「王城近くまでは特に何事もなく来れたが、ここからだな問題は……」
「さすがになんの妨害もないのは考えにくいですからね」
出発して一団、馬車を使って進むこと数時間。
半ば期待さえされる形で予想されていた──王城本体に攻め入る前にウォーミングアップくらいしたいのが大半の冒険者達の本音だった──敵方の妨害、ないし防衛行動には終ぞおめにかかることがないまま、僕達はエウリデは王城のある城下町、すなわち王都をはるか前方に見下ろす小高い丘にまで到達できていた。
なんか来い、なんかしてこいとワクワクしていた僕達からすればぶっちゃけ肩透かしなんだけど、さすがに向こうが未だにこちらの動きを把握してないなんてのは考えづらい。
だから何かしら、思惑あってのことだろうとは思うんだけどー、じゃあその思惑って何? ってところについてはさすがに僕はおろかモニカ教授にも分かりかねる。
仕方なし、素通りさせてくれるって言うならありがたくーって塩梅でひとまずその辺の疑問は捨て置くことにした。
ベルアニーさんも同様のようで、そもそも、と顎に手を当て考え込みつつ別の話をしだしていた。
「だが、それにしても解せんのはエウリデだ。保有している最高戦力がシミラ卿だったものを、そのシミラ卿を処刑しようとしている今、一体代わりにどこの誰を用意しているというのか」
「騎士団のどなたさんかじゃないのー? 金とごますりだけ、口車に乗せるのだけが得意な連中多そうじゃない」
「そんな連中に一応の公的な国防の仕切りを任せるのでござるか? ……任せそうでござるなあ」
そもそも現状、エウリデという国が保有する中では最強と言える腕前なのがシミラ卿だ。何せ元調査戦隊メンバーだからねー。
そんな彼女を真っ先に切り捨てた形になる今回の騒動、果たして"その後"のことについてエウリデはどんな絵を描いているんだろう? 具体的に言うと彼女の後釜、次期騎士団長になりそうな人って、彼女と比べて見劣りしないような逸材だったりするんだろうか?
ないねー。絶対にない。
騎士団も古参連中はそれなりだけど、それでもあくまでそれなり終わりだ、シミラ卿には遠く及ばない腕前しかないよー。
大体、今の腐敗しきった騎士団なんてろくなもんじゃなし、どうせ金と貴族敵都合で次が据えられるに決まっている。事実上、シミラ卿こそが最後の"まともな"騎士団長になるだろうってのは、割とそこかしこでも言われてたりするしねー。
エウリデの外からやって来たサクラさんさえ、エウリデの腐りっぷりは苦笑いとともに否定しないレベルだ。
そんな僕らをさておいて、ギルド長は腕組みしてシアン団長に確認した。エウリデ王都までは無事にたどり着けた、となればここから先の動きがいよいよ重要だね。
「再度の確認だ。王城、城下町前まで進んだ時点で方位陣形に移る。町の周辺を囲み、威圧する態勢を整えるのだ」
「戦慄の群狼もここに加わるのでしたね。向こうの首尾は?」
「伝令をやり取りさせているが上々だ。すでに動き出していて、ややもすれば我々より先に陣を広げだすかもしれん。さすがの統率力だな、ラウドプラウズ」
そう言って遠く、王都の向こうを指差す。僕も身体強化で遠視してみると、遥か向こうに僕ら同様、丘にて陣取る一団が見えた。
アレがリューゼの率いる戦慄の群狼ってことだろう。なんか狼の群れ? みたいな旗があちこち掲げられてるよー。パーティーの象徴としての旗、いいねかっこいー!
新世界旅団もなんか旗とかエンブレムとか、あーゆーの見てると欲しくなってくるよー。
仄かな憧れを胸に懐きつつ眺める。その間もモニカ教授やシアン団長による、ここから先の動き方が僕らに示されていく。
「我々とリューゼ嬢側とで町を取り囲んだら次、エウリデ政府に向けて使者を立てるよ。シミラ卿を解放することと、処刑の撤廃と彼女に課した罪過の赦免を要求するんだ」
「この使者というのは冒険者達の主導者の一人として私が務めます。ソウマくん、サクラも来てください。おそらくは決裂するでしょうから、そこを見越しての人選ですね」
なるほど、交渉の使者って形でまずは新世界旅団の3人が王城へと赴くわけか。
これ、表向き使者だけど……事実上は潜入して破壊活動を行う、いわゆる工作員みたいな感じだねー。
口ぶりからして間違いなく話し合いは決裂すると見ているんだろう、団長は。僕も正直そう思う。
だから最初からそこから先、決裂した後の動きを見越して僕とサクラさんを連れて行くんだ。その場を制圧して、すぐさま地下牢まで駆け抜けていけるように。
「最初から没交渉になると想定してるのね。そしてうまくいかないとなればすぐ動けるように、ソウマくんとサクラを伴う、と」
「エウリデが首を縦に振るなど、貴族の身で言うのもなんですが考えにくいことですから。決裂は基本のものとして扱うべきでしょう」
同じく気づいたレリエさんの確認に、団長も頷き答え合わせをする。
つまるところ軽く腹を探りつつ、土手っ腹に一発打ち込んでやろうってことだねー!
