……――一週間後、合否の発表日。
ここは王立騎士養成学園。そして校舎の前に置かれている掲示板付近だ。
掲示板は生徒用と教師用が置かれている。
その掲示板の前には、沢山の人が集まっていた。
そこから少し離れた所には、ハルリアとルミカとカールディグスとメイミルがいる。
「結構、人が居ますね」
「ルミカ、殆ど生徒みたいですね。多いと思っていましたが、これほどだとは……」
「そうだね、し……ハルリア。それはそうと、早く結果みに行こうよ」
そうメイミルが言うと三人は頷いた。
メイミルは掲示板の方に向かい駆けていく。
それをルミカが追いかける。
「ハルリア嬢、僕たちも行きましょう」
「ええ、そうですね」
ハルリアとカールディグスは歩き出した。
「ハルリアさん!」
そう言いマルルゼノファは、ハルリアのそばまでくる。それと同時に、カールディグスを睨んだ。
それを察知しカールディグスは、マルルゼノファの方を向き睨み返す。
そのことに気づくもハルリアは、何もなかったようにマルルゼノファの方をみた。
「ごきげんよう、マルルゼノファ。今こられたのですか?」
「はい、恥ずかしながら気持ちが落ち着かなくて……」
「そうなのですね」
そう言いハルリアは、ニコリと笑みを浮かべる。
隣に居るカールディグスは、半目でマルルゼノファをみていた。
「それはそうと、ハルリアさんの隣にいる男性はどなたでしょうか?」
そうマルルゼノファは言い、ジト目でカールディグスをみる。
「あっ、こちらは……」
そう言いかけるとカールディグスが庇うようにハルリアの前に立った。
「これは失礼いたしました。僕はカールディグス・ルビアと申します」
カールディグスはそう言うと軽く頭を下げる。
「これは、ご丁寧な挨拶を……。僕は、マルルゼノファ・ヴィクトノスと申す。それで、ハルリアさんとはどういった関係ですか?」
それを聞きカールディグスは、何かを悟り心の中で笑っていた。
「ハルリア嬢との関係ですか……みての通り、婚約者ですが」
マルルゼノファはそれを聞き顔を引きつらせる。
「こ、婚約者……それは……正式なものなのか?」
「勿論です。正式にハルリオン様の許可も頂いてますので」
「カール、様……えっと……」
余りにもあり得ないことを言われハルリアは、どう答えていいか分からなくなった。
「ハルリア嬢。ここは、僕が話をつけますので発言しなくても大丈夫ですよ」
「……なるほどな。だがハルリアさんは、困っているようだが」
「それは、恥ずかしがっているだけですよ」
そう言うもカールディグスは、今にも吹き出しそうだ。
「そうだとしても、なぜその婚約者の貴方がここにいる?」
「あーそのことですか。僕は、この学園の教師の試験を受けましたので」
「そういう事か、それで……一緒に結果をみに来たと」
そうマルルゼノファに言われカールディグスは頷いた。
二人の話を聞きハルリアは呆れている。
そしてその後もカールディグスとマルルゼノファは、しばらく言い合いを続けていたのだった。
カールディグスとマルルゼノファは、まだ言い争いをしていた。
それを呆れ顔でハルリアはみている。
(みてて馬鹿らしくなってきた。そもそもなんで、カールがムキになってるんだ? 意味が分からねぇ……)
そう思い掲示板の方を向いた。と同時に、ムッとする。
そうルミカとメイミルが、ハルリアの方をみて笑っていたからだ。
(あの二人……笑ってやがる。ありゃ止める気ねぇな)
そう思いハルリアは溜息をついた。その後、二人をその場に残して掲示板の方へと向かう。
「待って、ハルリア嬢!?」
そう言いカールディグスは、ハルリアを追いかける。
「ハルリアさん、僕も行きます!」
カールディグスを睨むとマルルゼノファは、ハルリアを追いかけた。
それをみてカールディグスは、心の中で大爆笑している。しかし睨まれたので、睨み返した。
(ハハハハハ……つらいよ……表情に出せないのがキツい。だけど……隊長、これどうする気だ? まさか、女になってもモテるなんてな。……違う意味、妬けるよ)
そう思いカールディグスは、半目でハルリアをみる。
マルルゼノファは気になり、チラッとカールディグスをみた。
(本当にハルリアさんの婚約者なのか? それにしては、年が離れているようだが。そうだとしても……なんでハルリオン様の許可を得ているんだ?
