調査戦隊解散後、再起をかけて海を渡ったレイア。
一度はすべての冒険者達の頂点にまでなったところからの崩壊は、さしもの彼女をして精神的に大きなダメージを与えてしまっていたみたいだ。
当然だよね。完全に加害者だった僕でさえ、調査戦隊解散は大きな衝撃だったんだ。調査戦隊を発足し、あそこまで大きく偉大な組織にしてみせた彼女が受けた傷は計り知れないよ。
やってしまった側として、何か言う資格はないけれどひたすらに内心、罪悪感に詫びるよ……今はまだ、直接謝るタイミングじゃないみたいだけど、後でその機会が来たらその時は。
覚悟を決めつつ彼女の話に耳を傾ける。
そうして海を渡った後、そこを起点に彼女の新たな冒険は始まったんだ。
「まあ、とにかく。そんなわけで海外にて再起を図った私達ですけど、ぶっちゃけすぐにそれどころじゃなくなりました。たまたま潜った地下迷宮において、とんでもないものを見つけたんです」
「……とんでもない、もの?」
大迷宮を踏破する中、数々のとんでもない経験を積んできたレイアをしてそう言わしめる。それは一体、なんなんだろう?
しかも再起どころじゃないとまで思わせるなんてどう考えてもただごとじゃない。
おそらくは古代文明絡みだろうけど、もしかしてまた新しい古代文明人でも見つけたりしたんだろうか?
何人いるか知らないけど、あの地下82階層の玄室以外にも似たような場所はありそうだし、となると他にも古代文明人が眠ってたりはしそうだものねー。
息を呑み、誰もがレイアを見る。
彼女はそして、厳かに告げるのだった。
「そう……大迷宮についてや古代文明について、多くのことを記録したデータを収めた資料室。あるいは書斎かな? それを発見したんだよね」
「なんだって!?」
「古代文明の資料室だと!?」
ざわめく僕達。古代文明についての資料はこれまで散発的に見つけられてきたものだけど、一部だけでも相当貴重なものだ。
何せ紙切れ一枚でも、発見した国が厳重に保管して研究対象として長く調査しているほどだもの。そんなのがたんまり詰まった資料室なんてのを発見したなんて、一国ばかりか世界が揺るぐ大スクープだよー。
そんなものを何年も前に発見していたの、レイア?
唖然とする僕らを見回して、苦笑いする彼女はさらに続けた。
「言うまでもなく完全に偶然でした。後になってからの調査研究で推測できたのですが、その部屋、その施設は古代文明の生き残り……"眠りにつくことのなかった"生き残り達による情報集積と保管のための玄室だったみたいですね」
「眠りに……コールドスリープしなかった人達がいた!? すべてが沈んだ後に、それでもまだ眠らなかった者達がいるの!?」
「し、しかも、情報を集積してた? 保管?」
「なんのために、そんなことを……」
眠りにつかなかった。それはつまり滅びゆく古代文明と運命をともにした人達ってことか。そんな人達が、自分達について記した情報資料をまとめて保管していた、と。
レリエさんやヤミくん、ヒカリちゃんが愕然とつぶやく。この三人と今ここにはいないけどマーテルさんの4人こそ、いわゆる眠りについたほうの古代文明人だからね……
数万年もの時を経てでも生きながらえるのではなく、資料だけを残して自分達はそこで終わることを選ぶ。
それは、どんな考えと決断、意志のもとに行われたことなんだろう。眠るにせよ眠らないにせよ大変な選択だったのは想像に難くないけど、事実上自分たちの"その後"を放棄するに至った経緯は、正直気になるよ。
レイアもそんな想いを見抜いたかのように、神妙な表情で話す。
調査研究の末に判読できた古代文明の資料、その中の一つに当時の人達の志が記されていたんだ。
「集積していた古代文明人達のリーダー、らしい人が残した手記もあったよ。解読したら、こんな感じのことが書いてあった──"数千、数万、数億かもしれない時の果てに辿り着いた貴方へ。遥かな過去から、貴方が生きる現在に。私達に価値はなかったとしても、意味はあったのだと信じるため、ここに、プレゼントを贈ります"ってね」
「それは、つまり」
「せめて自分達の生きた証を、意味を信じたかったってところかな。自分達自身が生き延びることより、自分達がそれまでに積み重ねてきたものを少しでも多く集め、次に繋げたかったんだよ、きっと。そのために当時のあらゆる資料を記録して、特殊な技術で永久保管したんだね」
すさまじい覚悟だよ、と語るレイアに誰もが頷くほかない。
自分達の命ではなく、古代文明の証をこそ遺す。そのために命を燃やし尽くしたんだろうその人達の覚悟や使命感の強さは、身一つで遥かな時を超えてやってきたレリエさん達にも劣ることはない。
偉大な先人達が身を捨てて遺してくれた、遥かな古代からのプレゼント。
それを現代、英雄と呼ばれるレイアが奇跡的に発見したんだねー。
一度はすべての冒険者達の頂点にまでなったところからの崩壊は、さしもの彼女をして精神的に大きなダメージを与えてしまっていたみたいだ。
当然だよね。完全に加害者だった僕でさえ、調査戦隊解散は大きな衝撃だったんだ。調査戦隊を発足し、あそこまで大きく偉大な組織にしてみせた彼女が受けた傷は計り知れないよ。
やってしまった側として、何か言う資格はないけれどひたすらに内心、罪悪感に詫びるよ……今はまだ、直接謝るタイミングじゃないみたいだけど、後でその機会が来たらその時は。
覚悟を決めつつ彼女の話に耳を傾ける。
そうして海を渡った後、そこを起点に彼女の新たな冒険は始まったんだ。
「まあ、とにかく。そんなわけで海外にて再起を図った私達ですけど、ぶっちゃけすぐにそれどころじゃなくなりました。たまたま潜った地下迷宮において、とんでもないものを見つけたんです」
「……とんでもない、もの?」
大迷宮を踏破する中、数々のとんでもない経験を積んできたレイアをしてそう言わしめる。それは一体、なんなんだろう?
