辿り着いたに面会室、ミホコさんが先頭に立ちドアをノックをする。中にはすでに誰かいるっぽくて、微かに気配を感じるねー。
失礼します、とドアを開ければ中に入る。ミホコさん、僕、レリエさんの順だ。次々入れば室内のソファ、座っていた女性が立ち上がって出迎えてくれた。
院長としてミホコさんが口を開く。
「大変お待たせしました、当院院長のミホコ・ナスターシャです──」
「ミホコ! やっぱりミホコだ! 懐かしい、久しぶり!」
「────ミシェルちゃん!」
丁寧な挨拶と束の間、すぐに女性が興奮したように叫んだ。
ベリーショートの小柄なお姉さんで、狩人めいた軽装のラフな格好だ。かなりの美人さんだねー。
どうやら彼女がミシェルさんらしい、ミホコさんが途端に院長としてでなく孤児院出身の子供としてはしゃぎ始めた。
何年ぶりか、下手すると15年ぶりの再会って感じかー。
「ああ、なんて懐かしい! 元気にしてくれていたのね、ミシェルちゃん!」
「もちろん! ミホコこそ、院長先生だなんて立派になって……! それにこの施設! 前とは比べ物にならない、いつの間に新築を?」
「去年よ、うふふ! 素敵な冒険者さんに資金援助いただいて、借金だって完済していただけたの! おかげさまで今じゃすっかりまともな運営ができているわ!」
「えっ……そ、そうなの!? そんな奇特な、聖人みたいな冒険者がいるんだ……」
「えへへ!」
唐突にめっちゃ褒められて照れちゃう! えへへ、聖人だってさ、この僕が!
急に声を上げて笑いだして、あまつさえ頬を染めて頭を掻く僕は当然ながらとてつもなく目立つ。悪目立ち。ミシェルさんは旧友との再会に水を差した子供の存在に、今気づいたようで戸惑いながらもミホコさんに尋ねた。
「えっと、孤児院の子? 見た感じ年長組さんみたいだけど、まさかあなたの娘とか言わないわよね?」
「ちょ……ちょっと! その子が今言った、素敵な冒険者さんよ! ちなみに男の子ね? そこは気にしてるから間違わないであげて!」
「………エ"ッ"」
「男ですー……15歳冒険者ですぅ……!」
ああああ娘さんって呼ばれちゃったああああ! マントで身体を隠してもないから体格で分かるだろーって思ってたのにいいいい!
しかもサラリと年長さん扱いされてるよー!? 概ね6歳から10歳くらいまでの年代を差す呼称だけど、僕15歳ですけどー!! 普通に独立しててもおかしくないし、なんならもう独り立ちしてますけどー!! けどー!!
す、すごいよこの人、わずか一言で僕の繊細な心をズタズタにしてきたよー……破壊力抜群だ、がくーっ。
その場に膝から崩れ落ちる僕をレリエさんが慌てて支える。ミホコさんは苦笑いしつつミシェルさんを見てるし、空気が一気に変な方向にいっちゃったよー。
「大丈夫、ソウマくん!? 傷は……心はともかく身体は無事よ、安心して!」
「あのね、ミシェルちゃん……この子、ソウマ・グンダリくんはこれで孤児院の借金を完済してくれたり新築費用も出してくれた大切な人なの。何よりも私達と同じでこの孤児院出身の子だから、あまり侮辱するような物言いは止めてもらえるかしら……」
「こ、この子が!? ごめんなさい、ついうっかり見たまま思ったままを口に!」
「ああああ偽りなき真実の感想うううう」
「!?」
完全に素のリアクションってことじゃん! 余計に酷いよ、フォローになってないよー!
