F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する

 冒険者ギルドに着いた俺は、まっすぐ受付へと向かう。
 そして、話慣れている受付嬢に声をかける。

「森の異変に関する情報を、従魔経由で手に入れたので、報告に来ました」

「そうなの!? ……分かった。それで、どんな情報が手に入ったの?」

 受付嬢は一瞬目を見開くも、直ぐに心を落ち着かせると、用紙を取り出し、ペンを構える。

「それが……人目の付く場所では言わない方がいいかと……」

 俺は神妙な顔つきでそう言う。
 森の中に麻薬畑がありましたなんて事実をここで言うのは流石にマズい。もし、犯人の耳が冒険者ギルドにあったら、最悪俺は口封じされる。それはマジで御免だ。
 しかも、俺から見た犯人候補がガリア侯爵と繋がりのある者なのだから猶更だ。

「そう……」

 そんな俺の顔を、受付嬢は真剣な表情で見ると、顎に手を当て、考え込む。

「ん……ギルドマスターに相談してきますね。シン君の持ってきた情報が、的外れであるとは思えないし」

 受付嬢はそう言って、受付の奥に走って行った。
 それから直ぐのこと。
 受付の奥から受付嬢が戻って来た。

「シン君。ギルマスが話を聞きたいとのことです。そこの奥から受付に入って、そこの奥にあるギルマスの部屋に行ってくれないかな?」

「分かりました」

 まさかギルドマスターに直接報告する羽目になるとは思わなかった。
 その事実に若干驚きつつも、俺は迂回して受付に入ると、そのまま受付の奥へと向かう。
 そして、1つの部屋の前で立ち止まった。

「よし……」

 貴族生活で慣れ切っているとは言え、それでもお偉いさんと話すのは緊張する。
 ここのギルドマスターって、元Sランク冒険者なだけあってか、結構発言力も大きいから余計にね。
 俺はゴクリと唾を飲み込むと、コンコンとドアをノックする。
 直後、ドアの向こう側から「入ってくれ」とどこか優しげな声が聞こえて来た。
 まだ10歳にもならない、子供の俺を気遣ってのことだろう。

「失礼します」

 そう言って、俺はドアを開けた。
 部屋は、屋敷で見たガリアの執務室とよく似ている。違う点を上げるとするならば、背の低いテーブル越しに対面するように置かれたソファが部屋の中央にあることだろうか。

「よく来てくれたね、シン君。ソファに座るといい」

 ギルドマスター――ジニアスは武骨な顔で笑みを作りながらそう言うと、自身も執務机から、ソファへと移動する。

「わ、分かりました」

 子供らしさを出しつつ、頷くと、俺はトテトテと歩いて、ジニアスさんと対面するようにソファに座る。
 そして、ネムを膝の上に乗せた。
 すると、ジニアスさんが口を開く。

「ここなら誰にも聞かれる心配は無いだろう。それで、シン君は森でどんな情報を得たんだ?」

「はい。その前にこれを――」

 俺は手元に、スライムを召喚する。
 そのスライムの手(?)には、先ほど森で見かけた畑で拾ったキルの葉が握られていた。
 生物じゃなければ、こうやってスライムに持ってこさせることも出来るんだよね。
 ただし、小さいものに限る。

「ほう。随分と正確だな。それで、スライムが持っている物は……?」

 ジニアスは俺がスライムを正確に手元へ召喚したことに感嘆すると、そのスライムが持っているキルの葉を指差す。
 流石にこれじゃあ分からないか。

「どうぞ、よく確認してみてください。ジニアスさんなら分かるはずです」

 そう言って、俺はジニアスさんにスライムから受け取ったキルの葉を手渡す。
 一方、ジニアスさんは受け取ったキルの葉をじっと見つめ……やがて、険しい顔となる。

「おいおい。マジかよ……こりゃキルの葉じゃねぇか。これ、本当に森で見つけたのか? だとしたらやべぇぞ」

 ジニアスさんはキルの葉をテーブルの上にそっと置くと、頭を抱えてそう言った。
 この反応なら、ジニアスさんはこの件には関与してなさそうだ。
 ジニアスさんが関与している……という線も無くは無かったからな。まあ、色々と調べた上で、ジニアスさんが何かしらの悪事に加担している訳が無いとは知ってたけどね。

「はい。因みに、森の奥にあったのはそれを栽培する畑です。それも、かなりの規模かと。だが、今は魔物によって荒らされてます」

「ちっ あの森の奥に行く冒険者はあまり居ないからな。認識阻害系の魔道具で隠されていたのだとすれば、今まで見つからなかったのも頷ける……」

 ジニアスさんは険しい顔をしたまま舌打ちすると、顎に手を当て、唸り出す。
 おーい。それ、普通の9歳の子供の前でやったら怖がられるぞ~!
 まあ、流石にそれを指摘するつもりはない。指摘するのは面倒だし……

「うむ……情報提供、ありがとな。物的証拠もあるし、今回の件の元凶は間違いなくそれだ。至急、高ランク冒険者を呼び、対処に急ぐとし――『ドンドン』――入れ! どうした!」

 そう言いかけたところで、部屋のドアが強く叩かれた。何やら緊急事態の予感がする。
 ジニアスさんは直ぐに入るよう命令した。すると、1人の受付嬢が入ってくる。

「あの――先ほど、調査に向かった冒険者が帰ってきたのですが、何やら例の凶暴な魔物がシュレインへすさまじい勢いでシュレインへ向かっているらしいです! 数も、最低300匹はいるかと」

「「何!?」」

 受付嬢の言葉に、俺とジニアスさんは一斉に目を見開く。
 そして、俺は慌てて森にいるスライムの視覚を見る。

 ドドド――

「グガアア!!!」

「グガアアア!!!」

 姿は見えないが、そこそこの速度で移動しているのが分かる。
 マジかよ。急に移動しだすとか……あ、もしかしてその調査に行った冒険者を追いかけた結果……とかかな?
 いや、理由はどうあれ、マズいな。
 森から出るまで、あと15分ってところだ。

「くっ 分かった。至急、冒険者を集めてくれ! 緊急で!」

「はい!」

 受付嬢は声を張り上げて頷くと、急ぎ足で受付の方へと戻って行った。

「シン君。従魔経由で、今の状況は分からないか?」

「たった今見ました。このままではあと15分で森から出てきます」

 俺は、今知った情報をジニアスさんに伝える。

「流石だな。もう、見ていたのか。感謝する。では、俺も冒険者を集めるとしよう。俺の言葉なら、ついて来てくれる人もいると思う。では、先に失礼する」

 そう言って、ジニアスさんも足早に出て行ってしまった。

「俺も行くか」

 そう呟くと、俺も部屋の外に出た。
 受付から出てみると、そこは随分と騒々しかった。
 まあ、そうだよな。ここにいるのって大体がDランク以下の冒険者だし。
 場慣れしていて、冷静にいられるような高ランク冒険者は皆、実入りのいいダンジョンに行ってるからな。
 流石に15分で、ダンジョン内にいる冒険者を呼び寄すことは不可能なので、ここにいる冒険者で何とかするしかない。
 でも、見たところ高ランク冒険者もちらほら居るので、何とかなる……とは思う。

