「リューちゃん!」
自分の体が動かなくなる原因がリュードだとクラーケンは理解していた。
他に同じことをする敵はいないと確認して狙いをリュードに絞り、先に倒そうと知恵を働かせたのである。
ヤバいと思ったけれど空中ではどうすることもできなかった。
「バーナード!」
熟練した冒険者だったバーナードはクラーケンの思惑を見抜いて一瞬早く行動した。
飛び上がって手を伸ばし、リュードを突き飛ばした。
強化魔法の効果範囲が短く前線に出ていたバーナード リュードに近く、バーナードのおかげでリュードは助かった。
しかしバーナードはリュードの身代わりに黒い何かに飲まれながらぶっ飛んでいった。
「くっ、止まれ!」
次に振り下ろされた足をリュードは雷属性の魔法で弾き返す。
「バーナード!」
エリザがバーナードに駆け寄るのがリュードの視界の端に見える。
どうなったのか確認しに行きたいが、クラーケンのターゲットはリュード。
行けばバーナードも巻き添えになってしまうのでリュードはクラーケンと距離を取りつつバーナードから離れる。
幸いクラーケンの狙いは変わっておらず、バーナードに医療班が向かっていく。
戦闘船の方に弾き飛ばされたのも運がよかったかもしれない。
リュードの体感では段々とクラーケンも雷属性の痺れにも慣れてきてしまっている。
スタンから持ち直す時間が早くなってきているのだ。
2本の足と魔法が集中的にリュードに向けられ、先ほどの黒い塊が来ることも警戒してしながらリュードは回避を続ける。
意識がリュードの方に向いていることは見ている人にとってはヒヤヒヤしても戦う方としては楽であった。
時折使うリュードの雷属性の魔法によって止まる時間はほんの一瞬だったけれど、注意がリュードに向いているためにそれでも十分な隙であった。
一瞬たりとも気の抜けない回避の連続にリュードは汗だくだった。
しかしリュードの努力に応えるように1本、また1本と足が切り落とされる。
もはやクラーケンの中では苦戦の全ての原因となっているリュードに執着している。
捉えられないという苛立ちもあってクラーケンは残りの足が4本になってもリュードを執拗に狙い続けた。
2本がリュードに向けられ、冒険者たちには残る2本で攻撃している。
単調に振り回すだけの足は数が少なくなれば威力が高いだけで、最初に比べると脅威とは言えなくなっていた。
無理をしなければ足が当たることもなく、回避しながら反撃に転じる人もいた。
かなり冒険者にも疲労の色が見えてきていたけれど終わりも見えてきてもうひと頑張りだとみんな奮起している。
心なしかクラーケンも疲れているのか足の振りも遅くなったように感じられた。
リュードも他の人なら倒れていてもおかしくないぐらいの魔力を使い体力もかなり消耗していたが、バーナードの犠牲まであってここで諦めるわけにはいかなかった。
「あれは…………全員警戒せよ!」
船の上から状況を見ていたドランダラスの緊迫した声がリュードの耳にも届いた。
広く視界を持っていたドランダラスの視界の端で黒い何かが動いた気がした。
見間違いかもしれない。
しかし戦場において違和感を見間違いで片付けてはいけない。
魔力を込めて戦場に声を響き渡らせた。
「な、なんだあれ!」
クラーケンの足をかわし続けるリュードの視界の端で海水が噴き上がった。
時間も経ち、クラーケンの叩きつけを何回も受けて脆くなっていた氷の足場を突き破り何かが出てきたのだ。
一瞬クラーケンの足にも見えた。
けれどもクラーケンのものとは異質で形が違っていた。
誰もがその正体を知らない中、リュードだけがそれに見覚えがあった。
クラーケンはリュードが前世での知識で例えるならイカ。
イカをそんなに細かに観察したことがないので違いはあると思うけど大体イカで間違いない。
今出てきた足、それはイカではなかった。
「……タコ?」
こちらは例えるならタコの足だった。
「リュードさん、ルフォンさんが!」
タイミングが最悪だった。
ルフォンは足と魔法をかわすのに跳び上がっていた。
本来は足場があるはずだったのだがルフォンが着地しようとしたのはタコの足が空けた穴の上。
ルフォンの身体能力を持って多少横にズレたとしてもタコの空けた穴は大きくて着地できる足場がなかった。
「ルフォン!」
