僕と君と私の世界の物語

 先生との会話の後、グレートホールにある書架を見て回った。
 ここには、この世界のすべての物語が所蔵されているというぐらい、ありとあらゆる本が保管されている。
 だが、すっきりとしていて重圧感はない。
 それは、水がすべてを記憶しているので、星の子が「情報を得たい」と思った時に本の形として現れるからだ。
 普段は、本も文字も映像も自由自在に動いていて、どこにいるのか誰も知らない。

 キラは水の記憶について、もう少し詳しい情報が欲しいと思って探していた。
 すると、1冊の本が光って見えたので手に取った。
 本を開くと、中から水の玉のような物がぽんぽんと弾けて飛んで来た。
 その水の玉には、映像が映っていた。
 その1つを手に取ると、パチンと弾けてその水が大きくなり、キラをすっぽりと包んで上空へと浮かび上がった。

 その水の玉の中は、呼吸も出来て、苦しくもない。
 まるで母親の羊水の中にいるような温かさを感じた。
 ゆったりとした居心地の良さに、自然と目を閉じて眠りに入っていった。

「暖かくて気持ちいいなー」
 ふわふわした雲の上で、寝っ転がってリラックスしている気分だ。

「君は、星の子の光の王子だね。待っていたよ」
 僕の周りで、たくさんの小さい光の玉が、ふわふわと舞っている。

(その子たちの声かな?光の王子って・・・・、僕のこと?)

「光の王子は目覚めたんだね」
 そう言って、小さい光の玉たちは笑っているようだ。

「光の王子。何が知りたいの?」
「水の記憶について。それと、黄金都市と虹の花のことも知りたい」
「そう。水の記憶は、思い出すタイミングの時に自然と思い出すよ」

(前にもどこかで、同じようなことを言われた気がするな)

「黄金都市と虹の花は、別の本を読んでね」
「うん。分かった」
「ねえ、光の王子。銀の王子はどこにいるの?」

 キラはその言葉を聞いた途端、ぐーんと暗く深い闇の底へと引っ張られて落ちていった。

 黒いねっとりとした何かがキラの体にまとわりついて、手足をぐっと引っ張ってくる。
 手足がバラバラになりそうなぐらい強い力で引っ張られて、痛くて叫び声を上げる。
 すると、体にまとわりついていた黒い物は、パッとキラの体から離れていった。
 そのまま急降下して、下へ下へと落ちていく。
 何かにガツンとぶつかったような衝撃で、体が落ちるのは止まった。

 辺りはうす暗く、よく見えない。
 周囲の暗闇に目が慣れてくると、辺りが見えるようになった。
 少し遠くの目の前に、誰かがいるような気がした。

 目を凝らして見ると、それは、キラ自身だった。
「お前は、ラキか?何でここにいる?」
 顔も声もキラそっくりで、でも明らかに別人のキラが目の前にいた。
「ラキって誰のこと?」
「お前だよ。お前、僕の髪色を真似したのか?」
 どう見ても目の前のキラらしい人物は黒髪で、僕の金色の髪色とは違う。
「君の髪の色は、黒色じゃないか?」
「ははっ。そうだよ。僕の髪色は黒色だ。お前が、僕の髪の色を盗んだんだ」
「えっ⁉︎盗んだってどういうこと?」
「呆れたな。盗んだ上に覚えていない振りをするのか?」
「僕は盗んでいない。それに、僕はラキじゃない」
「じゃあ、誰だよ?」
「僕はキラ。君は?」
 僕がそう言うと、目の前の僕は憎しみの目で睨みつけ、怒りで体が震えていた。

「お前がキラ?だったら、僕は誰だ?
 そこまでして、僕になりたいのか?」
「違う。僕は本当にキラなんだよ」
「僕に成りすまして僕の人生を奪った偽物が、本物の僕を騙せると思うのか?」
 きっと何を言っても、目の前の僕には信じてもらえない。
「君には、何を言っても信じてもらえないと思う。
 でも、僕はキラだ。
 今の僕は記憶が曖昧で、色々なことを忘れている。
 もしかして、君は僕の過去のキラじゃないのか?」
「何を言っている?どうして僕が過去なんだよ。
 じゃあ、お前は未来から来たのか?」
「分からない。でも僕は、キラという人物の記憶を持って生まれている。
 過去に何があったのか思い出せないけど、君を見ていると胸が痛くて苦しい気持ちになる」