ハルリアさんから師匠だとは聞いている……それにしてもだ。なんか違和感しかない……でも、ハルリアさんは否定をしなかった。……まぁそのうち分かるか)
そうこう考えていたがマルルゼノファは、分からなかったので悩むのをやめる。
ハルリアはルミカとメイミルのそばまでくると、ムッとした顔で二人をみた。
「貴女たち、いつまで笑っているのかしら?」
「あ、えっと……でも……ねぇ」
そう言いながらルミカは、チラッとメイミルをみる。
「う、うん……流石は、ハルリア。男女問わずモテるなぁと思ってさ」
メイミルはそう言うも、また笑いそうになった。
「ハァー、ワタシは別にモテたい訳じゃないのですが」
「まぁいいじゃないですか。それだけ、人気があるってことなのですから」
そうルミカに言われハルリアは、また溜息をつく。
「そうそう、ハルリア嬢は人気者ですからね」
そう言いながらカールディグスは、ハルリア達のそばまできた。
「これは綺麗なお姉さま方が揃っている。ハルリアさん、この方たちはいったい?」
「あ、マルル……この二人は……」
そうハルリアが言いかけると、ルミカはそれを遮り口を開く。
「これは、失礼いたしました。私は、ルミカ・クライグと申します」
「……アタシは、メイミル・セルビノズです。それはそうと、貴方は?」
そう言いメイミルは、マルルゼノファに問いかける。
「これは失礼……僕は、マルルゼノファ・ヴィクトノスと申します」
マルルゼノファは、ニコリと笑い会釈をした。……明らかにカールディグスとは違い丁寧な挨拶である。
「あのー、ハルリアのお友達でしょうか?」
「はい、友達……そうですね。今は、そういう事にしておきますか」
そう言いマルルゼノファは、カールディグスを睨んだ。
それを察知しカールディグスは睨み返している。……心の中では笑っているのだがな。
「あのぉ~……そろそろ、結果をみに行きませんか?」
そうハルリアが言うと四人は頷く。
そしてその後、五人は試験の結果をみに行ったのだった。
掲示板の前には、人だかりができていた。
現在ここにはハルリアとマルルゼノファがいる。
そうルミカとカールディグスとメイミルは、教師採用試験の結果が貼られた掲示板の方に居るからだ。
ハルリアは人込みを掻き分け掲示板の前までくる。
そのあとをマルルゼノファが追った。
「待ってください、ハルリアさん。そんなに慌てなくても……」
そう言いながらマルルゼノファは、遠慮がちに人と人の間を通り掲示板の方へ向かっている。
(……できれば撒きたいんだがなぁ。なんでしつこくついてくるんだ? ハァー……)
そう思いながら掲示板の前まできた。
その後ハルリアは、受験票に書かれた番号を確認する。
(そういえば……イクだったな。まぁいいか……)
何か言おうとしたがやめたようだ。
ハルリアは掲示板に書かれている番号を探してみる。
「……十七……十九! 良かった……ありましたわ」
そう言いハルリアは、ホッと胸を撫で下ろした。
「ハルリアさん、番号があったのですね……良かったです」
「ありがとうございます。それでマルルは、どうでしたの?」
「僕もありました。これで一緒に通うことができますね」
それを聞きハルリアは表向き微笑んでいるが、心の中で溜息をついている。
「そ、そうですわね。じゃあ、ルミカ達に知らせないといけないから」
「それなら、僕もご一緒させて頂けませんか?」
「あーえっと……断る理由もないし、構わないと思いますよ」
そうハルリアに言われマルルゼノファは、ヨシッと心の中で喜んだ。
その後ハルリアとマルルゼノファは、ルミカ達の方に向かった。
★☆★☆★☆
ここは教師採用試験の結果が貼られた掲示板である。
その近くではルミカとカールディグスとメイミルがハルリアのことを待っていた。
「そろそろかなぁ」
そう言いメイミルは、まだかなぁと思い生徒の試験結果が書かれた掲示板へ視線を向けていた。
「そうですね。でも……私たち全員、受かって良かったです」
「ああ、これでハルリア嬢が落ちてたら、笑うしかないけどな」
「ホントだね。でも、それはないと思うけど」
そうメイミルが言うと二人は、ウンウンと頷く。
そうこう話をしていると、ハルリアとマルルゼノファが三人の所までくる。