「うーん……俺も手を貸したいけど、俺って連係取るの苦手だからなぁ……」

 俺は頭を掻きながらそう言う。
 普段の俺の戦い方でさえ、連係なんて知ったこっちゃとでも言うような戦い方なのだ。当然、手段を選ばない、正真正銘本気の戦い方も、連係には不向き……いや、超不向きだ。
 むしろ、味方を巻き込みかねない。
 と、言う訳でここは森の中にいる内に、俺が数を減らしてしまうとしよう。
 ただ、1つ問題があって……

「これ、実戦で使ったことないんだよなぁ……」

 そう。大規模過ぎるが故に、使ったことが無いのだ。そして、不確定要素もそこそこある。

「でも、やってみないことには、どうにもならないしな」

 不謹慎な言い方にはなってしまうだろうが、これはいい実験だ。
 どれほど損失を抑えて、敵を倒せるのか。
 この結果次第で、今後の動きとかが変わってくる可能性が出てくるかもだし。

「行くか」

 そう呟くと、俺は冒険者ギルドの外へ出た。
 そして、スライムの視覚で人がいないことを確認してから路地裏に入る。
 宿に帰る時間は無いし、空間転移(ワープ)で無駄に魔力を使いたくはないからな。
 そうして俺は不本意ながらも、この場で森にいるスライムと視覚を共有した。

「……よし。ここら辺にはまだ来てはいないな。では――魔力よ。この空間に干渉せよ」

 俺は視覚を移した計182匹のスライム全てから空間把握(スペーショナル)を発動させる。
 中々魔力を使うし、これほどの多重起動は頭がより痛くなるのだが……初歩中の初歩の魔法ということもあってか、何とか行使することが出来た。

「うん……いい感じだな」

 俺は満足げに頷く。
 そう。こうすることで、俺は森の一部――400メートル×1000メートルの範囲全ての情報を()()()()()()()知ることが出来るのだ。
 だが、それらの情報全てを理解するのには、思考速度が足りなさすぎる。
 そこで、俺は次の魔法を唱えた。

「魔力よ。我が思考を加速させよ」

 俺は闇属性魔法、思考加速(ソウトアップ)を発動して、自身の思考を本来の10倍程にまで上げる。
 闇属性と光属性の魔法はあまり得意ではないのだが、便利そうなものはかなり修練して、十全に扱えるようにしている。
 てか、こういう魔法使えるんだったら、今までも使ってたら良かったんじゃないかって思うかもだが……これ、そこそこ魔力を使うんだよ。
 元々思考加速(ソウトアップ)って、適性率40パーセントの俺が使えるようなものじゃない。
 じゃあ何故使えるのかって言うと、そりゃ修練しまくったっていうのもあるが、一番の理由は本来起動に使うよりも多い量の魔力を使っているからだ。魔力を沢山使えば、まあ多少無理やり感は出てしまうが、使えるようになったりする。
 だが、お察しの通り俺の魔力容量はそこまで多くない。
 だから、あまり使いたくは無かったんだ。
 にしても、思考加速(ソウトアップ)を使うことをケチったお陰で、俺本来の思考速度がだいぶ上がったのはいい収穫だったな。そうすることで、思考加速(ソウトアップ)の効果をより高められたりもしたしね。

「さて……この範囲内に奴らが入ったら……あれをやるか」

 ポツリとそう呟くと、俺は魔物がその領域に入ってくるのを待つ。
 ……と思った瞬間、その領域にキルの葉を喰らった魔物が入って来たのを感じた。
 いやーナイスタイミング。
 それじゃ、やるか。

空間把握(スペーショナル)を発動しているスライムと、その他一部のスライム以外――そう。大体そんぐらい、森に来てくれ」

 俺は()()()()()()に”テイム”の能力の1つである召喚を行使し、他のスライムを()に召喚した。その数――およそ30万。
 30万のスライムが、たった400×1000の空間にいる光景は中々壮観だなぁ……
 て、こうしている場合じゃない!
 空間把握(スペーショナル)によって、早速殺されそうになっているスライムを把握した俺は、加速された思考の中で、そのスライムたちを後方のスライムの所へ召喚する。

「さあ――やれ! 奴らを溶かせ!」

 そして、俺はスライムたちを一斉に奴らへ襲い掛からせた。
 当然奴らもスライムへ襲い掛かるが――

「グアアァ!!」

 凶暴化したオークがめちゃくちゃに棍棒を振るう。
 当然その軌道上にはスライムが居たが、棍棒が当たりそうになった瞬間、ふっと消える。

「グアアアア!!」

 またあるオークは、スライムを踏み潰そうとする。だが、踏み潰そうとした瞬間、これもまた、ふっと消える。
 そして、その隙にオークの上に飛び乗ったスライムたちが、オークの体を溶かしにかかる。
 そのほとんどがただのスライムであるため、中々溶けない。
 だが、水滴石を穿つと言うように、小さな力でも、積み重なれば強大な力になるのだ。
 故に――

「グガアアアァ!!!」

 溶解液を大量に浴び、魔物どもは苦悶の声を上げ、苦しむ。
 そこへ容赦なく――特に脳天を集中的に溶かし続けた。
 そして、僅か30秒程で、1体のオークが脳を溶かされ、地に伏せた。
 他の場所でも、それと同様のことが起きている。
 一方俺はというと、10倍に加速された思考を存分に使って、スライムたちを守っていた。

「逃げろ! 逃げろ! 逃げろ! 退け! 退け! 退け!」

 傍から見れば、撤退を促す将軍のようだが、実際は奴らの攻撃があたりそうになったスライムを、後方に待機させているスライムの下へ召喚しているだけなのだ。
 流石にこれは思考加速(ソウトアップ)を使っていてもギリギリだ。いつ犠牲が出てもおかしくない。というか、気づいていないだけで、既に犠牲が出ているのかもしれない。
 だがそれでも、俺はただひたすらにスライムたちを守り続ける。
 多少の犠牲なら直ぐに補完はきくが、使い捨てるような真似はしたくないんだ。
 だって――

「仲間だからな……ッ!」

 そう言って、俺はその後も引き続き、戦うスライムたちを守り続けるのであった。
「はぁ はぁ はぁ……流石に疲れた……」

 片手で頭を抑えながら、俺は片膝をつく。
 もう、集中力の限界だ。流石にキツい。キツすぎる。
 だが――

「倒したぞ……!」

 俺の目の前には、地面に倒れ伏す魔物たちの姿があった。生きている奴は1匹もいない。
 この戦いは、俺の――俺たちの勝利だ。
 領域外にいた奴らは先へ行かしてしまったが、それぐらいなら他の冒険者たちでも容易く対処できるだろう。

「きゅきゅきゅ!」

 ふと左目の視覚を自身の下へ戻してみると、ネムが、まるで介抱するかのように、俺の体を支えていた。
 スライム故に、全然支えられていないが……その心遣いはめちゃくちゃ嬉しい。それは、俺の心をがっしりと支えてくれている。