 星のカケラに触って落ち着こうとしても、ザワザワとしたエネルギーを感じて、一層心が締め付けられる。

「ごめん。とにかくごめん。謝りたいんだ」
 どうしてか分からないが、謝らないといけない気がした。
「なぜ、お前が謝る?」
「君を助けてあげられなくて。きっと過去の僕は、悔やんでいるだろうと思ったから」
「お前が本当にキラかも分からないのに、勝手に謝られて迷惑だ」

(君からは、声にならない悲しみが伝わってくる。何があったのか分からないけど、きっと君はとても傷付いているんだね。だから、僕の言葉は、今の君には届かない)

「僕、ラキという人を探してみるよ。僕の世界で、何か分かるかもしれないし」
「無駄だ。
 キラである本物の僕と、僕に成り変わったラキ。
 キラとラキ。僕らは・・・・」
「えっ⁉︎何て言ったの?」

 目の前の僕の言葉を聞き取る前に、彼の体は暗い闇に覆われて消えてしまった。
「大丈夫ですか?」
 何度か声をかけられて、はっと目を覚ましたキラ。
「うなされていましたよ」
 心配そうな声に
「ありがとうございます。大丈夫です」
 とお礼を言った。
「あれ?あなたは昨日の・・・・」
 そう言われ顔を見ると、記憶図書館で親切に説明してくれた人だった。

「あっ!昨日はありがとうございました」
「いえいえ。私もボランティアで案内していますから」
 にっこりと笑って答えてくれたその人は、温かくて優しい感じの人だ。

「私はベルカナと言います。私も今日はグレートホールでの講義を聞きに来ました。
 本が好きなので、普段は記憶図書館やグレートホール、アメンティーホールなどで活動しています。
 星の子のみなさんは、それぞれ才能や特技を活かして、自由に好きなことでボランティアや活動をしていますよ」
「そうなんですね。僕も水の記憶に関することに興味があって、講義を聞きに来ました。
 その後は、もっと詳しいことが知りたくて、本を探していたんです」
「何か見つかりましたか?」
「光っている本を見つけて、その本を手に取ると、中から水の玉が何個か飛び出して来て、その中に包まれたら眠ちゃったようで、夢を見ていました」
「どんな夢ですか?うなされていたし、何か悪い夢でも見ていたんですか?」
「はい。それが、はっきりと覚えていなくて。さっきまではよく覚えていたのに。
 今は曖昧で、何かもやがかかっているようで・・・・」
「あまり無理に思い出さない方がいいかもしれませんね。
 記憶というのは、何かきっかけがあれば、一気に思い出すこともありますし」
「はい。そうですね。無理に考えない方がいいかもしれません」
「あっ!そうだ。私の友人も、水の記憶について、私と一緒に調べたり探しているので、話を聞いてみましょう」
 そう言って、ベルカナは、彼女の友人だという1人の男性を紹介してくれた。
「こんにちは。僕はイアンです。ベルカナと一緒に、水の記憶について調べています」

(なんて爽やかで、物腰の柔らかい人だろう)

「私たちはある星を救うために、水の記憶に関する情報を集めています」
「ある星とは、虹の花の秘密があるという星ですか?」
「そうです。虹の花のことはどこまで知っていますか?」
「いいえ。詳しくは分かりません」
「大丈夫です。誰も、虹の花のことをよく知らないのです。
 幻の花と呼ばれているし、誰も見たことがないのですから」
「そうなんですか?」
「ええ。伝説や物語の中によく虹の花が出てきます。でも、実際に、実物の花を見た星の子は誰もいません」
「では、なぜ、星の子たちは、虹の花のことを気にするのですか?」
「虹の花は『すべての願い事を叶える花』だと言われているからです」
「えっ⁉︎そんな花があるんですか?」
「ええ。虹の花は、この世界を創った創造主がいる『はじまりの場所』に咲く花で、創造主が最も大切にしている花だと言われています」
「虹の花は『はじまりの場所』だけに咲くのですか?」
「それは、何とも言えません。実際にどこに咲いているのか、虹の花がどんな花なのか、誰にも分からないので。
 ですが、虹の花にはクリスタルが関係しているようです」

