「お兄さん、大丈夫か?」
ロングソードを持った、ロイヤと呼ばれていた男が話しかけてきた。
「ああ、君達のおかげで助かったよ。本当にありがとう!」
「なあに、困った時はお互い様だろ! 気にしなくていいよ。こんなところで大きな荷物を持ってひとりでいるってことは、商人か近くの村の人かな?」
「この辺りじゃあんまり見ない格好をしているし、商人じゃないのか?」
……あ、これはもう完全に異世界だ。俺も通勤時間にいわゆる異世界ものと呼ばれる小説を読んでいたが、今のこの状況に完全に一致している。
……マジかあ。元の世界に帰れるのかな、これ?
「ちょっと、本当に大丈夫?」
おっと、少し放心状態でいるとネコミミの女の子に心配されてしまったようだ。
茶色い髪の毛に茶色い瞳、アジア系というよりは西洋のような感じなのだろうか。金属でできた胸当てを身に付け、俺の調理器具のナイフとは違うゴツい片手剣には、先程斬ったゴブリンの青色の血が付着している。
「ああ、大丈夫だ。実は遠くの国から来たんだが、お金を無くしたり、道に迷ったり、ゴブリンに出会ったり、本当に散々な目にあったんだ。君達に助けてもらわなかったら、死んでいたかもしれない」
「それは災難だったな。でも最後はギリギリ助かったから運が尽きてはいないってことだよ。ちょうど俺達も街に帰るところなんだけど一緒に来るかい?」
「ああ、願ってもない。俺は松下……じゃない哲也だ。改めて助けてくれてありがとう!」
「俺はロイヤだ。よろしくな、テツヤ」
「私はニコレよ。よろしくね!」
「俺はファルという。よろしく」
「へえ〜。それじゃあロイヤ達は最近冒険者になったばかりなんだ」
「ああ、今日はゴブリン討伐の依頼を受けて来たんだ。ほら、さっきの2体でちょうど依頼達成になるんだよ」
そういいながら小さな袋を見せつけるロイヤ。その袋の中には、先程ゴブリンの遺体から剥ぎ取った耳が入っている。あのあと、討伐の証となるゴブリンの耳を切り取って、残りの遺体は地中深くに穴を掘って埋めるのを手伝った。
そして川の水をお腹が壊さない程度に、少しだけ飲んで喉を潤した。川の付近で休憩してから街に戻るようだ。
「ロイヤ、軽くご飯でも食べない? 私お腹が空いてきちゃった」
「俺もだな。せっかく川の近くだし、休憩ついでに食事をしよう」
「そうだな。テツヤは何か持っているか? あんまりうまいもんじゃないけれど、少し分けようか?」
どうやらこの3人、最近冒険者になったばかりのようだが、とてもいい人達のようだ。駆け出しでお金にそれほど余裕があるわけじゃないのに、俺にまで気を遣ってくれている。それに俺を助けてくれたのに、その対価も請求してこない。いきなり訳の分からない世界に連れてこられたけど、この3人に出会えたのは幸運だったみたいだな。
「ああ、大丈夫だ。むしろ俺にご馳走させてくれ。3人は俺の命の恩人なんだからな!」
俺はリュックから食料を取り出す。昨日の燻製料理の残りと、今日の朝に食べようと思っていたパンとハム、チーズ、ジャムを取り出す。本当はホットサンドでパンを焼こうと思っていたのだが、この世界の文明レベルがまだ分かっていないので、バーナーを見せてもいいのか分からないからやめておこう。
「おお、なんかどれもうまそうだな、本当にもらってもいいのか?」
「もちろんだよ。本当はお金とかも渡せるとよかったんだけど、財布もなくなってしまったからな……」
「あんまり気にしないでいいのよ。困った時はお互い様なんだし。……でもとっても美味しそうね、少しだけいただいてもいい?」
「ああ、遠慮なく食べてくれ。ほい、こっちのパンもどんどん挟んでいくからな」
食パンにチーズとハムを挟んだものと、ジャムを塗って半分に切ったパンを渡していく。
