「あれ、なんだかいい匂いがするね」
「ちょうどみんなで晩ご飯を食べていたところだったんですよ。もしよろしければ、ランジェさんも一緒に食べていきませんか?」
冒険者ギルドマスターのライザックさんの話によると、この人が依頼を引き受けてくれるかはまだ分からない。とりあえず印象は良くしておいたほうがいいだろう。
「えっ、いいの? まだ晩ご飯を食べてないからお腹ペコペコなんだよ。遠慮なくいただくね。あとテツヤ、僕に対する口調はもっとフランクでいいからね! むしろ堅苦しいほうが苦手だよ」
「……わかったよ。それじゃあ準備するから少し待っててくれ」
リリアの時もそうだったけれど、こちらの世界ではあんまり敬語や丁寧語では話さないのかもしれない。でも初対面の人を相手にタメ口って、何気にハードルが高いんだよな……
「はいは〜い。あっ、こっちの可愛い女の子は初めてだね。ランジェだよ、よろしくね!」
「フフ、フィアです! よ、よろしくお願いします!」
……俺のエルフのイメージって、もっと厳格で寡黙な感じだと思ったんだけど違うのか? 見た目は10代後半から20代くらいに見えるのだが、めちゃくちゃ軽い感じだ。
「お待たせ。これは俺の故郷の料理だ。もし口に合わなかったら、別の料理もあるから教えてくれ」
「へえ〜僕はこう見えてフラフラといろんな街へ出かけるんだけど、この料理は初めて見るね」
……こう見えてというよりは見たまんまなんだが、とはさすがに言えない。どうやらこの街以外にも唐揚げという料理はないらしい。というより揚げ物という文化がまだない可能性もあるな。
「これは唐揚げといってライガー鳥の肉に衣をつけて、高温の油に浸した料理だよ。それとこっちがサラダとスープだ」
リリアやフィアちゃんに出したとのと同じ料理を、テーブルに座ったランジェさんの前に置く。というか俺達も食事の途中だったので、改めてテーブルに座って食事を再開した。
「うわ、なにこれ!? めちゃくちゃ美味しいよ! 外はサクサクしているけれど、中はとっても柔らかくて肉の味が溢れてくる! へえ〜焼いたり煮たりするのとは全然違った味だけど、本当に美味しいよ!
それにこっちのサラダには高そうな香辛料がいっぱい使われているね! こっちのスープも優しくて今まで味わったことのない味だ。これはすごいよ!」
「ふっふっふ、テツヤの料理はうまいだろう? 唐揚げにはこっちの果汁をかけるとサッパリとしてまた違った味になるぞ!」
「へえ、そうなんだ!」
なぜかリリアが得意げに説明してくれた。リリアやフィアちゃんもそうだが、ランジェさんもとても美味しそうに俺の作った料理を食べてくれるな。見ていて清々しいくらいの食べっぷりだ。
「それだけ美味しそうに食べてくれると、作った俺のほうも嬉しいよ」
「これはお酒にとても合いそうだね。よし、それじゃあ僕もとっておきのを出そうじゃないか!」
ランジェさんが何もない空間に右手を伸ばすと突然黒い平面が現れ、そこに手を入れた。
「おお! もしかしてこれが収納魔法なの?」
「そうだよ。ここにいろいろな物を入れられるようになっているんだ。しかもここに入れた時点で時間の流れが止まるから便利なんだよね。どこだったかな……あ、これこれ」
そういってランジェさんは一本の筒を取り出した。これが魔法か、初めて見たけれど面白いな。しかも時間停止する収納魔法なんて羨ましい!