 クリスタルと聞いて、友人たちがフェスの話で言っていたことを思い出した。
「あっ!そう言えば、古代のクリスタルエネルギーで、黄金都市を復活させたいという話を聞きました」
「ええ。その話は、私も聞いています。古代の叡智が詰まったクリスタルを使って『黄金都市を復活させて、虹の花も手に入れる』そんなことを考えている種族もいるようです」
「つまり、『水の記憶、虹の花、クリスタル、黄金都市』これらは密接に繋がり合って、関係が深いという訳なの」
 イアンの説明を聞いて、ベルカナがまとめるように言った。
 イアンは、ベルカナの方を見てニコッと笑ってから、続けて話し始めた。

「ああ、それと、星の子たちが持っている星のカケラも、水の記憶と共鳴します。
 星のカケラには、星の子たちの使命が刻まれていますが、それが水の記憶と交わることで、様々な次空間、次元にある記憶にアクセス出来ることもあるようです」
「それは、過去の記憶にもアクセス出来るのですか?」
「はい。それは可能です。星の子1人1人の能力や才能、資質や目的は違います。
 星の子たちは、自分で使命を決めて生まれてきていると言われていますが、中には、創造主から『特別に与えられた使命』を刻まれた星の子たちも存在します。
 その星の子たちは、過去、現在、未来を通して、長い時間、この世界のために役割を担っていると言われています」

(創造主から、特別な使命を与えられた星の子たち・・・・。そんな星の子もいるんだ・・・・)

「では、その特別な星の子たちが、創造主に与えられた使命を間違えたり、失敗などを行った場合はどうなるんですか?」
「その時は、その星の子が存在するすべての世界が消滅すると言われています」
「えっ?今までそんなことは起きているんですか?」
「残念ながら、たくさん起きています。数えきれないぐらいの星が消滅して、星の子たちの記憶も消え去ったと言われています」

 キラは、イアンの言葉にショックを受けていた。
「星の消滅」
 その言葉が、重い鉛のようにキラの心に突き刺さったからだ。

「この世界では、毎瞬、毎瞬、新しい星が生まれ、それと同時に星が消滅します。生まれては消えていく星は、数えきれないくらいありますが、水はそのすべてを記憶します」
「じゃあ、水は消えた星のことも記憶しているんですね?」
「はい。そうです。しかし、水はあらゆる所に存在し、自由に流れて行くものです。どの水が消えた星の記憶を持つのか、調べるのは大変だと思います」

 イアンの説明を聞きながら(水の記憶を調べるのは気が遠くなるほど大変そうだ)とキラは思った。
「ああ、それから、水の記憶に関連することですが、星の子のみなさんがスターゲートを通して星狩りに行くのは、星にある星の子たちの記憶を回収するためです」
「星狩り!アンドロメダ銀河フェスでも行うと聞きました」
「はい。そうですね。アンドロメダ銀河フェスは大規模なフェスですので、様々な種族の方も星狩りに参加されるでしょう」
「みんなで記憶の回収をしてどうするのですか?」
「星の子たちの記憶の回収後は、『はじまりの場所』にある『創造の木と泉』の所へ送ります。そこで、記憶は保管されるようです」

(「はじまりの場所」ってどこにあるんだろう?・・・・。星狩りって、僕にも出来るかな?・・・・)

「星狩りって、誰でも参加出来るのですか?」
「はい。参加条件はないと思います。ですが、各スターゲートの守護星人の方々が、パートナーの星獣や星ガイドなどを連れて指揮をとりますので、星狩りに精通した星の子たちが参加することが多いです」

(うーん。熟練した達人たちが参加するってイメージだな。素人の僕が参加してもいいのかな?・・・・)

