【悲報】TS英雄の苦悩〜なんでこうなった⁉︎オレは早く元の姿に戻りたいんだ‼︎『いえ、師匠はそのままの方が可愛いですよ♡』〜《TS美少女爆誕編》

 ここはカールディグスとハルリアの屋敷。辺りは既に暗くなっていた。
 この屋敷の客間には、ハルリアとルミカとカールディグスとメイミルとパルキアがいる。
 あれからハルリアは、パルキアの話が終えると必要な書類や教材を渡された。そのあと教室を出て、セリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナと中庭で話をする。
 それから話を終えるとハルリア達は、途中まで一緒に帰った。

 そして現在ハルリアは、ムスッとした顔でパルキアをみている。

 「おい、これはどういう事だ?」
 「あーえっと……隊長、もしかして怒ってる?」
 「パルキア……ああ、勿論だ。任務の方は、どうなってるんだ」

 そう言いハルリアは、パルキアを見据えた。

 「はい、そのことなんですが……隊長のことを探っている者をみかけました」
 「オレのことをか……だが、この国でオレを探している者は珍しくないはずだ」
 「それが、少しおかしいんです。隊長の生死について聞きまわっていたので、変だと思いあとをつけたのですが……途中の路地で忽然と消えた」

 それを聞きハルリアは、どういう事だと思い考える。

 「確かに変だな……それは、どこでみかけた?」
 「マールエメスとの国境付近にあるデルベスジアの町です」
 「そういえば、カザビアの町もマールエメスとの国境沿いにあったな」

 そう言いハルリアは、真剣な表情で一点をみつめた。

 「ええ、それにマールエメスは侵略国家です」
 「ルミカ、そうなると……嫌な予感しかしねぇ」
 「ですね。これは、あくまで推測ですが。ガザビアであったあの女は、最初から隊長を殺すのが目的だったとしたら」

 カールディグスはそう言いハルリアをみる。

 「それは十分あり得るな。だが、オレに渡した魔道具は……」
 「師匠を少女にしてしまった……でも、なんでそうなったのかな?」

 そう言いメイミルは、不思議に思い首を傾げた。

 「さあな……そこまでは分からん」
 「そうですね。そうなると……まだ隊長が、少女になっているって気づいていない」
 「カール、そうだろうな。だが、生死を確認しているってことは……」

 それを聞き四人は頷く。

 「恐らく、隊長が行方不明と云う噂のせいだと思う」
 「ああ……パルキア、そうなると……その間はマールエメスが攻めてこない」
 「師匠、でもそれだと……何れバレちゃうんじゃないかな」

 そう言われハルリアは、ジーっとメイミルをみる。

 「明日、雨にならないよな?」
 「そうですね。メイミルが、真面なことをいいましたので……天気悪くなるかも」
 「ちょ……師匠に、カール様っ! アタシだって、真面なことぐらい言うんだからね」

 そう言うとメイミルは、プクッと頬を膨らませた。

 「そうだな……でも、確かにメイミルの言う通りだ。油断はできない……」
 「隊長、そうですね。一応このことを、学園長に伝えておいた方がいいかと」

 カールディグスに言われハルリアは、コクッと頷く。

 「それがいいだろう。それはそうと……パルキア、話は逸れたが……理由を聞かねぇとな」

 そう言いハルリアは、ジト目でパルキアをみる。
 そしてその後パルキアは、ハルリア達に散々問い詰められたのだった。
 ここはハルリアとカールディグスの屋敷。そして寝室だ。
 ここにはハルリアが居て、ベッドに横になっている。

 あれからハルリアは、パルキアに学園の教師になっている訳を聞いた。その後、話を終えると各々教師寮へ帰る。勿論、ハルリアとカールディグス以外の者だけだ。

 そして現在ハルリアは、ベッドに横になり考えごとをしていた。

 (パルキアは、ハルリアであるオレを探すためにこの町に来ていた。元々学園長は、パルキアの顔を知っている。そのため町でみかけ学園長が声をかけたって訳か。
 なるほどな……そんで学園に誘った。まぁ……大丈夫か、他の部下にも探らせている。アイツは真面目だから問題ないだろう)