しかも再起どころじゃないとまで思わせるなんてどう考えてもただごとじゃない。
おそらくは古代文明絡みだろうけど、もしかしてまた新しい古代文明人でも見つけたりしたんだろうか?
何人いるか知らないけど、あの地下82階層の玄室以外にも似たような場所はありそうだし、となると他にも古代文明人が眠ってたりはしそうだものねー。
息を呑み、誰もがレイアを見る。
彼女はそして、厳かに告げるのだった。
「そう……大迷宮についてや古代文明について、多くのことを記録したデータを収めた資料室。あるいは書斎かな? それを発見したんだよね」
「なんだって!?」
「古代文明の資料室だと!?」
ざわめく僕達。古代文明についての資料はこれまで散発的に見つけられてきたものだけど、一部だけでも相当貴重なものだ。
何せ紙切れ一枚でも、発見した国が厳重に保管して研究対象として長く調査しているほどだもの。そんなのがたんまり詰まった資料室なんてのを発見したなんて、一国ばかりか世界が揺るぐ大スクープだよー。
そんなものを何年も前に発見していたの、レイア?
唖然とする僕らを見回して、苦笑いする彼女はさらに続けた。
「言うまでもなく完全に偶然でした。後になってからの調査研究で推測できたのですが、その部屋、その施設は古代文明の生き残り……"眠りにつくことのなかった"生き残り達による情報集積と保管のための玄室だったみたいですね」
「眠りに……コールドスリープしなかった人達がいた!? すべてが沈んだ後に、それでもまだ眠らなかった者達がいるの!?」
「し、しかも、情報を集積してた? 保管?」
「なんのために、そんなことを……」
眠りにつかなかった。それはつまり滅びゆく古代文明と運命をともにした人達ってことか。そんな人達が、自分達について記した情報資料をまとめて保管していた、と。
レリエさんやヤミくん、ヒカリちゃんが愕然とつぶやく。この三人と今ここにはいないけどマーテルさんの4人こそ、いわゆる眠りについたほうの古代文明人だからね……
数万年もの時を経てでも生きながらえるのではなく、資料だけを残して自分達はそこで終わることを選ぶ。
それは、どんな考えと決断、意志のもとに行われたことなんだろう。眠るにせよ眠らないにせよ大変な選択だったのは想像に難くないけど、事実上自分たちの"その後"を放棄するに至った経緯は、正直気になるよ。
レイアもそんな想いを見抜いたかのように、神妙な表情で話す。
調査研究の末に判読できた古代文明の資料、その中の一つに当時の人達の志が記されていたんだ。
「集積していた古代文明人達のリーダー、らしい人が残した手記もあったよ。解読したら、こんな感じのことが書いてあった──"数千、数万、数億かもしれない時の果てに辿り着いた貴方へ。遥かな過去から、貴方が生きる現在に。私達に価値はなかったとしても、意味はあったのだと信じるため、ここに、プレゼントを贈ります"ってね」
「それは、つまり」
「せめて自分達の生きた証を、意味を信じたかったってところかな。自分達自身が生き延びることより、自分達がそれまでに積み重ねてきたものを少しでも多く集め、次に繋げたかったんだよ、きっと。そのために当時のあらゆる資料を記録して、特殊な技術で永久保管したんだね」
すさまじい覚悟だよ、と語るレイアに誰もが頷くほかない。
自分達の命ではなく、古代文明の証をこそ遺す。そのために命を燃やし尽くしたんだろうその人達の覚悟や使命感の強さは、身一つで遥かな時を超えてやってきたレリエさん達にも劣ることはない。
偉大な先人達が身を捨てて遺してくれた、遥かな古代からのプレゼント。
それを現代、英雄と呼ばれるレイアが奇跡的に発見したんだねー。