ここはシェルズワールド。かつて世界が一つの国だった頃、他種族や同種族との争いが絶えなかった。
それだけではなく、その頃デスマスターや魔王やモンスターなども頻繁に出没するありさまである。
それをみかねた当時の国王は勇者を募った。だが、志願する者はいない。そのため国王の側近である召喚魔導師が、ある提案をする。
実際にできるかは分からないが、異世界から勇者さまを召喚しましょうと……。
それを聞いた国王は、もし可能であれば助かるかもしれないと思った。そして、一握りの可能性に賭けることにする。
これを成し遂げるには、かなりの魔法技術がないと無理と判断した。それならば、別に何か方法はないかと考え調べる。
すると三ヶ所に、召喚用の祭壇があることが分かった。
そこで国王は側近である三人の召喚魔導師に、神殿の祭壇、洞窟の祭壇、遺跡の祭壇、その三ヶ所で召喚の儀式を行うようにと指示をする。
だが、なぜ三人で召喚しなければいけなかったのか。
それは誰かが失敗すれば、この召喚魔法自体が使えなくなるのではと思い保険として三人の召喚魔導師に命をくだしたのだ。
しかしその召喚は思っていたよりも、簡単に成功してしまった。そのため、異世界から三人の勇者が召喚される。
神殿の祭壇からは、白き兜と鎧をまとった戦士。
洞窟の祭壇からは、黒き帽子と服をまとった魔導師。
遺跡の祭壇からは、灰色の帽子と服をまとった吟遊詩人。
異世界から、その者たちが召喚された。
そして国王は、この勇者たちに希望を託し元凶を探らせる。そして、しばらくして三人にこの国を託し任せることにした。
三人の勇者たちは、治安を維持し平和を取り戻すため国を三つに分けることにする。
白き戦士側にはエルフやヒューマンなどが付き、国の名をホワイトガーデンと付けた。
黒き魔導師側にはダークエルフやデューマンなどが付き、国の名をブラックレギオンと命名する。
灰色の吟遊詩人には多種多様な獣人族などが付き、国の名をグレイルーズと定めた。
そして邪悪なる根源である魔王やデスマスターなどが、復活しないように封印をする。
その後このシェルズワールドは、前国王が予想していた以上に治安が良くなり国内の争いなどなくなった。
これもこの時に、国同士での協定や規則などを作ったおかげでもあった。
Ⅰ、国同士で起きた争いごとは、国王同士で話し合いをするべし。話し合いをしても解決しない場合は、コロシアムで解決するべし。
だがこれは、飽くまで重要と思われた場合のみ。
Ⅱ、各国はお互い交流を図るため、年に何回かの祭りやイベントをするべし。
Ⅲ、国民は奴隷や差別および、貧困をなくすために国の政策に力を尽くすべし。
Ⅳ、そして、みんな仲良くするべし。
その後、三人の異世界の者は新しい王を選んだ。そしてその新しい三人の王は、各国を任され治めることになる。
その後、しばらくして三人の異世界の勇者は元の世界に帰っていった。
★☆★☆★☆
……――それから月日が流れ、ある不穏な空気が流れ出る。
そして現在――三十代ぐらいの男女が、とある場所の墓の前に立っていた。
「父上、母上……先代たちよ。とうとう念願の時がくる。我々の悲願を果たすために……」
「これで、本当に良かったのでしょうか?」
「お前は、気にすることなどないのだ」
女は寂しそう顔をしている。
「そうですね……」
「それと、あとはあの国の大臣の、腕しだいだ。まぁ、それほど期待はしていないがな」
そして二人は、その後この場から離れて城らしき建物に入っていった。
あれからハクリュウとシエルは、あかね村を旅立った。
そして数日が経ち……現在、ハクリュウとシエルは道を歩いている。
周囲には草原が広がっていた。そして、赤、青、黄、ピンク、色々な花々が咲いている。そんな花々の周辺を、綺麗な蝶が飛んでいた。
ハクリュウは、前髪を触る。
(そういえば……この世界に来た時は、もっと髪が短かったよなぁ。今じゃ、かなり伸び放題だ)
そう思いながら歩いていると、ふとあることに気づいた。
「シエル、旅をしていて思ったんだけど。この世界って思っていたよりも平和だよな……これってどういう事なんだ?」
「平和では、いけないのですか?」
シエルが驚いたように問いかける。
「あっ! そ、それはそれでいいんだ」
一呼吸おき再び口を開いた。
「ただ魔獣も、それほど強い訳じゃない。こんなに平和なのに、なんで俺が召喚されたんだろうって」
少し歩いてからシエルは、戸惑った表情でハクリュウの方に視線を向ける。
「申し訳ありません。今は、何も言えないのです。そのことについては領主様に直接、聞いて下さいませ」
そう言われハクリュウは、余計に困惑した。
(ん〜……なんか訳が分からない)
ハクリュウは、そう思いながら歩いている。
(アニメとかなら、異世界に召喚されたヤツは必ずその世界を救う的存在。
それにその世界が滅亡寸前だったり、なんらかのトラブルを抱えている……みたいな感じなんだけど)
なぜなのかと思考を巡らせていた。
(どうみても、この世界は平和だと思う。でも召喚されたんだから、トラブル的なことなのか?