 そう思い瞼を閉じる。
 因みにその部下は、ハルリアになったあの場に居なかった。だがハルリアは、一番に信頼しているその部下にこのことを打ち明けたのである。

 (そうだ……連絡してなかったな。あとでしておくか……)

 その後ハルリアは、色々考えているうちに眠ってしまった。


 ――場所は、客間へ移る――

 ここにはカールディグスがソファに寝そべっていた。
 そうハルリアの中身が男でも体は女だから、流石にまずいので別の部屋で寝ているのである。

 カールディグスは、寝心地が悪いらしく眠れないようだ。

 (……確かに一緒に暮らせたらと思った時もあった。だけど……こんな形じゃない。多分、あの面接の時……学園長は気づいたかもしれない。
 でも現段階、隊長が気づいている様子はないから大丈夫だと思う。できるだけ近くに……気づかれれば意味がないからな)

 そう考えながら天井をみる。

 (だけど……男が女になるって、意味が分からない。まぁまだ若返るまでは許せる。それが少女って……許せる範囲を越えてる上に、可愛いって……信じられないよ。
 ハァー、早く元の姿に戻ってもらわないと……色々とやりにくくてなぁ。これじゃ、英雄ハルリオンの背中をみるんじゃなく……変態ハルリアをみているようだ)

 ――……それは流石に言い過ぎのような。

 そうこう思っているうちにカールディグスは、いつの間にか眠った。

 ★☆★☆★☆

 ここはカンロギの町。この町はマールエメスの国境付近にあり、デルベスジアの町とガザビアの町の間にある大きな町である。
 ここには大きな娯楽施設があり、そのためかこの町の人口よりも行商人や冒険者などの旅人が多いのだ。

 そしてこの町の酒場には、いかにも真面目そうなイケメンが酒を飲みながら何かボヤいている。

 「……ハァー、なぜこんな任務をしなきゃならないのか。確かに私は、地理に詳しい……だからといって宛てがなさすぎますよぉ~」

 そう言い持っていたグラスをテーブルに置いた。

 この男性はティオル・シフォン、三十歳。元兵団第一部隊の軍師ともいえる知恵者である。
 水色の髪は光にあたると、銀色が混じっているせいか綺麗だ。眼鏡の下からは、優しい目がみえる。
 このティオルは現在、ハルリア(ハルリオン)の指示で元に戻る方法とルセレナを探していた。

 (そもそも……ルセレナが本名とは限らない。それにそもそも、隊長をハメようとしているヤツが本当の名前を名乗らないよなぁ)

 そう考えていたがティオルは、酔いがまわってきたため立ち上がり金を払い酒場を出る。

 「さてと、宿に戻りますか」

 そう言いティオルは、空を見上げたあと宿屋へ向かい歩き出した。
 ――……翌日。ここは王立騎士養成学園。
 今日から早速、授業が始まっていた。

 そして、ここは学園にある馬小屋だ。
 ここにはハルリアとカールディグスがいる。

 「ハルリア……嬢、まさか乗馬ができないとは……」

 そう言いカールディグスは、痛くなり頭を抱えた。

 「ハハハ……乗れないんじゃなくて、機会がなかっただけですわ」
 「本当ですか? 確かに兵団だと、それほど必要ありませんが」
 「そうそう……だけど、本当に練習するの?」

 ハルリアは馬をみて顔を強張らせている。……なんか嫌な顔をしているようにもみえないでもない。

 「あたりまえです! 隊長だけが乗れないって、学園長に言われたんですからね」
 「なるほど……じゃあ、聞いてるよな?」
 「ええ、落馬してから乗れなくなったって言ってましたよ」

 そう言われハルリアは、ハァーっと溜息をついた。

 「ハハ……それ以来、乗れなくなった」
 「違いますよね……学園長の話では、元々乗ったこともない。それなのに、馬に乗って落馬した。そう言っていましたけど」
 「そ、それは……」