「お待たせしました。三人共、結果はどうでしたのかしら?」
「ハルリア嬢。勿論、三人共に受かりましたよ。それよりも、なんでここにマルルゼノファがいる!」
「居てはいけないのか? 僕は、ハルリアさんがいいと言ったから一緒に居るんだが」
そう言いマルルゼノファは、カールディグスを睨んだ。
「それは本当ですか、ハルリア嬢?」
「ええ、そうなのですが……まずかったでしょうか?」
「なるほど……まあ、それならばいいか。だがハルリア嬢には、余り用もないのに近づかないでもらいたいんだが!」
そうカールディグスは言うも、実は心の中で笑っている。それに演技をしていることに対しつらくなって来ていた。
そのことになんとなく気づいているルミカとメイミルは、今にも吹き出しそうである。
「フンッ、許嫁だからって威張らないでもらおうか! 僕は、友人としてハルリアさんとここに居るのだが」
「ほう……本当にそれだけか? 下心があるようにしかみえない」
「二人共、いい加減にしてください! それにカール……貴方がそんな態度をとるのであれば、ワタシは婚約を破棄してもいいのですよ」
それを聞きマルルゼノファは、ヨシッと喜んだ。
片やカールディグスの目は、点になっている。そう、まさかハルリアの口からその言葉を聞くとは思わなかったからだ。
それをそばで聞いていたルミカとメイミルは、笑いを堪えるので必死である。
その後カールディグスは、我に返りハルリアを見据えた。
「ハルリア嬢、申し訳ありません。ですが、同じ年の男性と一緒でしたので不安になってしまい」
そう言いカールディグスは、深々と頭を下げる。だが心の中では、微妙な気持ちになっていた。
そうなんでハルリアを護ろうと演技したにも拘らず、怒られたのかと思ったからである。
そしてその後もハルリア達は、しばらくここで話をしていた。
ここは城下町のハルリア達が泊っている宿屋。そしてハルリアの部屋である。
夜になり、すっかり暗くなっていた。
ここにはハルリアの他、ルミカとカールディグスとメイミルがいる。
あれからハルリア達は、結果をみたあと話しをしていた。
そこにセリアーナとシャルルカーナが来たため、みんなでお祝いをしようという事になる。……勿論、セリアーナとシャルルカーナも受かった。
そのため城下町の少し高めの食事処に向かう。
その後ハルリア達は食事をすませると、また学園でという事になり別れた。
そして現在ハルリアとルミカとカールディグスとメイミルは、真剣な表情で話をしている。
「とりあえず……みんな受かって良かったな」
「師匠、そうですね。でもこれからが大変だと思いますよ」
「ああ……そうなると寮生活になる。隊長は、女性と同じ部屋に……」
そう言いカールディグスは、ジト目でハルリアをみた。
「そうそう……でも学園長は、師匠のこと気づいてるんだよね?」
「メイミル、ああ……知っている。そうなると、悔しいが……一人部屋にされるな」
それを聞きルミカとカールディグスとメイミルは、ハルリアを犯罪者をみるように視線を送る。
「当然です。馬鹿なことを考えないでくださいよ!」
「そうそう、ルミカの言う通りです! 隊長が、女子寮に入るだけでも犯罪行為なんですからね」
「ウンウン……中身は男なんだから、覗きなんかしちゃ駄目だよ」
そう言われハルリアは、ムスッとした。
「……オレが、そんなことをするようにみえるのか?」
そうハルリアが問いかけると三人は、思い切り首を縦に振る。
「……」
それをみたハルリアは、絶句した。そう、そこまでハッキリ頷かれ何も言い返せなくなったのである。
それに自分でも否定できなかったからだ。
「やっぱり、なんかよからぬことを考えてましたね」
「ルミカ……いや……そうだな……分かった。なるべく用がないのに部屋から出ないようにする」
「本当にそんなことができますか? ハァー……まぁ、恐らくその点は学園長が考えてくれるでしょう。それよりも、今後のことです」
そうカールディグスが言うと三人は頷いた。
「明日は、ここを発つ」
「ええ、師匠。とりあえずは、家に戻って待機でしたよね」
「ああ……ルミカ、まだいつから通えるか分からんからな」
そう言いハルリアは、三人を順にみる。
