雨が降ってきたよ、とか、虹がかかってるよ、とか、僕は今まで、君に沢山の嘘を吐いてきた。
だけど、今、口にした「また明日」が、君に告げる最後の嘘だ。
君は、僕が教えた嘘の世界を胸に抱いて、今日、永遠の眠りについてしまうから。
白に近い、淡いピンク色の花びらがひらひらと舞い落ちる。
綺麗な桜吹雪に包まれた君が、向かい合う私に放った言葉は、「別れよう」だった。
春が来る度、桜の花が咲く度、私は大好きな君に振られたあの日を思い出す。
だから私は、桜が嫌い。
夕暮れ時が近くなって、薄暗くなった教室の窓から、私は彼を眺める。
目を惹く容姿では無いし、いつも端っこの方で1人、下を向いて練習をしているだけ。
でもね……、「頑張れ」って、私はいつも汗を拭う貴方に、そっとエールを送っているんだ。
「「あ……」」
傷一つない、売り物の本に伸ばした手がぶつかる。
隣を見ると、今朝、バスで隣に立っていた男の子がいた。
「えっと、学校ぶり」
つい十数分前まで、初めて入った教室で隣の席に座っていたのも彼だった。
「お粥も食べたし、薬も飲んだ。後は温かくして眠れば、すぐ元気になるわ」
頭を撫でて、娘に布団をかける。
すぐに眠った娘を見て買い物に出たことを、私は一生後悔するだろう。
「放火されたのは子供部屋のようです」