「うぅっ!」
触れれば魔力が爆発するので矢に触れて防御してはいけない。
咄嗟の判断でリュードは体を捻って矢を回避した。
けれども矢をかわしたリュードに間髪入れずにデュラハンが切りかかる。
下から切り上げるデュラハンの剣をリュードは受け流すことができずにまともに防御してしまった。
リュードとデュラハンの剣がぶつかって力勝負になる。
しかし保たれた均衡は一瞬だった。
デュラハンの力はリュードの力よりも強いので当然である。
ミノタウロスの時もケガをしていて奇襲でなければ力で勝つことなんてできやしなかった。
疲れもケガも関係のないデュラハンは普通にフルパワーでリュードとの勝負に挑んできた。
後ろに大きく吹き飛ばされたリュードはあえてその勢いを受け入れた。
空中で姿勢を整えて着地でもう一度後ろに飛び上がって下がりデュラハンと距離を取る。
「ラスト!」
追撃を警戒していたリュードの方にデュラハンは来なかった。
「あっ、こっち?」
リュードを吹き飛ばしたデュラハンはすぐさまラストの方に走り出した。
先ほどから周りを回って弓を射てくるラストのことを厄介だとデュラハンは判断した。
先に倒すべき相手はリュードの支援をしているラスト。
デュラハンは恐ろしい速さでラストとの距離を詰めてきた。
「ラスト!」
「私だって戦えないわけじゃないんだからね!」
ラストも後ろに下がりながら腰につけていたムチを取ってデュラハンに攻撃する。
神聖力で淡く光るムチが迫ってもデュラハンは止まらない。
ムチを切り裂きながらさらにラストと距離を詰めて目の前まで近づいた。
黒い魔力をまとう剣がラストに振り下ろされる。
「舐めるなぁ!」
ラストは実戦経験に乏しい。
剣などの主だった武器はあえて距離を取ってきたし戦う必要もほとんどなかった。
大人の試練ではリュードが前に立ってラストは弓で戦っていたし接近戦闘おける経験はあまりなかった。
それでも持ち前の身体能力でラストはデュラハンの剣を回避した。
ただラストの回避はリュードと違って動きが大きく何回も回避を続けられるものじゃなかった。
段々と回避がギリギリになっていくのはラストが慣れてきたからではなくデュラハンがラストを捉えつつあったから。
「こっち……がっ!」
もうラストの回避も限界。
そのタイミングでリュードがデュラハンの後ろに迫った。
完全にリュードのことを見ていない隙をついてリュードは剣を振り下ろす。
体の向きからリュードのことなど見えていないと思い込んでいた。
実際デュラハンにはリュードが見えていない。
だってデュラハンには目がないからである。
ではスケルトンなどの目がない魔物はどうやって周りを知覚しているのか。
それは魔力を感じ取っているのである。
魔力は生きているものが必ず発している。
実際スケルトンは大雑把にしか魔力を感じられず視界と同じように見えているような範囲にないと感じられない。
けれどデュラハンにまでなると違う。
例え真後ろであっても隠れていてもデュラハンには見えているのである。
剣を上げてリュードの攻撃を防御したデュラハンは振り返りながら後ろのリュードの腹に回し蹴りを決めた。
「リュード!」
モロに食らってしまったリュードはぶっ飛んでいく。
大きな剣を振り回すデュラハンの力は強く、たかが蹴りであっても油断できない威力がある。
しかしラストが心配する暇もなくデュラハンはラストの方へと攻撃を再開した。
「甘いよ!」
ラストもやられっぱなしではいかない。
回避は難しいと判断して大きく飛び上がったラストは翼を羽ばたかせた
背中の翼は飾りではない。
魔力を込めて羽ばたかせると空を飛ぶことができる正真正銘の翼なのである。
ただし長時間飛んでいるとすごく疲れるし魔力も結構使う。
有翼種の人たちのように自在に飛んでいられるってことではない。
ラストはというか血人族はあんまり空を飛ぶ人たちでもないので飛行はできるけど、飛ぶのもあまり上手くない。
ただ今は不慣れな飛行でも十分でデュラハンの攻撃圏から離れることができた。
「うへっ!?」
追撃の手はないと思っていたらデュラハンはまだ諦めていなかった。
デュラハンは剣を逆手に持って腕を上に引く。
上半身も逸らして力を溜めて、魔力が剣を持つ左腕を中心に渦巻く。
ラストの背中にぞくりとした感覚が走り嫌な予感がする。
「ヤバっ……!」
門を破壊した時と同じく剣を投擲するつもりだとすぐに察した。
飛ぶことに慣れていないラストはようやく飛行体勢が安定したところでどこかに飛んで回避するまで動くことができない。
やるならこのまま飛ぶのをやめて落ちるぐらいだけどそうなると今度はデュラハンも飛ぶことを想定しながら戦ってくる。
もう一度飛んで逃げることなんて許してはくれないだろう。
「……私も、出来る。私なら倒せるとでも思った?」
守られているだけが自分じゃない。
こんな時にもちょっとリュードが何とかしてくれるんじゃないかと考えている自分がいることに気づいた。
ほとんどリュードに頼りっぱなしのような気がしてきて自分に苛立った。
もう子供じゃない。
大人の試練を乗り越えて大人になる。
ただ誰かの後ろで守ってもらってばかりの自分から脱するんだと覚悟を決めた。
門が壊された時リュードは多くの冒険者がいる中で1人前に出てデュラハンの剣を防ぎ切った。
何かに立ち向かう勇気。
リュードの背中からラストはそれを感じていた。
