とある地域に、僕は昨日の晩から泊まり込みでいた。次の日の朝になるとホテルを出発し、観光地などをのんびり旅していた。そういえば今日は月曜日で、時刻は7:30。世間ではこの時は「憂鬱」となる。この瞬間が最高と言う人なんてほとんどいないだろう。しかし僕は旅に来ているので憂鬱な気持ちはなく、シンプルに楽しい気持ちだ。

 ところが僕の予想とは裏腹に、これから仕事に向かうであろう人々はみんな上機嫌に見えた。そのうちの1人のサラリーマンっぽい人になんでそんなウキウキなのか、聞いてみた。すると…

 「何って、仕事だからに決まってるじゃないか。君は変わったことを聞くんだねー」

 いや、世間的な感覚で言えば変わってるのはあなたの方だろ…と思ったが、仕事が好きな事って、普通に考えれば素晴らしいことだ。この人は仕事に対してそういう考えを持っているんだと割り切り、その場を後にした。

 さて、気になった本でも買おうかなと思った僕は適当に歩いて見つけた本屋さんを見つけた。店員はおばあさん1人だったが、店に入るなり、おばあさんは「いらっしゃいませー!」と、若者も顔負けの元気いっぱいな挨拶をしてくれた。

 「おばあさん、すごく機嫌がいいですね。何かいいことでもあったんですか?」

 「いいことって、仕事なんだから嬉しいのは間違いないだろう」

 「仕事が…そんな楽しいんですか?」

 「あんた、なかなか変なこと聞くねぇ。当たり前だろう?」

 …どうやら、僕が今旅に来ている地域は、仕事が休日と同じくらい最高という価値観の場所らしい。確かに朝から出勤する人の顔を見て、だるそうな顔をしている人は誰もいなかった。そう考えればこの地域は他の地域と比べると、みんな幸せそうだろうなと思った。適当に気になった本を買った僕は本屋を後にして、しばらく歩いていると今度は憂鬱そうな顔をしている男性を見た。

 「あぁ…辛い辛い。人生辛い…」

 なんともまあ分かりやすい独り言。この人は仕事が辛いんだな。すると次に発した男性の言葉に驚いた。

 「今日は仕事休みか…。辛すぎる。なんで土日なんてものがこの世にはあるんだよ…。」

 なんとこの人は休日なのか。仕事が最高ということは裏を返せば、休みの日はああやって憂鬱になるんだな。そしてさらに奥からも人影が見えた。私服を着た女性が死んだ魚の目をしながら歩いていた。

 「死にたい…死にたい…。なんで今週は3連休なのよ。」

 「…。」

 この地域も大変だな。