「ありがとな」

 そう言って、俺はネムを撫でると、そのまま地面へ大の字になって寝転がった。
 そして、森にいるスライムたちを散開させると、詠唱を紡ぐ。

「魔力よ。空間へと干渉せよ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」

 俺は空間転移(スペーショナル)を使うと、ネムと共に、宿のベッドに転移した。
 そして――俺は意識を失った。

 ◇ ◇ ◇

 シンが戦いを始めてから、少し経った頃。
 幾人もの冒険者たちが、森のすぐ外で待機していた。
 そこにいる冒険者の内、半分以上がDランク以下だ。だが、一部Cランク、そしてB、Aも数人居た。

「さーてと。あれ? シンは来ねぇのかな?」

 ウィルは辺りをキョロキョロと見回しながらそう言う。
 そんなウィルを見て、ミリーはため息をつく。

「忘れているようだけど、あの子はまだFランクよ。 普通に考えて、ギルドがこの戦いに参加させると思う?」

「あー確かにな。てことは、後方支援か」

 ミリーの言葉に、ウィルは頭を掻きながら、「そうだった。そうだった」とおどけて見せる。
 そんなウィルを見て、ミリーは呆れたようにため息をつくと、森の方に視線を移す。
 ギルドマスター曰く、オークやミノタウロスといった森の奥に住まう魔物たちが、異様なほどに凶暴化して、ここシュレインに向かってきているらしい。そして、調査に向かった冒険者は、この森の浅い所に生息するゴブリンの集団が、原型が分からなくなるぐらい無惨に殺されるところを目撃したらしい。
 確かに異なる種族の魔物が争うことはあるが、それは捕食対象としてだ。故に、原型が分からないぐらいまでめちゃくちゃに殺す必要はない。
 そんな魔物が一気に300匹以上も現れる。それはあまりにも――異常すぎる。
 ミリーは得体の知れない恐怖を感じ、思わず体をぶるりと震わせる――が、冒険者としての矜持で直ぐに持ち直すと、仲間に視線を向ける。

「は~あ。それで、あとどれくらいで来るのかな? ギルマスの情報だと、そろそろ来てもおかしくないだろ?」

 フェイトが、相変わらず楽観的に言う。

「分からないけど、まあ近づいてきたら索敵向きの、他の冒険者が気づくんじゃないの?」

 槍を肩に担ぎながら、イリスはフェイトの言葉にそんな答えを返す。

「だなー……ん? 何か雰囲気変わったな」

 周りの――と言うよりは、高ランク冒険者たちの雰囲気が、一気に戦士のそれに代わる。
 その様子を敏感に感じ取った彼らも、一気に気を引き締める。

「そろそろか……?」

 ウィルは剣を抜き、構える。

「だな。俺には分からんが……あーでも何となく、森が騒がしいような……?」

「確かにそんな気がするわね」

 フェイトとイリスが口を揃えてそんなことを言う。
 実際、草木をかき分ける音が森から聞こえてきているので、あながち間違いではなさそうだ。
 そして、ミリーは黙って魔法の準備をする。
 それから直ぐのこと――

「戦闘態勢に入れ! もうすぐ来るぞ!」

 Bランク冒険者の1人が、皆に聞こえる声で叫ぶ。
 直後。

「グガアアアァ!!!」

「ガアアアァ!!!」

 咆哮を上げながら、多くの魔物が森から跳び出してきた。
 それに合わせ、Aランク冒険者が地面に杖をつきたてる。
 その地面には、特殊な魔法溶液によって魔法陣が描かれており、1度だけ詠唱なしで魔法を行使できるのだ。

 ザン!

 冒険者の前方に現れた、大きな緑の魔法陣から一閃――巨大な風の斬撃が放たれ、森から出て来た十数体のオーク、ミノタウロス等を、森の木々ごと斬り裂いた。
 斬風の大鎌(ウインド・デスサイズ)と呼ばれる風の上級魔法の1つだ。
 直後、それに乗じて他の冒険者も、あらかじめ詠唱等をし、準備していた魔法を放つ。
 風が吹き荒れ、閃光が輝き、氷の槍が飛ぶ。
 それに伴い、更に数十体の魔物が息絶える。
 魔物どもはキルの葉によって凶暴化し、死ぬまで敵を攻撃し続ける狂戦士(バーサーカー)と化している。故に本来よりもずっと厄介だ。
 だが、それで肉体が強化されたわけではなく、あくまでそこは普通のオークであり、ミノタウロスであった。
 お陰で、遠方から難なく撃破できている。だが、当然撃ち漏らしもあり、いくらかは魔法の弾幕を避け、冒険者たちに近づいていた。
 でも、そこもまた、冒険者たちの領域。

「はあっ!」

「おらぁ!」

 ある者は剣を、ある者は斧を振り、近づいてきた魔物どもを片っ端から倒していく。
 脳のリミッターも外れているのか、いつもより魔物どもの攻撃は強くなっている――が、その反面、知恵も無く、ただ本能に身を任せて大ぶりな攻撃しかできないようになっていた。その為、本来よりもずっと倒しやすいと思う冒険者さえいたほどだ。

「はあっ!! ……ん? 終わったか……?」

 森から魔物が出てこなくなったことで、ウィルは手を止めるとそう呟く。

「終わった……のかしら?」

 ミリーは訝し気に森の方をじっと見つめる。
 確かに数は多かったが、報告よりはずっと少ない。多分、100匹もいなかったはずだ。
 だが、報告では300匹以上。
 もしや、森の中にまだいるのだろうか?
 それとも、調査隊がただ報告を誤っただけなのか。

(いえ、それは無いわね。多少の誤差はあるだろうけど、それでもここまで誤差があるのはありえない。)

 他の冒険者――特に高ランク冒険者も同じ意見のようで、今だ警戒を続けていた。他の冒険者も、そんな彼らに倣い、気を引き締めている。
 だが、一向に森からは何も出てこない。気配も、音も、感じられない。
 やがて、Aランク冒険者が、ふっと警戒を解く。

「どうやら、これで終わりのようだ。至急、ギルマスに報告を。だが、一部はもう暫くここに残るぞ」

 Aランク冒険者のもっともな言葉に、異論は一切出てこない。
 皆一斉に気を緩め、完勝したことを喜び合う。
 ウィルたちも、これに関する特別報酬が貰えることを考え、思わず頬を緩ませる。
 こういった緊急の依頼は、総じて報酬額が高い。
 祝勝会でもしようかと、フェイトとイリスも浮かれている。
 そんな彼らを見て、ミリーは小さくため息をつくが――その口元は微かに緩んでいた。
 その後は警戒を続けた後、やがてギルドマスター、ジニアスの命令で、一旦解散となった。
 そして、それから直ぐのこと、ジニアス自らがA、Bランク冒険者で固めた調査隊を組んで、森を調査することとなる。

「ジニアスさん。本当にこっちに来て良かったんですか? ギルマスとしての仕事、結構あると思うんですけど」

 槍術士の男が、戦闘を歩くジニアスにそう話しかける。

「そりゃ沢山ある。今回の報告書も書かんといかんしな。だがどうしても、この目で見なくてはならない物があるんだよ」

 ジニアスは神妙な顔つきで言う。
 そんなジニアスの両手には、白金の籠手があった。
 これは、ジニアスが冒険者だった時に使っていた武器。これを両手に装着して、魔物を豪快に破壊するのがジニアスの唯一にして最強の戦い方なのだ。

