「雨都に跡取りの男子が産まれない呪いなんてかけてさ。ヤだよねー、根が暗いんだよねー」
嫌味たっぷりの永の説明に、星弥が言葉を失くしていると、見かねた鈴心がフォローに回る。
「その呪いは楓が解きましたから過去の話ですよ、星弥」
「そうなの? 楓さんって人、すごいんだね」
「そうですね、とても行動力のある人でした」
だから雨都梢賢は自らを「待望の跡取り息子」と言ったのか、と蕾生はあの軽薄な笑顔を思い出す。
今の所胡散臭さしかないが、単身で銀騎の敷地に乗り込んできたことを考えると、彼にも行動力があることは窺える。
「雨都の人達は元々活発な人柄なんだ。僕らも随分助けてもらった。……そのせいで、何人も犠牲になった」
永が自嘲するように結んだ言葉の意味は、蕾生にも理解できる。
「それで、ある時に嫌気がさした?」
「……だと思う。雨都に対しては僕らも銀騎も同罪だよ。だから、彼らが困ってるなら何をおいても助ける義理が僕らにはある」
協力してくれている相手が常に傷つくことは、どうしようもない運命なのかもしれない。
そんな負い目があるから、雨都が再び姿を見せたことに永も鈴心も驚いたし、姿を見せたということは何か要求があるんだろうと永が考えたのは当然のことだった。
「もちろん銀騎も協力は惜しまない──僕達の介入をあちらが望めばだけど。それで、雨都に今一体何が起きてるんだい?」
皓矢にも贖罪の気持ちはある。
それを確認した後、永が続けた。
「それが、はっきりとは教えてくれなかったんだよねえ。とにかく実家に来て欲しいってだけで」
「さすがに、うちの敷地内では言えない、か……」
皓矢が勘繰るが、そんな戦略的な考えを持っているようには蕾生には見えなかった。
ただ彼は土下座した後ヘラヘラしながら自分の連絡先を永に渡して、「じゃ、そういうことで」なんて、まるで言い逃げするようにその場を去っていったのだから。
「とりあえず僕ら三人で行ってみるよ。もうすぐ夏休みだからね。それで、やっぱり翠破と紅破を返して欲しいんだけど」
示された住所に行くにはちょっとした小旅行になりそうだった。雨都のトラブルの大きさはわからないけれど、それなりの期間をとらなければならないだろうと永は考えている。
嫌味たっぷりの永の説明に、星弥が言葉を失くしていると、見かねた鈴心がフォローに回る。
「その呪いは楓が解きましたから過去の話ですよ、星弥」
「そうなの? 楓さんって人、すごいんだね」
「そうですね、とても行動力のある人でした」
だから雨都梢賢は自らを「待望の跡取り息子」と言ったのか、と蕾生はあの軽薄な笑顔を思い出す。
今の所胡散臭さしかないが、単身で銀騎の敷地に乗り込んできたことを考えると、彼にも行動力があることは窺える。
「雨都の人達は元々活発な人柄なんだ。僕らも随分助けてもらった。……そのせいで、何人も犠牲になった」
永が自嘲するように結んだ言葉の意味は、蕾生にも理解できる。
「それで、ある時に嫌気がさした?」
「……だと思う。雨都に対しては僕らも銀騎も同罪だよ。だから、彼らが困ってるなら何をおいても助ける義理が僕らにはある」
協力してくれている相手が常に傷つくことは、どうしようもない運命なのかもしれない。
そんな負い目があるから、雨都が再び姿を見せたことに永も鈴心も驚いたし、姿を見せたということは何か要求があるんだろうと永が考えたのは当然のことだった。
「もちろん銀騎も協力は惜しまない──僕達の介入をあちらが望めばだけど。それで、雨都に今一体何が起きてるんだい?」
皓矢にも贖罪の気持ちはある。
それを確認した後、永が続けた。
「それが、はっきりとは教えてくれなかったんだよねえ。とにかく実家に来て欲しいってだけで」
「さすがに、うちの敷地内では言えない、か……」
皓矢が勘繰るが、そんな戦略的な考えを持っているようには蕾生には見えなかった。
ただ彼は土下座した後ヘラヘラしながら自分の連絡先を永に渡して、「じゃ、そういうことで」なんて、まるで言い逃げするようにその場を去っていったのだから。
「とりあえず僕ら三人で行ってみるよ。もうすぐ夏休みだからね。それで、やっぱり翠破と紅破を返して欲しいんだけど」
示された住所に行くにはちょっとした小旅行になりそうだった。雨都のトラブルの大きさはわからないけれど、それなりの期間をとらなければならないだろうと永は考えている。