「何だか、ベテランの星の子たちが参加する雰囲気ですね。でも、星狩りの様子を見てみたいな。どうやって記憶の回収を行うのですか?」
「クリスタルを使います。記憶の回収と保存専用の水のクリスタルです。
 巨大な球体の中に、クリスタルで作られた正四面体の上下逆さになったピラミッド型マカバが入っています。
 それが様々な場所に設置されていて、そこに回収した記憶が吸収され『はじまりの場所』にある『創造の木と泉』へ転送されます」
「イアンは、そのクリスタルを作るチームに参加しているのよ」
 ベルカナの口調から、イアンに対して誇らしい気持ちが伝わる。
「そうなんですね!だから、水の記憶やクリスタルに詳しいのですね」

(なるほど!納得だなー)とキラは感心していた。

「今日は、たくさん教えてくださり、ありがとうございました!」
「少しは参考になりましたか?」
「はい。まだまだ分からないことはたくさんありますが、興味深いお話が聞けて、探す手掛かりは掴めました」
「それなら良かった。またいつでも、気軽に話を聞きに来てくださいね」
「はい。ありがとうございます」
 キラは、2人のおかげで有意義な時間を過ごせたことが嬉しく、感謝の気持ちを伝えた。

 2人と別れた後、キラは友人たちと約束をしていたことを思い出し、待ち合わせ場所へと向かった。
「おーい!キラ君〜。こっちこっち〜!」
「あっ!キラ!やっと来た!」
「キラ君〜。待ってたよ〜」
「キラ様〜!こちらです〜」

 キラを見つけると、友人たちは嬉しそうな顔で手を振り「早く!早く!」とキラを急かした。

「ごめーん。みんな。お待たせ」
 少し小走りで走って来たキラに
「いいよー。キラ。俺は全然待っていないぞ!」
 キラに1番に話しかけたのは、アレスだ。
「私たちも、今、来た所です」
 キャミは、嬉しそうな顔で話しかける。
「そうそう。ちょうどいい感じに到着したね!」
 双子のカルとポールも、キラに会えて嬉しそうだ。
「キラ君だったら、何時間でも待っちゃうよー」
 ルタは、キラだけには特別な対応を取るが、他の男性陣には塩対応だ。
「うん。キラ君は特別!」
 ルタの言葉に同意見のピアもアクナも、キラには別待遇だ。

 みんなはキラが来て、とても機嫌がいい。
 でも、キラは約束の時間より遅れたような感じがして、みんなに謝った。
「うんうん。少し遅れたと思うな。ごめん」
「そんなことないよ」
「そうそう。キラが来た時間が、正しい待ち合わせの時間だから」
 キラの言葉に双子たちが「当然だ!」という顔で言う。
「えっ?そうなの?」
 キラは、双子たちの言葉に驚いている。
「そうだよ。俺たちは、いつでもキラを基準にして考えているから」
 アレスも、キラが来るなら「何時でもいい」という感じだ。

「キラ君が世界の中心なの」
 ピアは、頭の中の妄想が肥大化したような口ぶりだ。
「キラ君と同じがいい」
「うんうん。キラ君が正しい」
 キャミとルタも、男性陣の意見に同意しながら「キラ君が1番だよねー!」と確認し合っている。
「私のキラ様は神ですから!」
 アクナの発言に、すぐにアレスの眉は釣り上がり(キラはお前の物じゃねーよ!)と言いたげな顔をしている。

(またみんなが変なことを言っている・・・・・)

「ねえ、みんな。僕は世界の中心じゃないから。僕たち1人1人が、自分の人生の主人公でしょ!」
「それは分かっている。でもな、俺たちは、キラが主人公でいいんだ」
 アレスがキラに向かって「キラが主人公だ!絶対だ!」と言い聞かせている。
「そうだよ。キラ君が主人公でリーダー」
「私のキラ様は、この世界の太陽ですから」
 ルタもアクナも「キラが主人公の物語があればいいのに!」と盛り上がっている。
「俺たちのキラだから、俺たちと一心同体なの」
 双子のカルとポールも「俺たちとキラで三つ子になる〜!」と言って騒いでいる。