あ〜、考えれば考えるほど分からない。はぁ、考えても俺の頭がパンクするだけだしな)
ハクリュウはシエルに視線を向ける。
(ここはシエルの言う通り、領主に合って事情を聞くしかないかぁ)
そう自問自答しながらハクリュウは歩いていた。
するとその視線をシエルは感じとり、チラッとハクリュウの顔をみる。その後、また歩き出した。
(まだ、着かないのか? 流石にしんどい……)
そう思いながらハクリュウは歩いている。すると、いつの間にか森の中にいた。
相変わらず殆ど喋らないクールな表情でシエルは、ハクリュウの一歩を前にいる。そして、警戒しながら歩いていた。
「キャァァー!!」
森の奥から女の悲鳴が聞こえてくる。
「おいっ!? こら待ちやがれ〜!」
そう言いながらヒュウーマンの男性が、その声の主を追って森から出てきた。
「だっ、誰か助けて〜!」
そう言いながら女が、ハクリュウとシエルの前に現れる。
そしてその女は、ハクリュウとシエルをみた。
「あっ!! お願いです。スケベじじいに、もう少しで拐われそうになり慌てて逃げてきました。た、助けて下さい」
するとその追手の男が、ハクリュウとシエルの前に現れる。すると、その女をみるなり怒鳴り付けた。
「このアマァァー!? 逃げるなー待ちやがれっ!!」
その男は怒鳴りながら、その女を追いかけようとする。
それをみたハクリュウは、男の眼前で剣を抜き突き立てた。
男は慌てて剣を避けたが、近くにあった岩に体当たりしてしまい動けなくなる。
ハクリュウは動けないところを、すかさず持っていた縄でその男を縛りあげた。
だが、なぜか男は泣きそうになっている。
「これじゃ逃げられてしまう。あ〜、どうしたらいいんだ〜」
その様子をみてハクリュウは、あの女の言っていたことと明らかに違っていておかしいと思った。
そして、辺りをくるりと見渡してみる。すると、あの女は既にいなくなっていた。
「あれ? シエル。さっきの女は?」
「あの方なら、もう既に逃げていかれましたが」
男は俯き溜息をついている。
「はぁ……あの女はなぁ、俺の全財産を盗んでいきやがったんだよ!!」
そう言い男は、ハクリュウを睨み付けた。
(これって、俺がその女逃したってことは……)
ハクリュウは、どうしたらいいのかと考えていた。
「ホント、泣きたくなるよ。まぁ俺も、あの女に騙されたのが悪いんだから仕方ねぇ」
そう言い男は頭を抱える。
「あの女に言い寄られ……クッ、まさか泥棒だったとはな」
それを聞きハクリュウは、申し訳ない気持ちになりながら男の縄を解いた。
「ごめんなさい。まさか、そんなことをするようにはみえなかったので」
「仕方ねぇ。お前だって、あの女に騙されて俺を捕まえたんだろう?」
「ああ、そうだな。悔しいくらい思いっきり、騙されたぁぁー!!」
とハクリュウは大声で叫んだ。
その後ハクリュウは、シエルと男をみる。
(この状況どうする。シエルは俺をみて何か言いたそうだし。この人は俺を睨んでるし……っていうか、なんで俺が……)
ハクリュウは空を見上げて、左手で頭を搔きむしりながら考えた。
すると男が立ちあがり、パンパンっと両膝とお尻の汚れを落としている。
「ふぅ〜、俺は一文無しになるし。これじゃな〜」
そう言い男は、パンと両手を叩き何かを思いついたようだ。そして、ハクリュウとシエルに話しかける。
「んー……俺が金を取り返せなかったのも、お前たちのせいでもある訳だ。なら、その責任をとってもらわねぇとな!」
少し意地悪そうな顔つきで男はそう言った。
それを聞いたシエルは、いつものクールな感じで男をみつめながら口を開く。
「先程から、色々とお話を聞いていましたが。騙されたハクリュウ様が、確かに悪いかもしれません」
そう言いシエルは、ハクリュウをみたあと男へと視線を向ける。
