あぁ、また何か言っている。
うるさい。
あんたたちの願望を押し付けないで。
いつからこの世界は灰色なんだろうか。
受験期だからか、受験生である私よりピリピリしている両親にいい加減嫌気がさしてくる。
私はそこそこの大学に行ってそこそこの会社に就職しようと思っているのに。あなたを思って、とか、あなたのために、とか、ほんとは自分がいい気分をしたいから。そんなの世の中の常識だ。
今日は時雨(しぐれ)大学のオープンキャンパスに連れて行かれるらしい。この大学に興味はない。というか、つい2、3年前にできて、綺麗な割に、国立のため、学費が安いから両親は連れて行きたがったのだろう。
はぁ、ときため息をつきたくなる。ついたらついたで、めんどくさくなるだけだからつかないけど。
電車に乗って30分。国民の税金で建てられた、ドでかいキャンパスが立ちはだかっている。親は私を連れてきておきながら、帰って行った。私がくれば満足だったようだ。
私はようやくため息をつき、歩みを進める。
適当に見てから帰ろう。

何も考えずに歩いていたら、迷子になってしまったようだ。
空がうっすらと紅く色付いてきている。
ふと、微かに音が聞こえた。
耳を澄ますと、ギター?ドラム?のような音が聞こえる。
私は引き込まれるように、音のなる方へ向かって行った。
音の出所は、野外ステージからだった。
「バント『snow』?」
看板にはそれしか書いていなかった。