「! 開いた!!」
「本当に開いた……!! 資料は本物だった、私達の研究は間違っていなかった!!」
「す、すごいよー……」
古代文明人4人で台座に手を置いた途端、聞こえてきた無機質な声。
それと同時に今まで何をやっても開くことがなかった扉ガいとも容易く、あっけなく開いたのを受けて僕たちは驚愕に染まった。
開いちゃったよ、本当にー……
正直半信半疑だったけど、僕ってば本当に古代文明人なんだねー。いやまあ、だから何って話ではあるんだけどこう、なんとも言えない感慨があるよー。
だってかつては仲間達と追い求めていた夢とロマンの、実は僕こそが落とし子だったんですよー? そりゃなんていうか、複雑だよー。
微妙な内心。けれどそれ以上の興奮や期待感もたしかに今、僕の胸中にはある。
3年前に進めなかった"その先"。調査戦隊の冒険の続きがまさか今になって行われるなんて、ねー。
感動にも近い情動を覚えつつも、開いた扉の向こう、暗闇の部屋の中を覗き込む。
「こ、これ中に入るの? レイア」
「もちろん。そしたら地下世界はもうすぐそこ、目と鼻の先だよ。ねえ、レリエさん?」
「そうね……その通り」
ここから先はレイアにだって未知だ。いくら前情報がいくらかあったって百聞は一見にしかず。経験者さんがいるならそちらに頼りたいよね。
というわけで今ここにいる、古代文明人の4人の中でも最年長にして最も理知的で才色兼備なおねーさま、レリエさんに質問しちゃうよー。
彼女は至極当然とばかりに頷き、そして静かに、何かを堪えるように告げた。
「私達のかつての世界がもう、すぐ真下にあるわ」
「……古代文明……!!」
「……その名残、さえ残ってないでしょうけどね。数万年という時の、威力は計り知れないもの。おそらくは、すべてが風化しているはず」
切なげに目を伏せる姿が、物寂しくも悲しいよー。レリエさん……古代文明からの生き残りとして、とりわけ大人として、かつての故郷を悼んでるんだねー。
正直僕なんかは古代文明が故郷とか言われても片腹痛いし、たぶんそれはヤミくんヒカリちゃんもほとんど同じだと思う。赤ん坊だった頃の話だったりまだ幼かったりと、単純に時間的な問題で古代文明に対しての愛着は比較的薄いんだ。
だけどレリエさんは違う。彼女は大人になるまでしっかりと古代文明の社会で立派に暮らして来た人なんだ。愛着とかそういうの、ないはずがない。
どんなにか痛いだろう、もう二度と蘇らない故郷を目の当たりにするのって。釣られて僕まで憂鬱な気分になるのを自覚しつつも、僕らは実際に扉の向こう、柱の中に入っていったよー。
中は完全に明かりの一つもない真っ暗闇で、冒険者達がそれぞれ持っているランタンで照らされていく。
白い壁、天井。他にはなにもない。出入り口の他に扉とか階段とかもない、完全にただの部屋だ。
あたりを見回して、レイアに聞いてみる。
「ねえ、これって階段とかないのー? 行き止まりじゃないー?」
「うーん? 古代文明は自動で部屋が動いたりしたらしいから、この部屋ももしかしたらそれなんだろうけど……レリエさん?」
「エレベーターね。本来はその通りで、無限エネルギーを変換した電力を使って動くのよ、この箱。まあ、数万年の間ですっかりエネルギーも枯渇しちゃってるでしょう」
エレベーター? って名前の装置らしい。部屋が動くって、イマイチ想像できないけどどうなんだろ?
というか無限エネルギーを電力とやらに変換して動かすとか、なんていうか本当に神を利用しまくってたんだね古代文明の人達ー。それでいて最後にはその無限エネルギーの化身みたいなのに滅ぼされちゃって、なんだか寓話的だねー。
「電力か……理論だけは私も構築しているけれど、やはり古代文明にも同様の技術があったこと自体はすでに把握できているよ。その力を使ってこの部屋が動く、というのは想像しにくいけれど」
「ええと、スライドするのよ、部屋ごと。実はこの部屋は滑車で上げ下げできる状態になっていて、今は吊り上げられているの」
「ふむ? ならばその滑車を電力で動かすことで、この部屋は柱の中を自在に動くわけか。すごいな……現行文明より500年は先を行っている技術だよ、それ!」
モニカ教授が瞳を煌めかせているけど、古代文明すごーい! ということしか主に伝わらないよー。
部屋を滑車でスライドさせるって理屈は分かったけど、人力でもないのに自動でってのが信じられないや。電力ってそんなにすごいのかなー?