「ですが、誘惑され騙されたのは貴方ですよね。そうなると、ハクリュウ様よりも貴方の方が悪いのではないのでしょうか?」
(ちょ、ちょっとこれって逆効果なんじゃ無いのか? この手の相手って……)
そう思いハクリュウは、どうしようかと戸惑った。
「言われてみれば、確かにそうだな。さて、そうなると……これからどうするかだ」
そう言うと男は考え始める。その後、ふと何かを思いつきハクリュウをみた。
「ん〜お前、結構いい物を装備してるじゃねぇか。それに、このねぇちゃんも……なかなか強そうだし。何か訳ありの旅なのか?」
男は不思議に思い二人をみる。
それを聞いたシエルは、慌てて話題を変えた。
「ハクリュウ様。急がなければ日が暮れてしまいますので、そろそろ行きましょう」
深刻そうな顔つきでシエルに言われたので、ハクリュウは空を見上げてみる。
「確かに……そろそろこの森を抜けないと、まずそうだな」
それを聞き男は、腕を組みながら考えたあと口を開いた。
「うむ、なるほどなるほど……人様には言えないような旅な訳か」
ニヤニヤしながら男は、勝手に頷き何かを納得している。
何を思ったのか男は、二人に歩み寄る。そして、ポンッと二人の肩を叩いた。
「護衛が必要じゃねぇか? 特に追われる身なら!」
「あっ、えっと……。別に追われてるわけじゃないんだけど。……っていうか、なんでそんな話しになるんですか?」
「まぁ、何にしろ俺は一文無しだ。そして金が欲しいんだから、お前らがなんだって構わねぇ。目的地までの護衛で構わねぇから、とりあえず雇え!」
男はそう言い力強い笑みを浮かべる。
それを聞きシエルは、男をみてからハクリュウの方に顔を向けた。
「ハクリュウ様どうしましょう? 多分、来るなと言ってもついてくるかと思います」
「ん〜、そうだなぁ」
「お金のことは問題ありません。この前のこともありますし。一応、護衛は一人でも多い方が助かるのも事実です」
ハクリュウは、目を閉じ考え始める。
(んー、確かにこの前はアリスティアに襲われた。だけど、護衛をつけるほど……ここの魔獣が強いとは思えない。
でも、シエルは何か知っている。だが、そのことについて教えてくれないんだよなぁ。……この世界とこの国で、今何が起こっているのか。
ん〜、今は状況がみえないし……シエルの判断に任せるしかないよな)
ハクリュウはそう考えたあと、溜息をつきシエルをみた。
「俺は、今の状況が分からない。だから、判断は俺ではなく……悪いけどシエルがして欲しいんだ」
ハクリュウにそう言われシエルは頷く。
「分かりました。それでは、ハクリュウ様が言われた通りに致します」
そう言うとシエルは、男の方に顔を向ける。
「貴方の腕が、どの程度……強いのかは分かりません。ですが、いないよりはマシと思いますので雇うことにします」
それを聞いて男は両手を胸ぐらいの位置で、グーにしヨシッと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「ふぅ〜、ありがてー……これで食いぶちに困ることもなくなった!」
すると男は、何か思い出した様に話し始める。
「あ〜、そうだ! 自己紹介を忘れてたな。俺はグロウディスってんだ。歳は三十一、それと前まで、城の騎士団で働いてた……これでもな!」
【挿絵:もけもけこけこ様】
それを聞いたシエルは、顔色が変わり下を向いていた。
だが二人は、それに気づいていない。
そして三人は、その場を離れ城へと向かった。
場所は移り、ここはブラックレギオン国。クロノア達は、目的地の城から約二十キロ離れたクロック村まで来ていた。
このブラックレギオン国は岩が多く、どちらかと言えば草原や森などは少ない。
