冷たい怒りを乗せて再会を果たしたレイアとエウリデ王。レイアはもちろんブチギレてるけど、対するエウリデ王だって負けず劣らずキレまくってる。
あの化物──"神"を僕らが倒したのがよほど予定外だったんだろう。顔を真っ赤にしてやつは、3年前に叩き潰した冒険者パーティーのリーダーだった女へと叫んだ。
「レイア・アールバド! 3年前の復讐のつもりかっ……!? 貴様、貴様らは一体自分達が何をしたのか分かっているのかァ!?」
「はるか万年の時を経てなお哀れに利用される命を、魂を解き放ちました。それだけですよ、エウリデ王」
「ふざけるな!! エウリデの夢、エウリデの野望、エウリデの理想!! 我らが脈々と継いできた永遠国家樹立の礎を、そのような戯言でッ!!」
「腐れた夢、呪いのような野望、おぞましい理想。永遠に続くものなんてあっちゃいけないんです。ましてやあなたの血族を永久に頂きに据える、そのような国なんてなおのこと!」
永遠国家……またなんとも、嫌な響きだね。
つまりはこいつ、あの化物を用いて世界征服し、永遠に続くエウリデ王国を形成しようとしていたってことかな? 地獄だよー。
こいつの子孫がこいつよりまともに育つとも思えないし、むしろどんどん劣化していく可能性のほうが高いし。となると支配される民にとっては永遠の苦しみがもたらされるってことになる。
冗談じゃないねー。
レイアも同じく思ったのか、愚にもつかないおぞましい野望を叫んだ男へと一喝する。
「……はっきり言わなければわからないんですか? 恥を知れエウリデ、と!」
「ぬぐぅっ!?」
「私はすでにすべてを知っています! メルトルーデシア神聖キングダム、今ではそう呼ばれているかつての世界にいたあなたの祖先が何をしたのか! 何を創り出してしまい、何を滅ぼしてしまったのか! その上でどのようにしてあなたの一族だけがのうのうと生き延び、こうして厚顔無恥な権威を構築したのか! すべて知っています!!」
「何を、貴様ッ」
…………うーん。さっきからだけどレイア、僕が知らない何かを知ってるよね、コレー。
いやまあそれは当たり前なんだけど、どうもエウリデの成り立ちの真実とか古代文明についてとか、さっきの"神"についてまであらかたのことを全部知ってる気がしてならないよー。
一体どこで知ったんだろう、そんなこと。
膨れ上がる疑問の数々は、他のみんなも同じらしい。シアンさんやサクラさん、シミラ卿はもちろんのことリューゼ以下、戦慄の群狼の面々も何が何やらと首を傾げている。
これは、後で洗い浚い聞かなきゃね。
内心にて決心する中、レイアはエウリデ王に宣言した。
「愚かな王よ、その一族よ! あなた達を今ここで排することは簡単ですが、それを成せばこの地は乱れる! それでは人民の生活は揺るぎ、心は荒み命が危険にさらされてしまう! ゆえに!」
「────あんた方はここから先、冒険者達の傀儡だ。民のための国制が確立するまで精々、うまいこと王様をやっといてくれ」
「!?」
レイアの言葉に合わせるように、王城の崩れた壁から声が聞こえた。同時に奥から冒険者達が次々に駆けつけてきて、王の周りにいた兵士達を次々に薙ぎ倒していく。
これは……レイアを見る。彼女も驚きに目を丸くしているけど、極端に驚いた様子でもない。行動はともかく存在は知っていた、みたいな感触だ。
となれば、この声は。
僕が当たりをつけるのと同じタイミングで、声の主が現れた。手にした鞭を振るってエウリデ王を縛り上げ、そのまま拘束する。
「ぬうう!? 貴様はッ!?」
「騒ぐな、一々。もうじきお飾りになるとはいえ王様がみっともないぞ、ラストシーンさんよ」
「あ、あなたは……!」
慌てふためくエウリデ王を嘲笑う声の主。奥から出てくる彼を、僕はよく知っていた。
40代そこそこのナイスミドルなおじさん。茶髪を刈り上げたマッチョな大学の持ち主で、堀の深い顔は三年前もよく、女の人達にキャーキャー言われてたっけな。当時はともかく今はムカつく。
そう、彼もまた調査戦隊元メンバーの一人。いやそれどころかレジェンダリーセブンの一員にして、レイアの実の叔父であり彼女を支え続けた副長。
僕は震える声で、彼の名をつぶやいた。
「う、ウェルドナーさん……」
「……久しぶりだな、グンダリ。いろいろ複雑な気持ちなんだが、ひとまずは大きくなったことを嬉しく思うよ」
ウェルドナー・クラウン・バーゼンハイム。