「確かにあの魔物はどっからどう見ても異常でしたからね。王種(ロード)系の魔物が後ろから指揮してたとか?」

 魔法師の女性がふと、そんなことを言う。
 王種(ロード)とは、自身と同じ種族の魔物を支配する能力を持った魔物だ。オークの王種(ロード)が配下のオークに命令すれば、あのようになることも無くはない。だが、それでは1つの矛盾が生じる。

王種(ロード)がいるような気配が一切ないだろ? これだけやって、王種(ロード)の気配すら掴めないなんてありえない。ま、何が原因なのかは、ぶっちゃけ分かってるんだ」

「え!?」

 ジニアスの何気ない一言に、その場にいた全員が驚愕する。
 ジニアスはそんな彼らを適当に落ち着かせると、言葉を続ける。

「とある優秀なテイマーが見つけてくれたんだよ。それが何なのかは、この先に行けば分か……ん?」

 言いかけたところで、ジニアスは言葉を切ると、眉をひそめて前方を見る。
 冒険者たちも一拍遅れながらも、その異変に気付く。

「あれ……魔物の死体だよな……?」

「にしては数が多い……いや、多すぎないか?」

 段々とその異変が起きている場所へと近づいていき――

「……これ、全部さっきの凶暴化した魔物だよな?」

 魔法師の男性の言葉に、皆小さく頷く。
 局所的な災害が起こったかのように見える周囲一帯と、そこに倒れ伏す無数の魔物たち。その数は、ゆうに500を超えるだろう。

「……もしかして、凶暴化したことにより、互いに殺し合った……か?」

 ジニアスがポツリと呟いたその言葉に、冒険者は「ああ……」と納得したような声を出す。

「あー確かに、それなら納得」

「ま、よくよく考えてみればそうなる……か?」

「お陰で楽に勝てたんだから、良かったよかった」

 そう言いながら、その場を通り過ぎる――が、途中で異変に気付き始める。

「……なあ、こいつらの死因って()()()()()?」

 ぽつりと魔法師の男性が呟く。

「何って、武器的に撲殺……あれ?」

「あー確かに」

「……ああ」

 ここに転がっている魔物たちの死体はどれも殴打や斬撃によるものではなかった。
 全身をうっすらと溶かされた……といった感じだ。そして、頭――それも、脳天にぽっかりと穴が開いている。

「ちょ、流石に不気味すぎるんだが……」

「人? ……ではないよな……?」

 冒険者として、かなりの経験を積んでいる彼らでさえ、どのようにして死んだのかが全く分からず、混乱する。
 ジニアスも、顎に手を当てながら、難しい顔をするが、やがて1つの結論に辿り着くと、口を開く。

「それを考えるのは後で良い。今はこの奥に行こう」

 そして、彼らは再び歩き続ける。
 そんな中、ジニアスは思考を巡らせる。

(あれ、多分魔物の仕業なんだよなぁ……となると……)

 ふと、この件の元凶を伝えに来た少年の顔が浮かび上がる。

(まー流石にありえんか。これだけの魔物を圧倒する魔物をあの年でテイムできるハズがない)

 強い魔物を従魔にするには、本人もそれ相応の強さがないと厳しいことがほとんどだ。でなければ、従魔にする前にその魔物に殺される。
 流石に今のシンにそれほどの強さがあるとはとても思えない。強い仲間がいる……という可能性も、あの様子では無いだろう。
 だが、どこか引っかかる。

(ま、適当にカマかけときゃいいか)

 最後にそう思うと、ジニアスはその先へ向かうのであった

 更に歩くこと約数分。
 折れた木々で荒れ果てた景色が――急に開けた。
 そこに広がっていたのは広大な荒地。だが、かろうじで何かの畑だったことが分かる。

「何だここは……?」

「森にこんな場所があったのか……!」

 冒険者たちは辺りをキョロキョロと見回しながら、感嘆の息を漏らす。
 一方、ジニアスはその光景に顔を歪ませる。

「本当だったか……ッ!」

 ギリッと歯を鳴らして、地獄の底から這い出るような声で言う。
 急に声と、気配が変わったジニアスを目の当たりにした冒険者たちは、思わず目を見開いて後ずさる。

「じ、ジニアスさん。殺気漏れてますよ」

 1人が冷や汗を流しながら、声を振り絞って言う。
 高ランク冒険者と言えど、人類最強クラスの実力を持つジニアスの本気の殺気を浴びれば、生物の本能から、萎縮してしまうのだ。

「ああ、すまんな。感情の制御が、出来ていなかった」

 ジニアスはどこか悔いるような顔でそう言うと、直ぐに殺気を霧散させる。
 殺気から解放された冒険者たちは、ほっと息を吐くと口を開く。

「一体なんなのですか? ここは」

 1人が、仲間の言葉を代弁するかのように言う。
 その問いに、ジニアスは少し沈黙した後、口を開く。

「そこら中に散乱している植物。これは全て、キルの葉だ」

 ジニアスの口から紡がれた言葉で、場に緊張が走る。

「おいおい。マジかよ……」

「んな馬鹿な……」

 皆、信じられないとばかりに言うが、ジニアスの顔が、それが真実であることを雄弁に告げていた。

「俺も間違いだとは思いたかったんだがな。これが公になれば、相当荒れるぞ。侯爵に責任を追及する貴族も結構出るだろうしな」

 ここで言う”侯爵”とは、シュレインの領主、ガリア侯爵のことだ。
 ガリアはシュレインの領主――そして、その管轄にこの森も当然含まれる。
 そんな場所で、ここまで大規模な麻薬の畑が見つかったとなれば、ガリア侯爵の責任問題に発展するのは必至。

「となると、隠蔽されるのか……?」

 ポツリと、魔法師の男性が言う。

「ああ。このまま行けばな。だが、知ってしまった以上、これを握りつぶされるのは癪なんだよな。それに、ここだけの話だが、俺は侯爵が嫌いだ」

「そりゃまたなんでだ?」

「だいぶ前の話になるんだが、この森でスタンピードが起きたことがあってな。ああ、今回とは違い、王種(ロード)がいるパターンのやつだ。それで、相当犠牲が出たんだが……最後まで、侯爵は自身の手勢を動かすことは無かったんだよ」

「うわーそれはやべーな」

 槍術士の男性は、思わず頬を引きつらせる。

「勿論、侯爵が死んだらもう大惨事だから、手勢を全て自身の護衛に回したというのは理解できないことじゃない。だが、それに納得できるのかは別問題だろ? それに、スタンピードが終息した後、シュレインでは”危機的状況に陥っても、侯爵は逃げずに、戦う皆を鼓舞した”だなんていう噂が流れたんだ。それで、気に入らないと思うようになった。まあ、完全な私怨だがな」

 そう言って、ジニアスは言葉を切った。
 そんなジニアスに、皆、かけることばが見当たらない。
 すると、場の雰囲気を察したのか、ジニアスがはっとなる。

「すまんな。つい、愚痴を言ってしまった。だが、一応弁明しとくが、俺は別に侯爵を恨んじゃいねぇ。侯爵は、侯爵に出来ることをやったまでだからな。ただ、嫌いなだけだ。そんじゃ、もう少しここを見ておくか。キルの葉を喰らった結果、魔物が凶暴化したんだからな」