今度こそ完全に撃沈したよー、しばらく立ち直れないからレリエさんあとはよろしくー。介抱してくれるレリエさんにそっと身を委ねる。
「あ、い、いやその! ────って、ソウマ・グンダリ!?」
「え?」
思わぬ失言にあたふたしている様子のミシェルさんだったけど、いきなり何が引っかかったのか僕の名前を叫んで驚く。
何、どしたのー? と力なく彼女を見ると、目を見開いてわなわなと震えつつも、僕を指差し弱々しく言った。
「ソウマ・グンダリって……まさか、まさか冒険者"杭打ち"!? なんでここに!?」
「…………誰から聞いたのかなー?」
「っ!?」
いきなり僕の素性を当ててきた彼女に、そっと軽い威圧を与える。唐突にずいぶん怪しいこと言うよね、このお姉さんってばー。
傷心もそのままにレリエさんから離れて立ち上がる。その間もずっと、威圧は与えたままだ。
どうにか自分の威圧で中和しようとしてるみたいだけれど、たとえ軽くてもBランクの人にどうこうできる程度のプレッシャーじゃないんだよ、僕のはさ。
身動きの取れない彼女に近づき、じっと顔を覗き込む。
「こ、れは……! この威圧、この強さは……!?」
「どうしてあなたが"杭打ち"について、そんなところまでご存知なのかなー? いくらなんでもカミナソールの一冒険者の耳にまで入るほど、迂闊な振る舞いはしてないつもりなんだけどー」
「…………!!」
「誰から聞いたんですか? 悪いようにはしませんから、お教え願いたいですねー」
直球で聞く。まず間違いなくこの人にいらないことを吹き込んだ人がいるはずなんだ。
元調査戦隊メンバーか、はたまたエウリデの高官なりか。少なくともこのどちらかとは繋がりがあるはずなんだよー。
じっと見つめる。別に黙秘したところで何かする気はないけど、こういう時は威圧をかけてただジーッと見つめるのが効果的だってウェルドナーのおじさんも言ってたしね。
そしてさすがと言うべきか、ミシェルさんはすぐに詰問に屈してくれた。
自分の持つ情報の出処がどこからなのか、あっけなく吐いてくれたのだ。
「わ、私の、所属するパーティーのリーダー……! 誉れあるレジェンダリーセブンが一人、"戦慄の冒険令嬢"! リュ、リューゼリア・ラウドプラウズ様から話を、話を聞いていましたっ杭打ちさんっ……!!」
失礼します、とドアを開ければ中に入る。ミホコさん、僕、レリエさんの順だ。次々入れば室内のソファ、座っていた女性が立ち上がって出迎えてくれた。
院長としてミホコさんが口を開く。
「大変お待たせしました、当院院長のミホコ・ナスターシャです──」
「ミホコ! やっぱりミホコだ! 懐かしい、久しぶり!」
「────ミシェルちゃん!」
丁寧な挨拶と束の間、すぐに女性が興奮したように叫んだ。
ベリーショートの小柄なお姉さんで、狩人めいた軽装のラフな格好だ。かなりの美人さんだねー。
どうやら彼女がミシェルさんらしい、ミホコさんが途端に院長としてでなく孤児院出身の子供としてはしゃぎ始めた。
何年ぶりか、下手すると15年ぶりの再会って感じかー。
「ああ、なんて懐かしい! 元気にしてくれていたのね、ミシェルちゃん!」
「もちろん! ミホコこそ、院長先生だなんて立派になって……! それにこの施設! 前とは比べ物にならない、いつの間に新築を?」
「去年よ、うふふ! 素敵な冒険者さんに資金援助いただいて、借金だって完済していただけたの! おかげさまで今じゃすっかりまともな運営ができているわ!」
「えっ……そ、そうなの!? そんな奇特な、聖人みたいな冒険者がいるんだ……」
「えへへ!」
唐突にめっちゃ褒められて照れちゃう! えへへ、聖人だってさ、この僕が!
急に声を上げて笑いだして、あまつさえ頬を染めて頭を掻く僕は当然ながらとてつもなく目立つ。悪目立ち。ミシェルさんは旧友との再会に水を差した子供の存在に、今気づいたようで戸惑いながらもミホコさんに尋ねた。
「えっと、孤児院の子? 見た感じ年長組さんみたいだけど、まさかあなたの娘とか言わないわよね?」
「ちょ……ちょっと! その子が今言った、素敵な冒険者さんよ! ちなみに男の子ね? そこは気にしてるから間違わないであげて!」
「………エ"ッ"」
「男ですー……15歳冒険者ですぅ……!」
ああああ娘さんって呼ばれちゃったああああ! マントで身体を隠してもないから体格で分かるだろーって思ってたのにいいいい!
