リューセイは剣を構えながら黒竜がどう動くか見ていた。

 (なんてすごい威圧感なんだ。それにスキがない。どこをどう攻めたら……)

 そう思いながら、攻撃するタイミングをはかるためにいったん黒竜との間合いをとる。

 それと同時に黒竜は、逃げるなとばかりに掲げていた巨大な右手をリューセイへと目掛け振りおろす。

 それを見てリューセイは、このままじゃやられると思い、とっさに持っていた剣を目の前に迫る黒竜の右手に目掛け突き刺した。

 すると黒竜はあまりの痛さに、

 「ギャオォォーン!!!」

 と泣き叫び、ドカドカと暴れだす。


 そう黒竜は、リューセイを叩き潰そうとしていたために、思いっきり右手に力を込め振りおろしていた。

 そこにリューセイが剣を突き刺したために、通常攻撃するよりも効果があったのだ。


 黒竜が暴れだし洞窟内がグラグラと大きく揺れている。

 現在リューセイは、黒竜の右手に突き刺した剣を持ったままだ。

 そして黒竜が暴れているためリューセイは、あっちこっちに振り回された揚げ句に近くの岩壁にたたきつけられた。

 「グハッ! ……クッ、」

 リューセイは岩壁にたたきつけられ、そのまま地面にドタっと落下する。

 (っう……。クッ、いてぇ。って。ハァハァ。体が、動かない。ハァハァ。このままじゃアイツ(黒竜)にやられる。だけど--)

 そう思うも、思いっきり岩壁と地面に全身をたたきつけられ、かなりの傷を負い痛くて動けなかった。

 それに剣は、まだ黒竜の巨大な右手のひらに刺さったままである。

 (痛くて体が動かないし。剣は黒竜の右手に刺さったままだ。どうしたらいい。このままじゃ、)

 そう思い悩んだ。

 するとほわんとはかなげな小さな光がいつのまにか現れ、リューセイのまわりをふわふわと交差するように漂っていた。


 だがその光のことは誰も気づいていない。

 そうその光の主は、誰にも気づかれぬようにリューセイに近づいて来たからである。


 そしてその光はリューセイの右肩あたりに静止した。

 『……。この方が英雄となる者の一人。ですが、このままではこの世界にのまれてしまいます』

 どうも声の主は女性のようだ。それもキレイな声をしている。

 またその光はリューセイのまわりをふわふわと漂い始めた。

 『これは、まだ能力が発現されていないようです。そうなると私が手を貸すしかないみたいですね』

 その光の主はそう言いリューセイの耳元でささやきだす。

 『今から特別な力を授けます。ですが、この能力は一時的にしか使えません。それに現状のあなたでは使いこなすのも困難。ですので--』

 そう言いリューセイに説明する。

 (これって。助けてくれるのか? でも、誰が。だけど、俺が能力に目覚める、って。今、教えてくれている事が事実なら、)

 そしてリューセイは、耳元でささやくその光の主の言うことに耳を傾けていたのだった。