「ただいまー!」
 静穂と花帆の声が響き、雷刀はつい鏡を見た。

 二人がリビングに入ると、母が彼女らを出迎えた。

「お帰り。小学校の同窓会はどうだった?」
「久しぶりに静穂に戻って緊張したー! 花帆は?」
「私もだよ。でも楽しかった!」

 静穂に戻った? どういうことだ。
 雷刀は手鏡をさらに覗き込む。

「静穂と花帆が入れ替わってもう長いものね」
「今日なんて、静穂って本当の名前で呼ばれても、とっさに返事できなかったりしたの」
「私も」
 彼女たちはくすくすと笑った。

 入れ替わっている?
 雷刀は愕然とそれを見つめた。

「どうした?」
 デンカが不思議そうに聞いてくる。

「なんでもありません」
 その場はごまかし、すぐさま二人のことを調べ直させた。

 婚姻の前にも調査はさせていたが、当時、不審な点はなかった。
 だが、入れ替わりを前提として行われた再調査により、はっきりした。

 なんらかの理由により、二人は入れ替わっている。

***

「ごめんなさい!」
 静穂は深々と頭を下げた。

 雷刀があのときの彼だった驚きなどいろいろと胸をよぎるものはあるが、まずは謝罪だと思った。

「姉には好きな人がいて、だから入れ替わりました。それに結婚相手は偉い人が適当に決めたんだと思ってました」

「私が指名したんですよ。勘違いの上に入れ替わっているとも知らずに。結果として、私は望んだ女性と結婚したことになりました」
 雷刀は苦笑した。

 静穂は顔を上げられない。