「ぐっ はあっ!」
転移した俺は即座に地を蹴ると、魔法師の女性に手を伸ばそうとしていたオークの腕に剣を振り下ろす。
ザン!
そんな音と共に、オークの腕はきれいに斬り落とされた。
いやー流石はミスリルの剣。俺って筋力無いから、普通の剣だとキツかっただろうな……
「よし。来い!」
そして、俺は即座に8体のスライムを召喚した。召喚は自身から半径5メートル以内ならどこでも出来る。
それを利用して、俺は8体のスライムをそれぞれ1体のオークの頭の上に召喚した。
これ、結構難しいんだよね。1、2体ならともかく、8体を同時にそれぞれ指定した場所へ正確に召喚するとか、絶技にも程がある。
まあ、これは単純に努力しまくった結果だ。
で、スライムで何が出来るのかって話なのだが、あのスライムはただのスライムではない。
全て変異種。それも、通常の10倍以上の強力な溶解液を持っているのだ。
確か、1番強い奴で14倍だった気がする。
よし。さっさと溶かすか。
「頼む。オークを溶かしてくれ」
直後、オークたちが苦悶の声を上げ始めた。
よく見ると、頭がどろどろに溶けているのが見える。
そして、直ぐに地面に崩れ落ちた。
……うん。えげつないね。
いくら体が厚い脂肪に覆われていると言っても、頭は大したことない。それを狙っての攻撃なのだが……
やっぱえげつないわ。脳みそがほぼ無くなってるもん。
「ふぅ……やべぇな。じゃ、森に戻って隠れてくれ」
そう言うと、スライムたちは一斉にどこかへ行ってしまった。
あんな強力なスライムは手元に置いといた方がいいのかもしれないが、あいつらって意図せず常にそこそこの溶解液を体がら常に滴らせてるんだよね。
そのせいで、手元に置けないのだ。
おっと。それよりも……
「間に合ったようだな。大丈夫か?」
俺は目の前で尻もちをつきながら唖然とする魔法師の女性に向かってそう問いかけた。
「は、はい。大丈夫です。あの……助けて下さり、ありがとうございます」
彼女は杖をついてゆっくりと立ち上がると、ぺこりと頭を下げる。
「ま、無事ならよかった。それで、他はどうなんだろ?」
そんな何気ない俺の一言に彼女ははっとなると、地面に倒れる2人のもとへ駆け寄る。
「大丈夫?」
彼女の声掛けに、魔法師らしき男性が呻き声を上げた。
「ぐあ……ああ……ど、どうやら、助けが、来た、ようだな……」
そして、次に槍術士らしき女性が口を開いた。
「ええ。良かった。でも、流石にきついわね……」
2人共まだ意識はあった。だが、あのままだといずれ失血死するな。
そう思った矢先、魔法師の女性はポーチから何かの液体が入った小瓶を取り出した。
そして、それを2人の傷口にそれぞれ振りかける。すると、回復魔法を受けた時と同じように傷口が淡く光った。
「ああ。まだポーションが残ってたのか」
ポーションとは、薬草を魔法触媒にして作られた魔法液で、傷口にかけるとその部分を癒してくれる。
ただ、見た感じあのポーションはそこまで効果の高いものでもないようで、止血をするだけにとどまった。でも、あれなら結構もちそうだ。
シュレインまで戻り、回復魔法の使い手頼めば問題ないだろう。
え? お前も回復魔法の使い手だろって?
