「ヒトの機能を中途半端に受け継いで、捕食機能を受け継いだ。神の機能を中途半端に受け継いで、無限ではない有限エネルギー炉を受け継いだ。結果、生まれた新たなる神は暴走した──己の欲望に任せて、人や他の神、それ以外の命も含めて捕食吸収を始めたの」
禁忌中の禁忌に触れた、古代文明の科学者達。
新たな生命体を生み出したばかりに飽き足らず、今度はそれを便利遣いすべく、様々な生物との交配をさせて──終いには、人間さえも使ってかけ合わせてしまった。
遺伝子とかいう、なんだかすごく大切そうな、そしてヤバそうなものを組み合わせることで生まれてしまった破滅の引き金。
そう、生まれたものには他の生き物を食べる機能がついていたんだ。明確に、他の生命を取り込む力を獲得したんだねー。
「失敗作ができた挙げ句、しかも暴走し始めた、と。現代よりはるかに優れた技術力を持ちながら、ずいぶんとまあ……」
緊張の空気の中、ベルアニーさんが深々とため息を吐きつつも呻いた。みんな、ゲッソリしてるよー。
そりゃあね……はっきり言って古代文明人の自業自得そのものって顛末だもの。神を生み出したのも古代文明なら、それによって取り返しのつかないことをしたのも古代文明。
挙げ句に自分の生み出したものに滅ぼされてるんだから、世話ないって話だよねー。
「何よりも性質が悪かったのは、生まれたその神の捕食対象に、それまでに量産されていた他の神さえ含まれていたことでした。出力は低くとも無限エネルギー炉を取り込めば、必然的に有限エネルギー炉も力を増していく。それを繰り返していけば、やがては」
「何者をも凌駕するエネルギーを無尽蔵に持つ化物が、捕食機能つきで誕生するわけか」
「はい。古代文明世界にそれまで生産されていた神々は、みなわずか数年で食い尽くされたと資料にはあります」
……たしか、相当な数を大量量産したとか言ってなかった? それをわずか数年で、全部食い尽くしたって言うの? レリエさんの話しに慄く。
恐ろしい話だ。古代文明の凄まじい技術力ってやつが完全に暴走しちゃったんだねー。
しかも無限エネルギーの炉を取り込んだことで、その神はどんどんと力をつけていったと。量産された神を食い尽くして唯一無二の存在になったソイツは、さぞかしとんでもない力を持ってたんだろう。
それこそ、古代文明を滅ぼし尽くしてしまうほどに。レイアが続けて言った。
「古代文明人も当然ながら手を拱いていたわけでなく、肥大化し続ける神を止めるべく一丸となって攻撃を仕掛けたようです。ですが……」
「通じなかったんでござるな? 話を聞くに、無限なんてものが相手なわけでござるからなー」
「そう、なります。無限エネルギー炉を一つ取り込んだ時点で、その神を破壊する方法は古代文明には存在しませんでした。相手は無限のエネルギー、つまり常にどこかから生まれ出るエネルギーを用いて、いかなる傷をも瞬時に再生させていたとか」
無限に再生する化物。さっきのコピー品も大概面倒くさかったけど、本体というか本体をさえ食いつくした奴はもう、桁違いの厄介さだったんだね……
古代文明がどれほどの武力を誇っていたかは、オカルト雑誌とかでも触れてるけど相当のものだったことは確実視されている。各地の迷宮から出土している遺産のようなものの中に、壊れて使えないけれどもおそらくは兵器だろうものもあるって話だし。
そんな武力を山程集めても勝てない、そればかりか滅ぼされちゃったなんて。
ごくり、とつばを飲み込む。僕も一応世界最高峰の冒険者って自負はあるけど、いくらなんでも無限相手にイキったりはできない。
加えて神の恐ろしさがそれだけでないって言うならなおのことだよ。レイアは続けて言う。
「次第に神は、自らの手兵を増やしました。無限エネルギーこそないものの自らに似せた異形、そしてソレを祖として進化していく有機生命体……"天使"と呼ばれるモノ達を数多、生み出したんです」
「神が生み出したから天使、ですか。なんだか皮肉が効きすぎているネーミングですね」
「もう自棄っぱちだったのかもね、当時の人類の主導者達も。もしくは自分達が神の怒りに触れたんだって、だから滅びるんだって諦めちゃってたのかも」
神に、天使。自分達を追い詰め滅ぼすモノにつけるにしては、あまりにもあんまりなネーミングな気はするね。
レイアの言う通り、自棄っぱちだとか、諦念があったりとかはしたのかも。今だって実際、レリエさんは深く頷いては苦く笑ってる。
「その通りね……私達は、してはならないことをしてしまった。神の領域を侵してしまった。だから滅ぼされた。本当に、言葉にすればそれだけの、あまりにも愚かな顛末よ」
自嘲とともにつぶやく顔が、あまりに痛々しくて見ていられない。
でも、けれど……それでも彼女はここにいる。ヤミくんもヒカリちゃんも、マーテルさんもだ。
