線香花火で対決ね!負けた方は願い事を
聞く!」
彼女は強気な顔でこちらを見る。
「望むところだ。」
虫の音しか聞こえないところで線香花火をする。
「ねー線香花火って人の一生みたいだよね。
最初は小さくて、でも途中ではっちゃけて。
最後は綺麗に落ちていく。」
「確かにそうだな。」
両者とも真剣に花火を見つめる。
シーンとしたところに急に「ワッ!!」という声。
「うわっ!」
俺はやられたと花火を見る。
案の定、花火の火は消えている。
「おい反則だろー!」
「そんなのルールにありません。約束は約束!」
俺は諦めて聞くことにした。
「お願い事は?やばいやつはやめろよ!」
「知ってるって!!」
うーんと彼女は真剣に考え呟いた。
「花火みたいな人生をあと少し一緒におくらせて。」
俺は、間もなく強く頷いた。
今日の星空は花火の光のように綺麗だった。