「さすがになんの妨害もないのは考えにくいですからね」
出発して一団、馬車を使って進むこと数時間。
半ば期待さえされる形で予想されていた──王城本体に攻め入る前にウォーミングアップくらいしたいのが大半の冒険者達の本音だった──敵方の妨害、ないし防衛行動には終ぞおめにかかることがないまま、僕達はエウリデは王城のある城下町、すなわち王都をはるか前方に見下ろす小高い丘にまで到達できていた。
なんか来い、なんかしてこいとワクワクしていた僕達からすればぶっちゃけ肩透かしなんだけど、さすがに向こうが未だにこちらの動きを把握してないなんてのは考えづらい。
だから何かしら、思惑あってのことだろうとは思うんだけどー、じゃあその思惑って何? ってところについてはさすがに僕はおろかモニカ教授にも分かりかねる。
仕方なし、素通りさせてくれるって言うならありがたくーって塩梅でひとまずその辺の疑問は捨て置くことにした。
ベルアニーさんも同様のようで、そもそも、と顎に手を当て考え込みつつ別の話をしだしていた。
「だが、それにしても解せんのはエウリデだ。保有している最高戦力がシミラ卿だったものを、そのシミラ卿を処刑しようとしている今、一体代わりにどこの誰を用意しているというのか」
「騎士団のどなたさんかじゃないのー? 金とごますりだけ、口車に乗せるのだけが得意な連中多そうじゃない」
「そんな連中に一応の公的な国防の仕切りを任せるのでござるか? ……任せそうでござるなあ」
そもそも現状、エウリデという国が保有する中では最強と言える腕前なのがシミラ卿だ。何せ元調査戦隊メンバーだからねー。
そんな彼女を真っ先に切り捨てた形になる今回の騒動、果たして"その後"のことについてエウリデはどんな絵を描いているんだろう? 具体的に言うと彼女の後釜、次期騎士団長になりそうな人って、彼女と比べて見劣りしないような逸材だったりするんだろうか?
ないねー。絶対にない。
騎士団も古参連中はそれなりだけど、それでもあくまでそれなり終わりだ、シミラ卿には遠く及ばない腕前しかないよー。
大体、今の腐敗しきった騎士団なんてろくなもんじゃなし、どうせ金と貴族敵都合で次が据えられるに決まっている。事実上、シミラ卿こそが最後の"まともな"騎士団長になるだろうってのは、割とそこかしこでも言われてたりするしねー。
エウリデの外からやって来たサクラさんさえ、エウリデの腐りっぷりは苦笑いとともに否定しないレベルだ。
そんな僕らをさておいて、ギルド長は腕組みしてシアン団長に確認した。エウリデ王都までは無事にたどり着けた、となればここから先の動きがいよいよ重要だね。
「再度の確認だ。王城、城下町前まで進んだ時点で方位陣形に移る。町の周辺を囲み、威圧する態勢を整えるのだ」
「戦慄の群狼もここに加わるのでしたね。向こうの首尾は?」
「伝令をやり取りさせているが上々だ。すでに動き出していて、ややもすれば我々より先に陣を広げだすかもしれん。さすがの統率力だな、ラウドプラウズ」
そう言って遠く、王都の向こうを指差す。僕も身体強化で遠視してみると、遥か向こうに僕ら同様、丘にて陣取る一団が見えた。
アレがリューゼの率いる戦慄の群狼ってことだろう。なんか狼の群れ? みたいな旗があちこち掲げられてるよー。パーティーの象徴としての旗、いいねかっこいー!
新世界旅団もなんか旗とかエンブレムとか、あーゆーの見てると欲しくなってくるよー。
仄かな憧れを胸に懐きつつ眺める。その間もモニカ教授やシアン団長による、ここから先の動き方が僕らに示されていく。
「我々とリューゼ嬢側とで町を取り囲んだら次、エウリデ政府に向けて使者を立てるよ。シミラ卿を解放することと、処刑の撤廃と彼女に課した罪過の赦免を要求するんだ」
「この使者というのは冒険者達の主導者の一人として私が務めます。ソウマくん、サクラも来てください。おそらくは決裂するでしょうから、そこを見越しての人選ですね」
なるほど、交渉の使者って形でまずは新世界旅団の3人が王城へと赴くわけか。
これ、表向き使者だけど……事実上は潜入して破壊活動を行う、いわゆる工作員みたいな感じだねー。
口ぶりからして間違いなく話し合いは決裂すると見ているんだろう、団長は。僕も正直そう思う。
だから最初からそこから先、決裂した後の動きを見越して僕とサクラさんを連れて行くんだ。その場を制圧して、すぐさま地下牢まで駆け抜けていけるように。
「最初から没交渉になると想定してるのね。そしてうまくいかないとなればすぐ動けるように、ソウマくんとサクラを伴う、と」
「エウリデが首を縦に振るなど、貴族の身で言うのもなんですが考えにくいことですから。決裂は基本のものとして扱うべきでしょう」
同じく気づいたレリエさんの確認に、団長も頷き答え合わせをする。
つまるところ軽く腹を探りつつ、土手っ腹に一発打ち込んでやろうってことだねー!