しかもサラリと年長さん扱いされてるよー!? 概ね6歳から10歳くらいまでの年代を差す呼称だけど、僕15歳ですけどー!! 普通に独立しててもおかしくないし、なんならもう独り立ちしてますけどー!! けどー!!
す、すごいよこの人、わずか一言で僕の繊細な心をズタズタにしてきたよー……破壊力抜群だ、がくーっ。
その場に膝から崩れ落ちる僕をレリエさんが慌てて支える。ミホコさんは苦笑いしつつミシェルさんを見てるし、空気が一気に変な方向にいっちゃったよー。
「大丈夫、ソウマくん!? 傷は……心はともかく身体は無事よ、安心して!」
「あのね、ミシェルちゃん……この子、ソウマ・グンダリくんはこれで孤児院の借金を完済してくれたり新築費用も出してくれた大切な人なの。何よりも私達と同じでこの孤児院出身の子だから、あまり侮辱するような物言いは止めてもらえるかしら……」
「こ、この子が!? ごめんなさい、ついうっかり見たまま思ったままを口に!」
「ああああ偽りなき真実の感想うううう」
「!?」
完全に素のリアクションってことじゃん! 余計に酷いよ、フォローになってないよー!
今度こそ完全に撃沈したよー、しばらく立ち直れないからレリエさんあとはよろしくー。介抱してくれるレリエさんにそっと身を委ねる。
「あ、い、いやその! ────って、ソウマ・グンダリ!?」
「え?」
思わぬ失言にあたふたしている様子のミシェルさんだったけど、いきなり何が引っかかったのか僕の名前を叫んで驚く。
何、どしたのー? と力なく彼女を見ると、目を見開いてわなわなと震えつつも、僕を指差し弱々しく言った。
「ソウマ・グンダリって……まさか、まさか冒険者"杭打ち"!? なんでここに!?」
「…………誰から聞いたのかなー?」
「っ!?」
いきなり僕の素性を当ててきた彼女に、そっと軽い威圧を与える。唐突にずいぶん怪しいこと言うよね、このお姉さんってばー。
傷心もそのままにレリエさんから離れて立ち上がる。その間もずっと、威圧は与えたままだ。
どうにか自分の威圧で中和しようとしてるみたいだけれど、たとえ軽くてもBランクの人にどうこうできる程度のプレッシャーじゃないんだよ、僕のはさ。
身動きの取れない彼女に近づき、じっと顔を覗き込む。
「こ、れは……! この威圧、この強さは……!?」
「どうしてあなたが"杭打ち"について、そんなところまでご存知なのかなー? いくらなんでもカミナソールの一冒険者の耳にまで入るほど、迂闊な振る舞いはしてないつもりなんだけどー」
「…………!!」
「誰から聞いたんですか? 悪いようにはしませんから、お教え願いたいですねー」
直球で聞く。まず間違いなくこの人にいらないことを吹き込んだ人がいるはずなんだ。
元調査戦隊メンバーか、はたまたエウリデの高官なりか。少なくともこのどちらかとは繋がりがあるはずなんだよー。
じっと見つめる。別に黙秘したところで何かする気はないけど、こういう時は威圧をかけてただジーッと見つめるのが効果的だってウェルドナーのおじさんも言ってたしね。
そしてさすがと言うべきか、ミシェルさんはすぐに詰問に屈してくれた。
自分の持つ情報の出処がどこからなのか、あっけなく吐いてくれたのだ。
「わ、私の、所属するパーティーのリーダー……! 誉れあるレジェンダリーセブンが一人、"戦慄の冒険令嬢"! リュ、リューゼリア・ラウドプラウズ様から話を、話を聞いていましたっ杭打ちさんっ……!!」