 ハルリアは誤魔化しきれず言葉に詰まる。

 「ハァー……仕方ありません。学園長は、なんで僕が適任だと思ったか分かりませんけれども……やりますか」

 そう言いカールディグスは、馬小屋をみた。
 ハルリアも馬小屋へ視線を向ける。

 「……なんか大きくないか?」
 「そう思うのは、ハルリア嬢の背が低くなったからでしょうね」
 「あーそう言う事か。そうなると……前よりも、跨るの大変だな」

 そう言いながらハルリアは、脱力感の目で馬をみた。

 「でしょうね。だからといって、乗馬の授業は中止しませんよ!」

 そう言われハルリアは、ガッカリする。

 「じゃあ、馬を選びましょうか」
 「馬か……どれも同じにみえる」
 「そうみえますか? それは違いますよ。人間のように馬にも性格がありますので」

 それを聞きハルリアは、なるほどと納得した。
 その後ハルリアは、カールディグスと馬を選び始める。

 「……どうせなら、馬じゃなくて女に跨りたいんだが」
 「ハルリア嬢、その体でその発言は……変態と思われますよ。いえ、その前に……思ってても口に出さないでください!」
 「ハハハ……そうだな。んー……この白いヤツにするか」

 そう言いハルリアは、大人しそうな芦毛を指差した。
 だがその直後、青毛の馬がハルリアの頭を軽く噛んだ。

 「ウワアァァアアア―……」

 そう叫ぶと青毛の馬は、驚きハルリアの頭を噛むのをやめる。

 「ヒヒィーンー……」

 そう嘶き暴れ出そうとした。
 それをみたカールディグスは、どうしたらいいかと迷っている。
 だがハルリアは、至って冷静だった。……いや、目が据わっている。
 ハルリアの体は、条件反射かのように素早く動き青毛馬の首に抱きついていた。と同時に、青毛馬の首にぶら下がるように手と足で締めている。

 「グゲッ!?」

 青毛の馬はハルリアに首を絞められているため、余りにも苦しくて意識を失いそうになっていた。そのためか、暴れる気力もなくなっている。

 「ハルリア嬢っ! それ以上やったら馬が死んでしまいます!!」

 慌ててカールディグスは、ハルリアを青毛の馬から引き剥がした。
 ハルリアは青毛の馬から引き剥がされ不満そうだ。
 因みに青毛の馬は、フラフラだがなんとか立っている。
 そしてその後ハルリアは、カールディグスに怒られたのだった。
 あれからハルリアは、カールディグスに散々言われる。
 その後ハルリアは、渋々馬を選んだ。

 そして現在ハルリアは、馬を引き連れ乗馬コースに来ていた。
 勿論、カールディグスも一緒である。

 「まさか、ハルリア嬢の頭を噛んだ馬を選ぶとは……」
 「選んでたら、ジーっとみてたからな。それに……」

 そう言おうとしたその時……――カパッ!!――……青毛の馬がハルリアの頭を軽く噛んだ。

 「は、ハルリア嬢……相当なめられてますね。アレだけ、殺されかけたのに……」
 「ああ……そうだな。まあ……いい、これ以上のことをしてくるようなら……〆てやるだけだ」

 ハルリアはそう言うと青毛馬の口を押え自分の頭から、スポンっと押し剥がした。その後、青毛の馬を睨みつける。
 それを知ってか知らずか青毛の馬は、媚びるようにハルリアの頬をなめた。そう、ただ単にハルリアに構って欲しいだけなのである。

 「クスッ、この馬はハルリア嬢が好きなんですね」
 「そうなのか? なるほど……これは、愛情表現て訳か」

 青毛の馬は、またハルリアの頭を軽く噛んでいた。そのためハルリアの頭はヨダレだらけである。

 「そ、そうだと……思いますよ。でも、馬にまで好かれるって凄いですねぇ」

 そう言いカールディグスは、ジト目でハルリアをみた。

 「……流石に馬じゃなくて人間の女がいい。っていうか、コイツは牝馬と牡馬……どっちだ?」
 「牡馬ですね。それと名前が、ハルリオフだそうです」
 「ハルリオフ……なんか悪意しか感じないんだが」

 そうハルリアが言うとカールディグスは、ハハハッと笑う。

 「では、そろそろやりますか……時間もなくなりますしね」
 「そうだな。余り気が進まんが」

 そう言いハルリアは、ハルリオフの口を自分の頭から押し剥がした。

 「これは、終わったら即シャワーだな」
 「そうですね……クスクス……」
 「ハァー、やるか」

 そうハルリアが言うとカールディグスは、コクリと頷く。
 その後ハルリアは、カールディグスに手伝ってもらいハルリオフに跨る。

 「()()()()()()()? かなり高いんだが……」
 「僕を信じてください」
 「いや……お前だから信じられん」

 そう言われカールディグスは、ムッとした。

 「そうですか……そうですね。それなら、自分で勝手にやってください。僕はみていますので」
 「カール、本気か?」
 「ええ、それが冗談だとしても……言っていいことではありませんよね?」

