「シアン団長、いかがかな私からの提案は? それなりにメリットのある話だったとは思うが」
「…………」
「新世界旅団を世界最高のパーティーとして、未知なる世界を冒険する集団にするために。わざわざ向こうからやってきてくれるチャンスを逃す手はないと私は思うね」
モニカ教授の、どこかからかうような声色がシアン団長を試す。シミラ卿はおろかレジェンダリーセブンさえも勧誘して入団させようという思惑に、我らがシアンさんは果たしてどこまで乗るのか。
それは僕だけでなく新世界旅団メンバー、どころかケルヴィンくんやセルシスくんにとっても気になるところみたいだよー。固唾を呑んで見守る僕らだ。
事態が事態ゆえ、シミラ卿については教授にとってもイレギュラーみたいだけれど、そうでなくとも元々からレジェンダリーセブンは誘うつもり満々だったみたいだ。
さりとて調査戦隊はきっちり思い出として、今は新世界旅団に利するための方策を練っているってのも本当みたいだ。
自分で言うのは悲しいけど僕じゃ頭の出来が違うから判断がつかない。シアンさんもどう反応したらいいのか考えあぐねていたみたいで、しばらくうつむいていたけれど……
やがては顔を上げ、威厳を宿した強い瞳で教授を見つめ直してくれたよー。
「……人員確保とそれに伴うパーティーそのものの強化はたしかに必要ね。その提案、受ける価値はあるものと判断するわ。レジェンダリーセブンの方々とお会いする機会があれば、勧誘しますし、ワルンフォルース卿はじめ他の調査戦隊メンバーについても同様にしましょう」
教授の案を事実上、ほぼ完全に呑んだ形での宣言だ。それは同時に新世界旅団のシアン団長が、かつての調査戦隊メンバーを自陣営に取り込む方針を示したことをも意味するねー。
これがパーティー結成後、ある程度メンバーが増えていろいろ整ってからのものだったなら一波乱だったろうけど、今はまだまだ黎明期、メンバーの固定化どころかそもそもメンバーの数もろくにいない有様だ。
これはこれで、タイミングとしては逆に良かったのかもしれない。黎明期での揉め事と大規模になってからのそれとでは、発端も原因も対策も大きく変わっていたろうからねー。
最悪のことを考えると今、このタイミングで提案で良かった。団長もそう思ったんだろう、寛容に鷹揚に頷く。上に立つ者としての所作、貴族らしい威厳を放つ姿だ。
それに笑顔で応え、モニカ教授は言った。
「お役に立てそうで良かった。愚兄が迷惑をかけた件もあるからね、こちらも早々に貢献して罪償いをしたいという思いもあったのだよ、はははは」
「兄の罪は兄のものであってあなたのものではないでしょうが……たしかに貢献してくれましたね。ありがとう、モニカ教授」
「いえいえ、とんでもない。さて、そうなると近々にでも冒険者ギルドに行く必要が出てきたわけだけど」
ガルシアさん絡みでのアレコレについての、罪滅ぼしって意味合いもあるみたいだ。モニカ教授がどことなく空元気な感じで笑うのを、僕はなんだか複雑な思いで見ていた。
彼のやらかしたことは大体彼の自業自得だけれど、発端となったのは紛れもなく僕なんだ。そしてその結果、モニカ教授が気まずい思いをしながら関係各所に謝罪を行っている。
ちょっと気まずいねー……表に出すとなおのこと気まずい目に遭うことになりそうだし、なるべく表情にも出さないけれど。
それでも思わず頭を掻いてると、サクラさんが今後の予定について話し始めた。
「ギルド長にもシミラ卿奪還と勧誘についてのプランを説明するんでござるな? 話が行き違うと我々、下手したら双方から責め立てられる立場でござるからね」
「そうだねー……それにギルドがどこまで情報を掴んでいるのか、そしてどう動くのかも含めて話をつけなきゃいけないだろうしー」
「ギルド長ベルアニー氏。私にとっては未だ雲上の人でありますが……新世界旅団団長として、私が話をつけましょう」
何はともあれしばらくはギルドと足並みを揃える必要があるからねー。そこはキッチリ、事前に話し合いをしておかなきゃいけないよー。
シアンさんが団長として、ギルド長と真っ向から交渉するつもりみたいだ。新米冒険者の彼女にはちょっと荷が重いかもだけど、新世界旅団の代表としてここは矢面に立ってもらうべきではあるんだろうねー。
「頑張って、シアン!」
「僕とサクラさん、モニカ教授を囲う団長だし、向こうも無碍にはしないはずだよー。安心して、団長ー」
レリエさんと僕、二人でエールを送る。一応ギルド長だって新世界旅団のことはマークしてるだろうし、ましてその団長であるシアンさんについてはそれなりに重要視してると思うからそこまで無碍にされることはないと思うよー。
まあ、うちの団長を蔑ろにするようなら団員みんなで圧くらいはかけるかもだけどねー。
サクラさんもモニカ教授も不敵に笑っている。ギルド長の出方次第では黙ってないぞーって、感じの顔だねこれはー。
