成長促進があれば、花畑の復活なんて楽勝!

「なーんて思ってたんだけど、これはなかなかきついな」

 今咲いている花を成長させて種を採る。
 地面に落ちてしまうと拾うのが大変だから、花は俺の手のひらの上で成長させた。
 実った種は持ってきたシーツの上に落とす。
 他の種類の種が混ざらないよう、一種類ずつ作業をした。

 花を咲かせて種を採り、また咲かせて種を採り……。

「こ、こんなもんでどうだろう?」

 握り拳分ほどの種が集まった。
 なお、まだこれが一種類目だ。

「どう、なんでしょう?」
「種の数だけ見ても、どのくらい咲くのか想像しにくいわね」
「だよなぁ……」
『●●●』
「えっと、ルルがその……全然足りない……と」

 足りない? しかも全然?

 改めて種を見て、それから辺りを見渡す。
 ……だな。
 他にも数種類の花が咲いてるが、全部同じ量の種を集めた所で、この広い高原を覆いつくせそうにない。

『●●●●♪』
「今度はなんて?」
「あ、はい。種一粒ずつではなく、数十粒同時に成長させたらどうかって。それでシーツの上に薄く土を敷いて、そこに種を撒けば一斉に花が咲いて種も一度にたくさん採れるんじゃないかと」
「じゃ、それでいくか」

 土も少し混ざってしまうが、どうせ最後にはばら撒くんだ。土ごと撒けばいいか。
 しかしこれ、一日かけても終わりそうにないぞ。

 種から花が咲いて、次の種をつけるのに三カ月ぐらいだろう。
 種四つで一年分。四十粒で十年分。四〇〇粒で百年分だ。
 もちろん、一輪の花から複数の種が採れるから、集まるのは数倍になるだろう。

 けど今の俺だと五九〇年分の成長が限界だ。
 いいとこ六種類の花の種を集めるので限界になる。

 で、予想通り六種類目の種を集める最中に倦怠感を感じ始めた。

「今日はここまでにしなさいよ」
「だな。あぁ、お腹空いた」
「だろうと思って、向こうに準備しました」
「あんたがスキルを使い始めた時に、野宿の荷物出して貰ってよかったわ」

 種増やしをする前に、食材と調理器具を出して欲しいとは言われていたから期待はしたけど、直ぐに食べられるのは嬉しい。

 今夜はツリーハウスではなく、砂船で休むことにしていた。
 船内にはハンモックを備え付けたから、床が少し斜めでも関係ない。
 砂船の傍にはいつのまにか船から下ろしたテーブルと椅子が置かれ、料理も並んでいる。

「ここは少し冷えますね。標高が高いからでしょうか」
『ここは砂漠とは違う。比較的暖かい場所ではあるが、それでも四季というものがある。今は冬の終わりの時期。砂漠で暮らすそなたらにとって寒く感じて当然だ』
「冬……言葉では知っているけど、冬なんて感じたことなかったわ」
「火竜様っ。ここには雪というものが降るのでしょうか?」
『……この辺りだと、降りはするが積もることは滅多にない。見ろ、あの山を』

 火竜が顎で示す先には、ここよりもっと高い山々が連なる景色があった。
 その山頂は白く染まり、雪が積もっているのが分かる。

『あれが雪だ』
「あれ? あれとはどれでしょう?」
「あの山、白いわね。白い土? 石灰岩かしら。だとしたら凄い量ね」

 雪を知らないと、こうなるのか。

『かっはっは。そうか。砂漠の民は雪を知らぬのだったな。あの白く見えるものが全て雪だ』
「あの白いのが!?」
「雪で出来た山だなんて、凄いです」

 ま、まさか、あの白い部分全部が雪だと思ってる?
 表面だけで、内側は普通に土なんだけど……。
 気づいたらしく、火竜も腕組みをして考え込んだ。

『現地に連れて行く方が早そうだな』
「つ、連れて行ってくださるんですか!?」
「やったぁ~」
『ヤッタァー』
『雪触れるの? わぁ、嬉しいなぁ』

 だ、大丈夫だろうか……雪が積もってるような標高だと、かなり寒いと思うんだけど。





「きゃ~っ。真っ白ぉ」
「キャッ。冷たいですっ」
『スゴーイ、スゴーイ』
『あれぇ? ここの精霊さんは水の精霊さんみたいだけど、少し違うんだねぇ』

 暗くなる前にって、火竜がさくっと雪のある場所まで運んでくれた。
 比較的標高の低い場所だけど、それでも十分寒い。

 けど、みんなには関係ないようだ。
 初めて見る雪に大興奮している。
 あぁ、雪にダイブしてごろごろしちゃってるよ。
 あとで風邪引かないように、しっかり焚き火で温まって貰わないとな。

「本当は風呂に入るのが一番なんだけどな」
『風呂?』
「あ、あぁ。ずぶ濡れて風邪引くだろうから、暖かいお湯に浸かって温もったほうがいいって話」
『お湯か……それならさっきの花園の近くに、湯気の出ている泉があるが』

 湯気が出ている泉!?
 まさかそれって……。

「この辺りって、火山が合ったりするのか?」
『うむ。今は眠っているがな。次に活動するのは数百年後だろう。大昔に何度か噴火したため、火山のエネルギーは残り少ないからな』
「ってことは温泉!」

 異世界温泉!?

『ちなみにお前たちが生息しているあの山にも、火山はある』
「えっ。温泉――お湯が湧き出ている場所もあったりするのか!?」
『うむ』

 砂漠に温泉!
 これは……これは絶対に温泉を引かねば!!!