「なんだありゃ……」
誰かがつぶやいた。
リュードも目の前の光景に同じような感想を抱いた。
リュードたち冒険者に気がついたボーノボアは一斉に動き出し列をなして冒険者たちを待ち構え始めたのである。
その光景に圧倒されている人もいる。
好戦的ですぐに人に襲いかかるような知恵がないような魔物であるボーノボアが冒険者たちを視界にとらえても襲いかかってこないで隊列を成している。
並んで待ち構えている時点で異様な光景なのに、明らかにグレートボアの指示を待っているように動かないことに恐ろしさすら感じる。
「ちっ……仕方ないな、放て!」
異常な様子に冒険者たちも近づく速度を落としてまとまるようにして警戒する。
近づいていくとボーノボアも頭を下げて突進の体勢は見せるがまだ動かない。
これ以上接近してしまえば近くなり過ぎて突っ込まれた時に対応が難しくなる。
当初の予定では突進してくるボーノボアに魔法をぶつけて勢いを削ぐつもりだったのだが、相手が動かないならこちらから先に攻撃するしかない。
プスカンの攻撃指示で魔法使いたちが一斉にボーノボアに魔法を飛ばす。
「ほいっ」
普通の戦いなら火の魔法を使って派手に攻撃することも多いのであるが今回は火の魔法は使わない。
ボーノボアの素材は使えるので燃やして黒焦げにしてしまうとダメになるからだ。
魔法攻撃にはリュードも参加していて、エミナが驚いた顔をしている。
浴室作ったりと魔法を目の前で見せていはずなのに魔法で攻撃に参加するなんて考えていなかったようだ。
冒険者たちの魔法が飛んでくるのに合わせるようにしてグレートボアが泣き声をあげ、ボーノボアが突進し出す。
魔法が当たって仲間が何匹もやられるが全く気にせずボーノボアは進んでくる。
止まらないボーノボアたちは勢いに乗り始める。
「あまり早く回避すると奴らは曲がってくるからギリギリまで引きつけて回避するんだ!」
魔法使いたちが後ろに下がり、前衛が前に出る。
盾を持つ冒険者がボーノボアを受け止めて転がしたり、慣れている冒険者は避けざまにボーノボアを切り付けて倒す。
リュードも一振りで1匹のボーノボアを倒してみせ、ルフォンも足を切り付けて転がす。
1人逃げ遅れた魔法使いがボーノボアに轢かれた。
かなり痛いだろうが1回轢かれたぐらいじゃ死にはしない。
「気をつけろ、第二波だ!」
間髪入れずに次のボーノボアが突っ込んでくる。
部隊を分けるとはグレートボアもやりおると思わず感心してしまう。
「エミナ!」
2匹が時間差でエミナに突進する。
1匹はかわせても2匹目をかわすのは厳しい。
いち早くボーノボアの軌道からエミナを狙っていることに気づいたリュード。
1匹目を回避してバランスを崩しているエミナに迫る2匹目のボーノボアの首を横から切り落とした。
接近から剣を振り下ろすまでの一連の動作はまるであらかじめ決められていたかのようにスムーズで、ボーノボアは何をされたのかすら分からないまま絶命した。
「大丈夫か?」
「は、はい、ありがとうございます!」
「気をつけろ。あいつら意外と連携も取っていやがる」
「うわああああ!」
叫び声がして、そちらを見ると冒険者の1人が空を飛んでいた。
決して自力で飛んだのではない。
第二波の後ろからグレートボアも迫ってきていた。
あの冒険者は突進の直撃は避けたもののグレートボアの牙に引っかかり、そのまま空中に投げ出されてしまった。
鎧を身につけた体つきの良い男性なのに軽いものかのように宙を舞っている。
グレートボアの力の強さは相当なものだ。
轢かれたらボーノボアと違って致命傷になりそうだ。
「くっ、全員グレートボアに魔法を打ち込め!」
ボーノボアよりもはるかに巨大なのに、ボーノボアよりも短い距離でトップスピードに乗るグレートボアの突進を転がるようにしてかわすプスカン。