 そう言って、ジニアスは先へと向かう。
 そんなジニアスの後に続いて、他の冒険者も歩き出した。
「ん……?」

 ふと、目を覚ました俺は上半身を起こすと、辺りを見回した。
 ああ、そういや意識失うギリギリで転移したんだったな。

「いやー頑張った……!」

 そう言って、俺は体を伸ばす。
 すると、俺が起きたことに気が付いたネムが、「きゅ! きゅ!」とはしゃいだ。
 俺はそんなネムを優しく撫でると、色々と考える。

「んーさっきの戦いは成功っちゃ成功だけど、改善点は結構あるな。まあ、初めてやったことだから、仕方ないか……」

 数多のスライムを使って、敵を数の暴力で圧倒する。そんな一見シンプルそうに見える戦術が、俺の切り札の1つだ。
 だが、ただスライムを向かわせるだけでは、こっちの損害がめちゃくちゃ大きくなる。
 そこで目をつけたのが、魔物を自身の下へ召喚する能力だ。
 これを使えば、一瞬で殺されそうになっているスライムを、安全地帯へ避難させられると思ったのだ。
 だけど、大量にいるスライムの中から、殺されそうになっているスライムを見つけるのは至難の業。
 そんな問題の解決策として俺が目をつけたのが、空間把握(スペーショナル)ってわけだ。
 あと、問題になるのは、俺自身が無防備になってしまうことだ。流石にこれをやると、どう考えても自分自身にまで手が回らない。
 だったら、安全な場所で、遠距離から出来るようにすればいいじゃないということで、考案したのが、スライム越しにスライムを自身の下へ召喚する能力を行使することだ。例の如くこれも文献には一切のっていなかったが、スライム越しに”テイム”が使えるんだったら、これも使えるんじゃないかって思って試してみたんだ。
 そしたら予想通り、使えたって訳だ。

「まあ、今回でだいぶ理解できた」

 こんな大規模な戦い方、普段じゃまずできない。
 森でやれないこともなかったが、手札はなるべく他者に見せたくない主義だからね。
 で、ようやく本日使ってみた結果、改善点が見つかった。
 まず……というよりはこれが全てなのだが、俺の思考速度が圧倒的に足りない。そのせいで、あの規模でも全然余裕は無かった。

「俺自身の思考速度は、自分で言うのもあれだがかなり速い。だが、頭打ちしつつある。なら、思考加速(ソウトアップ)の出力を高めれば……いや、でもこっちはこっちで頭打ちだしな……」

 俺の思考速度を、もっと上げる方法があれば……!
 だが、そんな都合よくいかないのが世の常なんだ。
 うーん。一応魔法陣を描く儀式魔法にすれば、準備が必要な分、出力はかなり上がるのだが……

思考加速(ソウトアップ)の儀式魔法なんて聞いたこと無いからなぁ……」

 儀式魔法を創るには、普段俺が使っている詠唱魔法の魔法陣を完璧に理解し、かつそれを儀式魔法に最適化して描くという、最高クラスの専門家が代々受け継いで、ようやく完成するような代物だ。俺のような、ちょっとかじった程度の人間が手出しできる領域ではない。

「まあ、これは気長に探すか。それに少数なら、思考加速(ソウトアップ)で全然間に合うし」

 さっきは集団を、数の暴力でボコしたが、普通に考えて、あんな多くの魔物や人と戦うことなんてまずない。だから、思考加速(ソウトアップ)を強化するという選択肢の優先順位はかなり低いのだ。それよりは、俺自身の実力を上げないと。流石にあれを他者に見せるわけにはいかないからね。

「さーてと。あ、そういや取り逃がした奴はどうなったんだろ?」

 俺の領域外にいた魔物は、素通りさせてしまっている。故に、大体100匹ぐらいはシュレインへそのまま向かわせてしまったと思うのだが……大丈夫だろうか?
 そう思い、俺はシュレインを出てすぐの所にいるスライムに視覚を移す。
 すると、そこには……何も無かった。ただ、戦闘跡だけはある。

「とっくに倒してたのか。なら、安心だな。あーでも俺ってこの報酬金貰えないよなぁ……」

 俺は頭を掻きながらそう言った。
 俺が1番多く魔物を倒したのは確定だ。だが、彼らのもとへ行って、戦っていないのだから、報酬金なんて貰えるはずがない。
 あー金は欲しいし、随分と惜しいことをしたなぁ……あ、でも俺って結構有力な情報を提供したから、その報酬金……は流石にもらえるはず!

「よし。そうと決まれば早速行くとしよう」

 そうして、俺は直ぐに身支度を整えると、ネムと共に宿を出た。
 出る際に、「あれ? いつの間に帰ってきてたんだい?」と聞かれビクッとしたが、上手いことごまかした。
 宿を出た俺は、そのまままっすぐ冒険者ギルドに向かって歩く。
 そうして冒険者ギルドに到着した俺は、扉を開けて中に入った。

「んー騒がしい……かな?」

 中は、戦闘を終えて帰って来た冒険者たちでにぎわていた。どうやら皆、緊急依頼の報酬を貰ったようで、浮かれているのがよく分かる。
 絶対この中に今日1日で使い果たす馬鹿が居るだろうなぁ……なんて思いながら先へ進む。
 そして、事情を知る受付嬢に声をかけた。

「すみません。先ほどの情報提供に関する報酬金について、ギルドマスターに聞きに来ました」

「ああ、シン君。残念だけど、今ギルマスは外出中なの。日が暮れる前には帰ってくると思うから、その時にまた来て欲しいな」

 受付嬢はニコリと笑うとそう言う。
 あー外出中か。
 まあ、色々あったし、あの件についてのやり取りで忙しいのだろう。

「分かりました。では、また来ます」

 そう言って、俺は踵を返し、歩き出す――その時。

「あ、帰ってきてるじゃん」

 前方には、丁度冒険者ギルドに帰って来たギルドマスター、ジニアスの姿があった。
 ジニアスさんは多くの視線を浴びながら、ずんずんと受付の方へと向かう。
 そして、ふと俺と目が合った。

「お、わりーな。さっきはいきなり出て行っちまって。お前の情報はさっき確認してきたが、正しかった。早速報酬金を渡したいから、ついて来てくれ」

 ジニアスさんは俺に近づくと、気さくにそう言う。

「あ、はい。分かりました」

 俺は頷くと、ジニアスさんについて行く。
 ……うっわーめっちゃ注目浴びてる。
 だよな。Fランク冒険者である俺が、ジニアスさんに声かけられるなんて、普通はありえんもんな。
 流石にこのランクで注目を浴びても、妬みの対象になるだけなんだよなぁ……
 そう思い、若干憂鬱になりながらも、俺はジニアスさんについて行き、やがてさっきの部屋に通される。