「…………」
「新世界旅団を世界最高のパーティーとして、未知なる世界を冒険する集団にするために。わざわざ向こうからやってきてくれるチャンスを逃す手はないと私は思うね」
モニカ教授の、どこかからかうような声色がシアン団長を試す。シミラ卿はおろかレジェンダリーセブンさえも勧誘して入団させようという思惑に、我らがシアンさんは果たしてどこまで乗るのか。
それは僕だけでなく新世界旅団メンバー、どころかケルヴィンくんやセルシスくんにとっても気になるところみたいだよー。固唾を呑んで見守る僕らだ。
事態が事態ゆえ、シミラ卿については教授にとってもイレギュラーみたいだけれど、そうでなくとも元々からレジェンダリーセブンは誘うつもり満々だったみたいだ。
さりとて調査戦隊はきっちり思い出として、今は新世界旅団に利するための方策を練っているってのも本当みたいだ。
自分で言うのは悲しいけど僕じゃ頭の出来が違うから判断がつかない。シアンさんもどう反応したらいいのか考えあぐねていたみたいで、しばらくうつむいていたけれど……
やがては顔を上げ、威厳を宿した強い瞳で教授を見つめ直してくれたよー。
「……人員確保とそれに伴うパーティーそのものの強化はたしかに必要ね。その提案、受ける価値はあるものと判断するわ。レジェンダリーセブンの方々とお会いする機会があれば、勧誘しますし、ワルンフォルース卿はじめ他の調査戦隊メンバーについても同様にしましょう」
教授の案を事実上、ほぼ完全に呑んだ形での宣言だ。それは同時に新世界旅団のシアン団長が、かつての調査戦隊メンバーを自陣営に取り込む方針を示したことをも意味するねー。
これがパーティー結成後、ある程度メンバーが増えていろいろ整ってからのものだったなら一波乱だったろうけど、今はまだまだ黎明期、メンバーの固定化どころかそもそもメンバーの数もろくにいない有様だ。
これはこれで、タイミングとしては逆に良かったのかもしれない。黎明期での揉め事と大規模になってからのそれとでは、発端も原因も対策も大きく変わっていたろうからねー。
最悪のことを考えると今、このタイミングで提案で良かった。団長もそう思ったんだろう、寛容に鷹揚に頷く。上に立つ者としての所作、貴族らしい威厳を放つ姿だ。
それに笑顔で応え、モニカ教授は言った。
「お役に立てそうで良かった。愚兄が迷惑をかけた件もあるからね、こちらも早々に貢献して罪償いをしたいという思いもあったのだよ、はははは」
「兄の罪は兄のものであってあなたのものではないでしょうが……たしかに貢献してくれましたね。ありがとう、モニカ教授」
「いえいえ、とんでもない。さて、そうなると近々にでも冒険者ギルドに行く必要が出てきたわけだけど」
ガルシアさん絡みでのアレコレについての、罪滅ぼしって意味合いもあるみたいだ。モニカ教授がどことなく空元気な感じで笑うのを、僕はなんだか複雑な思いで見ていた。
彼のやらかしたことは大体彼の自業自得だけれど、発端となったのは紛れもなく僕なんだ。そしてその結果、モニカ教授が気まずい思いをしながら関係各所に謝罪を行っている。
ちょっと気まずいねー……表に出すとなおのこと気まずい目に遭うことになりそうだし、なるべく表情にも出さないけれど。
それでも思わず頭を掻いてると、サクラさんが今後の予定について話し始めた。
「ギルド長にもシミラ卿奪還と勧誘についてのプランを説明するんでござるな? 話が行き違うと我々、下手したら双方から責め立てられる立場でござるからね」
「そうだねー……それにギルドがどこまで情報を掴んでいるのか、そしてどう動くのかも含めて話をつけなきゃいけないだろうしー」
「ギルド長ベルアニー氏。私にとっては未だ雲上の人でありますが……新世界旅団団長として、私が話をつけましょう」
何はともあれしばらくはギルドと足並みを揃える必要があるからねー。そこはキッチリ、事前に話し合いをしておかなきゃいけないよー。
シアンさんが団長として、ギルド長と真っ向から交渉するつもりみたいだ。新米冒険者の彼女にはちょっと荷が重いかもだけど、新世界旅団の代表としてここは矢面に立ってもらうべきではあるんだろうねー。
「頑張って、シアン!」
「僕とサクラさん、モニカ教授を囲う団長だし、向こうも無碍にはしないはずだよー。安心して、団長ー」
レリエさんと僕、二人でエールを送る。一応ギルド長だって新世界旅団のことはマークしてるだろうし、ましてその団長であるシアンさんについてはそれなりに重要視してると思うからそこまで無碍にされることはないと思うよー。
まあ、うちの団長を蔑ろにするようなら団員みんなで圧くらいはかけるかもだけどねー。
サクラさんもモニカ教授も不敵に笑っている。ギルド長の出方次第では黙ってないぞーって、感じの顔だねこれはー。