 カールディグスにそう言われハルリアは反省する。

 「すまん……悪かった」
 「本当に反省してますか?」

 そう問われハルリアは、ウンウンと頷いた。

 「まあ、いいですけど。じゃあ教えますので、ゆっくりやりますよ」

 そう言いカールディグスは、ハルリアに手綱の持ち方や色々と初歩的なことを教える。

 (これが英雄と云われたハルリオン……前々から思ってたけど、ただの我が(まま)で変態なオッサンにしかみえない。でも……強さは、野性的な何かを感じるけどな。
 ……僕は、どうなのか。いつの間にか、隊長の一番近くにいる。ただハルリオンの後ろ姿さえ……みることができればよかった。それだけなのに……)

 そう思いカールディグスは、指導をしながらハルリアをみていたのだった。
 ここは一年F組の教室。
 ハルリア以外の生徒は、パルキアから戦術について学んでいた。
 黒板のような板にパルキアは、本に記載されている通り書いていく。
 それをみて生徒は紙に写している。
 その後、授業終了の鐘が鳴った。
 授業が終わりパルキアは、挨拶をしたあと教室をでる。
 それを確認すると生徒たちは、各々仲の良い友人と話し始めた。

 そんな中マルルゼノファは、ポツンと一人だけ机に寄りかかり考えごとをしている。
 因みにセリアーナとシャルルカーナは、女性同士で話をしていた。

 (ハルリアさんだけが、別メニューの授業。それも乗馬って……乗れなかったのか? まあ、ハルリアさんなら簡単にクリアしてくるだろう。
 だけどパルキア先生の話だと……あのカールディグス、先生が教えているって言っていた。なんでアイツなんだ?
 ……知り合いってことでなのかもしれないが、納得いかない!)

 そう思いマルルゼノファは、ムッとしている。


 ――場所は移り、乗馬コース――

 あれからハルリアは、カールディグスから乗り方を教えてもらっていた。
 ハルリアは乗り方を教わったあと一人で騎乗してみる。だが、なぜか落馬してしまった。
 それをみてカールディグスは呆れている。

 「ハルリア嬢、どうやったらそんなに綺麗な落ち方ができるんですか!?」

 そう言いながらカールディグスは、ハルリアに駆け寄った。

 「ハハハ……なんでだろうな」

 ハルリアはそう言うと、土埃を落としながら立ち上がる。

 「ハァー……じゃあ僕が一緒に乗りますので、ちゃんと覚えてください」
 「悪い……助かる」

 そう言いハルリアは苦笑した。
 その後、先にカールディグスが乗る。……だが、なぜかハルリオフは不満そうにしていた。
 そのあとからハルリアは、カールディグスの手を借り跨る。……ハルリオフの機嫌は、少し良くなったようだ。

 「じゃあ、動かしますよ」

 そう言いカールディグスは、手綱を操作しハルリオフに指示をだした。
 するとハルリオフは、ゆっくりと動きだす。

 「おお、カール……大人しく歩いている」
 「ええ、じゃあ徐々にスピードを上げますよ」

 それを聞きハルリアは、コクッと頷いた。
 それを確認するとカールディグスは、速さを上げる。

 (……これが彼女ならいいんだけどなぁ。……って、一緒にいるせいか思考が似てきてる。気をつけよう……)

 そう思いカールディグスは苦笑いをした。

 (んー……カールは、どこで習ったんだ? そういえばカールもだが、ルミカやメイミルにパルキアの素性を詳しく知らないんだった。
 まぁここの所、色々な任務が重なったから仕方ないか)……いや、そういう問題じゃないと思いますが。

 そうハルリアが考えているうちに乗馬コースを一周する。
 そしてその後もハルリアは、カールディグスに手取り足取り教わっていた。
 ここは王立騎士養成学園の一年F組の教室。
 あれからマルルゼノファは、次の授業まで時間があったため窓際に来ていた。
 そしてマルルゼノファは外を眺めている。

 (丁度ここから乗馬コースがみえる。ハルリアさんは、どうしているだろうか?)

