ペルセウスはうつ伏せのソールの胸元からメモリーを取り、ハードに入れた。すると、映像が立ち上がった。今でいうビデオメッセージだ。

――フェニックスを開発している最中にこのメッセージを残している。未知の研究なので、突然、機械の爆発に巻き込まれて死ぬこともありえるからな――

 原因は違うが、爆発に巻き込まれることを予言していたかのようだ。

――アルカディアの諸賢へ。そちらを去った日から二度と戻らないと決めた。サンギルドシステムを造るまでは。その代わり、完成したら戻って祖国の繁栄に協力する。このエネルギーが完成すれば、ガイアの血を使わずに済む。だから、貧しい国から搾取するようなエネルギーのあり方を変えることができ、紛争の芽をつむことになる。他国に侵略せず自国を豊かにできるのだ。待っていてくれ――

 次に相手を変えたメッセージが話された。

――技術の継承者へ。もし私が志半ばで倒れても研究を続けてくれ。サンギルドシステムはまだまだ進化できる。フェニックスは今のところ、ガイアの血とのハイブリッドだがさらに改良できる。ガイアの血が完全に要らなくなり、太陽エネルギーだけで動くようにできるはずだ。君に未来のエネルギーを託す――

「サンギルドシステム……?」
 ソールを除く全員が困惑した。そんなエネルギーは聞いたことがない。
「太陽の光をエネルギーに変えるのさ。フェニックスはそのエネルギーで飛行し、戦闘で破損しても自己修復できる」
「そうか、それで……」
 アーレスは合点がいったという表情をした。だからあんな特攻のような無茶をしては自己修復するという戦い方ができたのか……。
「アポロンは、本当はアルカディアのためにこの技術を開発したのさ。なのに、あんたらはアポロンを死に追いやってしまったんだ」
 ソールはゼウスを睨みつけるように言った。
「ばかな……あいつは、もう二度と戻らないと言っていたぞ」
「結局、あんたがアポロンの意図を組めなかっただけのことだ。一国の主が、その程度の先見性だったってことだ!!」
「うるさい!!」
 うつ伏せのまま減らず口を叩くソールに向かい、ゼウスは怒声を浴びせた。
「ゼウス、アポロンの遺志を組んでやりましょう」
 突然、ハーデスが言った。
「何だと?」
「私も賛成です」
 ポセイドンとアルテミスも言った。
「このままだとアポロンは浮かばれない。あいつの死を無駄にしないためにも……」
 ペルセウスとアーレスも、たたみかけるように言った。
「お前ら、分かっているのか? それは侵入してきたこいつを赦すことになるんだぞ」
 アレクサンドリアで爆発が起きて、サンギルドシステムの設計図などは全て吹き飛んだ。今、それがこの世に残っているとしたらフェニックスの機器とソールの頭脳の中のみだ。サンギルドシステムの研究を続けるということはソールを生かすということになる。
「そういうことだな」
 ソールは皮肉っぽく言った。
「言っておくが、俺だってアポロンを死においやったお前らを完全に赦すことはできないさ。だけど、あの人は未来のためにこのエネルギーを遺したんだ。だから協力してやってもいいんだぜ?」
 不敵な笑みを浮かべて複雑な心境を吐露した。
 「……」
 ゼウスは拳を握りしめ「勝手にしろ!」と吐き捨てて去って行った。