珍しく顔を赤くして背を向けるお母さん。
 もう、自分で言ったのに恥ずかしがるなんて……。
 でも、乙女なお母さんが見られてちょっと新鮮というか、なんだか嬉しい。

「だから、倒れた時にもクリシュト国でミスティア様がよくしてくれて。私にも子供がお腹にいるのよって」
「そうだったんだ」
「うん、だから。不安でどうしようもない気持ちが少しだけ和らいで。でもやっぱりお父さんに会いたくて」

 そうだよね……。
 好きな人との子供を授かって、それを知った時に傍にその人はいないなんて。
 嬉しさも共有したいし、これからの明るい未来のことも話したいだろうし。

「それで、お母さんはどうしたの?」
「クリシュト国の王宮魔術師さんに頼み込んだ。現代に戻りたいって」
「……戻れたの?」
「うん、ミスティア様の計らいでコーデリア国にも報せを飛ばしてくれて。それで、私はお礼にって首につけてた真珠のネックレスを渡したの」

 真珠のネックレス……。
 どこかで聞いたことのある……。

「友里恵が卒業式から帰ってきたときからつけてた、それ」