あれからクロノア達は、あの一件でお金がなくなった。そのため仕方なくお金を稼ぐべく、冒険者ギルドに登録する。
クロノア以外は身分と名前を隠した。そうディアナはデアで、ハウベルトがハルと名のることにしたのである。
因みに三人の冒険者等級はノーマルのⅠ等級だ。
そうこの世界には冒険者ギルドがあり、ギルド等級などが存在する。
等級とは……。
ノーマルⅢ→Ⅱ→Ⅰ等級
⬇︎
ブロンズⅢ→Ⅱ→Ⅰ等級
⬇︎
シルバーⅢ→Ⅱ→Ⅰ等級
⬇︎
ゴールドⅢ→Ⅱ→Ⅰ等級
⬇︎
プラチナⅢ→Ⅱ→Ⅰ等級
こんな感じに分かれている。
そして、ブロンズのⅢ等級が一番低くてプラチナのⅠ等級が最も高い。
現在クロノア達はギルドから盗賊討伐の依頼を受け、クロック村から北西に位置する盗賊のアジトがある洞窟の中にいた。
洞窟内はコウモリ等が生息している。所々に明かりは灯っているのだが薄暗かった。
ディアナは溜息をつき、ハウベルトと何か話をしている。
「ハウベルト! ここって……」
ハウベルトは頷いた。
クロノアはそんな二人のやり取りをみて気になる。
「ねぇ、この場所って知ってるの?」
そう言われ二人は慌てた。
「あっ! えっと……ん〜、どうするディアナ?」
「ハウベルト……なんで、こんな依頼を受けてくる」
イライラしディアナは、眉をピクピクさせている。
そう言われハウベルトは、目を細めて左手で頭を掻きむしっていた。
「あぁーどうしたら〜。流石にまずいよなぁ……まさか俺だって、こんな依頼だと思わなかった」
そう言ったあとハウベルトは、ハァーっと息を吐く。
「依頼書には、盗賊の討伐としか書いてなかったし。報酬の金も、結構よかったからなぁ」
それを聞いてクロノアは、余りにも会話の意味が分からず首を傾げる。
「えっと、いったいこの依頼の何がまずいのかな?」
ディアナの顔が、ピクっと引きつる。
「あっ! んーそうだな〜……この依頼は、とりあえず放棄しようか」
「うん、そうしよう。他にも依頼はあったようだしな。そっちの依頼にするか」
明らかに二人は、何かをひたすら隠そうとしていた。
そのやりとりをみてクロノアは不快に思い、ムッと二人を睨んだ。
(二人とも何か隠してるのは間違いないんだけど……それに、もう少しで城に着くと言うのに様子もおかしい感じだし)
ディアナは何かを思い出したように、というかワザとらしく……。
「あっ、そうだ! この仕事ではなく、もっといい仕事でも探してこよーかな〜。うんうん、そうしよう、そうしよう!」
「俺もこの仕事、なんか……」
「あのさ〜! さっきから二人とも、何をそんなに動揺してるわけ? それに、この洞窟に来てからおかしいよねっ!! ここってなんなの」
少し大きめの声でクロノアはそう言った。
それをみてディアナとハウベルトは、慌てて口に人差し指をあてる。そして小声で、シーっと言った。だが時すでに遅し……。
その声に気づき奥の方から数人の男女の声が聞こえてきた。
男「誰だー! そこにいるのは!?」
女「まずいわ。ここが、誰かに知られるのは……。どうする?」
その声を聞きディアナとハウベルトは、まずいと思いクロノアを掴んだ。
そして無理矢理クロノアを引きずって、猛スピードでこの場から逃げる。
「いったい……なんなのよおぉぉおおお〜!!」
そうクロノアは叫び何がなんだか分からないまま、二人に引きずられ洞窟を抜けて森の外に出た。
そのせいで顔や身体中にすり傷や汚れ髪がバサバサになり、クロノアは怒りたいような泣きたい気持ちになる。
「なんのよおぉぉー! ふざけるなぁ〜!!」
と怒鳴りクロノアは、この状況に不満を露わにしていた。
(何をこんなに、ひたすら隠す必要があるんだろう? ん〜、あまり考えてても頭が痛くなるだけだしなぁ。
てか、服は泥だらけだし髪の毛はボサボサだし、どうするのよこれ?)