 そう思いマルルゼノファはハルリアを探した。その後、みつけたと同時に怒りの表情へと変わる。

 (どういう事だ!? なぜカールディグス先生(あの男)がハルリアさんと馬に乗っている!)

 マルルゼノファは嫉妬していた。そう、自分もハルリアと一緒に馬に乗りたいと思っていたのである。

 (俺も、早くハルリアさんと同じ授業を受けたい……)

 そうマルルゼノファは考えていた。
 するとセリアーナとシャルルカーナは、マルルゼノファの所に近づいてきた。

 「どうしたの?」
 「あ、セリアーナさん。どうもしません、ただここからハルリアさんがみえるなぁと」
 「マルルは、本当にハルリアのことが好きよね?」

 そうシャルルカーナに言われマルルゼノファの顔は、茹蛸のように真っ赤になる。

 「そ、それは……確かにそうだ。だがハルリアさんには、既に婚約者がいる……」
 「そうね……それも、あのハルリオン様(英雄)のお墨付きだし」

 そうセリアーナに言われマルルゼノファは、ハァーっと溜息をつき肩を落とした。

 「だけど、まだ結婚はしていないのですよね。それなら、まだ間に合うかもしれませんわ」
 「シャルル……まさか、婚約破棄させようなんて考えてないよな?」

 そうマルルゼノファに聞かれシャルルカーナは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「ええ、そのまさかですわ。私は、そんな顔をするマルルをみたことがありません。ですので、全力で応援したいの」
 「そうね……それに略奪愛なんて、ロマンがあって素敵だと思う」
 「……だがな。ハルリアさんの気持ちは、どうなる?」

 そう言いマルルゼノファは、難しい顔で二人をみた。

 「それもそうだわ。それなら、ハルリアに聞いてみようかしら」
 「シャルル、それいいわね」
 「待て……もしかして、俺が聞くのか?」

 そう聞かれシャルルカーナは、首を横に振る。

 「こういう事は、女同士がいいのですわ」

 そうシャルルに言われマルルゼノファは、ホッと胸をなで下ろした。

 「そうだな……いつまでも思っているだけでは前に進めない。それに駄目だったとしても……ハルリアさんから距離を置くつもりはないしな」
 「そうなのね。でも、ハルリアはすぐに結婚しないと思うし。今は駄目だとしても、ハルリアの気持ちが変わるかもしれない」
 「セリアーナ……ありがとう。そうだな……」

 そう言うとマルルゼノファは、ハルリアの方へ視線を向ける。

 「それでは、私とセリアーナでお昼になったら確認してみますわね」

 そうシャルルカーナが言うと、マルルゼノファとセリアーナは頷いた。

 「なんか申し訳ない。もっと俺に勇気があれば、と思うよ」

 そう言いマルルゼノファは頭を下げる。
 そしてその後も三人は、鐘が鳴るまで話をしていたのだった。
 ここは学園の中庭。
 現在、昼休みだ。
 辺りには、チラホラ生徒が居て友人と話をしている。
 そして中庭に設置されている長椅子には、ハルリアとセリアーナとシャルルカーナが座り話をしていた。

 「そういえば、マルルが居ないわ……どうしたのかしら?」
 「ハルリア、マルルは教室でやることがあるからって言ってたわ」

 そう言いシャルルカーナは、ニコリと笑みを浮かべる。

 「そうなのね。ですが、やりたいことってなんでしょうか」
 「さあ、何かな。ハルリア、マルルのこと気になるの?」
 「気になると云うか……マルルは、いつもしつこいくらいに一緒にいるから」

 それを聞き二人は、なるほどと納得する。

 「そうか。そういえばハルリアって……マルルのこと、どう思ってるの?」
 「セリアーナ……どうって、根性はあるなぁと思いますけれど」
 「あーえっと……そういうのではなくて、好きか嫌いかですわ」

 そうシャルルカーナは言うと、ハルリアを見据えた。

 「そういう事でしたら、好きの方ね」
 「好き……それは男として、それとも友人だから?」

 シャルルカーナにそう聞かれハルリアは、何が言いたいのか理解する。

 「勿論、友人だからですわ。ですが、なぜ男性として好きと聞くのですか?」
 「ただハルリアが、マルルのことをどう思ってるのか気になっただけですわ」
 「もしかして、マルルはワタシのことを女性としてみているの?」