まだ、滅びが確定したあとの話があるんだ。
むしろそこからが本番かもねと笑い、レイアはさらに説明を続けた。
禁忌中の禁忌に触れた、古代文明の科学者達。
新たな生命体を生み出したばかりに飽き足らず、今度はそれを便利遣いすべく、様々な生物との交配をさせて──終いには、人間さえも使ってかけ合わせてしまった。
遺伝子とかいう、なんだかすごく大切そうな、そしてヤバそうなものを組み合わせることで生まれてしまった破滅の引き金。
そう、生まれたものには他の生き物を食べる機能がついていたんだ。明確に、他の生命を取り込む力を獲得したんだねー。
「失敗作ができた挙げ句、しかも暴走し始めた、と。現代よりはるかに優れた技術力を持ちながら、ずいぶんとまあ……」
緊張の空気の中、ベルアニーさんが深々とため息を吐きつつも呻いた。みんな、ゲッソリしてるよー。
そりゃあね……はっきり言って古代文明人の自業自得そのものって顛末だもの。神を生み出したのも古代文明なら、それによって取り返しのつかないことをしたのも古代文明。
挙げ句に自分の生み出したものに滅ぼされてるんだから、世話ないって話だよねー。
「何よりも性質が悪かったのは、生まれたその神の捕食対象に、それまでに量産されていた他の神さえ含まれていたことでした。出力は低くとも無限エネルギー炉を取り込めば、必然的に有限エネルギー炉も力を増していく。それを繰り返していけば、やがては」
「何者をも凌駕するエネルギーを無尽蔵に持つ化物が、捕食機能つきで誕生するわけか」
「はい。古代文明世界にそれまで生産されていた神々は、みなわずか数年で食い尽くされたと資料にはあります」
……たしか、相当な数を大量量産したとか言ってなかった? それをわずか数年で、全部食い尽くしたって言うの? レリエさんの話しに慄く。
恐ろしい話だ。古代文明の凄まじい技術力ってやつが完全に暴走しちゃったんだねー。
しかも無限エネルギーの炉を取り込んだことで、その神はどんどんと力をつけていったと。量産された神を食い尽くして唯一無二の存在になったソイツは、さぞかしとんでもない力を持ってたんだろう。
それこそ、古代文明を滅ぼし尽くしてしまうほどに。レイアが続けて言った。
「古代文明人も当然ながら手を拱いていたわけでなく、肥大化し続ける神を止めるべく一丸となって攻撃を仕掛けたようです。ですが……」
「通じなかったんでござるな? 話を聞くに、無限なんてものが相手なわけでござるからなー」
「そう、なります。無限エネルギー炉を一つ取り込んだ時点で、その神を破壊する方法は古代文明には存在しませんでした。相手は無限のエネルギー、つまり常にどこかから生まれ出るエネルギーを用いて、いかなる傷をも瞬時に再生させていたとか」
無限に再生する化物。さっきのコピー品も大概面倒くさかったけど、本体というか本体をさえ食いつくした奴はもう、桁違いの厄介さだったんだね……
古代文明がどれほどの武力を誇っていたかは、オカルト雑誌とかでも触れてるけど相当のものだったことは確実視されている。各地の迷宮から出土している遺産のようなものの中に、壊れて使えないけれどもおそらくは兵器だろうものもあるって話だし。
そんな武力を山程集めても勝てない、そればかりか滅ぼされちゃったなんて。
ごくり、とつばを飲み込む。僕も一応世界最高峰の冒険者って自負はあるけど、いくらなんでも無限相手にイキったりはできない。
加えて神の恐ろしさがそれだけでないって言うならなおのことだよ。レイアは続けて言う。
「次第に神は、自らの手兵を増やしました。無限エネルギーこそないものの自らに似せた異形、そしてソレを祖として進化していく有機生命体……"天使"と呼ばれるモノ達を数多、生み出したんです」
「神が生み出したから天使、ですか。なんだか皮肉が効きすぎているネーミングですね」
「もう自棄っぱちだったのかもね、当時の人類の主導者達も。もしくは自分達が神の怒りに触れたんだって、だから滅びるんだって諦めちゃってたのかも」
神に、天使。自分達を追い詰め滅ぼすモノにつけるにしては、あまりにもあんまりなネーミングな気はするね。
レイアの言う通り、自棄っぱちだとか、諦念があったりとかはしたのかも。今だって実際、レリエさんは深く頷いては苦く笑ってる。
「その通りね……私達は、してはならないことをしてしまった。神の領域を侵してしまった。だから滅ぼされた。本当に、言葉にすればそれだけの、あまりにも愚かな顛末よ」
自嘲とともにつぶやく顔が、あまりに痛々しくて見ていられない。
でも、けれど……それでも彼女はここにいる。ヤミくんもヒカリちゃんも、マーテルさんもだ。
まだ、滅びが確定したあとの話があるんだ。
むしろそこからが本番かもねと笑い、レイアはさらに説明を続けた。