そうクロノアが考えているとディアナは、ハウベルトをみてすかさず耳を掴んだ。
「ハウベルト! アッチで話したいことがある。それとクロノア様、先ほどは申しわけありませんでした」
少し間をおき、再び口を開いた。
「このことは、あとでゆっくりと話したいと思います。ですので……申し訳ありませんが、先に宿に戻っていてください」
そう言いディアナは、ハウベルトの耳を引っ張る。
「イタタタッ……って! そんなに引っ張らなくてもぉ〜いいじゃないかよっ!!」
「元はと云えば、お前が悪い! とりあえずこい!!」
二人の会話の意味がいまいち分からず、クロノアはムッとしている。
「ん〜、納得いかないけど。ちゃんとあとで話してよね!!」
納得はいってないがクロノアは、あとで話を聞けばいいかと思い宿屋に向かい歩き出した。
それを確認するとディアナとハウベルトは、少し先のひと気のない場所で話し始める。
「ハウベルト、どうする? このままでは、あのことがバレてしまう」
ディアナはそう言い俯いた。
「うっ痛い! ……すまん、確かに俺の確認ミスだ。あそこがバレると、色々と不都合なのは確かだ。一旦、宿に戻り俺が夜にでも行く」
それを聞きディアナは頷く。
そして二人は、この場で少し色々と話し合ったあと宿屋に向かった。
一方、先ほどクロノア達三人いた盗賊のアジトらしい洞窟では……。
男「さっきの三人組の内の二人の後ろ姿なんだがなぁ」
女「そうね。あの後ろ姿って、ディアナとハウベルトに似てたけど。二人共、確か大事な任務中のはずよ」
男2「そういえば、ハウベルトがそんなこと言っていたな。でもまさか、そんな時に、こないだろう……覇王様を連れてまで」
男「確かにそうだな。ん〜でもあの二人、意外とドジなところがあるからなぁ。まぁ……まだ覇王様が味方かどうかも分からないのに、それはないか」
そう言い四人は、更に会話を続けていた。
★☆★☆★☆
そして夜になりハウベルトは、みんなが寝静まったあと誰にも気づかれないようにクロック村をでる。そして、昼間の洞窟へと向かった。
それに気づくもクロノアは、寝たフリをしている。
そう何か訳があるのだろうと思い、いやそれだけではない。ただ単に眠いし面倒なので、あとでいいやと寝ることにした。
ここはシェルズワールドにあるグレイルーズ国。多種な獣人や獣人ハーフ達が住んでいる。
周辺は自然が多く豊かだ。それにも拘らず街や村などには近代的な建物が多い。
そして歌やダンスなどで賑わっていて明るい国である。
ノエルとシャナは目的地まで、あと少しで着く予定だ。
そしてここは、ルンバダの街である。
だが、なぜかコンテストに参加することになってしまったのだ。
噴水広場の前でノエルとシャナは、そのことについて話をしていた。
「ノエル様、本当に申し訳ありません。まさか、こんなことになるなんて」
「仕方にゃいよ。あそこまで頼まれたら私だって断りきれにゃいしぃ」
そう言うとノエルは、その時のことを思い出している。
――……数日前……――
ノエルとシャナがルンバダの街に着くと祭りの準備を盛大にしていた。
それをみながら宿屋を探しているとノエルは街の雰囲気のことが気になる。
『シャナにゃん。この街でお祭りかにゃにかやるの?』
ノエルが辺りを見渡しながら言うとシャナは、ニコニコしながら頷いた。
『もうそんな時期なのですね。数日後に丁度この国が出来て百周年となるのです』
そう言いシャナはその場で、クルッと一回転する。
『あ〜、楽しみだなぁ〜。色々とやるんですよ〜。歌やダンスとか本当に色々と〜――……』
ニコニコしてシャナは軽やかに踊りながら言った。
『色々か〜……気ににゃる。屋台とかもでるのかにゃ?』
そう言いノエルは、ワクワクしている。
それをみたシャナは嬉しそうに頷いた。
『勿論です! 色々な食べ物などの屋台が出るのですよ!! そして夜には花火が上がって恒例の行事が開催される』
そう言いシャナは満面の笑みを浮かべる。
色々と二人で話をして歩いていると舞台付近で、ウロウロしながら困った表情で考えこんでいる男が一人いた。