「うおっ!? このチーズに肉はうまいな! 今まで味わったことがない独特の香りと味がついてる!」
「こっちのパンも美味しいわよ! すごく柔らかいパン……こんなの初めて!」
「このジャムは本当に甘いな! 砂糖がふんだんに使われていてパンに挟むとメチャクチャうまい!」
3人ともいい反応をしてくれるな。この反応を見るとこの異世界の食文化はそれほど進んでいないのかもしれない。
「いやあ本当にうまかったよ。サンキューな、テツヤ!」
残っていた燻製料理と持ってきていた食パンをすべて食べ終わって、今は街を目指して歩いている。どうやら街まではここから更に歩くようだ。
「少しでもお礼ができてよかったよ。そういえばロイヤ達は何を食べるつもりだったんだ?」
異世界の食べ物、少し興味があるな。
「ああこれだ……食べてみな」
隊列の後ろにいるファルが何かの肉片をくれたので、それを口に運ぶ。
「固くて臭い……」
「そうなの。それが街で一番手頃な携帯食料の干し肉なんだけど、とっても固くて臭いが強いのよね……」
「火を通せばまだマシになるんだけど、外で火を起こすのは面倒だ。火魔法を使えるやつがいれば話が早いんだけどな」
「仮に火魔法を使えたとしても、火を起こすために魔法を使うのは勿体ないだろ。まあ諦めてこのまま食うしかないんだよな」
おう……どうやらこの異世界には魔法があるらしい。実はさっきみんなに隠れて、異世界ではよくあるステータスオープンと唱えてみたが何も起こらなかった。普通こういう世界に来たら、なんか特殊な能力とかをもらったりするんじゃないのかよ……
街までの道のりの中、周りには警戒しつつもロイヤ達にこの世界のことをいろいろと聞いてみた。さっきご馳走したお昼ご飯のおかげか、ロイヤ達はいろいろなことを快く教えてくれた。また借りが増えてしまったようだ。
「見えたぞ。あれが冒険者の始まりの街アレフレアだ」
ロングソードを持った、ロイヤと呼ばれていた男が話しかけてきた。
「ああ、君達のおかげで助かったよ。本当にありがとう!」
「なあに、困った時はお互い様だろ! 気にしなくていいよ。こんなところで大きな荷物を持ってひとりでいるってことは、商人か近くの村の人かな?」
「この辺りじゃあんまり見ない格好をしているし、商人じゃないのか?」
……あ、これはもう完全に異世界だ。俺も通勤時間にいわゆる異世界ものと呼ばれる小説を読んでいたが、今のこの状況に完全に一致している。
……マジかあ。元の世界に帰れるのかな、これ?
「ちょっと、本当に大丈夫?」
おっと、少し放心状態でいるとネコミミの女の子に心配されてしまったようだ。
茶色い髪の毛に茶色い瞳、アジア系というよりは西洋のような感じなのだろうか。金属でできた胸当てを身に付け、俺の調理器具のナイフとは違うゴツい片手剣には、先程斬ったゴブリンの青色の血が付着している。
「ああ、大丈夫だ。実は遠くの国から来たんだが、お金を無くしたり、道に迷ったり、ゴブリンに出会ったり、本当に散々な目にあったんだ。君達に助けてもらわなかったら、死んでいたかもしれない」
「それは災難だったな。でも最後はギリギリ助かったから運が尽きてはいないってことだよ。ちょうど俺達も街に帰るところなんだけど一緒に来るかい?」
「ああ、願ってもない。俺は松下……じゃない哲也だ。改めて助けてくれてありがとう!」
「俺はロイヤだ。よろしくな、テツヤ」
「私はニコレよ。よろしくね!」
「俺はファルという。よろしく」
「へえ〜。それじゃあロイヤ達は最近冒険者になったばかりなんだ」
「ああ、今日はゴブリン討伐の依頼を受けて来たんだ。ほら、さっきの2体でちょうど依頼達成になるんだよ」