「そうですね……確か、書類が家に送られてくるんですよね?」
「カール、そうなる。その時に、いつから寮に入り学園に通うことができるのか分かる」
「そうだね……ああ、なんか楽しみだなぁ」
そうメイミルが発言すると三人の顔は青ざめた。
「メイミル……そういえば、よくお前が教員試験受かったな」
「師匠……それって酷いですよぉ。私だって、ある程度のことなら分かりますっ!」
そう言いメイミルはジタバタ暴れる。……いや恐らく七光り的な誰かの計らいだろうな。
そしてその後もハルリア達は、これからのことを話していたのだった。
――……約一ヶ月後。
ここはセルギスの森の奥にある、ひらけた場所。そこには、ハルリアの家がある。
あれからハルリアとルミカとカールディグスとメイミルは、翌日になりリュコノグルの城下町を旅立った。その後二日かけて、各々の家に戻る。
そしてハルリア達にとって、いつもの生活に戻っていた。
現在ハルリアは、いつものように剣の稽古をしながら考えごとをしている。
(……思ったよりも早く学園から手紙が届いた。まさか……そうくるとはな。まぁ、それが無難なんだろうが……二ヶ月後どうなるかだ)
そう思いながら剣を鞘におさめた。
★☆★☆★☆
ここはリュコノグルの南側にある隣国マールエメス。因みにリュコノグル国は、大陸の中央ぐらいの所に位置する。
この国は他種族との交流があるせいか領地が多く、かなり人口も多いのだ。と云いたいが、一部、事実とは違う。
この国は侵略国家であり、殆どの領地が奪ったものである。そのためか奴隷も多数いた。
そして国の中心都市にラメーシアの城下町がある。
そしてその城の中にある大臣の書斎には、男性二人がいた。 一人はこの城の大臣だ。もう一人は、商人のようである。
大臣は椅子に座り机上に両手を乗せて、目の前の商人を見据えていた。
この大臣はカンルギ・ザベテ、四十三歳。
銀色で紫のメッシュが入った長い髪を三つ編みで束ねている。
容姿的に綺麗な顔だちをしていた。
商人の方はタールベ・ラゼ、三十歳。実は商人じゃない。そうカンルギの配下の者であり、主に影の仕事を受け持っている。
濃い茶色の短髪で、糸目で狐のような容姿だ。
タールベは片膝をつき俯いていた。
「ハルリオンが、生きているかもしれんだと!?」
「はい、リュコノグル国内で商売をしながら探っていましたところ。聞こえて来たのは、ハルリオンが死んだという噂じゃなく……行方不明とのこと」
「どうなっている……ハンナベルは間違いなく、あの魔道具を使ったのだな?」
そう言われタールベは、コクッと頷く。
因みにハンナベルとは、ハルリオンを十五歳の少女にしてしまった張本人ルセレナ・セリュムである。そして本名はハンナベル・ククルセナだ。
「間違いないはずです。ですがハンナベルの話では……魔道具を開けさせたあと、確認せずに逃げたらしいので」
「という事は……その後どうなったか分からないという事か」
「そうなります。……申し訳ありません」
それを聞きカンルギは、ハァーっと溜息をついた。
「……そうだな。生死が不明……となると。下手にリュコノグル国へ攻め入ることはできん。タールベ、やるべきことは分かるな?」
「はい、再びリュコノグルに向かい……ハルリオンの生死を確認してまいります」
そう言うとタールベは立ち上がり、一礼をすると部屋を出ていく。
それを確認するとカンルギは、難しい表情で考えていたのだった。
――……二ヶ月後。
ここはリュコノグルの城下町にある王立騎士養成学園。その塀の外側には、学生寮と教員寮が建っている。
そして、その近くに真新しい屋敷が建っていた。因みに、それほど大きな屋敷ではないようである。それでも塀でまわりを囲まれていた。
屋敷の中は普通だが、それなりに豪華である。
その奥の客間には、ハルリアとルミカとカールディグスとメイミルがソファに座り話をしていた。
そうここは、ハルリアとカールディグスのために用意された屋敷である。
因みにカールディグスは、学園に旅立つ前日になって行きたくないと言いだした。
流石のカールディグスも、ハルリアと一緒に暮らすのが嫌……抵抗があったのだろう。
そして現在ハルリア達は、これからのことについて話しをしている。
「まさか、こんなプレゼントをしてくれるとはな」
