「にしてもマジに久々だなぁソウマ! 3年ぶりだがずいぶんなんだ、人間くさくなったじゃねぇか、ウハハハハハ!!」
「え、今から旧友との再会っぽくするの? 無理じゃないー?」
「うるせぇな、白黒つけんのはひとまず後回しになったんだから良いだろぉがよォ!! しょうもねえこと気にしてんじゃねえや、チビスケ! 相変わらず美少女面しやがって!!」
「何をー!?」

 迷宮地下19階、ひとまず停戦して集まる僕達新世界旅団とリューゼ達、戦慄の群狼。
 今しがたまでいかにもガチな殺し合いを繰り広げようって感じだった空気から一転して、なんとも馴れ馴れしく接してくるリューゼにちょっぴり引き気味の僕だ。こいつ怖いよー。

 切り替えの早い性格なのは前からだったけど今はさらに輪をかけてるねー。指摘したら逆ギレまでして、挙げ句には僕というダンディズムに溢れたイケメンを捕まえて美少女面とまで言ってきた!
 なんだよこいつ、なんなら今からでもさっきの続きをしてやろうか!? 3年経って僕の強さを忘れてるってんならたっぷり思い出させてやるぞー!

「や、やめてくださいリーダー! 今はそんなことより今後のことを考えるべきです」
「あー? わーってるよ、わーってる!」
「はいはいどうどうソウマ殿、本当のことでござる、諦めるでござるよー」
「サクラさんー!?」

 一触即発の様相をそれぞれ、サクラさんとミシェルさんが止めに入ってきた。リューゼリアも今の身内には甘いようで、うるさそうにしながらも戦意をあっさりと引っ込める。

 一方で僕もサクラさんに従い退くんだけど、本当のことってそりゃないよ、諦めろって何さー。
 思わず非難の目を向けると、彼女は子供をあやすように僕の頭に手を乗せ、軽く叩くのだ。うー、まるっきり子供扱いだよー。

 不満というか悔しさに唇を噛む僕はともかくとして、とりあえずお互い話を聞く態勢にはなった。
 リューゼリアも僕らが、たまたまここに来たってわけじゃないとは気づいているみたいだ。どかっと地べたに胡座をかいて座り、ワイルドに睨めつけてきつつも聞いてくる。

「けっ……さぁてそいじゃあ話と行こうや新世界旅団。オレらをってか、ミシェルを探してたっぽいな? なんだ、どうした?」
「ミシェルさんっていうか……お前がいるならお前への用向きだよ、リューゼ。シミラ卿の件でギルドと新世界旅団は手を組んだ。戦慄の群狼にも足並みを揃えてほしいから話し合いたいってギルド長とうちの団長が言ってる」
「はぁん? ベルアニーのジジイはともかくてめぇんとこの小娘がァ?」

 サクッと話し合いたいからギルドに来てよーって説明すると、リューゼリアは怪訝そうな顔をしてギルド長とうちの団長に悪態をついた。
 ベルアニーさんとは昔からの知り合いだから良いんだけど、シアンさんを小娘呼びとはね……まあ年齢的にはそう言われても仕方ないかもだけど、今の物言いは団員としてはちょっとね。

 サクラさんもちょっとピキッとキテるけど我慢、我慢。リューゼは前からこんな物言いしかできないしね、気にしても仕方ないんだ。
 さり気なく彼女のヒノモト服の袖をくいっと引っ張って止めると、サクラさんは軽く息を吐いて微笑む。そうそう、笑顔が一番だよー。

 僕ら新世界旅団のそんな様子を鼻で笑って、リューゼリアは白けた目を向けてきている。ぶっ飛ばすよ?
 傍らでミシェルさんがあわあわしてるのがなんとも気の毒だ。面倒っちいでしょそいつー。頑張って宥めすかして抑えといてほしいよー。

 やれやれと肩をすくめながらも、リューゼリアはニンマリと微笑む。どこかいたずらっぽい顔。
 なんだ? と思う間もなく彼女は話し始めた。驚くべきことにこちらの事情を粗方、言い当てるような物言いだった。

「どうせオレがキレてエウリデを国ごと滅ぼしやしないかって気にしてんだろォ……あとアレか、シアンだか言う小娘は新世界旅団主導でシミラを救出して、あわよくば仲間に引き入れたいってところかァ」
「!」
「エウリデを壊されたくねぇからオレを止めてぇ、ってそんだけなら新世界旅団が出しゃばる理由がねえしなァ。オレや群狼どもが好きに動いた結果、シミラを先んじて取られるのが嫌なわけだ。ハッ! なかなか小賢しいじゃねぇか、救出を出汁に天下の騎士団長を引き込もうたぁよォ!!」
「リューゼリア……」
 
 ……すごい。シアンさんっていうかモニカ教授の考えをほぼ見抜いてきてる。リューゼリア、ここまで頭の回るやつだったかな?
 3年前はそもそも人の話なんて聞く耳持たずに直球勝負な意見しか言って来なかったのに、今じゃしっかり考えてからものを言っているねー。

 これってばカミナソールで革命家をごっこした経験、すなわち政治劇にも少なからず関わってきたってとでいろいろ得るものなあったんだろうか。
 僕がこの3年で成長したように、リューゼリアも成長しているんだと、改めて思い知る気分だよー。