「さ、座ってくれ」

「分かりました」

 俺は微かに沈んだ声で頷くと、ソファに腰かける。
 そして、ジニアスさんもソファに座った。

「でな。ついさっき、冒険者を数人連れて、森の調査に行ったんだ。どうしても、この件について確信を持ちたかったからな。で、行ってみれば見事にあったよ。森の奥に、麻薬の畑がな」

 ジニアスさんは忌々しそうに言う。
 若干威圧感も出ており、思わずビクッと震えてしまった。

「ああ、すまない。殺気が出ていたな。それで、君がもたらしてくれたこの情報はとても価値の高いものだった。故に報酬金15万セルを渡そう」

「15万……ッ!」

 想像以上の大金に、俺は思わず息を呑む。
 15万だぞ。15万。
 これでポーション系をそろえておけば、今後の冒険者活動における大きな助けとなるだろう。

「ああ。俺としてはもう少し渡したいぐらいだが……まあ、規則に則ったら、これぐらいになる。で、ランクも上げていいだろう。情報収集能力も、冒険者が持つべき能力の1つだからな。一先ず、Eランクに上げておこう」

「Eランクですか……」

 おーまさか2週間でランクを上げられるとは思いもしなかったな。
 Dランクになれば、念願のダンジョンに入れるということなので、このまま引き続き頑張るとしよう。

「まあ、こんなところだな。いやーにしても今回の調査は色々と驚くことが多かったな。まさか、森の中で大量の魔物が死んでいたなんて」

「そうなんですか……もしかして、あの凶暴化した魔物にやられたんですかね?」

 俺は内心ドキリとしつつも、そう問いかける。
 やっべーそういや死体処理してなかった……!
 死体処理する前に、意識を失っちゃったからな。

「いや、それが何故か脳天に穴を開けられて死んでいたんだ。あんな器用に殺せる魔物なんて、聞いたことが無い」

「そ、そうですね~」

 やばい。死に方が特殊過ぎるのバレてる。
 俺は思わず冷や汗を垂らす。抑えようにも、抑えられない。

「そう言えば、君はテイマーだったな。脳天に穴を開けて殺す魔物なんて、聞いたこと無いか?」

「いえ、聞いたこと無いですね。そもそも、魔物ではなく、人ではないのでしょうか? 魔物よりは、そっちの方がまだ現実的というか……」

 俺は上手いこと言って、この場を凌ごうとする。
 流石にあれを俺がやったなんて、バレたくないんだよな~
 絶対面倒なことになる。

「脳天をわざわざ突く人がいるわけないだろ? それで、実はちょっと見てしまってな……お前がその魔物に指示を出して、倒している所を」

「え……見られてた……?」

 馬鹿な。俺周辺にもスライムを配置していたんだぞ?
 そもそも、指示出したってどこで分かったんだ?
 声か?
 だが、俺の声が聞こえる範囲には誰もいなかったはず。
 魔法や祝福(ギフト)を用いて聞いたのか? いや、ジニアスさんは魔法は全然だと聞いたし、祝福(ギフト)はS級の格闘家だと聞いている。
 どうして見られたのか分からず、混乱していると、ジニアスさんが口を開いた。

「まさかお前だったとはな。因みに俺が言ったことは嘘だ。つまり、カマをかけた……ってわけだ」

「……やられたか」

 俺は思わず天を仰ぐ。
 まさか、仮にも侯爵家の跡取りであった俺が、こんな簡単な手に引っかかるとは……!
 めっちゃ悔しい!

「それで、どんな魔物を使ったんだ? 誰にも言わないからさ」

「信用出来ね~……あ」

 思わず心の声が漏れてしまった。
 やべぇ。色々とやからし過ぎている。
 俺って詰めが甘いんだなぁ~とつくづく思わされるよ。
 すると、ギルアスさんはそんなやらかしまくっている俺を見て、笑い声を上げる。

「はははっ ボロが出てるぞ。まあ、嘘ついた俺を信用しないのは正しい。その詫びも兼ねて、あいつらは凶暴化により同士討ちしたってことにしておこう。死体も、さっさと処理しておく」

「……ありがとうございます」

 そう言って、俺は頭を下げる。
 いやー良かった。流石にここで嘘つくなんて真似はしないだろうし、これは信じていいだろう。

「あと、追加の詫び……というよりは実力面で、EランクじゃなくてDランクにしておくか。ある程度実力があることをランクで知らしめておかないと、お前の場合厄介なことになりそうだからな」

「ありがとうございます。確かにそうですね……」

 短期間で、それもこの年齢でDランクに上がるほどの腕前だと知られれば、多少派手に動いたとしても、下手に深堀りされずに済むだろう。そう考えると、割とありだな。ジニアスさんに知られたということは。
 何かあった時に、ジニアスさんになら相談できるというのも非常に大きい。
 ある程度の事情を知る権力者が1人いるだけで、こうもやりやすくなるものなのか……

「では、そろそろ話を終わりにしよう。やることが沢山あるからな。じゃ、報酬金を払うか」

 そう言って、ジニアスさんは立ち上がると、執務机の引き出しをガサゴソと漁る。

「んーと……おしおし。これで足りるな」

 そう言って、ジニアスさんは戻ってくると、小金貨1枚と銀貨5枚をテーブルの上に置く。

「ランクアップは、流石に今やったら不自然だからな。悪いが、これはもう少し待ってくれ。大体1週間後ぐらいに受付に来れば、ランクアップしてもらえるから」

「分かりました」

 別に1週間遅れるぐらい、どうということはない。そもそも、1か月足らずでDランクに上がれるのは普通に凄いことなのだ。
 だが、前例がないわけではなく、A級以上の祝福(ギフト)を持っている奴はほぼ全員それぐらいで上がっている。だから、目立ちすぎるなんてこともない。

「じゃ、これからも頑張れよ。困ったことがあったら、いつでも相談に乗るぞ」

「ありがとうございます。では」

 俺は礼を言うと、部屋から去って行った。
 そして、さっきの騒ぎを再び起こさない為に、そろーっと受付から出て、そのまま冒険者ギルドの外に出た。
 無事、事態が収束した日の夕方。
 ガリア侯爵の屋敷にて。

「はぁ? ”庭”が冒険者ギルドに見つかっただと……ッ!」

 部下からの報告に、さしものガリアも動揺する――が、直ぐに冷静さを取り戻すと、思考を巡らせる。

「マズいな。本部に報告されたら、国の調査隊が派遣されるのは確定。そして、私の責任問題に……」

 ガリア侯爵の管轄にある森で、大規模な麻薬の畑が見つかったとなれば、責任問題になりかねない。
 そしたら、最悪国王派と貴族派の両方から叩かれ、多額の金を払うだけならまだマシな方、最悪降爵されかねない。
 本来なら、事態終息の後直ぐにガリアが調査隊を派遣して畑を隠蔽し、万が一バレた時用に”取引相手”が全ての元凶である証拠を作りたかった。そして、責任問題にならないように、更に手を回す。そういう予定だった。
 だが、予想外の一手で、大きく予定が崩れた。まさか、もう調査隊が――それも、ギルドマスターが直々に向かったとは思いもしなかった。ギルドマスターが相手では、調査結果を握りつぶすことも容易ではなくなる。

