みんなの道を切り拓く、その覚悟で目に映るモンスターすべてと相対する。
 多少の討ち漏らしがあってもきっと、後からくる戦闘員達がどうとでもしてくれるだろうって信頼はあるけど……だからっていい加減なことはしない。

 必ずここで、僕とレイアで全員防ぎ止めてみせよう!
 その思いで僕らは瞬間、目を合わせて頷き叫んだ!

「雑魚に用なんてないよ! モンスター、いや……天使!!」
「ぶち抜け杭打ちくん! ──って、えええ!? 天使ぃ!?」

 叫びの内容が唐突かつサプライズすぎるよ、レイア!?
 天使って何!? モンスターのことをそんな風に呼ぶ人、君で初めてだと思うけどー!!

 杭打ちくんを振り抜きモンスターの頭を吹き飛ばし、次のモンスターの頭部へと狙いを定めつつ内心は驚きでいっぱいだ。
 たしかこないだのレイアの話で、神が自らを真似て生み出した手先、尖兵の名前が天使だったはずだけど──!?
 
「ぎゃおああああああっ!?」
「ちょ、今なんてレイア、天使ってまさか」
「数が多いね──」

 まさか! って思いで話しかける。その間にも身体は敵の攻撃を掻い潜りつつ直感的に割り当てた急所めがけ、的確に一撃必殺の杭打ちくんでぶち抜き続ける。
 ただ、それでも結構な数は残っているよー。それに業を煮やしたか、僕の呼びかけにも応じずにレイアは叫んだ。
 手にしたロングソードに、渾身の重力を押し込めてだ!
 
「──一網打尽! ソウくん離れて!」
「っ、ちいぃっ!!」
「必殺剣! ファイナルソード・ディザスター!!」

 大技が来る、それも対単体ようでない、大規模かつ広範囲の超強力な攻撃が!
 舌打ちしつつ出入り口まで後退する。さすがにここまで届く攻撃はしないだろうっていうのと、下手に後続がニョッキと出てきて巻き込まれるのを防ぐための堰き止め役だ、僕は。

 そうして放たれる、彼女の必殺剣。
 極限まで込めた重力、もはやブラックホールと化した超重力フィールドを剣を通して自身の周囲に発生させ、あらゆる命を吸い込み喰らい、すり潰して消滅させる奥義だよー!

「うぼぉぉぉぉぉぉあ!?」
「グルギャアアアアアア!!」
「ぐげげ────」
「相変わらず、出鱈目な!」

 レイアを中心に黒い半透明の膜が球形に広がる。僕のいるところまで割とギリギリ、あっぶないよー!?
 避けきれず、後退しきれずに広がる膜に触れたモンスターが次々、重力に耐えきれず圧壊して引きずり込まれていく。後に残るものなんて何もない、ある意味この世のどんなものよりも残酷な死に様。

 時間にして10秒くらいかな? 短いけれど効果は絶大だ、範囲内の存在を彼女以外完全に、消し去ってしまったんだからね。
 視界のほとんどを更地にしてみせた今の恐るべき奥義だけど、それでも何匹かは討ち漏らしがある。運良く逃げ延びたんだねー。
 
「残り滓、いただきぃっ!!」
「ぐがっげっご!?」

 そしたらそいつは僕の相手だ。一瞬でモンスター達に肉薄し、杭打ちくんを振るう。
 一つ目巨人、オーバーゴブリン、ゴールドドラゴン、バーサーカー。次々に脳天か眉間、あるいは心臓に杭を打ち込めば、問題なく全部が倒れていく。

 戦闘開始から概ね3分。
 後続の気配がしてきたあたりで、僕らは無事にモンスターを殲滅したのだった。
 
「……ふう。お見事! さすがに強くなってるね、ソウくん」
「そっちこそ。研究ばかりしてたって言うけど、前よりずーっと強くなってるじゃないか」
「そりゃねー。いつかこの時が来ると思って、訓練は欠かさずいたし」
「この時……」

 駆け寄りながらニッコリ笑うレイアの言葉に、ぎしりと心が軋む。
 この時……僕との再会と共闘をどれだけ彼女が待ち望んでいたのか。それが今の一言から痛いほどに伝わってきたからだ。
 レイアは薄く微笑んで、続けて言う。
 
「そう、この時。いつかソウくんとまたね、一緒に頑張れる時がいつかきっと来るって、信じていたから。ソウくんのほうは信じてなかったかもだけど」
「そりゃ……そうだよ。僕がやったことを考えれば、そんな恥知らずな妄想、とても」
「うーん。まあ、そのへんも今回の冒険で一応、決着つけるつもりだからさ。あんまり重くなりすぎないでほしいかなー」
「え……レイア?」
「ん、みんなも来たみたい」
 
 決着……僕とレイアのこれまでのことにも、今回の冒険の中で決着をつけるつもりなの?
 まったく聞いてなかった話に彼女の顔を見つめる。けれどレイアは大迷宮の出入り口、続いてやって来たパーティメンバー達を見据え、僕の視線には応えてはくれなかった。