触れれば魔力が爆発するので矢に触れて防御してはいけない。
咄嗟の判断でリュードは体を捻って矢を回避した。
けれども矢をかわしたリュードに間髪入れずにデュラハンが切りかかる。
下から切り上げるデュラハンの剣をリュードは受け流すことができずにまともに防御してしまった。
リュードとデュラハンの剣がぶつかって力勝負になる。
しかし保たれた均衡は一瞬だった。
デュラハンの力はリュードの力よりも強いので当然である。
ミノタウロスの時もケガをしていて奇襲でなければ力で勝つことなんてできやしなかった。
疲れもケガも関係のないデュラハンは普通にフルパワーでリュードとの勝負に挑んできた。
後ろに大きく吹き飛ばされたリュードはあえてその勢いを受け入れた。
空中で姿勢を整えて着地でもう一度後ろに飛び上がって下がりデュラハンと距離を取る。
「ラスト!」
追撃を警戒していたリュードの方にデュラハンは来なかった。
「あっ、こっち?」
リュードを吹き飛ばしたデュラハンはすぐさまラストの方に走り出した。
先ほどから周りを回って弓を射てくるラストのことを厄介だとデュラハンは判断した。
先に倒すべき相手はリュードの支援をしているラスト。
デュラハンは恐ろしい速さでラストとの距離を詰めてきた。
「ラスト!」
「私だって戦えないわけじゃないんだからね!」
ラストも後ろに下がりながら腰につけていたムチを取ってデュラハンに攻撃する。
神聖力で淡く光るムチが迫ってもデュラハンは止まらない。
ムチを切り裂きながらさらにラストと距離を詰めて目の前まで近づいた。
黒い魔力をまとう剣がラストに振り下ろされる。
「舐めるなぁ!」
ラストは実戦経験に乏しい。
剣などの主だった武器はあえて距離を取ってきたし戦う必要もほとんどなかった。
大人の試練ではリュードが前に立ってラストは弓で戦っていたし接近戦闘おける経験はあまりなかった。
それでも持ち前の身体能力でラストはデュラハンの剣を回避した。
ただラストの回避はリュードと違って動きが大きく何回も回避を続けられるものじゃなかった。
段々と回避がギリギリになっていくのはラストが慣れてきたからではなくデュラハンがラストを捉えつつあったから。
「こっち……がっ!」
もうラストの回避も限界。
そのタイミングでリュードがデュラハンの後ろに迫った。
完全にリュードのことを見ていない隙をついてリュードは剣を振り下ろす。
体の向きからリュードのことなど見えていないと思い込んでいた。
実際デュラハンにはリュードが見えていない。
だってデュラハンには目がないからである。
ではスケルトンなどの目がない魔物はどうやって周りを知覚しているのか。
それは魔力を感じ取っているのである。
魔力は生きているものが必ず発している。
実際スケルトンは大雑把にしか魔力を感じられず視界と同じように見えているような範囲にないと感じられない。
けれどデュラハンにまでなると違う。
例え真後ろであっても隠れていてもデュラハンには見えているのである。
剣を上げてリュードの攻撃を防御したデュラハンは振り返りながら後ろのリュードの腹に回し蹴りを決めた。
「リュード!」
モロに食らってしまったリュードはぶっ飛んでいく。
大きな剣を振り回すデュラハンの力は強く、たかが蹴りであっても油断できない威力がある。
しかしラストが心配する暇もなくデュラハンはラストの方へと攻撃を再開した。
「甘いよ!」
ラストもやられっぱなしではいかない。
回避は難しいと判断して大きく飛び上がったラストは翼を羽ばたかせた
背中の翼は飾りではない。
魔力を込めて羽ばたかせると空を飛ぶことができる正真正銘の翼なのである。
ただし長時間飛んでいるとすごく疲れるし魔力も結構使う。
有翼種の人たちのように自在に飛んでいられるってことではない。
ラストはというか血人族はあんまり空を飛ぶ人たちでもないので飛行はできるけど、飛ぶのもあまり上手くない。
ただ今は不慣れな飛行でも十分でデュラハンの攻撃圏から離れることができた。
「うへっ!?」
追撃の手はないと思っていたらデュラハンはまだ諦めていなかった。
デュラハンは剣を逆手に持って腕を上に引く。
上半身も逸らして力を溜めて、魔力が剣を持つ左腕を中心に渦巻く。
ラストの背中にぞくりとした感覚が走り嫌な予感がする。
「ヤバっ……!」
門を破壊した時と同じく剣を投擲するつもりだとすぐに察した。
飛ぶことに慣れていないラストはようやく飛行体勢が安定したところでどこかに飛んで回避するまで動くことができない。
やるならこのまま飛ぶのをやめて落ちるぐらいだけどそうなると今度はデュラハンも飛ぶことを想定しながら戦ってくる。
もう一度飛んで逃げることなんて許してはくれないだろう。
「……私も、出来る。私なら倒せるとでも思った?」
守られているだけが自分じゃない。
こんな時にもちょっとリュードが何とかしてくれるんじゃないかと考えている自分がいることに気づいた。
ほとんどリュードに頼りっぱなしのような気がしてきて自分に苛立った。
もう子供じゃない。
大人の試練を乗り越えて大人になる。
ただ誰かの後ろで守ってもらってばかりの自分から脱するんだと覚悟を決めた。
門が壊された時リュードは多くの冒険者がいる中で1人前に出てデュラハンの剣を防ぎ切った。
何かに立ち向かう勇気。
リュードの背中からラストはそれを感じていた。