まあそうだけどさ。俺って適性率40パーセントだから、空間属性魔法ほど上手く扱えないんだよね。
しかも、魔力容量も魔力強度も全体的に見たら、平均よりちょい下ぐらい。
だから、俺では実力の問題で、力にはなれないんだよ。
「これでよし。あとは……」
魔法師の女性は立ち上がると、今度はふっ飛ばされた剣士の男性のもとへと向かう。
「う……痛てぇな……」
幸いにも、彼は2人ほど大きな怪我では無かったようで、自力で立ち上がっていた。
その様子を見た彼女はほっと安堵の息を吐きながら声をかける。
「大丈夫?」
「ああ。全然大丈夫じゃねーよ。普通に痛てぇ。ただ、これならポーションで治せる」
そう言って、彼は自身のポーチからポーションを取り出すと、それを背中に振りかける。
すると、彼の背中が淡く光った。
「ふぅ……これでよし。もう大丈夫だ」
彼はふぅと息を吐くと、背中を擦る。
「それで、何があったんだ? 意識が飛んでて分からねぇ」
「ええ。実は、ギリギリのところで冒険者がやってきて、助けてくれたのよ」
「そうか。それは運が良かったな。それで、その冒険者は?」
「あそこにいる少年よ」
そう言って、彼女は俺に視線を向ける。
そして、剣士の男性も同じように俺の方を向く。
「え!? あんな子供が!?」
剣士の男性は俺を見るなり、素っ頓狂な声を上げた。
まあ、そうなるのも無理はない。
何せ、俺は9歳の子供。身長も140センチ程度しかない。
まあ、同年代と比べれば高い方ではあるのだが、それでも彼らと比べればずっと低いのだ。
「そう思うのも無理はないけど、本当よ。あの子が現れた瞬間、オークが苦しみだしたかと思えば、一斉に地面に倒れたの」
「マジか。確かにオークが死んでいるな……」
彼は次に地面に倒れるオークを感嘆しながら見た。
「まあ、ともかく助かったってことか」
剣士の男は安堵の息を吐いてそう言うと、俺に近づく。
そして、頭を下げた。
「ありがとな。君のお陰で助かったよ」
「別に、無事ならいいよ」
善意で助けたというよりは、あのまま見捨てたら後味が悪くなるから助けただけだ。
まあ、それでも礼を言われれば悪い気はしない。
「早くシュレインに帰った方が良いよ。血の匂いで、魔物が寄ってくるかもしれないから。あと、オークの素材は俺が貰ってもいいかな?」
そう言って、俺は地面に倒れるオークたちを指差す。
俺が倒したんだから、素材は俺が貰っても問題ないだろう。
というか、欲しい。
今は取りあえず安心できるだけの金が欲しいんだ……!
「ああ。全部持ってって貰って構わない。俺たちはこのままあの2人を背負って帰るつもりだ」
そう言うと、剣士の男性は踵を返して歩き出した。
そして、地面に倒れる2人へ近づく。
「よっこらせっと」
なんと、2人を小脇に抱えて、持ち上げた。
とんでもない筋力だな!
まあ、これは十中八九祝福のお陰だろうな。
なんの祝福なのかは知らないが、剣を持っていることから、多分レントと同じ”剣士”の祝福だと思われる。
C級でも、発動中なら倍近く身体能力が上がるっていうからな。
いやー純粋に羨ましい。
何せ俺には身体能力を強化するまともな術がない。
そのせいで、多分オークですら、普通の剣ではあまりダメージを与えられないと思う。
空間転移で首裏に転移して、そこを斬り付ければ倒せるのだろうけど……オーク相手にそんな調子じゃ、先が思いやられるね。体格も、あれだけ鍛錬したのに普通だし。
だが、俺の剣はミスリル製。
魔力を流して切れ味を強化すれば、結構いい線まで行くと思われる。
こう考えると、宝物庫から盗んできて正解だったな。
……いや、違う。”盗む”じゃなくて、”貰う”、だ。
「ふぅ……それじゃ、さっさと帰るか。あ、君! 名前は?」
ふと、剣士の男性からそう問いかけられた。
ああ、そういや名乗って無かったな。
「俺の名前はシン。Fランク冒険者だ」
「そうか。俺はウィル。Eランク冒険者だ。ま、この調子じゃ直ぐ君に抜かされそうだがな。それじゃ、今日はありがとな。この恩はいつか返すぜ」
そう言って、剣士の男性――ウィルは笑みを浮かべながら去って行った。
魔法師の女性も「いつか必ず恩を返します」と言って、ぺこりと頭を下げると、ウィルの後に続いて小走りで去って行った。
転移した俺は即座に地を蹴ると、魔法師の女性に手を伸ばそうとしていたオークの腕に剣を振り下ろす。
ザン!