そういいながら小さな袋を見せつけるロイヤ。その袋の中には、先程ゴブリンの遺体から剥ぎ取った耳が入っている。あのあと、討伐の証となるゴブリンの耳を切り取って、残りの遺体は地中深くに穴を掘って埋めるのを手伝った。
そして川の水をお腹が壊さない程度に、少しだけ飲んで喉を潤した。川の付近で休憩してから街に戻るようだ。
「ロイヤ、軽くご飯でも食べない? 私お腹が空いてきちゃった」
「俺もだな。せっかく川の近くだし、休憩ついでに食事をしよう」
「そうだな。テツヤは何か持っているか? あんまりうまいもんじゃないけれど、少し分けようか?」
どうやらこの3人、最近冒険者になったばかりのようだが、とてもいい人達のようだ。駆け出しでお金にそれほど余裕があるわけじゃないのに、俺にまで気を遣ってくれている。それに俺を助けてくれたのに、その対価も請求してこない。いきなり訳の分からない世界に連れてこられたけど、この3人に出会えたのは幸運だったみたいだな。
「ああ、大丈夫だ。むしろ俺にご馳走させてくれ。3人は俺の命の恩人なんだからな!」
俺はリュックから食料を取り出す。昨日の燻製料理の残りと、今日の朝に食べようと思っていたパンとハム、チーズ、ジャムを取り出す。本当はホットサンドでパンを焼こうと思っていたのだが、この世界の文明レベルがまだ分かっていないので、バーナーを見せてもいいのか分からないからやめておこう。
「おお、なんかどれもうまそうだな、本当にもらってもいいのか?」
「もちろんだよ。本当はお金とかも渡せるとよかったんだけど、財布もなくなってしまったからな……」
「あんまり気にしないでいいのよ。困った時はお互い様なんだし。……でもとっても美味しそうね、少しだけいただいてもいい?」
「ああ、遠慮なく食べてくれ。ほい、こっちのパンもどんどん挟んでいくからな」
食パンにチーズとハムを挟んだものと、ジャムを塗って半分に切ったパンを渡していく。
「うおっ!? このチーズに肉はうまいな! 今まで味わったことがない独特の香りと味がついてる!」
「こっちのパンも美味しいわよ! すごく柔らかいパン……こんなの初めて!」
「このジャムは本当に甘いな! 砂糖がふんだんに使われていてパンに挟むとメチャクチャうまい!」
3人ともいい反応をしてくれるな。この反応を見るとこの異世界の食文化はそれほど進んでいないのかもしれない。
「いやあ本当にうまかったよ。サンキューな、テツヤ!」
残っていた燻製料理と持ってきていた食パンをすべて食べ終わって、今は街を目指して歩いている。どうやら街まではここから更に歩くようだ。
「少しでもお礼ができてよかったよ。そういえばロイヤ達は何を食べるつもりだったんだ?」
異世界の食べ物、少し興味があるな。
「ああこれだ……食べてみな」
隊列の後ろにいるファルが何かの肉片をくれたので、それを口に運ぶ。
「固くて臭い……」
「そうなの。それが街で一番手頃な携帯食料の干し肉なんだけど、とっても固くて臭いが強いのよね……」
「火を通せばまだマシになるんだけど、外で火を起こすのは面倒だ。火魔法を使えるやつがいれば話が早いんだけどな」
「仮に火魔法を使えたとしても、火を起こすために魔法を使うのは勿体ないだろ。まあ諦めてこのまま食うしかないんだよな」
おう……どうやらこの異世界には魔法があるらしい。実はさっきみんなに隠れて、異世界ではよくあるステータスオープンと唱えてみたが何も起こらなかった。普通こういう世界に来たら、なんか特殊な能力とかをもらったりするんじゃないのかよ……
街までの道のりの中、周りには警戒しつつもロイヤ達にこの世界のことをいろいろと聞いてみた。さっきご馳走したお昼ご飯のおかげか、ロイヤ達はいろいろなことを快く教えてくれた。また借りが増えてしまったようだ。
「見えたぞ。あれが冒険者の始まりの街アレフレアだ」