「ええ、それも……師匠とカール様が学園長の公認カップルという事ですしね」
「そうそう、これで心置きなく……ムフフッ……」
それを聞きカールディグスは、ムッとした。
「メイミルッ! からかうな。僕は……こんなつもりで、あんな嘘をついたんじゃない」
「でも、そうしておいた方が……無難だと思いますよ」
「そうかも……だけど。そもそも、なんで寝室が一つで……それもキングサイズのベッドって……」
そう言いカールディグスは、俯き頭を抱える。
「その前に、学園長はハルリア嬢が隊長だってしってるんですよね?」
「カール、ああ……だから余計にお前と一緒の方がいいと思ったんじゃねぇのか」
「そうだとしても……これじゃ変な噂が立って、女……いや、色々とやりづらくなるんじゃ」
それを聞きハルリアとルミカとメイミルは、ジト目でカールディグスをみた。
「なるほどですねぇ。ですが、まさか……カール様の口からおんなと云う単語を聞くとは思いませんでしたわ」
「うんうん、やっぱりムッツリだったんだね」
「待ってくれ! 僕は、自分のことを言ったんじゃなくて隊長の……」
カールディグスはそう誤魔化そうとする。
するとハルリアは持っていた鞘におさまったままの剣で、カールディグスの頭を軽く叩いた。
「おいっ、人のせいにするんじゃない! それに、お前も男だ。ここに女を連れて来ても問題ないだろう」
「師匠っ! それって、大問題ですよ」
「そうそう、ルミカの言う通り。そもそも、ここに女を連れ込んでたら……カール様と師匠の関係がバレちゃうからね」
そう言われハルリアは、ガッカリする。
「まあ、それはいいとして……ですが。これから、大変になりますね」
「ルミカ……そうだな。オレは、ここで身を隠しながら……元に戻る方法を探らなきゃならない」
「ええ、僕もそのつもりです」
そう言いカールディグスは、ハルリアへ視線を向けた。
「カール、オレはその気はないぞ」
「僕もその気はないです。ていうか、その眼はからかってますよね?」
「ああ……ハハハハハ……カール、お前は変なところ真面目だからな」
それを聞きカールディグスは混乱する。
そしてその後もハルリア達は、色々と話し合っていたのだった。
――……二日後の朝。
ここは王立騎士養成学園の門前。空は快晴で雲一つなく、気持ちいい風が吹いている。
そしてその門付近には、真新しい学生服を着た生徒たちがいた。
そう今日は、途中から学園に入った者のための入学式である。
勿論ハルリアも、ここに来ていた。
門の前でハルリアは、セリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナがくるのを待っている。
そうそう服装は、騎士養成学園の制服だ。因みに制服は、学年によって違う。
一年生は黄緑色。だが、途中入学の生徒は青色である。
二年生は青紫色。
三年生は赤紫色。
この制服は、渡された物を三年間着るのだ。
だが、色が変わらないだけで何枚も購入できる。……まあ金次第にはなるが。
そして現在ハルリアは、門付近の塀に寄りかかり考えごとをしていた。
(いよいよ入学式か。まあ今日は、式と教室で必要な物が支給されるだけだ。あとは、担任の紹介もだったな)
そうこう考えているとセリアーナが近づいてくる。
「おはよう、ハルリア!」
「セリアーナ、おはようございます」
「まだ、マルルゼノファとシャルルカーナは来てないのね」
そう言いながらセリアーナは周囲を見渡した。
「そうみたい。二人共、何をしているのかしらね」
「ホント……これで遅刻なんてことになったら笑える」
「ハハハ……本当ね。ですが、いくらなんでも……流石にそれはあり得ないと思いますけど」
ハルリアはそう言い苦笑する。
そうこう話をしていると、マルルゼノファとシャルルカーナがハルリア達の方へ駆けてきた。
「ハァハァハァ……すまない。シャルルを待っていたら、遅くなった」
「ごめんなさい。ですが、中々髪が纏まらなくて……」
そう言いマルルゼノファとシャルルカーナは、手を合わせ深々と頭を下げる。
ハルリアとセリアーナはそう言われて、ニコリと笑みを浮かべ大丈夫だと言った。
その後ハルリア達は、学園の門を潜り入学式が行われる多目的ホールへと向かう。
