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くすくすと笑うちゅう秋に、僕は驚く。相手がちゅう秋であるとはいえ、まさか見ただけで分かるとは思わなかった。

ちゅう秋が二羽をじっと見つめる。その目に、僕は首を傾げた。

「何か気になることでもあるのかい?」

「ああ、いや。……あの子たちが式神と呼ばれているのが不思議でな」

「不思議?」

「あの子たちは式神なんてものじゃない」

ちゅう秋の言葉に、僕は目を見開く。

(……いや、それは無いだろう)

僕は数日前、目の前で起こった出来事を思い出す。あれが式神でないのなら、なんだというのか。

「残念だけど、あれは正真正銘、マサキくんの式神だよ」

「どうしてそう言い切れる?」

「僕はこの目で見たんだ。間違いない」

「″見た″?」

ちゅう秋に僕は頷いてガーを紹介された時のことを話した。目の前で紙から鳥のような光りが舞い上がるのを、僕はしっかりと見ていたのだ。

「紙から光に……」

「そうさ! だから彼は嘘なんて──!」

「ああ、分かった。分かったから、落ち着いてくれ」

ちゅう秋の声に、僕はハッとする。

「わ、悪い。柄にもなく大声を出してしまったよ」

「いや。寧ろこっちこそ勘違いをさせるような物言い回しをしてしまってすまない」

「勘違い?」

「俺は君の友人の嘘を暴きたいわけでも、嘘つきだと言いたいわけでもない。ただ、少し不思議に思ってね。でも君の話を聞いて何となく察しが付いた」

そう言って彼は奥さんにお茶のおかわりを頼んだ。運ばれてくるお茶を受け取り、口にすれば少しだけ落ち着いたような気がした。

しかし、ちゅう秋は茶ではなく近くに置いてあった紙とペンを取り出すとスラスラと何かを書いていく。

「君は知らなかったのかもしれないが、通常、式紙の姿は誰にでも可視化することが出来る。これは能力の有無に関係なく、″そういう術″なんだ」

「んん? それだと通りが合わないじゃないか」

「そう」

式神が誰にでも見えるようなものなら、マサキくんの式神であるはずのちうとガーが僕に見えてもおかしくない。むしろ見えていない方がおかしい、とちゅう秋は言っている。

ちゅう秋はペンを置くと、紙を僕の目の前に差し出した。そこに書かれた文様は、マサキくんに見せてもらったものと瓜二つだった。ちゅう秋がさっき僕の借りたはさみを手に取ると、指先に刃を滑らせる。赤い血が滴り──紙はゆっくり動き出した。

「お、おお……!」

姿を現したのは、──手のひらに乗るほど小さな子犬。