10.真乗院の尊い僧侶
「あ、盛親僧都だ」
僕と宗心がおつかいで道を歩いていると、宗心が呟いた。どうやら道の向こうからやってきている人が盛親僧都らしい。
「あれが、盛親僧都……!」
そうだ、兄上がよく語っていた。
「真乗院の盛親僧都というのはな、仁和寺界隈ではとてつもなく尊い僧侶だぞ」と。
「宗心はあのお方のことをよく知ってるの?」
僕はわくわくしながら尋ねた。宗心はにやりとした。
「ちょっとはな」
僕は興奮した。
「わあ、あの方の尊いお話、教えて教えて!」
「仕方ねえなあ。じゃあ、ひとつだけだぞ」
「うん!」
ケチ、と思ったが僕はそれは言わないほうがいいと判断した。僕はちょっぴり大人になっていた。
宗心はひそひそと僕の耳に口を近づけた。
「盛親僧都がな、ある法師を見てあだ名をつけたんだ。『しろうるり』と」
「しろうるり……」
しろうるりってなんだろう。初めて聞いた。尊い人しか知らないなんかすごいなんかなのだろう。僕はごくりと息を飲んで宗心に尋ねた。
「しろうるりって、何?」
すると宗心は悲しそうに首を左右に振った。
「俺も知らない」
「そんな……!」
もしかして門外不出のなんかすごいなんかなのかもしれない。
宗心は「だけどな」と声をひそめた。
「盛親僧都に『しろうるり』って何ですか? って聞いちゃった人がいるんだとよ」
「ええっ!」
そんな、罰当たりな。そんなことを聞くことが許されるのだろうか。
ひとごとながら、僕はその人のことが心配になった。
宗心は続けた。
「そしたらな、盛親僧都はこう答えたそうだ」
僕は心臓がドキドキしてきた。どうしよう。もしかして、その聞いた人に何か天罰が……!
「ーー『この法師の顔に似ている何かに違いない、知らんけど』と!」
「ーーすっげー!!!」
僕は、よくわからなかったけど盛親僧都を心の師匠と仰ぐことにした。
「あ、盛親僧都だ」
僕と宗心がおつかいで道を歩いていると、宗心が呟いた。どうやら道の向こうからやってきている人が盛親僧都らしい。
「あれが、盛親僧都……!」
そうだ、兄上がよく語っていた。
「真乗院の盛親僧都というのはな、仁和寺界隈ではとてつもなく尊い僧侶だぞ」と。
「宗心はあのお方のことをよく知ってるの?」
僕はわくわくしながら尋ねた。宗心はにやりとした。
「ちょっとはな」
僕は興奮した。
「わあ、あの方の尊いお話、教えて教えて!」
「仕方ねえなあ。じゃあ、ひとつだけだぞ」
「うん!」
ケチ、と思ったが僕はそれは言わないほうがいいと判断した。僕はちょっぴり大人になっていた。
宗心はひそひそと僕の耳に口を近づけた。
「盛親僧都がな、ある法師を見てあだ名をつけたんだ。『しろうるり』と」
「しろうるり……」
しろうるりってなんだろう。初めて聞いた。尊い人しか知らないなんかすごいなんかなのだろう。僕はごくりと息を飲んで宗心に尋ねた。
「しろうるりって、何?」
すると宗心は悲しそうに首を左右に振った。
「俺も知らない」
「そんな……!」
もしかして門外不出のなんかすごいなんかなのかもしれない。
宗心は「だけどな」と声をひそめた。
「盛親僧都に『しろうるり』って何ですか? って聞いちゃった人がいるんだとよ」
「ええっ!」
そんな、罰当たりな。そんなことを聞くことが許されるのだろうか。
ひとごとながら、僕はその人のことが心配になった。
宗心は続けた。
「そしたらな、盛親僧都はこう答えたそうだ」
僕は心臓がドキドキしてきた。どうしよう。もしかして、その聞いた人に何か天罰が……!
「ーー『この法師の顔に似ている何かに違いない、知らんけど』と!」
「ーーすっげー!!!」
僕は、よくわからなかったけど盛親僧都を心の師匠と仰ぐことにした。