「え~と牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳、お茶、他にもいろいろなもんがあるな」

「牛乳とお茶は分かるけど、あとは知らないものばかりだぜ。こっちのフルーツ牛乳というやつは果物の絵が書いてあるぞ」

 自動販売機と書かれた金属製の箱の中には様々な商品が入っていた。どうやら魔道具のようで、お金を入れて商品の番号を押すとその商品を購入することができるらしい。

「値段は1つ銅貨5枚か。飲み物にしちゃあ少し高いが、喉も乾いたし、この魔道具も気になるし、飲んでみねえか?」

「そうだな。俺も気になっている。せっかくなら3人で別の飲み物を買って共有しよう」

「おっ、さすがリーダー! ウラネが温泉から上がったら、それぞれが好きなやつを選んで買ってみようぜ!」

「2人ともお待たせ!」

 おっと、噂をしていたらウラネも温泉から出てきたみたいだ。

「ちょうどよかった。この自動販売機という魔道具で飲み物を……」

 次の言葉に少し詰まってしまった。ウラネはいつもの防具姿ではなく、俺たちと同じようにこの宿にある浴衣という服を着ている。

 後ろにまとめられている茶色い髪は輝いて見え、まだ完全に乾いておらずにしっとりとしている。先ほどまでついていた土や埃などの汚れはすっかりと落ち、薄い浴衣を着ていることによって、仲間ということよりも女性であるということを意識してしまうような姿だった。

「んっ? ちょっとリーダーもランダもどうしたのよ?」

「あっ……いや、何でもない」

「べっ、別に何でもねーぜ!」

 どうやらランダは俺以上にウラネの姿に見惚れていたらしい。まあ、もともとこいつはウラネに惚れていたっぽいからな。顔を真っ赤にしてウラネと目を合わさないように必死で顔をそらしている。

「飲み物を販売しているこの自動販売機とかいう魔道具を試してみようと思うんだが、どれにする?」

「へえ~そんな物まであるんだ! いろいろな飲み物があるわね。……よし、私はこのフルーツ牛乳ってやつにするわ」

「それじゃあ、俺はこのコーヒー牛乳ってやつにするか。ランダはどうする?」

「俺はこっちのコーラってやつにするぜ」

 ランダもようやく落ち着いたようだが、まだチラチラとウラネのほうを見ている。ウラネのやつは少し男っぽいところがあって、女として見られる視線には疎いからな。

「ええ~と、ここから銅貨を入れて、番号は10を押せばいいんだな」

 ウィーン

「うおっ、なんだ!? なんか出てきて選んだ商品をひとつ掴んだぞ!?」

 ゴトンッ

「あっ、下のほうから出てきたよ」

 どうやら謎の腕のようなものが選んだ商品をひとつだけ掴んで下に持ってきたらしい。この魔道具はいったいどんな仕組みなんだ……

 そして下のほうにある透明な蓋のようなものを押し込むことによって購入した飲み物を取り出せるようになっているみたいだ。

「うおっ、なんだこれ! 冷たいぞ!?」

 俺が購入したコーヒー牛乳という飲み物の入った瓶を取り出すと、茶色い液体の入った瓶はとても冷えていた。

「すげえな、物を冷やしておくことができる魔道具か」

「ねえ、味はどうなの!」

「ちょっと待ってくれ。ここをこうして……よし、開いた」

 瓶の口は半透明な紙のようなものに覆われていて、それを取ると紙の蓋があった。さらにそれを引っ張って開けると瓶の中に茶色い液体が見えた。

「……匂いは悪くないな。コーヒー牛乳というくらいだから牛乳に何かが入っているのか」

「泥水みたいだけど、本当に大丈夫か?」

 ……ランダの野郎、俺も思っていたが、まずそうに思えるから言わなかったことを言いやがった。まあ、この温泉宿がある国特有の飲み物といったところだろう。ええい、男は度胸だ!

「うおっ、こりゃうまい! 冷えた牛乳にほのかな苦みが加わって乾いた喉に染み込んでくるぞ! すごいな、冷えた飲み物というのはこんなにもうまいんだな!」

「おいリーダー! 少しずつみんなで飲むんだろう! もう半分以上飲んでんじゃねえかよ!」

「あっ、悪い。うまくてついつい飲んでしまったな。ほら、飲んでみてくれ」

「おおっ、確かにこれはうめえぞ!」

「本当! こんな飲み物初めて飲んだわ!」

 どうやら2人ともこのコーヒー牛乳に満足しているようだ。

 瓶や缶などのゴミはこの箱に入れて回収するらしい。まあ、この透明な形の整った瓶だけでも銅貨5枚なんかじゃ安すぎるからな。

「それじゃあ私はこっちのフルーツ牛乳って飲み物にしてみようかな」

 ウラネはフルーツ牛乳という飲み物にするみたいだ。こちらの飲み物も牛乳に何かが入っているのか?

「うわあ~! こっちも冷えていて甘くてとってもおいしいわ! わかった、牛乳に果物の果汁が入っているのね!」

「おい、おまえも飲みすぎだ! 早く俺たちにも少しくれ!」
 
 ゴクゴクと勢いよくフルーツ牛乳を飲んでいくウラネ。気持ちは分かるがちゃんと俺たちの分は残しておいてもらわないと困る。

「確かにこっちもうめえな!」

「ああ、こっちは甘みが強いが、よく牛乳とあっているな」

「よし、俺はこのコーラとかいう飲み物にしてみるぜ!」

 ゴトンッ

「なんだこれ、2人のやつとは違う入れもんだな。あれ、開け方がわからねえ」

「こっちのは金属で覆われているんだな。開け方が自動販売機の隣に書いてあるぞ。上にある突起を引っ張るらしい」

「……よし、開いたぞ。なんだ、なんか泡が出てきた!? いや、すぐに収まったか。……泡の奥になんだか黒い液体が見えるな」

「「黒!?」」

 俺とウラネの声が重なった。さすがに黒い飲み物なんて聞いたことがないぞ。さすがにランダのやつも恐る恐ると口を付けている。

「うおっ、口の中でシュワシュワと弾けやがる!?」

「おい、大丈夫か!? もしかして毒じゃないよな!?」

「……いや、大丈夫だ。なんだこれ、冷たくて甘くてシュワシュワして、わけわからねえがとにかくうめえぞ!」

「いや、シュワシュワしたってなんなんだよ?」

「シュワシュワはシュワシュワなんだよ! ほら、飲んでみろ!」

「……本当に口の中で弾けるような感じだな。確かによくわからないがうまい」

 エールの感覚に似ているが、あれはこんなに口の中でシャワシャワと弾けるような感覚はしない。
 
「私はちょっと苦手ね……さっきのフルーツ牛乳のほうが好きだわ。ねえ、他の飲み物も試してみましょうよ!」

「そうだな、次はどれにすっかな!」

「待て待て、これから飯を食うんだぞ! 確かに俺も他の飲み物は気になるが、晩ご飯を食べてからでも遅くはないだろ」

「おっと、そうだったわね」

「あまりにもうまかったから忘れてたぜ! ってか温泉もこの飲み物もヤバかったし、飯も相当期待できるんじゃねえか?」

「そうね! どんな料理が出てくるか、今から楽しみだわ!」

「ああ、この分だと料理と酒もだいぶ期待ができるぞ! さあ、早速食べにいくとしよう」