「……師匠〜起きてください。ヨダレが出てますよ〜」

 そう言い三つ編みツインテールで緑髪の女性は、ハルリオンの肩を揺する。

 この女性はルミカ・クライグ、十八歳。ハルリオンの弟子だが、その中でも一番若い。

 ハルリオンはルミカに起こされ大欠伸をして目覚めた。

 「ふあぁ〜、やっと来たかルミカ。ん? 来てるのは、お前だけか」
 「うん、そうみたい。それはそうと師匠、股を開いて座る癖……まだ治らないんですか?」
 「治らない……って。これは病気じゃない。それに長年の癖は、流石に直らん」

 そうハルリオンが言うとルミカは、ハァ〜っと息を漏らし呆れた表情になる。

 「まあ、いいですけど……」

 そう言いルミカは、辺りを見回した。

 「それにしても、師匠は凄いですねぇ」
 「ん? 何がだ」
 「何って……。あんなに酷く荒れてた土地がですよ、今じゃ綺麗になって畑や稽古場まで。それも、たった一人で……。そんなの誰も真似できませんので」

 ルミカはそう言うと、ハルリオンを覗き込んだ。

 「誰もできない、か。どうだかな、それはやる気の問題じゃないのか」
 「どうでしょうか。そうは、思いませんが」

 そう言いながら薄紫で短髪の男性がハルリオンとルミカのそばまでくる。

 この男性はカールディグス・ルビア、二十三歳。ハルリオンの弟子であり部下だ。
 このカールディグス、イケメンなのだが……性格に難あり。

 カールディグスはハルリオンの前までくると一礼した。

 「おはようございます。兵士長……いえ、ハルリア様。プッ……」

 そう言ったはいいが、おかしくなり笑い転げてしまう。

 「カール!! いい加減にしろ! オレだってこんな姿、嫌なんだからな」
 「あ、申し訳ありません。ですがそう言われても……あの兵士長と今の姿が、余りにも結び付かなくて」

 また笑いそうになりカールディグスは、自分の口を両手で塞いだ。

 「ハァ〜、まぁいい。それで今日は、お前たち二人だけか?」
 「そうみたいですね。それか、あとからくるのかも」

 そう言うとルミカは、周囲の森をぐるりと見渡す。

 「うわぁぁあああー、くるなぁぁぁああああ~……」

 そう叫びながらピンク髪で短めのツインテールの女性が、ハルリオンたちの方へ猛スピードで向かってくる。

 「ふぅ~、一番うるさいのが来たみてぇだな」
 「ええ、ハルリア様……そうみたいですね」
 「それにしても……メイミルは、いつも賑やかですね」

 そうルミカが言うとハルリオンとカールディグスは、呆れ顔で頷いた。

 このピンクの髪の女性はメイミル・セルビノズ、二十歳。ハルリオンの弟子である。
 どちらかと言えば年齢よりも、かなり見た目が若い。
 そして一番うるさくて、厄介ごとを持ってくるのもメイミルだ。

 ハルリオン達の方に向かいながらメイミルは、大声で泣き叫んでいる。

 「ちょっとぉ~、みてないで助けてってばぁ~」

 それを聞きハルリオンは立ち上がり、メイミルの背後へ視線を向けた。

 「ありゃあ、フレイヤウルフだな。だが、なんでメイミルを追いかけてんだ?」
 「師匠、本当ですね。フレイヤウルフは、刺激しなければ襲ってこないはずですが」
 「ルミカの言う通りです。大方、メイミルがフレイヤウルフを刺激したのでしょう」

 そうカールディグスが言うとハルリオンとルミカは、ハァーっと息を漏らす。

 「しょうがねぇな」

 ハルリオンはそう言うと、めんどくさそうな表情で頭をかいた。その後、鋭い眼光でフレイヤウルフを睨みみる。そして腰に差している剣の鞘を左手で持つと、右手を柄に添えた。
 そのままの体勢でハルリオンは、フレイヤウルフに向かい駆け出す。そして走りながら剣を抜き、すかさず切先を左に向け構える。
 するとフレイヤウルフに目掛け即座に剣を右へ振り、素早く刃を上に向け斬りつけた。
 フレイヤウルフはハルリオンに斬られて、バタンと血を流し地面に倒れる。
 そばでみていた弟子たちは、余りにも速いためハルリオンの動きを捉えることができなかった。

 「ふぅ〜……やっぱり、この体だと動きが若干鈍い。それに、身長のせいで狙いがズレるな」

 そう言いながらハルリオンは、剣を鞘に収める。するとメイミルを、キランッと目を光らせ鋭い眼光でみた。

 「あーえっと……師匠? もしかして、怒ってます……よねぇ。その顔は……ハハハハ……」
 「ハァ〜……まぁいい。それで、なぜ追いかけられてた?」
 「えっと……ですね。途中で……」

 そうメイミルが言いかけると……。

 「これは、申し訳ない」

 そう言いながら水色の長い髪の男性が、ハルリオン達のそばへと近づいてくる。

 「誰だ!?」

 ハルリオンはその水色の長い髪の男を警戒し剣を構えた。
 それと同時に、ルミカとカールディグスも身構える。

 「いえ、私は怪しい者じゃありません」

 そう言い水色の長い髪の男性は、武器をおさめてくれと促した。

 「怪しくねぇ、って。じゃあ、なんでここにいる?」

 そうハルリオンに問われ、水色の長い髪の男性は訳を話し始める。