男は溜息をつきながら何かを呟いている。
それをみて二人は気になり近づき、その男に聞いた。
するとその男はここの支配人だと名乗る。そして今回、開催される祭りを町長から任せられたと言った。
『あーこのままでは……祭りの夜に開催予定の目玉であるコンテストの出場者があまりにも少なすぎる……』
『それって……にゃんのコンテストにゃ?』
『もしかして毎年恒例のコンテストですか?』
そう問いかけられ支配人は頷きノエルとシャナをみる。
『ええ、そうなんですけどね。毎年、予選するぐらい沢山の人数が集まります』
そう言いながら支配人は、ウロウロと行ったり来たりしていた。
『ですが今年はこの時期になっても、まだ六人しか集まっていません。最低でも八人はいないと、コンテストとしてなりたたないのです』
『あの〜、それは分かったんだけどにゃ。だからにゃんのコンテストにゃのかにゃ〜って、さっきから聞いてるんだけどにゃ?』
そう言いながらノエルは首を傾げた。
『あっ、そうでした。ノエル様は、この祭りのことを知らないのですよね』
そう言うとシャナは説明を始める。
このコンテストは毎年恒例の行事の一つで夜、花火が上がり開催だ。
内容は……1・ファッション センス 2・歌唱力(自作) 3・ダンス (自作) 4・格闘センスなどを競う。
『……私は毎年たのしみにしています』
『にゃるほど……それは確かに楽しそうにゃ。でも人数が足りにゃいんじゃ、どうにゃるのかにゃ?』
『はぁ〜、それで悩んでるんじゃないですか〜。このままでは中止になってしまう。でも中止にすると楽しみにしてくれてる人たちにも申しわけない』
支配人はそう言いながら、チラッとノエルとシャナをみる。
『あと二人いればなんとかなるのですが〜。それが中々でて頂ける人がいないのですよ〜』
支配人は二人を、マジマジとみた。
『あの〜、お二方ともに強いのでは? それに、センスもあり可愛らしく……お声も素敵ですし』
そう言い一呼吸おくと再び口を開く。
『あとはダンスができれば、このコンテストに参加する事が出来るのですが。もし急ぎの旅ではないのでしたら参加して頂けないでしょうか?』
二人は最初は無理なので断わろうと思っていた。だが、その後に支配人の発した言葉に心を動かされる。
『どちらも可愛いし強そうです。絶対このコンテストでの優勝は、どちらかになると思うのですが……ダメでしょうか?』
支配人は近くに置いてある装備品を手にする。
『今回の優勝賞金は十万ジエムと、このフリフリのピンクの花柄ワンピースの戦闘服。それと、この花の飾りが付いたピンクのカチューシャなのですが』
それを聞きノエルとシャナは悩んだ。
『……それでも出てもらえませんか?』
『そうですね、やはり私は無理かと……』
『ちょ、ちょっと待ってにゃあぁぁ~! そのカチューシャと服……凄く可愛いにゃあぁぁ~!!』
そう言いノエルは目を輝かせる。
『そうでしょう、そうでしょう。今年は国が出来て丁度百年になるお祭りです。そのため町長が、かなり奮発してくれましてね』
支配人が最後まで言おうとした。
だがシャナは、その言葉を遮る。
『でも、ノエル様が出られるのは構いません。ですが、流石に私では無理かと……』
『あぁ、どうしたら……。ノエルさんは出て頂けるとして、あと一人なんですよねぇ。誰か出て頂ける人がいれば助かるのですが』
支配人は少し考えたあと何かを思い出したように口を開き話し始める。
『あっ!! そうそう……今回に限りなのですが。町長から本選参加者全員に優勝商品とは別に豪華な商品を用意すると言っていたのを思い出しました』
『それは参加するだけで貰えるのですか?』
『はい。町長は百周年という事もあり、かなり張りきってますので』
『でもにゃ? 出るのはいいんだけど〜』
すると何処からともなく殺気が放たれ舞台付近に一通の封筒が刺さった。
そして女の声が聞こえてくる。
『私は、ある人の命により伝言を持ってきた。そこに書かれている文章をしっかりと読めいいな!』
そう言うと謎の女は、スッと姿を消す。
その声を聞きシャナは遠くをみつめ首を傾げた。