★☆★☆★☆
ここは学園長室。ここには、ダギル学園長とロイノビがいる。
ダギル学園長は窓際にいた。
一方ロイノビは机の前に立ってダギル学園長をみている。
「学園長、いよいよですね」
「ああ……そのために、わざわざ途中入学生を募集したのだ。……ロイノビ、分かってるな?」
「はい、勿論です。ハルリアだけ他の生徒とは、別メニューでの授業をですよね?」
そう問われダギル学園長は、コクッと頷いた。
「特に……ハルリアには、苦手を克服してもらう」
「はぁ……確か、その一つが――」
「そういう事だ……騎士にとって一番に必要とされることができないからな」
そう言いダギル学園長は、ハァーっと溜息をつく。
「ふと思ったのですが、なぜハルリアが……苦手だと分かったのですか?」
「そ、それは……そうそう……実は試験の日に偶々あって話したのだよ」
「は、あ……なるほど。直接会って確認したのですね。それならば納得しました。それと……それだけハルリアには、期待をしていると」
ロイノビはそう言うと、ニコリと笑った。
「うむ、新たな英雄が……この国には必要だからな」
「そうですね。それはいいとして……ハルリオン様がみつかったらどうするのでしょうか?」
「それについて王室の考えは、英雄が二人いてもいいとも言っている」
それを聞きロイノビは、なるほどと納得する。
そしてその後もダギル学園長とロイノビは、入学式が始まるまで話をしていたのだった。
ここは王立騎士養成学園内にある多目的ホール。ここには六十名の新入生と教師たちがいた。
そしてハルリアとセリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナは、新入生としてここにいる。
片やルミカとカールディグスとメイミルは、ここに新任教師として来ていた。
現在ダグル学園長の話が終わり新任教師が紹介される。ルミカ達を入れて七人だ。
紹介が終わると閉会の言葉と共に新入生は、多目的ホールを出て自分たちの教室に向かった。
★☆★☆★☆
ここは一年F組の教室である。
因みに、一年生のクラスは六クラスだ。
元々は、A、B、C、三クラスである。それと、AからCは普通クラスだ。
そして途中入学生は、D、E、F、三クラスである。その中でもFは、特異クラスだ。あとのDとEは、特別クラスである。
このFクラスには、ハルリアとセリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナがいた。
そう、同じクラスになったのだ。……なんか学園長が仕組んだようにもみえる。
それと一クラス二十人なので、ハルリア達以外の残りは十六人だ。
現在ハルリアは、後ろの方の席についている。
その右横にはセリアーナで左にマルルゼノファが座っていた。それとシャルルカーナは、マルルゼノファの隣に座っている。
「そろそろ、担任の先生がくる頃ね」
「セリアーナ、そうね。担任は誰なのかしら?」
そうハルリアの言ったあと教室の扉が開いた。
教室に入って来た教師をみて、ハルリアの目が点になる。
(ちょっと待て……なんで、パルキアがここにいるんだ? アイツは任務で動いてたんじゃ……。てか、学園長は……パルキアがオレの隊だって知っているはず。
……そうなると、わざとだな。まあ確かにパルキアは、カールの次に優秀だが……仕方ないあとで聞いておくか)
そう思いその担任をみていた。
この担任はパルキア・カルゼノバ、二十五歳で女性。元兵団第一部隊に所属していて、地位的にはカールディグスの下ぐらいである。
本来ならハルリオンの指示で隠密に行動していたはずなのだ。そう、ハルリオンを元に戻す方法を探るためである。という事は、パルキアもハルリオンがハルリアだと知っているのだ。
因みに実は、パルキアもハルリオンが十五歳の少女になったその場にいたのである。
見た目は、オレンジ色の髪に赤のメッシュで鉢巻のようなバンダナをつけていた。女性なのだがどことなく熱血漫画に出てきそうなキャラだ。
体格もスラっとしているが胸ペッタンの筋肉質である。
因みにハルリアは式の時、ちゃんと新任教師の挨拶を聞いていなかった。そのため、パルキアが居ることに気づかなかったのである。