元、大迷宮深層調査戦隊の副リーダーが、部下を伴っての登場を果たしていた。
あの化物──"神"を僕らが倒したのがよほど予定外だったんだろう。顔を真っ赤にしてやつは、3年前に叩き潰した冒険者パーティーのリーダーだった女へと叫んだ。
「レイア・アールバド! 3年前の復讐のつもりかっ……!? 貴様、貴様らは一体自分達が何をしたのか分かっているのかァ!?」
「はるか万年の時を経てなお哀れに利用される命を、魂を解き放ちました。それだけですよ、エウリデ王」
「ふざけるな!! エウリデの夢、エウリデの野望、エウリデの理想!! 我らが脈々と継いできた永遠国家樹立の礎を、そのような戯言でッ!!」
「腐れた夢、呪いのような野望、おぞましい理想。永遠に続くものなんてあっちゃいけないんです。ましてやあなたの血族を永久に頂きに据える、そのような国なんてなおのこと!」
永遠国家……またなんとも、嫌な響きだね。
つまりはこいつ、あの化物を用いて世界征服し、永遠に続くエウリデ王国を形成しようとしていたってことかな? 地獄だよー。
こいつの子孫がこいつよりまともに育つとも思えないし、むしろどんどん劣化していく可能性のほうが高いし。となると支配される民にとっては永遠の苦しみがもたらされるってことになる。
冗談じゃないねー。
レイアも同じく思ったのか、愚にもつかないおぞましい野望を叫んだ男へと一喝する。
「……はっきり言わなければわからないんですか? 恥を知れエウリデ、と!」
「ぬぐぅっ!?」
「私はすでにすべてを知っています! メルトルーデシア神聖キングダム、今ではそう呼ばれているかつての世界にいたあなたの祖先が何をしたのか! 何を創り出してしまい、何を滅ぼしてしまったのか! その上でどのようにしてあなたの一族だけがのうのうと生き延び、こうして厚顔無恥な権威を構築したのか! すべて知っています!!」
「何を、貴様ッ」
…………うーん。さっきからだけどレイア、僕が知らない何かを知ってるよね、コレー。
いやまあそれは当たり前なんだけど、どうもエウリデの成り立ちの真実とか古代文明についてとか、さっきの"神"についてまであらかたのことを全部知ってる気がしてならないよー。
一体どこで知ったんだろう、そんなこと。
膨れ上がる疑問の数々は、他のみんなも同じらしい。シアンさんやサクラさん、シミラ卿はもちろんのことリューゼ以下、戦慄の群狼の面々も何が何やらと首を傾げている。
これは、後で洗い浚い聞かなきゃね。
内心にて決心する中、レイアはエウリデ王に宣言した。
「愚かな王よ、その一族よ! あなた達を今ここで排することは簡単ですが、それを成せばこの地は乱れる! それでは人民の生活は揺るぎ、心は荒み命が危険にさらされてしまう! ゆえに!」
「────あんた方はここから先、冒険者達の傀儡だ。民のための国制が確立するまで精々、うまいこと王様をやっといてくれ」
「!?」
レイアの言葉に合わせるように、王城の崩れた壁から声が聞こえた。同時に奥から冒険者達が次々に駆けつけてきて、王の周りにいた兵士達を次々に薙ぎ倒していく。
これは……レイアを見る。彼女も驚きに目を丸くしているけど、極端に驚いた様子でもない。行動はともかく存在は知っていた、みたいな感触だ。
となれば、この声は。
僕が当たりをつけるのと同じタイミングで、声の主が現れた。手にした鞭を振るってエウリデ王を縛り上げ、そのまま拘束する。
「ぬうう!? 貴様はッ!?」
「騒ぐな、一々。もうじきお飾りになるとはいえ王様がみっともないぞ、ラストシーンさんよ」
「あ、あなたは……!」
慌てふためくエウリデ王を嘲笑う声の主。奥から出てくる彼を、僕はよく知っていた。
40代そこそこのナイスミドルなおじさん。茶髪を刈り上げたマッチョな大学の持ち主で、堀の深い顔は三年前もよく、女の人達にキャーキャー言われてたっけな。当時はともかく今はムカつく。
そう、彼もまた調査戦隊元メンバーの一人。いやそれどころかレジェンダリーセブンの一員にして、レイアの実の叔父であり彼女を支え続けた副長。
僕は震える声で、彼の名をつぶやいた。
「う、ウェルドナーさん……」
「……久しぶりだな、グンダリ。いろいろ複雑な気持ちなんだが、ひとまずは大きくなったことを嬉しく思うよ」
ウェルドナー・クラウン・バーゼンハイム。
元、大迷宮深層調査戦隊の副リーダーが、部下を伴っての登場を果たしていた。