リュードとルフォンの目があった。
ゆっくりとルフォンは穴の中に落ちていく。
「邪魔だぁ!」
助けに行かなきゃいけない。
リュードは剣に魔力を込めて雷属性をまとわせると襲いかかるクラーケンの足を乱雑に切り付ける。
クラーケンの動きが止まった隙にリュードは駆け出し、ルフォンが落ちた穴に向かう。
もはやクラーケンにもスタン耐性が出来つつあり、クラーケンはすぐにリュードを追撃してきた。
「放て!」
ドランダラスの号令で魔法使いたちが一斉に魔法を放つ。
足場の再生成に備えていた魔力をクラーケンの気をそらすことに使ったのである。
弱ってきていたクラーケンは魔法をまともに食らってよろめいた。
その間にリュードは穴に飛び込んだ。
水の中に入るとその姿がハッキリとわかった。
それはリュードの知るタコの姿と非常に酷似していた。
ルフォンのこともすぐに見つけられた。
最悪としか言いようがないだ。
ただでさえ泳げないルフォンはタコの足に絡め取られていた。
この際他の人がどうとかは関係ない。
リュードは竜人化した。
服が裂ける音がするけど気にしてなんていられない。
人よりも長く息が持つ自信はあるけどルフォンはそうでないし、戦闘ができるほど息止めに自信はない。
短期決戦でルフォンを救い出す。
「ルフォンを離しやがれ!」
魔力の残量も気にしていられない。
リュードは魔法で雷を作り出した。
水中では空中よりも凄い勢いで雷属性の魔力が拡散していく。
それを膨大な魔力とコントロールで無理やり押しとどめて自分の胴よりも太い雷の槍を作り出す。
たった2本作っただけなのに魔力がゴッソリと無くなる。
手を突き出して槍を放つとリュードは槍に続くように水を掻いてルフォンに接近する。
無造作に放った槍でもデカいタコの体には当たった。
その瞬間雷がほとばしりタコに、そして水を伝いリュードにも電撃が走り抜ける。
もはや電流をコントロールする余裕もない。
すでに覚悟をしていたリュードは歯を食いしばって電気を耐える。
ルフォンも痺れてしまうだろうが、他に方法が思いつかなかった。
体痺れたことで逆に力が入ってしまったのかタコはルフォンを離さない。
自分の体が動かなくなる原因がリュードだとクラーケンは理解していた。
他に同じことをする敵はいないと確認して狙いをリュードに絞り、先に倒そうと知恵を働かせたのである。
ヤバいと思ったけれど空中ではどうすることもできなかった。
「バーナード!」
熟練した冒険者だったバーナードはクラーケンの思惑を見抜いて一瞬早く行動した。
飛び上がって手を伸ばし、リュードを突き飛ばした。
強化魔法の効果範囲が短く前線に出ていたバーナード リュードに近く、バーナードのおかげでリュードは助かった。
しかしバーナードはリュードの身代わりに黒い何かに飲まれながらぶっ飛んでいった。
「くっ、止まれ!」
次に振り下ろされた足をリュードは雷属性の魔法で弾き返す。
「バーナード!」
エリザがバーナードに駆け寄るのがリュードの視界の端に見える。
どうなったのか確認しに行きたいが、クラーケンのターゲットはリュード。
行けばバーナードも巻き添えになってしまうのでリュードはクラーケンと距離を取りつつバーナードから離れる。
幸いクラーケンの狙いは変わっておらず、バーナードに医療班が向かっていく。
戦闘船の方に弾き飛ばされたのも運がよかったかもしれない。
リュードの体感では段々とクラーケンも雷属性の痺れにも慣れてきてしまっている。
スタンから持ち直す時間が早くなってきているのだ。
2本の足と魔法が集中的にリュードに向けられ、先ほどの黒い塊が来ることも警戒してしながらリュードは回避を続ける。
意識がリュードの方に向いていることは見ている人にとってはヒヤヒヤしても戦う方としては楽であった。
時折使うリュードの雷属性の魔法によって止まる時間はほんの一瞬だったけれど、注意がリュードに向いているためにそれでも十分な隙であった。
一瞬たりとも気の抜けない回避の連続にリュードは汗だくだった。
しかしリュードの努力に応えるように1本、また1本と足が切り落とされる。
もはやクラーケンの中では苦戦の全ての原因となっているリュードに執着している。
捉えられないという苛立ちもあってクラーケンは残りの足が4本になってもリュードを執拗に狙い続けた。
