反撃にまさかの柄、それも先端の石突を利用しての突きの連打。槍を得物にする人がよく使う技術を、極端に柄の長い大剣とも言えるザンバーで応用してきたミシェルさん。
無理な動きのない、素晴らしいムーヴだ。これがリューゼなら間違いなく強引に切り返してくるかもしくは殴りつけてくるかなので、これについては紛れもなく彼女自身のオリジナルと言えるだろう。
けれど突きの精度、速度自体は大したことはない。まったく問題なく避けられる程度だね。
上体をわずかに左に傾けて回避。あえてギリ目に避けてみたけど、なんならこの時点で杭打ちくんを振るったら普通にカウンターで殺れるタイミングまである。
「うあああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……!」
まあ今回はミシェルさんの実力を見させてもらうわけだからねー、そんなことはしないよ。
突きを避けられても彼女の動きは澱みない。そこから自身を基点にして身体ごとその場で一回転し、再び斬撃へと移行する!
回りながら腕を引っ込めて、間合いを至近距離にいる僕に合わせてくるね。コンパクトな動きを心がけてるみたいなのは、これもリューゼにない意識だ。あいつひたすら突っ込んでくるばかりだしねー。
「っらあっ!!」
「……ん」
しかしいくら近距離射程に調整したとて、そもそもザンバーが大きすぎる。ミシェルさんの体格にもまったく合ってないから、物理的にどうにもならない弱点が発生している。
とりあえず目下最大の弱点はここかな? 僕は踏み出した……彼女に真正面から密接し、ピッタリとくっつく!
振るわれるザンバー……射程に入らず!
遠すぎるんじゃなく近すぎるんだ。ここまで接近されたら斬撃の破壊力を生み出す要、回転による遠心力がほぼ死んでいる!
「!?」
「二度目」
────そしてこの距離は、僕からしたら絶好だ。
それこそコンパクトに引っ込めた腕で、杭打ちくんをミシェルさんの脇腹に添える。それで終わりだ、実戦なら後は杭を放って殺すだけ。
二度目の模擬戦終わりー。今度は全力で来てくれたから、こっちとしても明確に指摘できる点が分かったねー。
彼女から離れて杭打ちくんを下ろす。向こうもザンバーを地面に突き刺して手を離し、こちらに一礼してきてくれた。
「はぁ、はぁ……ありがとうございました! 今の自分に出せるトップスピード、トップパワーで挑みましたが……さすがです杭打ちさん!」
「大丈夫、ミシェルちゃん!?」
「お疲れ様、ソウマくん!」
終了を受けて駆け寄ってくる、ミホコさんとレリエさん。ミホコさんはミシェルさんに近づいてハンカチで汗や埃を落としているし、レリエさんは僕のほうに来て水筒をくれる。
ちょっぴり水気で喉を潤し、僕は周りを見た。遠巻きに見ていた警護依頼中の冒険者達や子供達も、興奮したように互いを見ていろいろ話したり騒いだりしてるねー。見世物くらいには値打ちもあったなら何よりだよー。
さて、僕はミシェルさんに近づいた。
本当に本気の全身全霊で二度目の模擬戦に臨んだんだろう、すっかり疲労困憊って様子の彼女を労いの意味も込め、僕は話しかけた。
「お疲れ様ですー。どうでした、二回目ー?」
「は、はい! その、一番に思ったのはやはりザンバーの扱いの難しさでした。槍のように取り回すことを思いついたはいいものの、中々うまい動き方がしづらく」
「あー、たしかにちょっとぎこちなさはありましたもんねー。でも槍の動きを取り入れたのは正解ですよ、あれはいい動きでしたー」
「ほ、本当ですか!?」
顔を明るくする彼女に頷く。ザンバーを槍に見立てた着眼点は大変いいし、多少もたつきが各所にあったけどいなされてからの動きも悪くなかった。
大斬撃直後、いなされたり逸らされたり躱されたりした時に考えなくてはならないのはとにかくカウンターへの対応だ。威力ある攻撃ってのは基本的に隙が大きくなりがちなので、そこを突かれるパターンは考えておきたいところだからね。
リンダ先輩は飛び跳ねて回避、天才的な身のこなしで即座に体勢を整えて再度攻め込む先方を取っていた。
あれもあれで一つの正解なんだけど、ミシェルさんのように隙を生じさせずに連撃に繋げるやり方も正しい路線ではあるねー。
「今後もそれを使って活動していくんなら、スタイルは今のままの形を追求して良いと想いますよー。ただ、その前に致命的な弱点を克服する必要がありますけどー」
「致命的な、弱点……」
「その顔、もうわかってますよねー。最後のやり取り、僕に密着されたのがすべてですよ」
さすがに振るっている本人だ、すでに自分の抱える致命的な弱点は分かっているんだろう。顔が青ざめて、唇を噛んで項垂れている。
ザンバーを槍っぽく使うとか、そういう工夫以前の問題だ。今しがたの模擬戦でも完全に露呈しており、おそらくそこさえ突けば、今のシアンさんやリンダ先輩でも余裕で勝ててしまうだろう弱点。
「至近距離……密着に近い地点にまで詰められると、ザンバーは大味すぎて本領を発揮できない……」
「中距離戦闘者にありがちな、けれど絶対に見過ごしてはおけない弱点ですねー」
ミシェルさんは自白した。
そう、つまりはこの人、密着さえしてしまえれば完封できちゃうんだよね。
無理な動きのない、素晴らしいムーヴだ。これがリューゼなら間違いなく強引に切り返してくるかもしくは殴りつけてくるかなので、これについては紛れもなく彼女自身のオリジナルと言えるだろう。
けれど突きの精度、速度自体は大したことはない。まったく問題なく避けられる程度だね。
上体をわずかに左に傾けて回避。あえてギリ目に避けてみたけど、なんならこの時点で杭打ちくんを振るったら普通にカウンターで殺れるタイミングまである。
「うあああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……!」
まあ今回はミシェルさんの実力を見させてもらうわけだからねー、そんなことはしないよ。
突きを避けられても彼女の動きは澱みない。そこから自身を基点にして身体ごとその場で一回転し、再び斬撃へと移行する!