「そういうことなら……ソウくん。ちょっとあちこち触ってみて?」
「え。なんで僕ー?」
「私の推測が合ってるなら、もしかしたらソウくんならこの箱の機能を蘇らせられるかもしれない」
「えぇ……?」
一人でいろいろ考察して納得していたら無茶振りされちゃった。
僕のことなんだと思ってるんだよ、もう! 適当にあちこち触るだけでなんか直るような力があるわけないのにー。
「本当に開いた……!! 資料は本物だった、私達の研究は間違っていなかった!!」
「す、すごいよー……」
古代文明人4人で台座に手を置いた途端、聞こえてきた無機質な声。
それと同時に今まで何をやっても開くことがなかった扉ガいとも容易く、あっけなく開いたのを受けて僕たちは驚愕に染まった。
開いちゃったよ、本当にー……
正直半信半疑だったけど、僕ってば本当に古代文明人なんだねー。いやまあ、だから何って話ではあるんだけどこう、なんとも言えない感慨があるよー。
だってかつては仲間達と追い求めていた夢とロマンの、実は僕こそが落とし子だったんですよー? そりゃなんていうか、複雑だよー。
微妙な内心。けれどそれ以上の興奮や期待感もたしかに今、僕の胸中にはある。
3年前に進めなかった"その先"。調査戦隊の冒険の続きがまさか今になって行われるなんて、ねー。
感動にも近い情動を覚えつつも、開いた扉の向こう、暗闇の部屋の中を覗き込む。
「こ、これ中に入るの? レイア」
「もちろん。そしたら地下世界はもうすぐそこ、目と鼻の先だよ。ねえ、レリエさん?」
「そうね……その通り」
ここから先はレイアにだって未知だ。いくら前情報がいくらかあったって百聞は一見にしかず。経験者さんがいるならそちらに頼りたいよね。
というわけで今ここにいる、古代文明人の4人の中でも最年長にして最も理知的で才色兼備なおねーさま、レリエさんに質問しちゃうよー。
彼女は至極当然とばかりに頷き、そして静かに、何かを堪えるように告げた。
「私達のかつての世界がもう、すぐ真下にあるわ」
「……古代文明……!!」
「……その名残、さえ残ってないでしょうけどね。数万年という時の、威力は計り知れないもの。おそらくは、すべてが風化しているはず」
切なげに目を伏せる姿が、物寂しくも悲しいよー。レリエさん……古代文明からの生き残りとして、とりわけ大人として、かつての故郷を悼んでるんだねー。
正直僕なんかは古代文明が故郷とか言われても片腹痛いし、たぶんそれはヤミくんヒカリちゃんもほとんど同じだと思う。赤ん坊だった頃の話だったりまだ幼かったりと、単純に時間的な問題で古代文明に対しての愛着は比較的薄いんだ。
だけどレリエさんは違う。彼女は大人になるまでしっかりと古代文明の社会で立派に暮らして来た人なんだ。愛着とかそういうの、ないはずがない。
どんなにか痛いだろう、もう二度と蘇らない故郷を目の当たりにするのって。釣られて僕まで憂鬱な気分になるのを自覚しつつも、僕らは実際に扉の向こう、柱の中に入っていったよー。
中は完全に明かりの一つもない真っ暗闇で、冒険者達がそれぞれ持っているランタンで照らされていく。
白い壁、天井。他にはなにもない。出入り口の他に扉とか階段とかもない、完全にただの部屋だ。
あたりを見回して、レイアに聞いてみる。
「ねえ、これって階段とかないのー? 行き止まりじゃないー?」
「うーん? 古代文明は自動で部屋が動いたりしたらしいから、この部屋ももしかしたらそれなんだろうけど……レリエさん?」
「エレベーターね。本来はその通りで、無限エネルギーを変換した電力を使って動くのよ、この箱。まあ、数万年の間ですっかりエネルギーも枯渇しちゃってるでしょう」
エレベーター? って名前の装置らしい。部屋が動くって、イマイチ想像できないけどどうなんだろ?
というか無限エネルギーを電力とやらに変換して動かすとか、なんていうか本当に神を利用しまくってたんだね古代文明の人達ー。それでいて最後にはその無限エネルギーの化身みたいなのに滅ぼされちゃって、なんだか寓話的だねー。
「電力か……理論だけは私も構築しているけれど、やはり古代文明にも同様の技術があったこと自体はすでに把握できているよ。その力を使ってこの部屋が動く、というのは想像しにくいけれど」
「ええと、スライドするのよ、部屋ごと。実はこの部屋は滑車で上げ下げできる状態になっていて、今は吊り上げられているの」
「ふむ? ならばその滑車を電力で動かすことで、この部屋は柱の中を自在に動くわけか。すごいな……現行文明より500年は先を行っている技術だよ、それ!」
モニカ教授が瞳を煌めかせているけど、古代文明すごーい! ということしか主に伝わらないよー。
部屋を滑車でスライドさせるって理屈は分かったけど、人力でもないのに自動でってのが信じられないや。電力ってそんなにすごいのかなー?
「そういうことなら……ソウくん。ちょっとあちこち触ってみて?」
「え。なんで僕ー?」
「私の推測が合ってるなら、もしかしたらソウくんならこの箱の機能を蘇らせられるかもしれない」
「えぇ……?」
一人でいろいろ考察して納得していたら無茶振りされちゃった。
僕のことなんだと思ってるんだよ、もう! 適当にあちこち触るだけでなんか直るような力があるわけないのにー。