「これは?」
「これは他の街で作られているエールだよ。結構有名なお酒でね、ドワーフにも人気があるんだ。さらに僕の氷魔法で冷やしているんだよ」
「えっ!? 冷えたエール!」
今日は一応お酒も買ってきてはあるが、リリアはお酒を飲まないし、フィアちゃんは言うまでもなくお酒を飲めないから、今日はもう飲まずにいようと思っていた。
「ランジェさん、俺にも少しくれない?」
「もちろん、こんな美味しいご飯を食べさせてもらったんだからね。リリアは……飲めなかったんだっけ? フィアちゃんはもう少し大人になってからだね。2人はこっちの果物の果汁で我慢してね」
「ああ、ありがたくいただこう」
「は、はい。ありがとうございますです!」
さらにランジェさんはもう一本の筒を何もない空間から取り出し、コップに注いでいく。
へえ〜元の世界のビールと違って濃い色をしている。確かエールは、いつも飲んでいたビールと発酵方法の仕方が違うんだっけかな。おお、しかもちゃんと冷えている! いいなあ、俺も氷魔法を使いたい。
「それじゃあ改めて乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「おお、これはうまい!」
前に泊まっていた宿でもエールや他の酒を何度か飲んだが、そのどれよりもうまい味だった。元の世界で飲んでいたビールよりもゴクゴクと飲めるキレはないが、その代わりに複雑で深い味わいと香りがある。
そしてなによりも氷魔法によって、冷やされたお酒を久しぶりに飲んだ。確かエールビールはラガービールみたいにキンキンに冷やすよりも、これくらいに少し冷やしたくらいがちょうどいいんだよな。
今度はアツアツの唐揚げを食べてから冷えたエールを流し込む。かああ、これだよ!
「それにしても本当に美味しいエールだな。ランジェさん、ありがとう」
「こちらこそご馳走さまだよ。思った通りこの料理は冷やしたエールによくあうね! 僕も結構いろんな街に行っていろんなお酒を飲んだけれど、この飲み方が好きなんだよ」
「うちの故郷でもお酒はこうやって冷やして飲むことが多いんだ。せっかくなら他の街でどんなお酒を飲んで料理を食べてきたのか教えてほしいな。まだこの街以外の街にはほとんど行ったことがないから、他の街の料理とか気になるんだよ」
実際にはほとんどどころか、この異世界に来てからまだこの街しか見たことがない。いろんな街を旅してみるのも面白そうなんだけれど、なにせ戦闘能力が皆無だからな。命の危険が多いこの世界では、極力街の外に出たくはない。
「うん、もちろんいいよ。テツヤの料理もとても美味しいけれど、他の街にもいろんなお酒や料理があるからね!」
お酒や食事を楽しみながら、ランジェさんの旅の話などをいろいろと聞いて楽しんだ。やはり異世界だけあって、元の世界にはなかった食材や料理などが山ほどあった。楽しそうに旅の話を語るランジェさんが少し羨ましく思える。
「ちょうどみんなで晩ご飯を食べていたところだったんですよ。もしよろしければ、ランジェさんも一緒に食べていきませんか?」
冒険者ギルドマスターのライザックさんの話によると、この人が依頼を引き受けてくれるかはまだ分からない。とりあえず印象は良くしておいたほうがいいだろう。
「えっ、いいの? まだ晩ご飯を食べてないからお腹ペコペコなんだよ。遠慮なくいただくね。あとテツヤ、僕に対する口調はもっとフランクでいいからね! むしろ堅苦しいほうが苦手だよ」
「……わかったよ。それじゃあ準備するから少し待っててくれ」
リリアの時もそうだったけれど、こちらの世界ではあんまり敬語や丁寧語では話さないのかもしれない。でも初対面の人を相手にタメ口って、何気にハードルが高いんだよな……
「はいは〜い。あっ、こっちの可愛い女の子は初めてだね。ランジェだよ、よろしくね!」
「フフ、フィアです! よ、よろしくお願いします!」
……俺のエルフのイメージって、もっと厳格で寡黙な感じだと思ったんだけど違うのか? 見た目は10代後半から20代くらいに見えるのだが、めちゃくちゃ軽い感じだ。
「お待たせ。これは俺の故郷の料理だ。もし口に合わなかったら、別の料理もあるから教えてくれ」
「へえ〜僕はこう見えてフラフラといろんな街へ出かけるんだけど、この料理は初めて見るね」
……こう見えてというよりは見たまんまなんだが、とはさすがに言えない。どうやらこの街以外にも唐揚げという料理はないらしい。というより揚げ物という文化がまだない可能性もあるな。
「これは唐揚げといってライガー鳥の肉に衣をつけて、高温の油に浸した料理だよ。それとこっちがサラダとスープだ」
リリアやフィアちゃんに出したとのと同じ料理を、テーブルに座ったランジェさんの前に置く。というか俺達も食事の途中だったので、改めてテーブルに座って食事を再開した。
「うわ、なにこれ!? めちゃくちゃ美味しいよ! 外はサクサクしているけれど、中はとっても柔らかくて肉の味が溢れてくる! へえ〜焼いたり煮たりするのとは全然違った味だけど、本当に美味しいよ!