教壇に立つとパルキアは、生徒たちを睨んだ。
「今日から、お前らを教えることになったパルキア・カルゼノバだ。フッ……よろしくな」
そうパルキアが挨拶をすると生徒たちは、ゾッとし身を震わせる。
そして、大丈夫なのかと不安に思う者まで居るほどだ。
「それとオレは、元兵団第一部隊に居た」
それを聞き生徒たちは、パルキアに質問し始める。そうハルリオンのことや、兵団の仕事とかのことをだ。
聞かれたパルキアは、それらを大げさに語り始める。
(おい、オレが居ることを知ってるんだよな? そこまでおだてるか……普通……)
それを聞いていたハルリアは、恥ずかしくなり机上にうつぶせになると両耳を塞いだ。
そんなこととも知らないセリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナは、ハルリアの様子をみてどうしたのかと思い心配する。
そしてその後もパルキアが色々な話をして、ハルリアはもう嫌だ早く帰りたいと思っていたのだった。
ここはカールディグスとハルリアの屋敷。辺りは既に暗くなっていた。
この屋敷の客間には、ハルリアとルミカとカールディグスとメイミルとパルキアがいる。
あれからハルリアは、パルキアの話が終えると必要な書類や教材を渡された。そのあと教室を出て、セリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナと中庭で話をする。
それから話を終えるとハルリア達は、途中まで一緒に帰った。
そして現在ハルリアは、ムスッとした顔でパルキアをみている。
「おい、これはどういう事だ?」
「あーえっと……隊長、もしかして怒ってる?」
「パルキア……ああ、勿論だ。任務の方は、どうなってるんだ」
そう言いハルリアは、パルキアを見据えた。
「はい、そのことなんですが……隊長のことを探っている者をみかけました」
「オレのことをか……だが、この国でオレを探している者は珍しくないはずだ」
「それが、少しおかしいんです。隊長の生死について聞きまわっていたので、変だと思いあとをつけたのですが……途中の路地で忽然と消えた」
それを聞きハルリアは、どういう事だと思い考える。
「確かに変だな……それは、どこでみかけた?」
「マールエメスとの国境付近にあるデルベスジアの町です」
「そういえば、カザビアの町もマールエメスとの国境沿いにあったな」
そう言いハルリアは、真剣な表情で一点をみつめた。
「ええ、それにマールエメスは侵略国家です」
「ルミカ、そうなると……嫌な予感しかしねぇ」
「ですね。これは、あくまで推測ですが。ガザビアであったあの女は、最初から隊長を殺すのが目的だったとしたら」
カールディグスはそう言いハルリアをみる。
「それは十分あり得るな。だが、オレに渡した魔道具は……」
「師匠を少女にしてしまった……でも、なんでそうなったのかな?」
そう言いメイミルは、不思議に思い首を傾げた。
「さあな……そこまでは分からん」
「そうですね。そうなると……まだ隊長が、少女になっているって気づいていない」
「カール、そうだろうな。だが、生死を確認しているってことは……」
それを聞き四人は頷く。
「恐らく、隊長が行方不明と云う噂のせいだと思う」
「ああ……パルキア、そうなると……その間はマールエメスが攻めてこない」
「師匠、でもそれだと……何れバレちゃうんじゃないかな」
そう言われハルリアは、ジーっとメイミルをみる。
「明日、雨にならないよな?」
「そうですね。メイミルが、真面なことをいいましたので……天気悪くなるかも」
「ちょ……師匠に、カール様っ! アタシだって、真面なことぐらい言うんだからね」
そう言うとメイミルは、プクッと頬を膨らませた。
「そうだな……でも、確かにメイミルの言う通りだ。油断はできない……」
「隊長、そうですね。一応このことを、学園長に伝えておいた方がいいかと」
カールディグスに言われハルリアは、コクッと頷く。
「それがいいだろう。それはそうと……パルキア、話は逸れたが……理由を聞かねぇとな」
そう言いハルリアは、ジト目でパルキアをみる。
そしてその後パルキアは、ハルリア達に散々問い詰められたのだった。