優先すべきは危険度も高く、群れのボスでもあるグレートボア。
プスカンが命令を出すと複数の冒険者たちがグレートボアの方を向く。
「な、なんでこっちくるんだよ!」
プスカンに突進をかわされたグレートボアは地面を削りながら急ブレーキで止まり、反転、再びプスカンの方を向いた。
グレートボアは明らかにプスカンを狙っている。
進化して若干の知恵をつけたグレートボアはボーノボアを統率して戦うことの方がバラバラに戦うよりも良いことを覚えた。
同時に統率することの重要性をほんの僅かに理解したのである。
同時に相手に集団を統率されると厄介なことも理解して、統率する相手を自分が倒せば相手はバラバラになるのではないかと考えた。
間違ってはいない。
しかし知能の低いボーノボアが突撃を始めてしまえばもう統制はできない。
なので自分が統率者を見つけて倒せばいいとグレートボアは考えた。
グレートボアは今そのことだけを考えてプスカンを追っている。
「グレートボアはゴールド−に任せて、俺たちはボーノボアを片付けるぞ!」
これを好機と見たリュード。
ちょっと大変そうだけどさすがはゴールド−ランク冒険者だけあってまだグレートボアに追いかけられても持ちそうだった。
ボスとなると魔物がプスカンだけを狙っているならむしろ周りを片付けて仕舞えばいいと思った。
アイアン+のリュードよりもランクの高い冒険者はいたのだがこんな状況で声を出したやつのランクを確認する馬鹿はいない。
みんなリュードの言葉に従ってグレートボアではなくボーノボアを倒すことに集中する。
グレートボアがいなければボーノボアもさして脅威ではない。
プスカンは必死にグレートボアの突進をかわし続けている。
助けろ!と叫んでいるのだがグレートボアから見ると指示を出しているように見えて余計に追いかけられる。
中々捉えられない相手にグレートボアは苛立ちを隠せなくなってきていた。
誰かがつぶやいた。
リュードも目の前の光景に同じような感想を抱いた。
リュードたち冒険者に気がついたボーノボアは一斉に動き出し列をなして冒険者たちを待ち構え始めたのである。
その光景に圧倒されている人もいる。
好戦的ですぐに人に襲いかかるような知恵がないような魔物であるボーノボアが冒険者たちを視界にとらえても襲いかかってこないで隊列を成している。
並んで待ち構えている時点で異様な光景なのに、明らかにグレートボアの指示を待っているように動かないことに恐ろしさすら感じる。
「ちっ……仕方ないな、放て!」
異常な様子に冒険者たちも近づく速度を落としてまとまるようにして警戒する。
近づいていくとボーノボアも頭を下げて突進の体勢は見せるがまだ動かない。
これ以上接近してしまえば近くなり過ぎて突っ込まれた時に対応が難しくなる。
当初の予定では突進してくるボーノボアに魔法をぶつけて勢いを削ぐつもりだったのだが、相手が動かないならこちらから先に攻撃するしかない。
プスカンの攻撃指示で魔法使いたちが一斉にボーノボアに魔法を飛ばす。
「ほいっ」
普通の戦いなら火の魔法を使って派手に攻撃することも多いのであるが今回は火の魔法は使わない。
ボーノボアの素材は使えるので燃やして黒焦げにしてしまうとダメになるからだ。
魔法攻撃にはリュードも参加していて、エミナが驚いた顔をしている。
浴室作ったりと魔法を目の前で見せていはずなのに魔法で攻撃に参加するなんて考えていなかったようだ。
冒険者たちの魔法が飛んでくるのに合わせるようにしてグレートボアが泣き声をあげ、ボーノボアが突進し出す。
魔法が当たって仲間が何匹もやられるが全く気にせずボーノボアは進んでくる。
止まらないボーノボアたちは勢いに乗り始める。
「あまり早く回避すると奴らは曲がってくるからギリギリまで引きつけて回避するんだ!」