回りながら腕を引っ込めて、間合いを至近距離にいる僕に合わせてくるね。コンパクトな動きを心がけてるみたいなのは、これもリューゼにない意識だ。あいつひたすら突っ込んでくるばかりだしねー。
「っらあっ!!」
「……ん」
しかしいくら近距離射程に調整したとて、そもそもザンバーが大きすぎる。ミシェルさんの体格にもまったく合ってないから、物理的にどうにもならない弱点が発生している。
とりあえず目下最大の弱点はここかな? 僕は踏み出した……彼女に真正面から密接し、ピッタリとくっつく!
振るわれるザンバー……射程に入らず!
遠すぎるんじゃなく近すぎるんだ。ここまで接近されたら斬撃の破壊力を生み出す要、回転による遠心力がほぼ死んでいる!
「!?」
「二度目」
────そしてこの距離は、僕からしたら絶好だ。
それこそコンパクトに引っ込めた腕で、杭打ちくんをミシェルさんの脇腹に添える。それで終わりだ、実戦なら後は杭を放って殺すだけ。
二度目の模擬戦終わりー。今度は全力で来てくれたから、こっちとしても明確に指摘できる点が分かったねー。
彼女から離れて杭打ちくんを下ろす。向こうもザンバーを地面に突き刺して手を離し、こちらに一礼してきてくれた。
「はぁ、はぁ……ありがとうございました! 今の自分に出せるトップスピード、トップパワーで挑みましたが……さすがです杭打ちさん!」
「大丈夫、ミシェルちゃん!?」
「お疲れ様、ソウマくん!」
終了を受けて駆け寄ってくる、ミホコさんとレリエさん。ミホコさんはミシェルさんに近づいてハンカチで汗や埃を落としているし、レリエさんは僕のほうに来て水筒をくれる。
ちょっぴり水気で喉を潤し、僕は周りを見た。遠巻きに見ていた警護依頼中の冒険者達や子供達も、興奮したように互いを見ていろいろ話したり騒いだりしてるねー。見世物くらいには値打ちもあったなら何よりだよー。
さて、僕はミシェルさんに近づいた。
本当に本気の全身全霊で二度目の模擬戦に臨んだんだろう、すっかり疲労困憊って様子の彼女を労いの意味も込め、僕は話しかけた。
「お疲れ様ですー。どうでした、二回目ー?」
「は、はい! その、一番に思ったのはやはりザンバーの扱いの難しさでした。槍のように取り回すことを思いついたはいいものの、中々うまい動き方がしづらく」
「あー、たしかにちょっとぎこちなさはありましたもんねー。でも槍の動きを取り入れたのは正解ですよ、あれはいい動きでしたー」
「ほ、本当ですか!?」
顔を明るくする彼女に頷く。ザンバーを槍に見立てた着眼点は大変いいし、多少もたつきが各所にあったけどいなされてからの動きも悪くなかった。
大斬撃直後、いなされたり逸らされたり躱されたりした時に考えなくてはならないのはとにかくカウンターへの対応だ。威力ある攻撃ってのは基本的に隙が大きくなりがちなので、そこを突かれるパターンは考えておきたいところだからね。
リンダ先輩は飛び跳ねて回避、天才的な身のこなしで即座に体勢を整えて再度攻め込む先方を取っていた。
あれもあれで一つの正解なんだけど、ミシェルさんのように隙を生じさせずに連撃に繋げるやり方も正しい路線ではあるねー。
「今後もそれを使って活動していくんなら、スタイルは今のままの形を追求して良いと想いますよー。ただ、その前に致命的な弱点を克服する必要がありますけどー」
「致命的な、弱点……」
「その顔、もうわかってますよねー。最後のやり取り、僕に密着されたのがすべてですよ」
さすがに振るっている本人だ、すでに自分の抱える致命的な弱点は分かっているんだろう。顔が青ざめて、唇を噛んで項垂れている。
ザンバーを槍っぽく使うとか、そういう工夫以前の問題だ。今しがたの模擬戦でも完全に露呈しており、おそらくそこさえ突けば、今のシアンさんやリンダ先輩でも余裕で勝ててしまうだろう弱点。
「至近距離……密着に近い地点にまで詰められると、ザンバーは大味すぎて本領を発揮できない……」
「中距離戦闘者にありがちな、けれど絶対に見過ごしてはおけない弱点ですねー」
ミシェルさんは自白した。
そう、つまりはこの人、密着さえしてしまえれば完封できちゃうんだよね。