「つまり、キラ君のことが大好きってことです!」
 いつの間にか空想から目覚めたピアが「やっぱり実物のキラ君の方がかっこいい〜!」とキラを見つめている。
「おい!待て!俺のキラだから、キラのことを1番好きなのは、俺だ!」
 アレスの独占欲は、キラだけに向けられた忠誠心からくるこだわりだ。
「いやいや、俺たちのキラだから」
 双子たちは、キラを真ん中に挟んで腕を組み「キラは僕たちのことが1番好きだよねー」と顔を見合わせて聞いている。
「いいえ、私たちのキラ君です!」
「私のキラ様は、誰にも渡しません!」
 ルタとキャミが腕を組みながら、双子たちに対抗している。
 アクナは「キラ様LOVE」と書いたオタグッズを持ちながら、大きな声で叫んでいる。
 またもや、やいのやいのとキラ争奪戦が開始された。
 いつものことで慣れっこのキラは、しばらく傍観していた。

(このままだとさらにヒートアップしそうな雰囲気だな・・・・。じゃあ、今回はちょっと驚かせてみようかな?)

 キラは勢いよく「パン!」と手を叩き、大きな音を出してにっこり笑いながら言った。
「このままだと、みんなのこと嫌いになっちゃうよ」

 キラの言葉がよほどショックだったのか、みんなは黙って静かにキラの後をついて歩いて来る。
 あまりにも急に静かになった友人たちの姿が可愛く思えて、キラは吹き出してしまった。
「ねえ、みんな、どうしたの?そんなに静かになって」
「だって、キラ君に嫌われたらどうしようと思って・・・・」
 ルタは、いつもの勝気な口調がなくなっている。
「俺だってイヤだから。嫌われるのは・・・・」
 アレスも別人のように下を向いている。
「私はショックで寝込みそうです」
 アクナは、体から魂が抜けたような表情で落ち込んでいる。
「キラは俺たちの希望の星なのに・・・・」
 双子たちは、キラに「俺たちの大好きなチョコレートをあげるから嫌わないで!」とお願いしている。
「私もちょっと悲しくて・・・・」
 キャミは今にも泣きそうだ。
 ルタとピアは「キラ君に嫌われた!どうしよう!」と意気消沈している。

 僕のひと言で、こんなにも落ち込んでいる友人たちの姿が、可哀想に思えて
「みんなのことは嫌いじゃないよ。さっきのは冗談のつもりで言ったけど、みんながこんなにショックを受けるなんて思わなかった。ごめんね」
 キラの言葉を聞くと、たちまちみんなは元気を取り戻し
「そうだよな。俺のキラは、俺のこと嫌いじゃないよな」
「俺たちのキラは、俺たちのこと大好きだよね!」
 アレスと双子たちは、すぐに前向きな思考に切り替わる。

「私のことも好きですか?」
「私のキラ様は、やっぱり優しい」
「キラ君は、全然悪くありません」
「私のキラ君は、最高ー!」
 女性陣もパッと表情が和らいで、たちまち通常運転の口調に戻った。
 普段通りの元気で明るいみんなの方が、やっぱり楽しいな。

「みんな。ありがとう。みんなのことは大好きだよ」
 キラの言葉に、みんなの顔は最高潮に輝き、口々に「キラのことが大好きだ!」と主張し合っている。

(素敵な友人たちに囲まれて、幸せだな)

 そんな雰囲気を壊すように、突然、知らない声が背中から聞こえてきた。

「お前ばかり幸せそうで、ずるいな」

 まるで、耳元でささやかれたようなその声は、妬ましく、憎悪の念がこもっていた。
 周囲を見渡したが、キラに敵意を向ける存在はどこにもいない。

(空耳かな・・・・?)

 そう思っても、あのねっとりとした怨念のような言葉は、耳の奥でこだまして、心を不安にさせる。
 星のカケラに手を当てて、心を鎮めようとしても、ザワザワと波立つエネルギーを感じて落ち着かない。

(大丈夫。怖くない。僕はひとりじゃない。みんながいてくれる。大丈夫。大丈夫!)

 みんなと一緒にいることを思うと、自然と心が軽くなった。

(みんながいてくれると心強いな)

 心のざわめきを感じても、友人たちの存在が、キラの気持ちを和らげてくれた。

(でも、さっきの声は何だろう?気になるけど、今は危険はなさそうだな。このまま何もなければいいな)