魔法使いたちが後ろに下がり、前衛が前に出る。
盾を持つ冒険者がボーノボアを受け止めて転がしたり、慣れている冒険者は避けざまにボーノボアを切り付けて倒す。
リュードも一振りで1匹のボーノボアを倒してみせ、ルフォンも足を切り付けて転がす。
1人逃げ遅れた魔法使いがボーノボアに轢かれた。
かなり痛いだろうが1回轢かれたぐらいじゃ死にはしない。
「気をつけろ、第二波だ!」
間髪入れずに次のボーノボアが突っ込んでくる。
部隊を分けるとはグレートボアもやりおると思わず感心してしまう。
「エミナ!」
2匹が時間差でエミナに突進する。
1匹はかわせても2匹目をかわすのは厳しい。
いち早くボーノボアの軌道からエミナを狙っていることに気づいたリュード。
1匹目を回避してバランスを崩しているエミナに迫る2匹目のボーノボアの首を横から切り落とした。
接近から剣を振り下ろすまでの一連の動作はまるであらかじめ決められていたかのようにスムーズで、ボーノボアは何をされたのかすら分からないまま絶命した。
「大丈夫か?」
「は、はい、ありがとうございます!」
「気をつけろ。あいつら意外と連携も取っていやがる」
「うわああああ!」
叫び声がして、そちらを見ると冒険者の1人が空を飛んでいた。
決して自力で飛んだのではない。
第二波の後ろからグレートボアも迫ってきていた。
あの冒険者は突進の直撃は避けたもののグレートボアの牙に引っかかり、そのまま空中に投げ出されてしまった。
鎧を身につけた体つきの良い男性なのに軽いものかのように宙を舞っている。
グレートボアの力の強さは相当なものだ。
轢かれたらボーノボアと違って致命傷になりそうだ。
「くっ、全員グレートボアに魔法を打ち込め!」
ボーノボアよりもはるかに巨大なのに、ボーノボアよりも短い距離でトップスピードに乗るグレートボアの突進を転がるようにしてかわすプスカン。
優先すべきは危険度も高く、群れのボスでもあるグレートボア。
プスカンが命令を出すと複数の冒険者たちがグレートボアの方を向く。
「な、なんでこっちくるんだよ!」
プスカンに突進をかわされたグレートボアは地面を削りながら急ブレーキで止まり、反転、再びプスカンの方を向いた。
グレートボアは明らかにプスカンを狙っている。
進化して若干の知恵をつけたグレートボアはボーノボアを統率して戦うことの方がバラバラに戦うよりも良いことを覚えた。
同時に統率することの重要性をほんの僅かに理解したのである。
同時に相手に集団を統率されると厄介なことも理解して、統率する相手を自分が倒せば相手はバラバラになるのではないかと考えた。
間違ってはいない。
しかし知能の低いボーノボアが突撃を始めてしまえばもう統制はできない。
なので自分が統率者を見つけて倒せばいいとグレートボアは考えた。
グレートボアは今そのことだけを考えてプスカンを追っている。
「グレートボアはゴールド−に任せて、俺たちはボーノボアを片付けるぞ!」
これを好機と見たリュード。
ちょっと大変そうだけどさすがはゴールド−ランク冒険者だけあってまだグレートボアに追いかけられても持ちそうだった。
ボスとなると魔物がプスカンだけを狙っているならむしろ周りを片付けて仕舞えばいいと思った。
アイアン+のリュードよりもランクの高い冒険者はいたのだがこんな状況で声を出したやつのランクを確認する馬鹿はいない。
みんなリュードの言葉に従ってグレートボアではなくボーノボアを倒すことに集中する。
グレートボアがいなければボーノボアもさして脅威ではない。
プスカンは必死にグレートボアの突進をかわし続けている。
助けろ!と叫んでいるのだがグレートボアから見ると指示を出しているように見えて余計に追いかけられる。
中々捉えられない相手にグレートボアは苛立ちを隠せなくなってきていた。