「くそっ それで、他に報告は?」

 それ以外の報告に、何か打開策が無いかと思ったガリアは部下にそう問いかける。

「はい。その他の報告ですと……畑が見つかったことに、ガリア侯爵の元ご子息が関わっているようなのです」

「何だと!?」

 部下の報告に、ガリアは憤怒の表情を露わにした
 額に青筋が、ビキビキとくっきり浮かび上がる。
 そして、地獄の底から這い出るような低い声で口を開く。

「あいつめ。邪魔しおって……それで、どんな邪魔をしやがったんだ? そいつは……」

「は、はい。ですが、残念ながら、詳しいことは分かりませんでした」

「ちっ 使えん奴め……だが、流石に我慢できない。あいつに、生まれてきたことを後悔させてやる……!」

 ガリアは血が滲むほど、拳をぎゅっと握りしめた。
 そして、感情のままに行動を始めた。
 嘗てのガリアなら、この状況でこんな感情的な行動はしなかっただろうに――

 ◇ ◇ ◇

 ウィルたちの戦いが終わった直後。

「あ、もう全滅しちゃったんだ」

 1人の女性が、離れた場所から勝利に喜ぶ冒険者たちを見て、意外そうに言った。
 彼女の予想では、もっと多くの魔物が出てくるはずだったのだが……

「うーん。まあ、初めての試みだったし、そう上手くはいかないか」

 呑気に体を伸ばしながら、彼女はあっけらかんと言う。
 彼女が所属する組織にとっては、別にこれが成功しようが失敗しようがあまり意味はない。
 ”あの計画”さえ成功すれば、別に問題は無いのだ。魔物を凶暴化させて人を襲わせるのは、その時間稼ぎに使えるかもしれないと思っただけ。

「ふふふ……さあてと。一応報告しなくちゃ」

 そう言って、彼女はくるりと背を向ける。

「”祝福(ギフト)無き理想郷”の為に――」

 そして、彼女はふっと消えた。
 いつものように夕食を食べ終えた俺は部屋に戻った。
 そして、ごろりとベッドに転がる。

「あー今日は頑張った」

 何せ魔物を500匹以上も倒したからね。
 ただ、あれからちょーっとやらかしてることに気付いてさ。
 俺、倒すのに満足しちゃって、死体から討伐証明部位と魔石を取るの、忘れちゃった……!
 いや〜これはマジで痛い。もしちゃんと取っていれば、相当な金額になっていただろうに。

「……あ、でも取ったら、人間が倒したってバレちゃうな」

 ジニアスさんは凶暴化した魔物が同士討ちしたことにしてくれると言っていた。
 つまり、魔石と討伐証明部位を取ってしまったら、どうやってもその説明が出来なくなってしまう。
 てことは、俺がその2つを取らなかったのは、正しい判断ということなのか!
 ふっ……俺、天才(バカ)だな。

「あ、そういや召喚したスライムたちを戻さないと」

 昼間召喚した30万匹のスライムは、王都ティリアンを中心としたいくつかの街とその近辺にある森から均等に召喚したのだ。
 だから、さっさとそっちへ戻さなければならない。
 戻す方法は、さっきやったように、スライムを召喚する能力をスライム越しに使うってやつだ。
 祝福(ギフト)は魔力を使わないから、こんな感じでホイホイ使うことが出来る。
 だが、何のデメリットも無しにいくらでも使えるわけではなく、大体10時間ぐらいぶっ通しで使うと、唐突に疲労で倒れる。そして、次の日まで起き上がることすら億劫に感じた。
 ま、そんなに使うことは普通無いけどね。

「さーて、やるか」

 俺は早速王都内にいるスライムに視覚を移すと、そこにさっき召喚したスライムたちをどんどん召喚し、散開させる。
 そして、数が戻ってきたら、また別の場所へと移り、召喚する。
 それを何度も何度も繰り返し、30分ほどで元通りになった。

「はー頑張った」

 俺は暇つぶしに王都内をスライムの視覚を借りて散策しながら、そう言った。
 にしても、王都は随分と発展してるよな。そして広い。大体シュレインの5倍はあると思う。

「王城も綺麗だなぁ……」

 月明かりに照らされた白亜の城。それが、王族の住まうグラシア城なのだ。
 因みに、あそこへ潜入させているスライムは……いる。
 運び込まれる荷物に紛れて、何匹が入れたんだよね。
 因みに、入れた理由は、王城内を見学したかったから……という、いかにも子供らしい理由だ。
 だが、あそこは警備が厳重で、魔力探知や熱源探知が一重二重と張り巡らされており、魔力がほとんどなく、熱も発しないスライムですら、感知出来てしまう程だ。
 それを突破すべく、俺が送り込んだのは当然変異種――僅か5ミリメートル程の超小型スライムだ。
 目の前にいても、大抵の人なら目を凝らさないと分からず、何かしらの感知能力がある人でも、埃と勘違いしてしまうようなそいつによって、王国最高峰の警備システムが正面から破られたのだ。
 因みに現在、そいつらは王城内の適当な空き部屋に住まわせている。
 いや~見れるところは全て見たからね。
 無論、見れてないところも多々あるが、流石にそこは行ったら確実にバレるんだよなぁ……

「んー……何か面白いのないかなー?」

 そんなことを言いながら、俺は王都内のスライムの視覚を次々と見る。
 一応”テイム”の鍛錬になるし、偶に面白いことしている奴もいるから、暇つぶしには丁度いいのだ。

「……あ、カツアゲしてる」

 路地裏でカツアゲしている悪い奴を発見!
 即、スライム越しにスライムを召喚する能力を使って、その男の首に少し強めの溶解液を持つスライムを召喚!
 そして、考える暇さえ与えず溶解液を出させた後、即座に元の場所へと戻す!
 そうすることで――

「な、なんだ!? が、ぐああっ!!」

 付着した溶解液で首周りの皮膚が溶け、激痛が走る。
 男は首裏を抑えるが、それで治るわけもなく、ヒリヒリとした痛みで苦悶の声を上げる。
 これではもう、カツアゲをしている場合ではない。

「い、今の内に……」

 その隙に、カツアゲされていた男が逃げ出した。
 よし。完璧だ。
 カツアゲぐらいなら、別に殺す必要もない。首周りの皮膚を軽く溶かす程度で、勘弁するとしよう。

「にしても、今のは中々上達してたな」

 スライム越しに発動したにも関わらず、あそこまで正確な位置に召喚し、適切な量だけ溶解液を出させる。そして、最速で元の場所に戻す。
 一昨日やった時と比べて、相当上達しているのが分かる。

「うーん。今日の成果が早速出ているのかな?」

 今日は久々にガチの本気で戦った。そのお陰で戦闘勘というものがよりついたのではないか?と思う。

「ただ、ギリギリの戦いはあまりしたくないんだよなぁ……」

 毎日あんな戦いしてたら、精神が持たない。過労死する未来がよーく見える。

「まあ、俺はまだ9歳だ。焦りすぎるのは良くないな」

 前世のせいで忘れがちだが、今の俺は9歳なんだ。
 普通なら、友達と仲良く平和に遊んでいるはずだ。
 今の俺みたいに、毎日命の取り合いをしている9歳児なんて、全体の5パーセントほどしかいない。
 ……いや、逆に言えば5パーセントもいる、だな。
 そこはこの世界が日本――いや、地球と比べてだいぶ殺伐としているのが原因だから仕方ないか。
「はーあ……ん?」

