ここはランズベール村の北東側にある草原。その近くには森があり、その奥に願望の宝玉があるとされる洞窟がある。


 あれからリューセイ達は冒険者登録をすませ登録証(水晶のペンダント)の使い方を聞いた。

 その後ルドフから、なんのクエストをするのかを聞きこの草原にくる。


 リューセイ達五人は森を目の前にし、どうするかと話し合いをしていた。

 「まさか、いきなり宝玉を取ってくるクエストとはな」

 地べたに座りアベルディオは、そう言い森のほうに視線を向ける。

 「ああ。マスターに言われた時は、まさかって驚いた」

 リューセイは自分の剣と盾のチェックをしながらそう言った。

 「そうですねぇ。本当に、今の私たちの力で、宝玉を手に入れる事が出来るのでしょうか? それに、どのくらい魔法が使いこなせるか分からないのですが」

 「イシスの言う通りだね。僕も、まだこのクロスボウの使い方も分からないしなぁ」

 そう言いながらユリエスは、背負っていたクロスボウを両手で持つとみる。

 「確かにな。それに無策で動くのも得策じゃない」

 「珍しいですねぇ。クライスが冷静に物事を考えているなんて。雨が降らなければいいのですが」

 イシスは両手を前に出すと、雨が降らないかと心配そうな表情で空を見上げた。

 そう言われクライスはイシスの腕をつかんだ。

 「おい! イシス。俺をなんだと思っている!?」

 「ちょ、離してください! なんだと聞かれましても。そうですね……。今のほうが、いつものクライスらしいと思いますが」

 そう言い返されクライスはイシスを離すと疲れた面持ちになる。

 「はぁ、なるほどな。俺は、イシスにそんなふうに思われてたってことか」

 「クライス。僕もだけど。多分、みんなもそう思ってると思うよ」

 ユリエスはニカッと笑いながらそう言いきった。

 するとクライスは、リューセイとアベルディオのほうに視線を向ける。

 「リュー、アベル。おまえらもそうなのか?」

 そう聞かれリューセイとアベルディオも、そう思っていたが口に出せなかった。そして、どう返答したらいいのかと困惑しその場で固まる。

 「……おい、二人とも。なんでそこで黙る! って、まぁいいか。それより、どうする?」

 「そ、そうだな。んーこの際だが。お互いフォローし合いながら、行ける所までトライしてみるっていうのはどうだろう」

 そう提案するとアベルディオは四人を見まわした。

 「ほう。さすがはアベル。それはいい案だ。確かに、おまえが言うように、ここで議論しているよりもそのほうがいいかもな」

 クライスはそう言いニヤリと笑みを浮かべる。

 「じゃ、役割を決めないとな。そうなると。俺の装備はこの剣と盾だ。って事は、前線で魔獣と戦ったほうがベストか」

 「ああ。リューはそのほうがいいだろう。んー俺はこの大剣だが。盾がない分、思いっきり剣をぶん回せる。だが、魔獣の攻撃をモロに受けやすいのがネックだ」

 「そうなると。クライスはリューセイのあとか、一緒に前線でってのがいいのかもしれない」

 アベルディオは、真剣な面持ちで考えながらそう言った。

 「そうだな。まぁ、状況に応じてにはなるが。その時、どっちにするか判断して行動するつもりだ」

 「それがいいだろう。そうなると俺は……」

 アベルディオは回復を優先するか、付与系のほうに重点を置き行動したほうがいいのかと悩んでいる。

 「アベルディオ。私はどうしたら?」

 「イシス。そういえば、おまえは攻撃の魔法を実際に使った事がなかったんだったな」

 「ええ。ですので、どうしたらいいのかと」

 イシスは不安な表情で問いかけた。

 「そうだなぁ。クエストの前に、俺が教えてもいいが」

 「それは助かります」

 そう言いイシスはアベルディオに軽く頭を下げる。

 「ん〜僕はどうしよう?」

 「ユリエス。使い方が分かればいいのか?」

 「うん。リューセイ、この使い方って知ってるの?」

 ユリエスはそう言いリューセイのほうを向いた。

 「使った事はない。だけど、父さんが使っているのを見てたから。ある程度なら分かる」

 「そうなんだねぇ。じゃ教えて!」

 そうユリエスが言うとリューセイは、うんと首を縦にふる。

 「じゃ、俺は……。そうだな、素振りでもしてるか!」

 そう言いクライスは、リューセイ達からすこし離れると大剣を構え素振りを始めた。

 その後リューセイ達は、各自クエストを受けるための準備を始める。

 「……みんな。気づいてるよな?」

 リューセイが小声で言うと四人はうなずいた。

 そうその時五人は、自分たちを監視するある気配を察知する。だが、わざと気づかないフリをした。



 一方ルルカは、草原にそびえる大きな木に隠れながら、そんなリューセイ達を目を輝かせながら見ていた。

 (いよいよね。彼らが願望の宝玉がある、あの洞窟に……。って! せっかく私がうわさを流したのに。結局は父様が依頼してしまったみたい。
 でも、まぁいいわ。これで彼らの活躍が見られるし)

 そう言い五人に熱いまなざしをおくる。

 そしてルルカは、五人がその場から動くまでずっとこの木に隠れていたのだった。