こんにちは。梵神楽(そよぎかぐら)と申します。ここは鏡の図書館。誰かを亡くした人だけが訪れる事ができます。しかし、その人の死を哀しんでいないような冷淡な人はお断り。さあ、貴方も読書という広い旅へ。行ってらっしゃい。
 私、加藤知佳は哀しみに暮れている。中学3年の1月。まさに受験期真っ只中。ジジちゃんは死んだ。ジジちゃんは祖父でおじいちゃんっ子だった私は、絶望を覚えた。ガンで、死ぬことも2週間前にわかっていた。らしい。私は知らなかった。知らせれば、哀しむと思ったらしい。知らせてくれれば、心の準備だってできたのに。泣いて腫れた目を、鏡越しに触れる。そしたら、意識が遠のいた。
 新しいお客様ですかね?ここは鏡の図書館。あっどうも館長の梵神楽です。序章ぶりですね!どうやら、今回のお客様は中学生のようです。3年生となると受験ですね。ふむふむ。そんな時に、誰かを亡くされたなんて…………。これは、腕が鳴りますね!!
 ここはどこ?私は絵画のような図書館にいた。夢だろうか。
梵「お目覚めですか?」
知佳「はい。貴方は?」
梵「梵神楽と申します。当館の館長です。」
知佳「どうも。えっとこれは夢か何かですか?」
梵「いえ。異世界と思えばよろしいかと。」
知佳「えっ……え?異世界。凄い!!嬉しい!」
梵「現実世界では貴方は眠っています。なので長時間の滞在は禁物ですよ。」
知佳「はーい。」
梵「では、ごゆっくり。」
異世界に来たのなんて初めて。楽しすぎる。夢なら覚めないで欲しい。ゆっくり文庫のコーナを見ると気になる本があった。《想い》という本で亡くなった人が持っているペンダントを中心とした話。ペンダントには、写真が入っていてその写真を見ると亡くなった人の想いが分かる。というあらすじだった。今の私にぴったり!早速家に帰って読もう。また意識が遠のいた。
 元気な少女でした。そういえば言ってなかった。この図書館を使えるのは、借りる時と返す時。この2回だけということ。
 目を開けると、自分の部屋だった。物が散乱した部屋。手には《想い》がある。ちゃんと借りれたんだ。早速読もう。
 気づいたら2時間が経過していた。《想い》は読了し、余韻に浸っている。主人公がペンダントにより立ち直り、前に進む力は圧巻だった。涙が止まらない。図書館に行って、違う本も読みたいしこの本も買いたい。しかし、本屋で探してもない。そもそも、この世に実在しない本だった。記念に写真を取っておく。よし、この本を返して新しい本借りよ。またもや意識が遠のいた。
 加藤知佳さん。清々しい顔をしていらっしゃいました。そろそろこの図書館も閉館ですね。