『きゅー! きゅー!』

 ふと、大きな欠伸をした瞬間、脳内にスライムの鳴き声が響き渡った。
 この警告は……俺を監視している奴がいるのか?
 俺は即座に視覚を移す。
 場所はこの宿――の屋根の上。
 そこに、姿勢を低くし、息を潜めている1人の男がいた。
 確かにこれは怪しいな。視線や仕草からして、確実に俺を狙っている。
 これは俺で気づけなかった。流石はスライム。最弱の魔物であるが故に、危機察知能力はかなり高い。

(ちっ 何者だ……ああ、ガリアかよ)

 その男が腰に付けている短剣には、フィーレル侯爵家の紋章が刻まれていた。
 だが、フェイクの可能性もある為、断定はできない。

「はー眠いな~」

 気づいてないと思わせる為に、ごくごく普通の独り言を言いながら、思考を巡らせる。

(まあ、宿にいる俺を監視する時点で、何か手を出してきそうだよなぁ……)

 これから寝ようとする俺を、わざわざ監視する意味は無い。監視するだけなら、普通に昼間にすればいい。となると、誘拐か殺害だな。
 スライムも何かしらの害意を感じ取っているようで、少し騒がしい。

(ふむ……どうしようか……)

 対処法はいくらでもあるが、なるべく騒ぎにならないやつがいい。
 だったら、まあこれにするか。
 詠唱したら、聞き耳立てられてる場合、面倒なことになる為、ここは魔力を多めに消費したとしても、無詠唱で魔法を使うべきだろう。
 あーでも空間属性だと、発動する直前に空間が歪むから、それで気づかれて対処される可能性があるな。
 なら、こっちが正解か。

「はー空気でも吸うか」

 そう言って、俺は部屋の窓を開けると、外の空気を吸う。

「はぁ……いいね。じゃ、そろそろ寝るか。涼しい方が良いし、窓は開けたままにしとこ」

 そう言うと、俺は窓を開けたまま、ベッドに転がり、寝たふりをする。
 そして待つこと10分後、屋根の上にいた男が音を一切立てずに、窓から部屋に侵入してきた。
 よし。

「ようこそ。俺の死の領域(デス・ゾーン)へ」

 俺は目を開くと、入って来た男に向かってそう言う。
 直後、室内に大量のスライムが出現したかと思えば、その男を数で押しつぶしにかかる。

「ん!ん!んんんん~~ッ!!!!」

 四方八方から押しつぶされ、男は言葉にならない声を出しながら苦しむ。
 例えるなら、クッションで押しつぶされているような感じだ。藻掻いても藻掻いても、中々抜け出せない。
 しれっと喉や掌などを溶解液で溶かしているのもポイントだ。
 だが、スライムの力はあまり強くない。冷静になられ、対処されてしまう前に何とかするか。

「魔力よ。空間へ干渉せよ。空間と空間を繋げ。門を開け」

 直後、俺の目の前に、空間を円形に切り取ったようなものが出現した。その奥には、人間の――首がある。

「はあああっ!」

 そこに、俺は躊躇なく拳を振るった。それも4回。
 すると、さっきまで出ていた男の声が、急に聞こえなくなった。

「よし。戻れ!」

 俺はスライムたちを森へ戻す。
 すると、そこにはげっそりとした表情で倒れる1人の男がいた。

「よし。気絶してるな」

 俺は満足げな表情を浮かべながらそう言った。
 転移門(ワープ・ゲート)という、空間と空間を直接繋ぐ魔法で、目の前の空間と男の首裏を繋ぎ、そこを殴る。
 そうすることで、安全に気絶させることに成功したのだ。

「あとは、魔力よ。空間と空間を繋げ。我が身をかの空間へ送れ」

 俺はその男の腕を掴むと、空間転移(ワープ)で路地裏に転移した。
 そして、路地裏に転移した俺は、男の腕を離すと、次の詠唱を唱える。

「魔力よ。この者の精神へ干渉せよ。意識を奪え。支配しろ」

 すると、この男の頭に黒い靄のようなものが微かに現れ、直ぐに消えた。

「よし。起きろ」

 俺はその男の頭を思いっきり蹴る。
 すると、「がはっ!」と声を上げると同時に、ガバッとその男は起き上がった。

「な、ここは……?」

「大丈夫かい?」

 何が起きたのか分からず、唖然としている男に、俺は優しく声をかける。

「あ、ああ……な、何者!?」

 男は急に警戒心むき出しで吠えると、腰の短剣に手を伸ばす。

「ああ、驚かせてごめん。ここに倒れてたから、回復魔法で手当てをしてたんだよ」

 だが、俺は顔色1つ変えず、優しく諭すように声をかける。
 ここで焦ってはいけない。
 すると、その男から、次第に警戒心が抜け落ちていった。

「あ、ああ。そうだったのか。悪かったな。それと、ありがとな」

 バツが悪そうに言うと、男は腰の短剣から手を引いた。

「気にしなくていいよ。それで、どうしてここに倒れてたんだ?」

 俺は親しい友達に話しかけるような口調でそう言う。

「ああ。実は、ガリア侯爵から、麻薬畑が見つかった最大の要因とされているシンを捕らえろって言われたんだよ」

 男はやれやれと肩をすくめながらそう言った。

「そうなんだ~因みに、その麻薬畑の所有者って誰?」

「ん? そんなのガリア侯爵様に決まって――はっ!?」

 男はいきなり目を見開くと、口を両手で押さえるが――もう遅い。

「くっ 悪いが死――ぎゃあああ!!!」

 男は短剣を落とすと、頭を押さえて身悶える。
 だが、どんどんと溶けていき――直ぐに物言わぬ死体となった。

「ふぅ。ありがとな」

 そう言って、俺はその男の上に乗る1匹のスライムを、元の場所へ戻した。

「……あーひやひやした」

 緊張から一気に解放された俺は、深く息を吐く。
 いやーマジでヒヤヒヤしたよ。特に警戒心むき出しで、”何者!?”って言われた時は。

精神支配(ドミネイト)。ちゃんと発動して良かった」

 そう。俺がやったのは、精神支配(ドミネイト)を使っての尋問だ。
 だが、俺は闇属性魔法があまり得意ではなく、精神支配(ドミネイト)も精々意識を逸らす程度のことしかできない。
 だから、さっきみたいに回りくどいことをしないと、尋問が出来ないのだ。

「はぁ……にしても、ヤバいこと知っちゃったなぁ……」

 まさか麻薬畑の所有者が、ガリア本人だとは思いもしなかった。
 しかも、八つ当たりに俺を攫いに来てるし……
 どうせ、俺を攫って拷問紛いのことでもする気だったのだろう。
 ……うん。流石にこれは怒った。
 今後一切干渉しないのなら、見逃すつもりだったけど、手を出すのなら仕方ない。

「俺を敵に回したらどうなるのか。思い知るがいい」

 俺はビキビキと額に青筋を浮かべながらそう言うと、早速行動に移すことにした。