そんな音と共に、オークの腕はきれいに斬り落とされた。
いやー流石はミスリルの剣。俺って筋力無いから、普通の剣だとキツかっただろうな……
「よし。来い!」
そして、俺は即座に8体のスライムを召喚した。召喚は自身から半径5メートル以内ならどこでも出来る。
それを利用して、俺は8体のスライムをそれぞれ1体のオークの頭の上に召喚した。
これ、結構難しいんだよね。1、2体ならともかく、8体を同時にそれぞれ指定した場所へ正確に召喚するとか、絶技にも程がある。
まあ、これは単純に努力しまくった結果だ。
で、スライムで何が出来るのかって話なのだが、あのスライムはただのスライムではない。
全て変異種。それも、通常の10倍以上の強力な溶解液を持っているのだ。
確か、1番強い奴で14倍だった気がする。
よし。さっさと溶かすか。
「頼む。オークを溶かしてくれ」
直後、オークたちが苦悶の声を上げ始めた。
よく見ると、頭がどろどろに溶けているのが見える。
そして、直ぐに地面に崩れ落ちた。
……うん。えげつないね。
いくら体が厚い脂肪に覆われていると言っても、頭は大したことない。それを狙っての攻撃なのだが……
やっぱえげつないわ。脳みそがほぼ無くなってるもん。
「ふぅ……やべぇな。じゃ、森に戻って隠れてくれ」
そう言うと、スライムたちは一斉にどこかへ行ってしまった。
あんな強力なスライムは手元に置いといた方がいいのかもしれないが、あいつらって意図せず常にそこそこの溶解液を体がら常に滴らせてるんだよね。
そのせいで、手元に置けないのだ。
おっと。それよりも……
「間に合ったようだな。大丈夫か?」
俺は目の前で尻もちをつきながら唖然とする魔法師の女性に向かってそう問いかけた。
「は、はい。大丈夫です。あの……助けて下さり、ありがとうございます」
彼女は杖をついてゆっくりと立ち上がると、ぺこりと頭を下げる。
「ま、無事ならよかった。それで、他はどうなんだろ?」
そんな何気ない俺の一言に彼女ははっとなると、地面に倒れる2人のもとへ駆け寄る。
「大丈夫?」
彼女の声掛けに、魔法師らしき男性が呻き声を上げた。
「ぐあ……ああ……ど、どうやら、助けが、来た、ようだな……」
そして、次に槍術士らしき女性が口を開いた。
「ええ。良かった。でも、流石にきついわね……」
2人共まだ意識はあった。だが、あのままだといずれ失血死するな。
そう思った矢先、魔法師の女性はポーチから何かの液体が入った小瓶を取り出した。
そして、それを2人の傷口にそれぞれ振りかける。すると、回復魔法を受けた時と同じように傷口が淡く光った。
「ああ。まだポーションが残ってたのか」
ポーションとは、薬草を魔法触媒にして作られた魔法液で、傷口にかけるとその部分を癒してくれる。
ただ、見た感じあのポーションはそこまで効果の高いものでもないようで、止血をするだけにとどまった。でも、あれなら結構もちそうだ。
シュレインまで戻り、回復魔法の使い手頼めば問題ないだろう。
え? お前も回復魔法の使い手だろって?