それにこっちのサラダには高そうな香辛料がいっぱい使われているね! こっちのスープも優しくて今まで味わったことのない味だ。これはすごいよ!」
「ふっふっふ、テツヤの料理はうまいだろう? 唐揚げにはこっちの果汁をかけるとサッパリとしてまた違った味になるぞ!」
「へえ、そうなんだ!」
なぜかリリアが得意げに説明してくれた。リリアやフィアちゃんもそうだが、ランジェさんもとても美味しそうに俺の作った料理を食べてくれるな。見ていて清々しいくらいの食べっぷりだ。
「それだけ美味しそうに食べてくれると、作った俺のほうも嬉しいよ」
「これはお酒にとても合いそうだね。よし、それじゃあ僕もとっておきのを出そうじゃないか!」
ランジェさんが何もない空間に右手を伸ばすと突然黒い平面が現れ、そこに手を入れた。
「おお! もしかしてこれが収納魔法なの?」
「そうだよ。ここにいろいろな物を入れられるようになっているんだ。しかもここに入れた時点で時間の流れが止まるから便利なんだよね。どこだったかな……あ、これこれ」
そういってランジェさんは一本の筒を取り出した。これが魔法か、初めて見たけれど面白いな。しかも時間停止する収納魔法なんて羨ましい!
「これは?」
「これは他の街で作られているエールだよ。結構有名なお酒でね、ドワーフにも人気があるんだ。さらに僕の氷魔法で冷やしているんだよ」
「えっ!? 冷えたエール!」
今日は一応お酒も買ってきてはあるが、リリアはお酒を飲まないし、フィアちゃんは言うまでもなくお酒を飲めないから、今日はもう飲まずにいようと思っていた。
「ランジェさん、俺にも少しくれない?」
「もちろん、こんな美味しいご飯を食べさせてもらったんだからね。リリアは……飲めなかったんだっけ? フィアちゃんはもう少し大人になってからだね。2人はこっちの果物の果汁で我慢してね」
「ああ、ありがたくいただこう」
「は、はい。ありがとうございますです!」
さらにランジェさんはもう一本の筒を何もない空間から取り出し、コップに注いでいく。
へえ〜元の世界のビールと違って濃い色をしている。確かエールは、いつも飲んでいたビールと発酵方法の仕方が違うんだっけかな。おお、しかもちゃんと冷えている! いいなあ、俺も氷魔法を使いたい。
「それじゃあ改めて乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「おお、これはうまい!」
前に泊まっていた宿でもエールや他の酒を何度か飲んだが、そのどれよりもうまい味だった。元の世界で飲んでいたビールよりもゴクゴクと飲めるキレはないが、その代わりに複雑で深い味わいと香りがある。
そしてなによりも氷魔法によって、冷やされたお酒を久しぶりに飲んだ。確かエールビールはラガービールみたいにキンキンに冷やすよりも、これくらいに少し冷やしたくらいがちょうどいいんだよな。
今度はアツアツの唐揚げを食べてから冷えたエールを流し込む。かああ、これだよ!
「それにしても本当に美味しいエールだな。ランジェさん、ありがとう」
「こちらこそご馳走さまだよ。思った通りこの料理は冷やしたエールによくあうね! 僕も結構いろんな街に行っていろんなお酒を飲んだけれど、この飲み方が好きなんだよ」
「うちの故郷でもお酒はこうやって冷やして飲むことが多いんだ。せっかくなら他の街でどんなお酒を飲んで料理を食べてきたのか教えてほしいな。まだこの街以外の街にはほとんど行ったことがないから、他の街の料理とか気になるんだよ」
実際にはほとんどどころか、この異世界に来てからまだこの街しか見たことがない。いろんな街を旅してみるのも面白そうなんだけれど、なにせ戦闘能力が皆無だからな。命の危険が多いこの世界では、極力街の外に出たくはない。
「うん、もちろんいいよ。テツヤの料理もとても美味しいけれど、他の街にもいろんなお酒や料理があるからね!」
お酒や食事を楽しみながら、ランジェさんの旅の話などをいろいろと聞いて楽しんだ。やはり異世界だけあって、元の世界にはなかった食材や料理などが山ほどあった。楽しそうに旅の話を語るランジェさんが少し羨ましく思える。