 そうハルリアに問われ二人は、コクッと頷いた。

 (……まさか、マルルがなぁ。ハァー、流石にこれは断るしかないだろう)

 そう考えるとハルリアは話し始める。

 「そう思ってくれるのは嬉しい。だけど、ワタシには婚約者がいます」
 「知っているわ。ですが婚約者と比べて、どうですの?」
 「シャルル……そうね、ワタシはカールが好きだから婚約をしているの」

 そう言いハルリアは、心にもない嘘をついた。

 「それは本心なの?」
 「勿論ですわ。好きでなければ、ワタシはカールと婚約していません」
 「そうなのね。じゃあ、もしカールディグス先生を抜きに考えたとしたら?」

 そうセリアーナに言われハルリアは、首を横に振る。

 「それでもマルルを、男性としてみることはできないと思います」
 「なぜですの?」
 「シャルル……ワタシはマルルと会って、そんなに会話もしていないわ」

 そう言いハルリアは、セリアーナとシャルルカーナを順にみた。

 「それならば、これから話せばいいんじゃないのかな?」

 そうセリアーナに言われハルリアは、ハァーっと溜息をつく。

 「ワタシはカール一筋なのです。ですので、他の男性を好きになることはありません」
 「ハルリア、それは本心なのですか?」
 「ええ、シャルル……ワタシはカールが好き。カールも、ワタシを好きって言ってくれた……だから婚約をしたのです」

 そう言いハルリアは、ニコリと笑みを浮かべる。……名演技だ。

 「そうかぁ……そんなにも、愛してるのですね」

 そうシャルルに言われハルリアは、コクリと頷いた。

 「ええ、そうね。ですが、マルルのことは……友人としてなら好きですわよ」

 それを聞きセリアーナとシャルルカーナは、頷き笑みを浮かべる。
 そしてその後三人は、別の話題に切り替え時間までここにいたのだった。
 ここは王立騎士養成学園の門。下校時間になり、帰る者が門を潜っている。
 その中には、ハルリアとセリアーナとシャルルカーナとマルルゼノファがいた。

 現在ハルリアは、セリアーナ達と話しながら歩いている。

 「ハルリア、今日は一日中……乗馬だったですわね」
 「ええ、シャルル。中々一人で乗れなくて……」
 「じゃあ、もしかして……明日もなの?」

 そうセリアーナに聞かれハルリアは、コクリと頷いた。
 そうこう話をしているのをマルルゼノファは聞いておらず、ボーッと考えごとをしている。

 (シャルルとセリアーナの話では、男としてみれないが友人としてなら好きだ……と。そうだよな……ハルリアさんとは会ったばかり。
 それに……会話もそれほどしていない。遊び……それも、まだだ)

 そう思いマルルゼノファは、ハルリアをみた。

 (今は、ハルリアさんのそばに居られるだけでもいい。そうだな……今の、この関係が壊れるのは嫌だ。ってことは、友人としてでもいいか)

 マルルゼノファはそう考えがまとまると、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「マルル、急に笑って何を考えていたの?」
 「あーハルリアさん、これは……そうそう……今日パルキア先生が言ったことを思い出して。ハハハ……」
 「そーいえば、今日のパルキア先生の話も面白かったですわよね」

 そうシャルルが言うとマルルゼノファとセリアーナは頷いた。

 「どんな話だったのかしら?」
 「ハルリアさん、それが……ハルリオン様の意外な素顔をですね……」

 マルルゼノファはそう言い今日あったことを説明する。
 それを聞きハルリアは、苦笑していた。そして、心の中で怒っている。

 (パルキア、あとで覚えてろよ。どんだけオレのありもしない英雄談をすれば気が済むんだ。
 それだけならまだいい、確かにそれは本当だが……女に騙されたことを話すなよな。まぁ騙されたことだけだからいい……いや、やっぱりよくねぇ〜)