まあそうだけどさ。俺って適性率40パーセントだから、空間属性魔法ほど上手く扱えないんだよね。
しかも、魔力容量も魔力強度も全体的に見たら、平均よりちょい下ぐらい。
だから、俺では実力の問題で、力にはなれないんだよ。
「これでよし。あとは……」
魔法師の女性は立ち上がると、今度はふっ飛ばされた剣士の男性のもとへと向かう。
「う……痛てぇな……」
幸いにも、彼は2人ほど大きな怪我では無かったようで、自力で立ち上がっていた。
その様子を見た彼女はほっと安堵の息を吐きながら声をかける。
「大丈夫?」
「ああ。全然大丈夫じゃねーよ。普通に痛てぇ。ただ、これならポーションで治せる」
そう言って、彼は自身のポーチからポーションを取り出すと、それを背中に振りかける。
すると、彼の背中が淡く光った。
「ふぅ……これでよし。もう大丈夫だ」
彼はふぅと息を吐くと、背中を擦る。
「それで、何があったんだ? 意識が飛んでて分からねぇ」
「ええ。実は、ギリギリのところで冒険者がやってきて、助けてくれたのよ」
「そうか。それは運が良かったな。それで、その冒険者は?」
「あそこにいる少年よ」
そう言って、彼女は俺に視線を向ける。
そして、剣士の男性も同じように俺の方を向く。
「え!? あんな子供が!?」
剣士の男性は俺を見るなり、素っ頓狂な声を上げた。
まあ、そうなるのも無理はない。
何せ、俺は9歳の子供。身長も140センチ程度しかない。
まあ、同年代と比べれば高い方ではあるのだが、それでも彼らと比べればずっと低いのだ。
「そう思うのも無理はないけど、本当よ。あの子が現れた瞬間、オークが苦しみだしたかと思えば、一斉に地面に倒れたの」
「マジか。確かにオークが死んでいるな……」
彼は次に地面に倒れるオークを感嘆しながら見た。
「まあ、ともかく助かったってことか」
剣士の男は安堵の息を吐いてそう言うと、俺に近づく。
そして、頭を下げた。
「ありがとな。君のお陰で助かったよ」
「別に、無事ならいいよ」
善意で助けたというよりは、あのまま見捨てたら後味が悪くなるから助けただけだ。
まあ、それでも礼を言われれば悪い気はしない。
「早くシュレインに帰った方が良いよ。血の匂いで、魔物が寄ってくるかもしれないから。あと、オークの素材は俺が貰ってもいいかな?」
そう言って、俺は地面に倒れるオークたちを指差す。
俺が倒したんだから、素材は俺が貰っても問題ないだろう。
というか、欲しい。
今は取りあえず安心できるだけの金が欲しいんだ……!
「ああ。全部持ってって貰って構わない。俺たちはこのままあの2人を背負って帰るつもりだ」
そう言うと、剣士の男性は踵を返して歩き出した。
そして、地面に倒れる2人へ近づく。
「よっこらせっと」
なんと、2人を小脇に抱えて、持ち上げた。
とんでもない筋力だな!
まあ、これは十中八九祝福のお陰だろうな。
なんの祝福なのかは知らないが、剣を持っていることから、多分レントと同じ”剣士”の祝福だと思われる。
C級でも、発動中なら倍近く身体能力が上がるっていうからな。
いやー純粋に羨ましい。
何せ俺には身体能力を強化するまともな術がない。
そのせいで、多分オークですら、普通の剣ではあまりダメージを与えられないと思う。
空間転移で首裏に転移して、そこを斬り付ければ倒せるのだろうけど……オーク相手にそんな調子じゃ、先が思いやられるね。体格も、あれだけ鍛錬したのに普通だし。
だが、俺の剣はミスリル製。
魔力を流して切れ味を強化すれば、結構いい線まで行くと思われる。
こう考えると、宝物庫から盗んできて正解だったな。
……いや、違う。”盗む”じゃなくて、”貰う”、だ。
「ふぅ……それじゃ、さっさと帰るか。あ、君! 名前は?」
ふと、剣士の男性からそう問いかけられた。
ああ、そういや名乗って無かったな。
「俺の名前はシン。Fランク冒険者だ」
「そうか。俺はウィル。Eランク冒険者だ。ま、この調子じゃ直ぐ君に抜かされそうだがな。それじゃ、今日はありがとな。この恩はいつか返すぜ」
そう言って、剣士の男性――ウィルは笑みを浮かべながら去って行った。
魔法師の女性も「いつか必ず恩を返します」と言って、ぺこりと頭を下げると、ウィルの後に続いて小走りで去って行った。