「ぐんだり、そうま? ……ソウマ・グンダリ?」
「魔を葬ると書いてね。前にソウくんは、なんとなく思い浮かんだからソウマと名乗ってるって言ってたけど……あなたを生み出した計画と同一の名称だったんだ。運命ってあるんだねー」
明かされた古代文明人の最後の計画"軍荼利・葬魔計画"。そのもの僕の名前が使われているのは、むしろ逆で僕がその計画を流用したんだろう。
この名前、初めて地表に出て孤児院の人に尋ねられた時に咄嗟に出た名前なんだよね。そんなものと同一のネーミングなのはさすがに、偶然の一致としては出来すぎてるよー。
とはいえ、その計画が僕の誕生とどう繋がってるのかは見えてきていない。なんとなく計画の一環として僕が生まれましたー、みたいな話っぽい気はしてるけどそれが本当かはまだわからないしねー。
同じ予感を抱いているんだろう、レリエさんがどこか緊張した面持ちでレイアへと尋ねた。
「それで、その計画がどうしたの? それでなんで、ソウマくんが生まれたなんて表現になるの」
「……それはね。彼こそが古代文明が最後に生み出した兵器だからだよ。ソウくんは、古代文明が創り出した最後の生命体、計画によって生み出された、作られた生命なんだ」
「はあ?」
思わず言っちゃった、いやでもはあ? でしょこんなのー。
計画が僕を生んだ、いや作ったのはまあ良いよ。古代文明にとって最後の生命なのも、まあなんかそういうタイミングだったんだねーって感じだし。
でも兵器って……そんな大層な言われ方するようなものじゃないはずだよー。僕は人間だよー。
歩きながらでも戸惑い、意味不明理解不能って視線を送る。もうすぐ地下87階層への道も見えてくる中で、レイアは沈痛な面持ちで僕を見て、言った。
「神を、長い時をかけてでも弱体化させて滅ぼす──その身に宿した無限エネルギーを、横取りする形で吸収する機能を備えた生体兵器による力で。ソウくんは、地下世界に潜む神の力を簒奪して、弱め殺すために産まれた生き物だった」
「……えええっ!? 僕がそんな力をっ!?」
「神の力を、奪う力!?」
「もっとも、おそらくすでに……すべての決着は付いてるんだろうけどね。ソウくん自身にも自覚もないだろうとは思うよ」
肩をすくめるレイアに、僕もみんなも唖然としている。つい立ち止まってしまい、最後尾にいるリューゼに"ぼさっとすんな! "って小突かれている人までいるよ。
いや……実際マジでびっくりだよー。知らない間に神を相手に赤ちゃん僕がなんかしてて、しかも知らない間に終わってたとかー。
全部覚えがない話だしぶっちゃけ、物心つく前のこととか知らないからまるで関係ない他人の話にしか聞こえないや。
なんとも微妙な反応を見せる僕をよそに、レイアの話は続いていく。同時にさらなる地下、87階にまで続く道を僕らは順繰りに進み始めた。
「古代文明人の最後の生き残りに、グンダリという名前の──本名か渾名かはしらないけどね──女がいた。科学者だったその女は古代文明のほとんどが息絶え、あるいは冷凍睡眠に眠る中、一人だけで神殺しの計画を立て、実行した」
「神殺し? まるで英雄だな」
「ただ、やったことは最低でした。神を解析して開発した無限エネルギー吸収能力を、産まれたての赤子に埋め込み……そのまま棺に押し込んで冷凍睡眠させたんです。生き物として、人間としてでなく兵器として、モノとして扱うために」
嫌悪感をむき出しにした物言い。彼女がここまで他者に対して嫌そうな言い方をするのは珍しいや、三年前にはあのエウリデ王にさえにこやかに応答してたのに。
……まあ、気持ちは理解できるけど。無限エネルギー吸収能力を埋め込まれた産まれたての赤子って、それが僕なんでしょ。
「眠らされた赤ん坊は、そのまま数万年、計画のために生かさず殺さずで利用され続けました。神を、気が遠くなるほどの時間をかけてでも弱らせ殺すために……意識がないまま、ただ無限エネルギーを吸収するためだけに無理矢理、冷凍睡眠し続けていたんです」
そんでもってそんな状態の僕を棺──たぶんレリエさん達が眠ってたのと同じタイプのものだろうねー──に押し込んで数万年眠らせた、と。
もう完全に道具とかの扱いだよー。そりゃ怒るよね、レイアもー。
「ソウマくん、物心ついた時にはもう大迷宮の中にいたって、言ってたわよ、ね……」
「そんなことが! 親に棄てられてさえいない、最初から完全に道具扱いで数万年と使われ続けていたなんて……!」
「…………胸糞悪いでござるなあ」
新世界旅団のみなさんもなんだか気の毒そうな顔だったり、やるせない顔だったりしてるー。
うん……まあ、自分でもええー? ってなるけど、それはそれとしてお陰様でみんなにも出会えたからねー。
美人のお姉さん達と出会うために数万年眠ってたんだって考えると、なんだかこれはこれでいいかなとは思うなー。