2本がリュードに向けられ、冒険者たちには残る2本で攻撃している。
単調に振り回すだけの足は数が少なくなれば威力が高いだけで、最初に比べると脅威とは言えなくなっていた。
無理をしなければ足が当たることもなく、回避しながら反撃に転じる人もいた。
かなり冒険者にも疲労の色が見えてきていたけれど終わりも見えてきてもうひと頑張りだとみんな奮起している。
心なしかクラーケンも疲れているのか足の振りも遅くなったように感じられた。
リュードも他の人なら倒れていてもおかしくないぐらいの魔力を使い体力もかなり消耗していたが、バーナードの犠牲まであってここで諦めるわけにはいかなかった。
「あれは…………全員警戒せよ!」
船の上から状況を見ていたドランダラスの緊迫した声がリュードの耳にも届いた。
広く視界を持っていたドランダラスの視界の端で黒い何かが動いた気がした。
見間違いかもしれない。
しかし戦場において違和感を見間違いで片付けてはいけない。
魔力を込めて戦場に声を響き渡らせた。
「な、なんだあれ!」
クラーケンの足をかわし続けるリュードの視界の端で海水が噴き上がった。
時間も経ち、クラーケンの叩きつけを何回も受けて脆くなっていた氷の足場を突き破り何かが出てきたのだ。
一瞬クラーケンの足にも見えた。
けれどもクラーケンのものとは異質で形が違っていた。
誰もがその正体を知らない中、リュードだけがそれに見覚えがあった。
クラーケンはリュードが前世での知識で例えるならイカ。
イカをそんなに細かに観察したことがないので違いはあると思うけど大体イカで間違いない。
今出てきた足、それはイカではなかった。
「……タコ?」
こちらは例えるならタコの足だった。
「リュードさん、ルフォンさんが!」
タイミングが最悪だった。
ルフォンは足と魔法をかわすのに跳び上がっていた。
本来は足場があるはずだったのだがルフォンが着地しようとしたのはタコの足が空けた穴の上。
ルフォンの身体能力を持って多少横にズレたとしてもタコの空けた穴は大きくて着地できる足場がなかった。
「ルフォン!」
リュードとルフォンの目があった。
ゆっくりとルフォンは穴の中に落ちていく。
「邪魔だぁ!」
助けに行かなきゃいけない。
リュードは剣に魔力を込めて雷属性をまとわせると襲いかかるクラーケンの足を乱雑に切り付ける。
クラーケンの動きが止まった隙にリュードは駆け出し、ルフォンが落ちた穴に向かう。
もはやクラーケンにもスタン耐性が出来つつあり、クラーケンはすぐにリュードを追撃してきた。
「放て!」
ドランダラスの号令で魔法使いたちが一斉に魔法を放つ。
足場の再生成に備えていた魔力をクラーケンの気をそらすことに使ったのである。
弱ってきていたクラーケンは魔法をまともに食らってよろめいた。
その間にリュードは穴に飛び込んだ。
水の中に入るとその姿がハッキリとわかった。
それはリュードの知るタコの姿と非常に酷似していた。
ルフォンのこともすぐに見つけられた。
最悪としか言いようがないだ。
ただでさえ泳げないルフォンはタコの足に絡め取られていた。
この際他の人がどうとかは関係ない。
リュードは竜人化した。
服が裂ける音がするけど気にしてなんていられない。
人よりも長く息が持つ自信はあるけどルフォンはそうでないし、戦闘ができるほど息止めに自信はない。
短期決戦でルフォンを救い出す。
「ルフォンを離しやがれ!」
魔力の残量も気にしていられない。
リュードは魔法で雷を作り出した。
水中では空中よりも凄い勢いで雷属性の魔力が拡散していく。
それを膨大な魔力とコントロールで無理やり押しとどめて自分の胴よりも太い雷の槍を作り出す。
たった2本作っただけなのに魔力がゴッソリと無くなる。
手を突き出して槍を放つとリュードは槍に続くように水を掻いてルフォンに接近する。
無造作に放った槍でもデカいタコの体には当たった。
その瞬間雷がほとばしりタコに、そして水を伝いリュードにも電撃が走り抜ける。
もはや電流をコントロールする余裕もない。
すでに覚悟をしていたリュードは歯を食いしばって電気を耐える。
ルフォンも痺れてしまうだろうが、他に方法が思いつかなかった。
体痺れたことで逆に力が入ってしまったのかタコはルフォンを離さない。