 そう考えながらハルリアは、マルルゼノファが話すことに対し作り笑いをしていた。
 そしてその後も四人は、他愛もない話をしながら歩いている。


 ――場所は移り、カンロギの町――

 ここは噴水広場。その近くに設置されている長椅子には、ティオルが座っていた。そして、考えごとをしている。

 (……今朝、ハルリオン様から魔法で転送されて来た手紙には……王立騎士養成学園に生徒として入ったと書かれていた。
 それだけじゃなくて、副隊長にルミカとメイミル……パルキアまでも教師としてだと。
 私は、一人で隠密に動いていると云うのに……楽しそうじゃないか! ああ……私も、こんなあてもない仕事よりも……)

 そう思い立ち上がりティオルは、渋々歩き出した。

 (ハァー……でも、誰かがこれをやらないとならない。それにハルリオン様は、私を信じて全てを打ち明けてくれた。そして……これは、私にしかできないとも)

 そう言い聞かせティオルは、噴水広場から商店街へと向かう。
 そしてティオルは、商店街をみて歩いていたのだった。
 ここはカンロギの町にある商店街。
 あれからティオルは、この周辺を歩きながら聞き耳を立てていた。
 そう噂により何か情報が聞けるかもしれないからである。

 (やっぱり噂からは無理か……だが聞きまわって、悟られても厄介だ。そういえば……手紙にハルリオン様のことを調べている者がいると書いてありました。
 その者は生死を確認しているようだったと。この情報は、パルキアからとも……まあ間違いないでしょう。
 それと隣の国であるマールエメスの刺客が、ハルリオン様を亡き者にしようとしたかもしれないと。あそこは侵略国家……そうなると可能性大。
 その刺客が、この町に来てればいいのですが。そうだなぁ……罠を張ってみるか)

 そう思いティオルは、わざとハルリオンを探すフリをして聞いて歩いた。
 そしてしばらく聞いて歩いていると……。

 「すみません。この辺で銀髪に赤いメッシュが入っていて、髪を後ろで束ねている男性をみたことはありませんでしょうか?」

 ティオルは建物の壁に寄りかかっている男性に問いかける。

 「……知らないですね。だが、それだけじゃ……誰のことか分かりませんよ」

 そう言いその男は、ティオルを疑いの目でみた。そうこの男は、タールベである。
 タールベもまたハルリオンの情報を探っていたのだ。……という事は、犬も歩けば棒に当たるである。
 そう問われティオルは、心の中でかかったと思った。

 「確かに、これは迂闊でした。そうですね……私が探しているのは、ハルリオン様です。名前ぐらい知っていますよね?」
 「ほう……あの英雄か。だが、なんで探している?」
 「もしかして、貴方は……ハルリオン様が行方不明なことを知らないのですか?」

 そう聞かれタールベは首を横に振る。

 「知ってはいるが、なんで探しているのか……気になっただけだ」
 「なるほど……そうですね。依頼ですよ……ギルドでみつけました」
 「……依頼か。じゃあ、本人には会ったことがないんだな?」

 そう言われティオルは、コクッと頷いた。

 「そうですが……なぜ貴方は、そう問うのでしょうか?」
 「い、いや……俺も会ったことがないから……どんな人なのかと思っただけ」
 「ああ……そういう事ですか。確かにどんな人なのか……会ってみたいですよね」

 そう言いティオルは、ニコリと笑みを浮かべる。

 「そうですな。じゃあ、用があるので……」
 「待ってください。急ぎの用でしょうか? そうでなければ、別の所で……もう少し話などどうでしょう」
 「話すことはないと思いますが?」

 そう問われティオルは首を横に振る。

 「話すことはありますよ。それに貴方は、この国の方じゃないですよね?」

 そう言われタールベは、身構え警戒した。

 「なぜ分かった?」
 「なんとなくですが……強いて言えば、雰囲気ですかね」
 「そうか……それで、話とは?」

 そう言いタールベは、半目でティオルをみる。

 「いえねぇ。他の国では、どんなことをしているのかと思いまして」
 「それだけか?」
 「ええ……それとも、聞かれてはまずいことでもあるのでしょうか?」

 そう聞かれタールベは、ティオルが何を考えているのか分からず悩んだ。

 「……まあ問題ないか。じゃあ、ひと気のない所でなどでは?」
 「そうですね……その方が、話せることもあるでしょう」

 そう言いティオルは、微かに笑みを浮かべる。
 そしてその後二人は、別の場所へ移動した。