「魔を葬ると書いてね。前にソウくんは、なんとなく思い浮かんだからソウマと名乗ってるって言ってたけど……あなたを生み出した計画と同一の名称だったんだ。運命ってあるんだねー」
明かされた古代文明人の最後の計画"軍荼利・葬魔計画"。そのもの僕の名前が使われているのは、むしろ逆で僕がその計画を流用したんだろう。
この名前、初めて地表に出て孤児院の人に尋ねられた時に咄嗟に出た名前なんだよね。そんなものと同一のネーミングなのはさすがに、偶然の一致としては出来すぎてるよー。
とはいえ、その計画が僕の誕生とどう繋がってるのかは見えてきていない。なんとなく計画の一環として僕が生まれましたー、みたいな話っぽい気はしてるけどそれが本当かはまだわからないしねー。
同じ予感を抱いているんだろう、レリエさんがどこか緊張した面持ちでレイアへと尋ねた。
「それで、その計画がどうしたの? それでなんで、ソウマくんが生まれたなんて表現になるの」
「……それはね。彼こそが古代文明が最後に生み出した兵器だからだよ。ソウくんは、古代文明が創り出した最後の生命体、計画によって生み出された、作られた生命なんだ」
「はあ?」
思わず言っちゃった、いやでもはあ? でしょこんなのー。
計画が僕を生んだ、いや作ったのはまあ良いよ。古代文明にとって最後の生命なのも、まあなんかそういうタイミングだったんだねーって感じだし。
でも兵器って……そんな大層な言われ方するようなものじゃないはずだよー。僕は人間だよー。
歩きながらでも戸惑い、意味不明理解不能って視線を送る。もうすぐ地下87階層への道も見えてくる中で、レイアは沈痛な面持ちで僕を見て、言った。
「神を、長い時をかけてでも弱体化させて滅ぼす──その身に宿した無限エネルギーを、横取りする形で吸収する機能を備えた生体兵器による力で。ソウくんは、地下世界に潜む神の力を簒奪して、弱め殺すために産まれた生き物だった」
「……えええっ!? 僕がそんな力をっ!?」
「神の力を、奪う力!?」
「もっとも、おそらくすでに……すべての決着は付いてるんだろうけどね。ソウくん自身にも自覚もないだろうとは思うよ」
肩をすくめるレイアに、僕もみんなも唖然としている。つい立ち止まってしまい、最後尾にいるリューゼに"ぼさっとすんな! "って小突かれている人までいるよ。
いや……実際マジでびっくりだよー。知らない間に神を相手に赤ちゃん僕がなんかしてて、しかも知らない間に終わってたとかー。
全部覚えがない話だしぶっちゃけ、物心つく前のこととか知らないからまるで関係ない他人の話にしか聞こえないや。
なんとも微妙な反応を見せる僕をよそに、レイアの話は続いていく。同時にさらなる地下、87階にまで続く道を僕らは順繰りに進み始めた。
「古代文明人の最後の生き残りに、グンダリという名前の──本名か渾名かはしらないけどね──女がいた。科学者だったその女は古代文明のほとんどが息絶え、あるいは冷凍睡眠に眠る中、一人だけで神殺しの計画を立て、実行した」
「神殺し? まるで英雄だな」
「ただ、やったことは最低でした。神を解析して開発した無限エネルギー吸収能力を、産まれたての赤子に埋め込み……そのまま棺に押し込んで冷凍睡眠させたんです。生き物として、人間としてでなく兵器として、モノとして扱うために」
嫌悪感をむき出しにした物言い。彼女がここまで他者に対して嫌そうな言い方をするのは珍しいや、三年前にはあのエウリデ王にさえにこやかに応答してたのに。
……まあ、気持ちは理解できるけど。無限エネルギー吸収能力を埋め込まれた産まれたての赤子って、それが僕なんでしょ。
「眠らされた赤ん坊は、そのまま数万年、計画のために生かさず殺さずで利用され続けました。神を、気が遠くなるほどの時間をかけてでも弱らせ殺すために……意識がないまま、ただ無限エネルギーを吸収するためだけに無理矢理、冷凍睡眠し続けていたんです」
そんでもってそんな状態の僕を棺──たぶんレリエさん達が眠ってたのと同じタイプのものだろうねー──に押し込んで数万年眠らせた、と。
もう完全に道具とかの扱いだよー。そりゃ怒るよね、レイアもー。
「ソウマくん、物心ついた時にはもう大迷宮の中にいたって、言ってたわよ、ね……」
「そんなことが! 親に棄てられてさえいない、最初から完全に道具扱いで数万年と使われ続けていたなんて……!」
「…………胸糞悪いでござるなあ」
新世界旅団のみなさんもなんだか気の毒そうな顔だったり、やるせない顔だったりしてるー。
うん……まあ、自分でもええー? ってなるけど、それはそれとしてお陰様でみんなにも出会えたからねー。
美人のお姉さん達と出会うために数万年眠ってたんだって考えると、なんだかこれはこれでいいかなとは思うなー。